どれだけ空振りを繰り返そうが、一発当たれば試合が決まる。
野球に逆転満塁ホームランがあるように、マダイ釣りにはタイラバがある。
中でも南房洲ノ崎は、全国的に見ても稀な大ダイ出現率を誇る。
この挑戦をロマンと呼ばずに、なんと呼ぼうか。
今年も大鯛チャレンジが始まる
「先週久びさに乗りました。結構深いところ、60~70mで反応があり、6kg頭で5枚とれました。
潮はトロトロで60~90gを使いました。
やはりできれば軽いほうが反応はよいようです。
二枚潮の時間帯をどう攻略するか、楽しいですね」
洲ノ崎のタイラバといえばこの人、関本清人さんとのメールから、今年も大鯛チャレンジは始まる。
洲ノ崎の巨人・関本清人先生の技を再確認する。
洲ノ崎のタイラバといえばこの方、関本清人さん。
出典:
華道の先生でもある関本清人さんは六平丸にて毎回、といっていいほどタイラバで大ダイを釣り上げていく。
本誌でも不定期連載「鯛ラバたい」にてマンツーマンかつストーキング的な取材を行ったのだが、その「技」は、潮と船の流れに対して巻き速度と探る幅を微妙に変えていくことのほかは、際立った違いを見つけることができなかった。
もちろん、故意に掛けにいったり、極端なドラグ設定にしていることもない。
ドラグはややきつめだった。
別船で関本さんだけが大釣りしているときなどは、港で事情聴取のごとくバッグを開けて使用タイラバを見せていただいたりもしたが、どれも釣具店で購入できるもの。
むしろ、古いモデルのタイラバやネクタイを大切に使っている方だった。
では、私が知り得た関本さんの「技」とは何か?
それは、潮が緩いときは早めに巻き、潮が速いときにはゆっくりと巻くこと。
簡単に聞こえるが、これを毎投、少しずつ変えて反応を探っている。
潮の速さや重さ、あるいは流れが変わる層は、竿やリールのハンドルを通して伝わってくる「抵抗」や「重さ」で判断し、巻き速度や探る幅を毎回変えて反応を見ていく。
「関本さんだけは、釣りますよねえ。
何が違うのか、目の前で見ていても分かりません。
でも、釣ります」
釣行当日の朝、田邉忠宏船長も言う。
忠宏船長の船で関本さんが釣った日は、先のメールの5日後、我われが釣行する数日前だった。
「なかなか攻め方が難しかったです。
朝のうちに集中して2枚ほどとりましたが、日が射してからはヘッドやネクタイを大きく変える柔軟性が必要かもしれません。
アタリは少ない、けどいつでもきます。
こちらの工夫が大切かなと感じました」
日程が合わず同行できないものの、関本さんが与えてくれたヒントから、キーワードを抽出してみる。
① 朝方がチャンス
② 軽いほうが反応がいい
③ 日が出てからは大胆な工夫も
④ アタリは少ない、でもいつでもある
⑤ 二枚潮をどう攻略するか
6月下旬の朝4時、暗いうちに港に集まり、5時に出船、洲ノ崎沖65mダチから始める。
当初、今回の大鯛チャレンジは総勢10名、2隻で取材する予定だったが、南西風のシケで一日順延、4人一隻となった。
メンバーは日本一速い沖釣り師・レーシングドライバー高木真一さんと奥さんのひとみさん、タイラバおじさんこと根岸発行人、そして私。
高木夫妻は洲ノ崎初挑戦だが、私と発行人は昨年までの成功体験から、釣れる気マンマンである。
最初は左右に分かれて竿を出したものの、左舷側に糸が出ることから左舷に並ぶように変更。
80gで糸が斜めになるから、潮は速い。
午前船は5時出船。午前、午後の2便で予約を受け付けている六平丸。
出典:
本誌連載でもおなじみのレーシングドライバー・高木真一さんとひとみさん夫妻が参戦。SUPER GTチャンピオンの意地を見せるか?
出典:
「朝方がチャンス」
キーワードその①である。
期待に胸ときめかせて巻くこと1時間・・・アタリはない。
「80gで糸が立つようになってきました。潮がたるんだのかなあ」
高木さんがタイラバボックスをガサゴソ始める。
この人はクルマの運転も速いが、仕掛けを替えるのも早い。
70m台で、80gで真っすぐ道糸が立つということは・・・。
「今は0.5から0.7ノットです。
タイラバなら、もっと流れてほしいですよね」
船長によると船首を北に向け、潮は東、洲ノ崎方面へ流れているそうだ。
「軽いほうが反応がいい」
キーワードその②。
軽いタイラバが使える状況だ。
私はここで、毎年試しているメタルジグを投入。
右舷へ移りスピニングタックルでキャストして、着底、20m巻き、再着底で探ってみる。
右舷は道糸が入り込んでくるので即回収となってせわしないが、実はタイジギングは道糸が入り込む側で キャストするほうが有効と言われる。
それはメタルジグが道糸の抵抗なく自然にフォールするほうが、マダイへのアピール力が高いため。
マダイも含め、様ざまな魚を狙うことができる小型のメタルジグは、沈むときの動きが重要視されており、フォールアクションの良否が釣果を大きく左右すると言われる。
その性能を発揮させるためにはできる限り自然に沈める。
つまり、道糸に引かれていないほうがいい。
ゆえに、船が流される方向へキャストして、できるだけフリーフォールでアピールする。
これはスーパーライトジギング発祥の地・三重で育まれてきたマダイ狙いのテクニックだ。
最初は80gのジグでも着底、20m巻き、再着底、1セットで回収だったのが、次の流しでは2往復できるようになる。
いよいよ潮がたるんできたようで、50gに変更、70mダチでキャストすると、モワッとしているものの着底が分かった。
40gも含めいくつかルアーを変更していくと、50gのあいや~じぐスレンダー(緑/金)のときにアタリがきて、ヒメが掛かった。
このジグは昨年も大ダイを釣っているのだが、不思議と洲ノ崎沖では色んな魚が反応し、コンタクトしてくる。
次投は5巻きしたところでエソ、その次は着底と同時に再びヒメ。
ここで予感があった。
昨年、潮がたるんだときにヒメが連発した直後、大ダイがアタってきたのだ。
左舷では高木夫妻、根岸発行人、仲乗りの田邉保さんがタイラバを巻いているがアタリはない。
私がキャストするジグにだけ、毎投、ヒメやエソがアタっている。
流し変えた71mダチ、5回巻いたところでまた、ヒメがきた。
そして再投入、モワッと着底し、糸フケを取りつつ竿を軽くあおりながら5回巻くと、
ノソッ・・・。
重みが加わった。
ヒメと違う重さに底物かと思い合わせを入れるとグ、グッと重みが増す。
サメなら面倒と早めにリーリングすると・・・。
ジャーーーーーーー!
