【新春ウワサの検証②】一つテンヤマダイのウワサ~遊動テンヤはビギナーも釣れるは本当か?~
本編のテーマ「遊動テンヤはビギナーも釣れるは本当か?」の話に入る前に、まずは一つテンヤの仕掛けを簡単におさらいしておこう。
ひと口に「一つテンヤ」と言っても各メーカーから様ざまなアイテムが発売されていて、本来のテンヤの形式である固定式と、遊動式の2タイプに大まかに分けられる。
固定式テンヤはオモリと大きな親バリが一体化した構造で、当初は親バリ、孫バリともに一体型だったが、現在の市販品は孫バリが交換できるタイプが主流になっている。
一方、遊動式テンヤ(以下遊動テンヤ)はラインがオモリの中を通り抜ける仕組みが特徴で、ハリは振り分け式の2本バリ仕様となっている。
一つテンヤ船の船長がビギナーに遊動テンヤを推奨するのはなぜ?
さて、ここからが本題。
遊動テンヤはビギナーも釣れる、そう一つテンヤの取材でよく耳にするのだが、その理由は何だろう?
周年一つテンヤ船を出している船長たちに意見を聞いてみた。
「遊動テンヤはハリが小さいので小型のマダイもよく釣れて、初心者も数がのびるからでしょう」茨城県日立久慈漁港・弁天丸の阿部正美船長。
「普通のテンヤ(固定式)だと釣るのが難しい小型のマダイも、ハリが小さい遊動テンヤは掛けやすいからだと思います」日立久慈漁港・大貫丸の大貫翔平船長。
「誘っても誘わなくても潮を受けてエサがユラユラ動くのでアピール力がありますし、ハリが小さいので魚の大小問わず掛かりがいいからです」鹿島港・長岡丸の長岡寿樹船長。
「ラインとハリが直結なので重いテンヤでもアタリが分かりやすいし、合わせ遅れても引き込んでから巻き上げれば掛かるので初心者向きです」九十九里飯岡港・幸丸の向後恵一船長。
「遊動テンヤは合わせがワンテンポ遅れるくらいのほうが掛かりがいいので、アタリに即合わせがなかなかできない初心者におすすめです」外房大原港・長福丸の野口智宏船長。
話を聞いた船長たちの意見をまとめると、
●ハリが小さい=魚の大小にかかわらずハリ掛かりがいい。
●アタリに合わせが遅れがちな初心者でもハリ掛かりする確率が高い。
といったコメントが目立ち、一つテンヤ初心者には遊動テンヤを推奨しているとのこと。
そこで、ハリ掛かりがよくて合わせ遅れても掛かるのなら、「遊動テンヤはアタリに合わせないほうが釣れるのでは?」という極端な仮説を立て、実釣による検証を行うことにした。
遊動テンヤはラインがオモリの中を通り抜ける仕組み。固定式テンヤはオモリとハリが一体化した構造が特徴
出典:
遊動テンヤのタックル例
アタリに合わせなくても釣れるのか?検証結果
舞台は外房大原。
当地は水深10~20m台の浅場で中小ダイの好模様が続いており検証に最適な条件がそろっている。
今回は一つテンヤのエキスパート・宮本英彦さんを始め、様ざまなスキルを持つ一つテンヤ経験者5名に協力していただいた。
当日は長福丸の午前船に乗船。
この日は昼ごろから雨になる予報のためか、我われ以外の予約はなく貸し切り状態。
検証メンバーには、前もって遊動テンヤの実釣を行うことだけを伝え、「今回は〝アタリに合わせない釣り方〟を検証します」と出船前にルールを発表すると全員目を丸くして、「無理無理、体が勝手に合わせちゃう」「置き竿に食うこともあるけど、合わせないと厳しいでしょ~」と否定的な意見が多かった。
一つテンヤの基本はアタリに即合わせ。
これが体に染みついている今回のメンバーには難しい課題だが、
●各自が使い慣れた遊動テンヤを使う。
●誘いは自由。
●アタリに合わせず、竿先が引き込んでから巻き上げる。
●1時間30分を区切りとし、アタリに合わせない時間と合わせる時間を交互に設ける。
以上のルールにのっとり、アタリがきた投入回数と釣れたマダイの数をカウントしてもらった。
当日の釣り座と状況
5時半に港を離れ、6時前に太東沖のポイントに到着。
パラアンカーを下ろし水深20m付近でスタート。
野口船長によると、前日は明るくなってから釣れ始めたそうだが、当日は早朝からアタリ連発。
