夏の終わりにちょっとした遠足気分でヨッシーが向かったのは、東伊豆は宇佐美。
SLJ(スーパライトジギング)とタイラバで晩夏を楽しみ尽くそうという算段だ。
風光明媚な東伊豆の海だが、決して甘くはなかった様子。
それでも持ち駒を出し切り、キッチリと竿を曲げるヨッシーなのだった。
文 高橋 剛
撮影 本誌編集部
先生:よしおか すすむ
愛称は「ヨッシー」。
ジャッカル・ソルトプロスタッフであり、クレハインストラクターも務める。
「こんなに釣りしなかったこともない」というほど長い自粛期間をへて、最近はコロナ禍の様子を見ながら細心の注意を払いつつ釣行をリスタート。
沖で、陸っぱりで、釣りができる喜びを噛みしめる日々。
生徒:たかはし ごう
幼稚園のころから沖釣りをしているはずなのに、いつまでたっても上達しない「永遠の初心者」。
釣りそのものより海に浮かんでいることに喜びを感じている様子で、うまくなる気配なし・・・。
#Target & Game guide マダイってどうやって釣るの?
プチ遠征気分が楽しめる東伊豆。
景色もよいので、「釣れればなんでも楽しい」が本音。
本命としてはやはりマダイだろう。
タイラバで釣れればサイコーだが、シブイときは徹底的にシブイのも現実。
SLJとの2本立てで、万一の事態に備えよう(笑)。
SLJでも波動の少ないジグを選び、抑えめのアクションを意識すればマダイが食ってくる可能性は十分にある。
眺めてよし、食べてよし。「魚の王様」とも呼ばれるマダイは、タイラバ、SLJ、一つテンヤなど様ざまな釣法が楽しめるのも大きな魅力。ゴン、ゴン、ゴンという力強い段引きも釣り人を引きつけてやまない
出典:
初島の向こうから、盛夏の朝日が昇る。
音もなくスルスルと高度を上げながら、ハンパない量のエネルギーをまき散らす。
オレンジ色の光を浴びると瞬く間に汗が噴き出るが、気分はいい。
島から聞こえてくるセミの大合唱。
時折、風に混じる涼気。
遠くに霞む街並み。
朝日を反射する釣り船。
こんなすがすがしい景色の中で釣りができることは、幸福としか言いようがない。
午前4時半に東伊豆宇佐美港を出た二階屋丸は、20分ほどで水深60mのポイントに到着した。
午前5時、釣り開始。
ドテラ流しで攻める。
とろりとした波間に、ヨッシーは鋭い眼光を浴びせる。
けだるい夏の朝には似つかわしくない緊張感だ。
「まずはタイラバから。海域的に、マダイのアタリは決して多くないだろう。少ないチャンスをどれだけモノにできるか、だね」と、気を緩めない。
釣り開始からわずか30分。
「きたよ!」と鋭い声を上げたのは、ヨッシー・・・ではなく、同船していた鹿島一郎さん──通称イソメマンだった。
アオイソメをこよなく愛する鹿島さんは、中通しオモリに段差付きのチラシバリを付けた仕掛けに、アオイソメを装着していた。
「スカート代わりにアオイソメを付けただけで、あくまでもタイラバ」と主張し、巻きの釣りに徹する鹿島さんだが、要はエサ釣りである。
少なくともタイラバの釣果に加えることはできない。
だが、マダイはいる。
確実にいる。
2kg弱のマダイを目にして、ヨッシーの眼光がさらに鋭さを増した。
東伊豆の海はまったりとしていてとらえどころがなかった。
しかもタイラバは基本的に着底させて巻き続けることの繰り返し。
単調な釣りの中でも、ヨッシーはちょっとした傾向を見付けていた。
「広い範囲を探りたいから、少しキャストして斜め引きをしていた。
なんだか分からないけど、アタリはあるんだ。
アタリが出るのは、斜めになっていたラインが縦になったとき。
同じ巻きなら、斜め引きだと深い層を探っていることになるから、タナが高めなのかもしれないな」
イソメマン鹿島がマダイを上げた約30分後、「きたよ!」という短い叫び声とともに、ヨッシーの竿が曲がった。
「なんだろう、この引き。マダイじゃなさそうだけど・・・」
不安は的中した。
上がってきたのはヨリトフグ。
当地ではミズフグと呼ばれ、毒はないそうだ。
海水を飲み込みまんまるに膨れあがったその姿は、まるで水風船。
ちょっとかわいい・・・が、残念ながら本命ではない。
以降、魚はなかなか姿を見せない。
ポイントを変えると潮が速い。
「これだけ潮がブッ飛んでると、いくらゆっくり巻いても魚から見ればタイラバは高速で動いてしまうね」と、以降はスーパーライトジング(SLJ)にスイッチした。
すっかり日が昇った伊東の海がギラギラと輝く。
ポイントをこまめに変える森昌史船長。
汗をかきながらジャークを続けるヨッシー。
2人に海が応えた。
チカメキントキ、ホウボウ、そしてアヤメカサゴと、立て続けに魚をヒットさせたのだ。
「タイラバでのミズフグを合わせれば四目!