ドラグを滑らせ、道糸を出して走り始める。
止まると鈍重、しかし、巻き上げると再び、ジャーーーーーーー!
「タイじゃない?タイでしょ!?」
アタリの感じからてっきりサメかヒラメと思っていたが、船長の見立てどおり、数回の疾走を止めて中層を過ぎると抵抗が弱まり、白い腹を見せてマダイが船底からヌッと現れた。
「ヒメが釣れたらタナが合ってるって言うコマセダイの船長もいるんだよ、やっぱ関係あるはずだよ」
根岸発行人が写真を撮りながら目を丸くして言う。
「タイラバでオレンジが強いのは、ヒメの色も関係あるのかなあ」
高木さんも私と同じことを考える。
食ってきたジグの色は緑/金だが、タイジグの定番色も赤やオレンジ/金。
やはりヒメのような色彩だ。
ここでジグを赤/金に交換して検証すればいいのだが、緑/金で続行。
もちろん理由は2枚目を釣りたいからだ。
「おおっ!きた!」
高木さんが同じセットで着底直後にヒット。
ドラグが再びジャーーーー!と滑り出す。
ジグ、おそるべし。
「あー、マダイじゃなかった~!」
上がってきたのは1.5kgのマハタ。
大ダイが上がった次の流し、再びジグにヒット。上がってきたのはマハタだった。
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マダイと思いきや1.5kgのマハタ。7月は布良方面でハタ類を含めてさらに楽しめる。
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時刻は7時。
「朝方」「軽い仕掛け」この2つのキーワードへの私なりの答えが出せて、大満足であった。
これを機に潮が再び動き出し、50グラムのジグでは底を取りにくくなる。
ここからは真打ち、タイラバの出番である。
「あーーー!」
「チクショー!」
「掛からなかったー!」
おっさんたちの絶叫が洲ノ崎の空に吸い込まれていく。
仲乗りの田邉保さんの顔が上気している。
見ればタイラバのヘッドにマダイの噛み跡。
潮が動き出したチャンスに、いわゆる「箱出し」の新品を投入したところ、ガブッとやられたのだ。
発行人も悔しがっている。
聞けば保さんに続いてガガガッとアタったものの、掛からなかったと言う。
そして高木さんも、タイラバで何回かアタったものの掛からず。
このとき、タイラバで1人スルーされたひとみさんであったが、実は彼女、過去に大ダイを釣り上げた「全部のせ」に近い、ネクタイ山盛りバージョンを投入していた。
(左)仲乗りの田邉保さんのタイラバにガ ッツリと噛み 跡・・・(右)その横では発行人にガガガッ。「チックショー」とうなだれるのであった。
出典:
残りの3つのキーワードは?
「日が出てからは大胆な工夫も」
「アタリは少ない、でもいつでもある」
キーワード③、④に鑑みれば、攻めたものの、大ダイとすれ違った流しだった。
その後、アタリは途絶えてしまう。
色いろ工夫するも、反応がない。
船長も40、50、80mと、それこそ洲ノ崎沖をくまなく探るものの、時間がたつにつれて急激な二枚潮となり、100gでは着底もままならない状況になってしまった。
「二枚潮をどう攻略するか」
最後のキーワード⑤に対して、150gにしてみたり、180に上げてみたり、逆に80gをスピニングでキャストして一往復のみで狙ったりしたが、答えは返ってこなかった。
「・・・修業というより、最後は拷問になってしまいました。すみません!」
11時半、田邉忠宏船長が頭を抱えながら、沖揚がりを告げた。
いくつもの「もし」が、次回への原動力
潮が動き出してからタイラバに期待したものの、今回は不発だった。
とはいえ、少ないながらチャンスはあった。
もし、保さんのヘッドを噛んだ大ダイがハリに掛かっていたら。
もし、その直後に根岸さんのタイラバをかじった大ダイが掛かっていたら。
もし、何回かアタリがあった高木さんのタイラバに、一度でもハリ掛かりしたら。
もし、ひとみさんの「全部のせ」に反応するヤツがいたら。
大ダイ狙いに「もし」は禁句ではない。
いくつもの「もし」が、次回への原動力なのだ。
季節は7月。
今年の流れでみれば、そのころは洲ノ崎沖の40m台や布め良ら瀬が舞台になると思われる。
タイラバ、ジグのほか、冷凍エビを持ち込んで、テンヤをやっても面白いはず。
とくに布良方面では各種ハタのほか、過去、私と斉藤元編集長は、何度掛けても上げられない大ダイに遭遇したことがある。
いざ、大鯛チャレンジへ!
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隔週刊つり情報(2020年7月15日号)※無断複製・転載禁止