最初に豊田さんが400g級を抜き上げ、続いて大久保さん、村野さん、宮本さんが同級を上げる。
この状況に一番驚いているのは宮本さんで、「合わせないと厳しいと思ったけど・・・釣れちゃったね!」と言いながら再投入。
すると底ダチを取った直後にアタリ。
宮本さんは竿先をたたくアタリに合わせたい衝動をこらえて3回、4回と見送り、ググ~ッと引き込んだところで巻き上げた。
激しく竿をたたいて上がってきたのは1.5kg級。
「最初の1枚はマグレかも・・・って疑ったけど、遊動テンヤ恐るべし!普通のテンヤ(固定式)であんなに待ったらエサを取られてサヨウナラだよ」と向こう合わせの釣り方に手応えを感じているようだ。
その後もマダイの群れが船下に着いているかのようにアタリが続き、ひっきりなしに竿が曲がって400~600g級が次つぎに上がる。
村野さんは1.8kg、1.5kgと連発して絶好調。
こうして半日を過ごした結果は次のとおり。
アタリに合わせない第1ラウンドの釣果は全員で合計26枚(6時~7時半)。
続いて、アタリに合わせて19枚(7時半~9時)。
アタリに合わせない第2ラウンドは18枚(9時~10時半)。
各自の検証結果をまとめた表を見てみよう。
検証メンバー | 一つテンヤ歴(年間釣平均行回数) | 使用した遊動テンヤ | アタリに合わせない 第1ラウンドの結果 | アタリに 合わせた結果 | アタリに合わせない 第2ラウンドの結果 |
宮本 英彦 | エキスパート | ビンビンテンヤ 鯛夢遊動5号 | 9/12=75% | 6/18=33% | 3/15=20% |
大久保 香織 | 5年(年3回) | ビンビンテンヤ 鯛夢遊動5号、8号 | 5/18=27% | 4/14=28% | 7/15=46% |
豊田 一幸 | 10年以上(年8回) | 貫撃遊動テンヤ 6号、8号 | 7/13=53% | 7/12=58% | 0/5=0% |
村野 誠 | 10年以上(年6回) | 貫撃遊動テンヤ 6号、8号 | 5/11=45% | 2/6=33% | 3/12=25% |
三山 正孝 | 10年以上(年4回) | ima 真鯛魂 レンジセッター8号 | - | - | 5/9=55% |
実釣日の状況=午前船に乗船。釣り場は太東沖の水深13~25m前後。パラーシュートアンカーの流し。潮速0.5ノット前後。アタリに合わせない時間と合わせる時間を交互に設けて検証した。6:00~7:30=アタリに合わせない第1ラウンド、7:30~9:00=アタリに合わせた、9:00~10:30=アタリに合わせない第2ラウンド。
※三山さんの結果の一部は諸事情によりノーカウント。
マダイの釣果をアタリがきた投入回数で割った、メンバー5名の平均キャッチ率は・・・
●アタリに合わせない第1R=平均キャッチ率=50%
●アタリに合わせた=平均キャッチ率=38%
●アタリに合わせない第2R=平均キャッチ率=29%
アタリに合わせなくてもある程度は釣れると思ってはいたが・・・検証結果は私(内山)の予想を超え、当日魚の活性が最も高かった早朝の第1Rにいたっては、アタリに合わせた場合のヒット率を上回った。
しかし、第1Rで12打数9安打、キャッチ率75%を記録した宮本さんが、同じ時間にアタリに合わせていたら、さらにヒット率が上がったかもしれない・・・と思ってしまうのだが、同一人物が2つの方法を同時に試すことはできない。
そこで今回は、アタリに合わせる時間を設けている。
その結果、宮本さんはアタリがきた投入回数は18回と早朝を上回ったが、釣れたマダイは6枚にとどまりキャッチ率は33%と低迷した。
「朝よりアタリは多かったけど、エサ取りっぽいアタリも多かったからね」と宮本さん。
続くアタリに合わせない第2Rは15打数3安打、キャッチ率20%にとどまった。
早朝から沖揚がりまでアタリが出る投入回数に大差はなかったが、中盤からキャッチ率が下がったのはエサ取りが増えたことも原因の一つだろう。