実はエソも釣ってるから、正確には五目達成だね(笑)。
なかなかシブい一日だったけど、ジグのアクションにノリよく付いてきてくれる魚がいた。
どんなときでもリアクションで食ってくれる魚が少なからずいる。
だからSLJには色んな可能性があるんだ。
何かしら魚が掛かってくれるからね。
今回はSLJのノリのよさに救われたよ・・・」
#Prepare タックルの方程式 持ち込むタックルの数=可能性
「マダイ1本勝負」も潔くてよいが、せっかく東伊豆まで繰り出すならとりあえず何か魚を釣りたい!
タイラバとSLJの2本立てでタックルを用意しておけば、マダイ、青物、根魚と可能性の幅はグッと広がる。
タイラバは原則的に巻きオンリーの釣りになるが、SLJはジグの種類も豊富でアクションの自由度も高く、底から中表層まで幅広く探ることができる。
そんな中でもタイラバのタックルはキャスティングしやすいベイトリールと、鋭敏で状況把握も容易なロッドをチョイス。
幅広く探りを入れるためにスピニングタイラバも。
SLJはジャッカルで鋭意開発中の専用プロトモデルをテストを兼ねて使用した。
(左)ほかのお客さんの迷惑にならない程度に持ち込めるだけ持ち込むのもアリ!(右)汎用性の高いリールを使い回すことでタックルを減らすことも可能だ
出典:
#Prepare ルアーの方程式 臨機応変×対応力=ルアー個数
タングステン製のバンブルズTGSLJは色いろな魚が食ってくる
出典:
通い慣れていない場所は、とにかく様子が分からない。
魚からの答え=アタリが得られるまでは正解を見付ける手がかりもないので、色いろやってみるしかない。
攻める水深や流れの速さに対応するため、タイラバは60~150g前後、ジグは40~80gと幅広い重さを用意したい。
まずは重さがポイントに合わないことには釣りにならないからだ。
それから色、形状などを考える。事前に船長に連絡してヒットルアーを確認しておくと参考になるだろう。
タイラバのヘッドは赤やオレンジ、金を中心に、ジグは明るい日・明るい潮色のときはナチュラルカラーを、暗い日・暗い水色のときはチャート系を選ぶのが基本。
さらに活性が高ければ波動の強いものを、低ければ波動の弱いものを・・・と、「念のため」色いろ詰め込んでいくうちに、タックルボックスは相当な重さになる(笑)。
肩に食い込むベルトもプチ遠征のだいご味だ。
(メタルジグ)今回はバンブルズTG SLJのプロトタイプカラーを使用。ポイントの流れに合わせて60gと80gを使い分けた。スリムなフォルムでシャープなアクションが可能だ(タイラバ)最近はマダイもスレてきたのか、トレンドはフィネス(繊細)。シンプルで波動も少ない(ヘッド)巻き抵抗の少ないヘッドと、揺らぐアクションを起こすヘッドを活性により使い分けた(ネクタイ)最近多用しているのはフィネスストレートなど非常にシンプルで波動を抑えたスカート
出典:
#Howto 先生が教える基本釣法 釣果の差を探究し続ける
残念ながら型を見ることができなかったゴーさんだが、何か間違ったことをしていたわけじゃない。
アオイソメを愛用していた鹿島一郎さんにもあまりアタリが出ないほどシブイ一日だったので、ほんのわずかなチャンスをつかめたかどうかが釣果の差につながったようだ。
こういうときどうすればいいかって、もうとにかくルアーを投じるしかない。
持ち駒を出し切って、どうにか魚からの反応を引き出す。
一度でも反応があれば、それを手がかりに正解を導き出していく。
単純なようだけど、それしかやりようがないんだ。
強いて言うなら、持ち込んだルアーの数の差はあったかもしれないし、ルアーチェンジの頻度の差もあったかもしれない。
オレもパターンを見付けられるまでには至らなかったので、ゴーさんを責めることはできないかな。
