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プロが検証!締め方によるタチウオの違い~見た目・味・食感・生臭さを徹底的に分析します~

隔週刊つり情報編集部

【新春ウワサの検証③】タチウオのウワサ~締めたほうがウマい!?の真偽を探る~

編集部より、タチウオの絞め方について検証せよとのお題が出る。

「分かりました」と了承しつつ、はて、以前に似たようなことをやったことがあるような・・・。

念のためPCのドキュメントホルダーを覗いてみると、およそ10年前に隔週刊つり情報で連載していた「〆研」の第18回と21回で、タチウオを取り扱っていたことが判明した。

評価が大きくブレた10年前の比較

魚を絞めるという行為は、即死させることで魚が必要以上に暴れるのを防ぐ。

なぜ暴れるのがいけないかというと、魚のエネルギー源であり、うま味成分の元になる物質が、暴れることで消費されてしまうため。

また、血抜きすることで、生臭さや腐敗の原因となる血液を除去するのも狙い。

ただし、タチウオの場合は釣り上げた直後こそ多少暴れるものの、すぐにおとなしくなるし、青物のように大量の血を流すわけでもない。

つまり、タチウオは絞める効果があまりないのではないか、と10年前の私は考えた。

しかし〆研では色んな魚で、当初の予想をことごとく覆す結果が出ていたから、迷うことなくタチウオも検証したわけだが、やはりこのときも意外な結末を迎える。

当時の検証をまとめてみよう。

日時は10年前の12月で、場所は駿河湾の沼津沖。

処理の仕方は2パターン。

A=ノドの辺りをハサミでカットし、海水で血抜きをほどこす。

B=釣れたまま足元に転がしておく放置プレイ。

これを翌日、刺身にして7人に試食してもらった結果は次のとおり。

・見た目のおいしさはA6人、B1人。

・食感(歯応え)はA4人、B2人。

・うま味の強さはA6人、B1人。

・生臭さはA1人、B5人。

・総合的なおいしさはA7人、B0人。 

味覚は個人差が大きく、また非常に微妙で、同じ人でもその日の気分や体調によっても変わってくる。

したがって、すべての項目でAが支持され、総合評価で全員が軍配を上げるという結果は非常に珍しかった。

2回目の検証はその1カ月後。

やはり沼津沖でタチウオを釣って比較した。

絞め方の設定は3パターン。

A=釣れたらキッチンバサミで首の付け根をカットして即殺、30分ほどバケツで血を抜いてからクーラーへ。

B=Aと同じ要領で処理した後、ブツ切りにしてから内臓を引っ張り出して水洗いし、ジップロックに入れてクーラーへ。

C=釣れたら直ちにクーラー直行の氷絞め。

本来なら放置したいところだが、真冬の夜釣りとあって、クーラーの中も外も温度はほとんど変わらないと判断した。

これを翌日、6人で試食した結果、

①見た目のおいしさはA0人、B2人、C4人。

②食感(歯応え)はA0人、B6人、C0人。

③うま味の強さはA2人、B3人、C1人。

④生臭さA1人、B1人、C0人。

⑤総合的なおいしさはA2人、B3人、C1人。

総合評価では即殺+血抜き+ブツ切り+ワタ抜きのBが勝利したが、結果は僅差であり、1回目のような顕著な傾向は見られなかった。

以上が10年前のお話。

釣行の写真

食材は沼津で釣ったタチウオ。過去と今回を含め、計3回にわたる検証となった。

釣行の写真

釣ったらそのままクーラーへ入れる人が最も多いはず。

釣行の写真

①頑丈なキッチンバサミで、のどから中骨までザックリとカットして即殺。②海水に浸し、30秒くらい左右に振って手早く血抜きしクーラーへ。

冷やした海水に浸す 「鬼絞め」を試す

さて今回、以前と同じパターンではおもしろくない。

ここ10年で魚の絞め方や血抜きなどの処理技術も大きく進歩し、ブームにもなりつつある。

話題の「津本式」なども興味深いけれども、釣りをしながらの作業では、なるべく手間をかけたくないのが実情。

より簡単な方法はないかと探して、ようやく見つけたのが「鬼絞め」。

大阪の鮮魚卸し店の方が提唱している方法で、いわゆる氷絞めの一種になる。

通常の釣りでは、バラ氷もしくは塊の氷が入ったクーラーに海水を注いで潮氷を作っておき、そこへ釣れた魚を浸けて保管する。

しかし、これだと最初のうちはいいが、やがて氷が解けてくると海水の塩分濃度が薄まってしまう。

すると、濃度を一定に保とうとする浸透圧の働きで、魚体が水を吸って身が水っぽくなったり、体表の変色を引き起こす。

イカ釣りで身の白濁を防ぐため、凍らせたペットボトルを使うのと同じ理屈だ。

重要なのは、魚が生活している海水で冷やすことだそうで、このために氷はビニール袋などに入れて真水が解け出さないようにする。

釣れた魚をこの冷海水に入れるだけもいいが、即殺、血抜き、神経絞めを併用すれば、さらにいい状態をキープできるという。

釣行の写真

①未開封のロックアイスやペットボトル氷などをクーラーに敷き、海水を注いで冷やしておく。②キンキンに冷えた海水に、釣れたタチウオを浸す。 今回は血抜きした個体も一緒に冷やしてみた。