「今回の検証だけじゃなんともいえないけど、遊動テンヤはアタリに合わせなくてもハリ掛かりする確率が高いのは間違いないね。普通のテンヤ(固定式)でアタリに合わせてなかなか掛けられない初心者は、遊動テンヤで向こう合わせの釣りを試すのはありだね。でも、やっぱりオレはアタリに合わせる釣り方が好きだな~」と宮本さん。
ほかの検証メンバーも、遊動テンヤを用いれば向こう合わせで釣れた結果に、不思議な達成感を感じて船を下りたのであった。
アタリに合わせない釣り方にとまどいながら、次つぎにマダイを上げる宮本さん
出典:
アタリに合わせない釣り方に開眼し、第2ラウンド最多の7枚を釣った大久保さん
出典:
遊動テンヤでアタリに合わせない釣り方の検証中に、親バリと孫バリにマダイがダブルヒット
出典:
私は宮本さんにお付き合いいただき午後船に乗船。
向こう合わせの釣りを試したところ、13打数7安打、ヒット率53%の結果を得た。
最初はコツコツ、お次はゴンゴン、竿先のアタリを見ていると魚が一生懸命エサを食べる様子が目に浮かんで愉快な気持ちになり、グイッと引き込まれたときの手応えもたまらなかった。
比較的小さなハリを使った振り分け式の2本バリ構造を持つ遊動テンヤはエサの吸い込みがよく、宮本さんのコメントのとおり、向こう合わせでハリ掛かりする確率が高いことを実感した。
取材した船長たちが初心者に遊動テンヤをすすめていること、そして向こう合わせでマダイが釣れたという結果を踏まえれば、本編のテーマ「遊動テンヤはビギナーも釣れるは本当か?」の答えは限りなくYESだろう。
しかし、今回は一つテンヤ経験者による検証結果。
初挑戦の人や経験が少ないビギナーが検証すると結果は変わるのだろうか・・・。
遊動テンヤのエサ付け例
写真上はスタンダードな1匹付け、下はエビが小さいときに親バリと孫バリに1匹ずつ付ける2匹付け
出典:
遊動テンヤは様ざまなアイテムが発売されている
出典:
今回の検証メンバー。左から豊田さん、三山さん、大久保さん、宮本さん、村野さん、ご協力ありがとうございました
出典:
遊動テンヤの長所と短所・ビギナーが使う場合は手前マツリ対策が肝心
さてここからは、今回の取材で見えてきた、遊動テンヤの長所と短所を紹介しよう。
ラインがオモリの中を通り抜ける仕組みの遊動テンヤがもたらす長所としては、
長所①=着底するときオモリが先で、エサが後から落ちる。このときエサだけの重みでゆっくり落ちていくフカセ状態が誘いになる。
長所②=仕掛けを止めるとエサが潮の抵抗を受けユラユラ動いて誘いになる。
長所③=ラインとハリが直結なのでアタリが分かりやすい。
長所④=魚が走るとオモリが離れるため、ハリにオモリの負荷が直接かからずバラシを軽減できる。
といった点が挙げられる。
しかし、遊動式の構造がラインにエビ(ハリ)が絡む手前マツリの原因にもなる。
手前マツリを軽減させるコツの一つが、投入するとき仕掛けを軽く投げる方法。
仕掛けを船下に落とすと、エビがラインに近い位置で落ちていくため絡みやすいのだが、仕掛けを軽く投げるとオモリが着水した位置の向こう側へエビが落ちてラインと離れるため、手前マツリを軽減できる。
また、手前マツリを物理的に軽減する対策として、ハリスにウキ止め、もしくはシンカーストッパーと呼ばれるゴムを付ける方法がある。
ゴムの位置をズラせばオモリの遊動幅を自由に調節できる。
初挑戦ならオモリとハリの距離を詰めてセットすると釣りやすく、魚が走るとゴムがズレるので長所④の効果は生かされる。
慣れてきたら20~30cmほど遊動幅を取れば、長所①の効果も生きる。
また、ほかの人とオマツリすると、遊動テンヤのハリのハリス(赤い糸)に道糸が複雑に絡むことがある。
こうなるとハリのハリスを切らざるを得ない場合があるので、予備の仕掛けが2~3個あると安心だ。
ビギナーはハリスにシンカーストッパーを付け、オモリの遊動幅を調節して手前マツリを軽減しよう
出典:
遊動テンヤの仕組みと特徴
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