でも一応五目は達成したんだよな(笑)。
ほぼ同じことをやっていたオレとゴーさんの差はどこにあるのかを探るのが、釣りなのかもね。
#Notice 生徒なりのお気付きポイント 集中し切れずに大敗・・・
ボウズを食らってしまった。
ヨッシーの見よう見まねで同じようなことをやったつもりだし、それなりに実践できていたとも思うが、魚からの反応は得られず・・・。
唯一の山場はSLJで海面直下の(おそらく)シイラがヒットしたこと。
これもフックオフしてしまい、空っぽのクーラーをぶら下げて船を下りることになった。
ヨッシーも苦戦した状況で、何かを見出すことができなかった。
敗戦の最大の理由は、集中力が途切れてしまい、魚への念も不足していたこと。
集中し切ってルアーを落とし続けていたヨッシーとの差は大きかったなぁ・・・。
(左)ドテラ流しのタイラバはラインがどんどん出ていき着底が分からなくなることも(中央)SLJは基本的にワンピッチジャーク。可能性の高い根魚にターゲットを絞る(右)あまり激しくジャークせず、フワフワと軽く。底から5mをねちっこく
出典:
(左上)ひたすらルアーを投じ続ける。仕掛けが海中になければチャンスも生まれない(右上)一度でもヒットを得られれば、そこからの情報を基に組み立てを考える(左下)PEがスプールで食い込み、ルアーがピュ~・・・(右下)表層で強烈なヒット!だがバラシで少ないチャンスを逃す
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#Report ヨッシーの実釣レポート 根魚狙いにスイッチしてどうにか結果を出せたね!
朝イチでイソメマン鹿島がマダイを上げたし、可能性の高い海域だから諦めずに投げ続けたけど、しんどかった~(笑)。
攻略するまでには至らなかったな・・・。
初島周りは潮も底も変化に富んでいるから、通い詰めれば面白いことになりそうだ。
マダイを諦めてからはどうにか魚の顔を見ようと底物狙いにスイッチ。
SLJで底から5mまでの範囲をネチネチ攻め続けて、どうにか結果が得られた。
バンブルズTG SLJはヒラヒラとフォールするセンターバランス。
ねちっこく攻めるのにぴったりだ。
(左上)アオイソメのスカート(?)に食ってきた1kg級の美マダイ(右上)ジグに元気よく飛びついてきたホウボウ(左下)アヤメカサゴは着底とほぼ同時にヒット!(右下)同船のお客さんもホウボウゲットでひと安心
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#Solution 東伊豆のタイラバ&SLJ 解 (ルアーの数+経験値)×集中力
タイラバの解
タイラバでは結果が出せなかったのでなんとも言えないが、最新トレンドはフィネス。
シブイ状況なときほど波動の強いスカートのアピール力に頼りたくなるが、むしろ逆。
シンプルなスカートで食わせるのが効果的だ。
集中を切らさずに巻き続けること!
今回は苦戦したタイラバだったが、ハマったときの爆発力にはすさまじいものがある!
出典:
SLJの解
ジグが軽いSLJだからこそ、色んな種類を持ち込みたい。
ジグ選びに迷ったら、フォルムが太めなジグと細めなジグ、両方をそろえておこう。
一般的に太いジグは波動が大きくアピール力が強い反面、潮に流されやすく、魚に見切られる場面も。
一方の細いジグはアピールしすぎないことで食わせやすい。
この両方を用意し、あとは様ざまなアクションを試してみるしかない。
どうしてもたるむ時間帯はあるが、諦めずに誘い続けること!
集中力を維持することが大切だ。
様ざまなアクションで誘えるSLJは、魚からの反応が得やすいことが証明された
出典:
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