ハタ五目。
生きイワシをエサに使った泳がせ釣りとあって、マハタのほかにヒラメや大型カサゴなど、ゲストと呼ぶにはもったいなさすぎる高級魚も多彩に釣れる魅力的な釣りだ。
近年では外房・南房エリアなどでもヒラメと併せてハタを狙う乗合船も増え人気が高まっているが、古くからハタを主体に狙うメッカとして知られているのが南伊豆エリアだ。
マハタを筆頭にホウキハタ、イヤゴハタ、アオハタ、アカハタ、オオモンハタなど、まさにハタ五目と称するにふさわしい多種のハタが顔を出す。
今回はこのハタの宝庫ともいえる南伊豆エリアでハタ五目の看板を掲げる船宿の一軒、敬昇丸へ取材釣行した。
敬昇丸では、周年モロコ狙いを受け付けているほか、生きイワシの確保が可能になる例年11月ごろから翌年5月初旬までの期間にハタ五目へ出船している。
8kgオーバーを視野に入れた太仕掛け
釣行前に船長にタックル、仕掛けなどについて問い合わせた内容をまとめると、仕掛けはヒラメと同様の胴つきスタイル。
釣れるマハタのアベレージサイズは1~3kgで、5kg以上も珍しくなく、時に7~8kg以上の大型がヒットする。
ハタ類は底から離すまでの抵抗が想像以上に強く、ハリス8号程度ではあっけなく切られてしまうことも。
したがってハリスはフロロカーボン10~12号を使用。
ハリス長は1.5~2m。
ハリは丸セイゴ20号が船長のおすすめ。
そのほかイセアマ15~16号、閂(かんぬき)マダイX14号などもよいとのこと。
仕掛けの作りがヒラメと同じなら親孫式かと思ったが、船宿仕様は孫バリなしの1本バリ。
船長に理由を尋ねると、「孫バリを付けるとイワシの弱りが早くなるばかりか、根掛かりのリスクも高まる。何よりヒラメと違いハタ類はエサを一気に丸飲みにする魚だからね」とのこと。
だからといって親孫式を禁止しているわけではないので、孫バリの有無は各人の好みでいいそうだ。
道糸と幹糸はサルカンなどで接続してもよいが、FGノットなどで直結し、親子サルカンの手前まで巻けるようにしておくと取り込みの操作がしやすくなる。
使用オモリは80号で、「潮が速ければ、オモリ80号で釣りができる潮の場所を探すから、それ以外のオモリはいらない」とのこと。
ある程度の根掛かりは避けられない釣りなので、予備の仕掛け、オモリ、とくにハリスを結んだ替えバリは多めに用意しておきたい。
竿はオモリ80号対応で、険しい根を探りやすい操作性と大型のハタを底から引き離すバットパワーがあるもの。
全長1.8~2.4m、7:3~6:4調子の遠征五目用、青物用などが適している。
リールは手巻きでもいいが、釣り場の水深が50~130mなので小型電動リールのほうが無難だ。
船長推奨の道糸はPE4号。
ハリス12号で根掛かりした場合でも、高切れせず対処できる強度がある。
アオハタは1~2kg主体。マハタは1~3kg主体に8kgオーバーの大型も潜む
出典:
南伊豆のハタ五目仕掛け
マハタ狙いは高めのタナ取りが効く
私が釣行した10月31日は、今シーズンのハタ五目3回目の出船。
初日の21日に5.2kgのホウキハタが上がったこともあり、期待に胸を膨らませたファンが集結。
満船の8名で6時に出船となった。
船長によれば、主な釣り場は白浜~石廊崎沖、神子元島周りとのこと。
当日は神子元島灯台で北東風12mの気象情報が発令されており、海況の悪さが心配だったが、海岸沿いに西に進むことおよそ30分で到着した石廊崎沖は、風裏となりナギといってもいい状況。
逆に西風が強ければ白浜のほうへ行けばナギとなるので、冬場でも大抵の日は出船できるとのことだ。
「それではやってみましょう。水深58m。タナは底から2~3mでいいですけど、どんどん浅くなっていきますから、根掛かりに気を付けてね」
魚探の画面には浅くなっていくボトムラインの頂上付近にベイトの反応が映し出されている。
「ヒット!」のアナウンスに目を向けると左トモの前田さんの竿が大きく絞り込まれている。
いきなり本命か!?と期待したが、海面に近づくにつれラインが横走りする。
無事タモに収まったのはカンパチ。
目測4kg近くありそうなグッドサイズだ。
ゲストとはいえこれはうれしい。
「ホウキハタは底から離せばあとはすんなり上がってくるけど、マハタは青物みたいに海面までガンガン暴れるからね。だから時どきだまされちゃうんだ」と船長。