3つの方法+クーラーで鬼絞め

さっそく、食材を調達するため沼津江浦港の伊勝丸へ向かう。

途中、コンビニで弁当のほか、ロックアイスを3袋仕入れる。

ポイント到着後、ロックアイスを袋のまま入れたクーラーに海水を張って準備完了。

船で支給される氷を使う場合は、なるべく厚手のビニール袋を用意し、氷を入れて空気を抜いてからしっかりと口を縛ればいい。

あとは配置に注意して、魚の歯やヒレのトゲで袋に穴が開かないようにする。

なお、釣果を重ねるにつれてクーラー内の海水は血で染まっていくが、流れ出た血が身に戻ることはないから、海水を取り換える必要はない。

むしろ水を換えることで水温が上がるほうが問題だ。

処理のパターンは3つ。

A=釣り上げたらすぐに首をキッチンバサミで切断し、海水を張ったバケツの中でフリフリして放血させてクーラーへ。魚は死ぬと体温が急上昇するため、この作業は手早く行う。

B=Aの魚がある程度クーラーに溜まったタイミングで、一部を取り出してブツ切りに。腹を割いて内臓を取り、なおかつ背骨に沿って走る血の塊(腎臓)を爪の先でしごいて洗い流す。あとは適量を保冷袋に収納してクーラーに戻す。

C=釣ったらすぐにクーラー直行。

沖揚がり後はクーラー内、魚体ともにキンキンに冷えた状態なので、海水は捨ててかまわないそうだが、心配なので3割ほど残し、帰路にコンビニへ寄って板氷を1枚(もちろん袋のまま)追加しておいた。
 
翌朝、クーラーのフタを開けると、さすがに海水100%の威力か、体表は銀ピカのまま。

三枚におろして刺身を作り、食べ比べることにする。

本来なら試食者は多ければ多いほど有効なデータになるのだが、まだコロナ禍ということもあり、今回は私一人で行う。

釣行の写真

①頭を落とし胴体を3~4分割。②腹を割いて内臓を取り去る。③歯ブラシなどで血合を取る。④保冷袋に入れてクーラーへ。

釣行の写真

上から順に、本文中のA、B、Cの処理方法で持ち帰った身。翌日撮影したものだが、色合、中骨周りの血合の量などに顕著な差は見られなかった。

タチウオの絞め具あれこれ

自分が釣った魚を少しでもおいしく食べたいと願う人は多いから、昨今では実に様ざまな絞め具、血抜き用の商品が市販されている。

最近では「津本式」という高圧の水流で中骨の血管や神経を洗い流す絞め方を個人で行えるように、充電式の血抜きポンプまで登場した。

もちろん、それらを駆使すればより完璧に近い仕上がりが得られるわけだが、タチウオの場合、最低限の処理でよければハサミ1本で事足りる。

あとは鋭い歯から指を守る、フィッシュグリップと、ブツ切りにするならナイフか包丁、まな板があればいい。

釣り具の写真

ハピソンから新発売された「津本式血抜きポンプ」。充電式で釣り場にも持参できる。オープン価格だが、実勢価格は2万円台(※画像はハピソンのHPより)。

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結論=寝かせて食べるなら血抜き処理を推奨

結論からいうとA、B、Cいずれもおいしく、見た目、食感、味、匂いとも明確な差は感じられなかった。

ということは、釣れたらとくに何もせず、すぐさま冷やした海水に浸ければいいことになる。

しかし4日目にもう一度食べてみたところ、今度は多少の違いが感じられた。

AとBは変わらなかったが、Cはやや生臭さがあったのだ。

これはおそらく血抜きをしていないのが原因と思われる。

このことから、釣って2日以内に食べ切れるのであれば、クーラー直行のCスタイルが手間もなく楽。

3日以上寝かせるなら血抜きをほどこすAスタイルが無難な処理だろう。

さらに、都会の集合住宅にお住まいの皆様なら、ゴミが最小限で済み、なおかつ帰宅後すぐに料理に取りかかれるBスタイルがおすすめだ。

多くの文献に、タチウオの旬は6~10月と記されている。

しかし、駿河湾では最も脂が乗るのは真冬だと船長たちは口をそろえる。

脂肪含有量でいえばマグロの大トロ並みなのだが、それでいてギトギト感があまりないのは、DHAやEPAのほかオリーブ油に多く含まれるオレイン酸などの脂肪酸がたっぷり入っているため。

また、脂溶性ビタミンであるビタミンA、D、Eが豊富なのも特徴で、栄養効果も高い魚だ。

釣って楽しく、味もよく、健康にもいいタチウオ。

最盛期の今だからこそ挑戦していただきたい。

釣行の写真

たくさん釣れたら、しばらく保存するタチウオは血抜きしたほうがいい。

料理の写真

うま味たっぷりの冬のタチウオは立派な正月料理になる。手前左から、たたき風、刺身、 炙り刺、奥側は蒲焼と塩焼き。

沼津の夜タチガイド

魚探やソナーを駆使して群れを追いかける日中の釣りと違い、駿河湾では日没とともに深みから沿岸に移動してくるタチウオを、アンカーで船を固定して待ち受けるカカリ釣りスタイルで狙う。

水深は60m前後と浅めで、潮もあまり速くないから、エサ釣り、ジギング、ご当地釣法のサーベルテンヤなど様ざまな釣り方が同じ船でできるのが特徴。

比較的安定した釣果が望めるのがエサ釣り、条件がハマると大釣りするのがジギング、大型の確率が高いのがサーベルテンヤ釣法という傾向がある。

港によっても違うが、出船時間が15時半ごろとけっこう早い。

カカリ釣りという特性上、ポイントの選定が重要なため、場所取りの意味合いが強い。

アンカーを打っても、釣れ出すのはおよそ1時間後なので、暗くなるまでは弁当でも食べてのんびり過ごすのが得策だ。

餌の写真

今回はエサ釣りで20本を確保。

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