船内を見学しながら船長にハタの釣り方などを伺うと、「ホウキハタ、イヤゴハタ、カンコなどは基本的に底に着いているけど、マハタは活動的でエサを追って5~10mも浮いてくるよ」とのこと。
基本的には、底から2~5m(海底の状態によりそのつど指示が出る)のタナを探っていれば色いろ釣れるが、マハタを釣る確率を上げるなら、さらにタナを高く探ることがコツで、高い位置で食ってくるマハタほどデカいとのこと。
着底したら根掛かりしないよう、すぐに指示ダナまで巻き上げ、そこからゆっくりと5~10mくらい探り上げる。
群れからはぐれたベイトを狙ってマハタが追ってくるイメージだ。
アタリがこなければ再着底させ、探り上げを繰り返す。
魚は上から落ちてくるエサに敏感に反応するもの。
この落とし直した直後もヒットチャンスなので油断はしないように。
海底は10~20mの落差がある崖のようなところも多い。
タナを高く探り上げることは根掛かりを軽減するメリットもある。
アタリはドカンときたり、小さくモゾモゾときたりと様ざまだが、強く引き込まれたところで竿を起こすように合わせる。
マハタは根に潜ろうと強烈な抵抗をするので、まずは底から引き離すことだ。
5mも浮かせればまず大丈夫だと思うが、途中で強く抵抗することもあるので手持ち竿で慎重に巻き上げよう。
主な釣り場は白浜~石廊崎沖、神子元島周りの水深50~100m前後の岩礁帯
出典:
険しい根をかわし、底から2~5mのタナを探るのが基本。アタリがきても慌てず、強く引き込まれたら合わせる
出典:
南伊豆のハタ五目・釣り方イメージ
エサのイワシを大事に使おう
ヒラメ釣りが盛んな千葉・茨城方面ではイワシの供給システムが整っているため、毎朝業者が生きイワシを配達してくれるが、敬昇丸を始めとする南伊豆の船は、船長自ら陸路で田子までイワシを買い付けに行っている。
エサの残数や予約状況を見ながら必要なときに買い付けに行き、在庫を確保しているが、それでも急な予約には対応できないこともあるので、予約はなるべく早めに入れてほしいとのこと。
またイワシの仕入れ値は決して安いものではない。
1人当たり15~20尾くらい用意しているが、イケスから各自でバケツへ移すときは1尾ずつ、大事に使っていただきたい。
1本バリ仕掛けを推奨する船長おすすめのイワシエサの付け方は口掛け。口からハリ先を入れ、上アゴの硬い部分に刺し抜く。鼻掛けにする場合は、ハリが回って目に刺さないように、ハリにソフトタイプの夜光玉を通しておくといいそうだ
出典:
潮が流れず食い渋るもアオハタ&カンコが登場
さて肝心な釣況だが、当日は魚のご機嫌がすこぶる悪かった。
船長もこまめにポイントを変え、そのつどタナや海底の状態、探り方などをアナウンスしてくれたが、時折くるいいアタリはサメばかり。
この日は潮が流れず全般に食い渋ったが、10時近くになってようやくシャッターを切れるシーンが。
左ミヨシ2番の栗原さんと、早朝にカンパチを上げた前田さんにアオハタがヒット。
40cmの1kg弱、アオハタとしてはまずまずサイズだ。
水深95mから流したカケ上がりのポイントでは、私と右ミヨシ2番の入江さんに1kgサイズのカンコが上がる。
カンコは春先に産卵期を迎えるが、その時期になれば2~3kgの特大サイズばかりが数釣れるとのことだ。
アオハタを釣った栗原さんにいいアタリ。
しかし底から引き離そうとしたところでハリス10号がぶっち切られる。
正体は分からないが、本命マハタだと思うと残念でならない。
その後は定番ゲストのアヤメカサゴに続いて、ルリハタ、ヘラヤガラといった南方系の珍客も登場。
ヘラヤガラは敬昇丸の船長歴25年で初めて釣れたそうだ。
最後はカツオ島周りの水深70~80m付近をじっくり探ってみたが、船中アタリなく沖揚がりとなった。
結局ハタ類は栗原さんと前田さんが釣ったアオハタのみ。
「いやぁ、なんとかマハタを1本仕留めたかったけど・・・」と申し訳なさそうな船長。
しかし、船上でのマイクアナウンスは細かく的確で面白く、おかげで集中力をまったく切らすことなく一日を楽しむことができた。
多彩なハタ類やカサゴ類、さらには青物までヒットしてくる南伊豆のハタ五目は例年5月ごろまで楽しめる。
南伊豆の風光明媚なロケーションの釣りをぜひ楽しんでいただきたい。
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隔週刊つり情報(2021年12月1日号)※無断複製・転載禁止