オレと監察官Kはある日、都内のセンベロ酒場で議論を重ねていた。
熟女という単語はあるのに、なぜ熟男という単語が存在しないのか?
熟女にそそられる野郎はいても、熟男にそそられる女子がいないからじゃないか?
はたまた熟成した男には価値も未来もないって証なのか?
と、ひとしきり盛り上がったところで、「お~し、次の探偵のテーマは熟女と熟男だ!!」
って、いやいや、釣りと関係ね~し。
じゃあ「熟」つながりだってんで、今回のテーマは最近巷ちまたでよく話題に上る「魚の熟成」に決定したのだった。
沖釣り探偵〝K〟
釣り人になりすまし、遊漁船で秘密調査を敢行する調査員。
独自の情報網を駆使して難調査を解決・・・予定。
釣りの腕前はヘッポコな永遠の23歳。
監察官〝K〟
カメラマンになりすまし、遊漁船上をふらつく探偵Kのお目付役。
面倒な調査にはノータッチ。
濃厚抹茶ハイとホッピーをこよなく愛するエディター。
今度の探偵は素顔をさらす!
出典:
基本データ#FILE 01・魚のうま味成分と熟成について
魚のうま味成分とは?
魚の筋肉細胞にはアデノシン三リン酸というエネルギーソースが含まれており、魚が死後に硬直し、その後分解されてイノシン酸になります。
このイノシン酸は、魚の主要なうま味成分となります。
魚の風味成分には、たんぱく質の分解により生成されるグルタミン酸も存在しますが、熟成によって得られる風味成分としてはイノシン酸が主要でしょう。
また、イノシン酸は、徐々にイノシンを経てヒポキサンチンへと変化し、そのプロセスの途中で風味は失われてしまう。
魚の熟成とは?
魚の下処理と管理を適切に行い、イノシン酸による深い味わいが感じられるレベルまで魚を保管することを熟成と称する。
熟成プロセスでは、85%以上の湿度と一定の温度を維持することが絶対必要な条件となる。
(左)今回の調査は藤沢市 善行にある「男前みよし鮨」に 協力いただいた(右)熟成について話をしてくださ った道木大輔さんと店主の道木道雄さん
出典:
<店舗情報>
男前 みよし鮨
神奈川県藤沢市善行1ー14ー23
電話0466・82・2588
熟成するにはまずは魚を釣ってこなきゃ
酔いが醒めた翌日。
魚の熟成ってどういうことよ?
ってちょいと調べてみたんだけど、今イチ分かんない。
そこで、魚に詳しい寿司屋のD(道木大輔)さんにピッポッパッ。
「もしも~し、探偵Kだけど、お久し鰤! ね~ね~、釣ってきた魚ってどうやって熟成させればいいの? ていうか、そもそも魚の熟成ってナニ?」などとアレコレ質問してみた。
するとDさんは、懇切ていねいに魚の熟成について語ってくれ、ひととおり話を聞いたところで、
「じゃあ、オレたち釣り人が釣った魚をちゃんとおいしく熟成させるにはどうしたらいいの?」と尋ねてみると、
「プロは専用の冷蔵庫で魚を熟成させたりするのですが、釣り人の皆さんが熟成魚を楽しむための簡易的な方法もあるんですよ」と話す。
なになに、そ~なの?
んじゃ、ひとまず熟成させる魚を釣ってこなきゃってんで、監察官Kとの熟男コンビで沖へとレッツラゴー!
最近、マダイが釣れまくっているという茨城県日立久慈漁港の日正丸へと向かったのである。
調査日は、平日にもかかわらず大勢の釣り人が集まり朝6時に出船。
航程40分ほどの日立沖を目指す。
日立の一つテンヤは平日でも大盛況
出典:
ちょくちょく大ダイもヒットしている
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アタリが多いから初心者でも楽しめる
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基本データ#FILE 02・日正丸の一つテンヤマダイ
茨城県日立久慈漁港の日正丸は、周年一つテンヤマダイを看板にしており、若いスタッフがそろう活気ある船宿。
この時期に狙うポイントは日立沖の水深40~60m。
一般的な一つテンヤタックルと8~10号前後のテンヤがあればいい。
現在は底から高く立ち上がった反応を攻めることが多く、底上10~20mといった宙層を狙うこともしばしば。
流し変えのたびにアナウンスされる指示ダナに注意を払いたい。
なお、同船でタイラバやタイジグの使用もOKだ。
テンヤにタイラバのスカートなどを付ける人も多い
出典:
日正丸の一つテンヤ仕掛け例
(左上)第八日正丸は16tの大型船。常時仲乗りが乗船し、船長とともに釣り人のサポートをしてくれる(左下)使用するテンヤは8~10号前後(右下)一般的な一つテンヤタックルがあれば楽しめる
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(左)乗船時にクッションとタオルが貸し出される(右)下船後は昼食のサービスがある
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浮いた反応で連続ヒット
山縣雄太船長に近況を尋ねると、時に海底から10m以上浮いたタナでマダイが食ってくるという。
釣れているサイズは大中小交じりで、連日2~3㎏級は顔を出しているらしい。
ポイントの水深は50m前後。
底上20mまでビッチリ反応が出ているとのアナウンスが出る。
低めのタナばかり狙うとハナダイ中心になりがちとのことだったので、オレは指示ダナの上限付近を集中的に攻めることにした。
1投目からアタリが連発してまずはハナダイ。
続いて400g級のマダイをゲット。
キュンキュン引きまくるマダイの引きは、やっぱり楽しいね。
合わせが決まった瞬間が気持ちいい
出典:
しばらくすると反対側で何か大きな魚が引っ掛かったようだ。
攻防の綱引きを勝ち取って、網の中に収まったのは3.2㎏の立派なマダイ。
すごいな、すごいな。
私も同じような魚を釣りたいな!
船内では度々1㎏以上のマダイが釣れているのに、私はハナダイばかりで苦笑い。
それでも合間に0.7㎏クラスのマダイがたまに食いついてきて、終了時までに5枚のマダイを保持できた。
1㎏級もそこそこ釣れている
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2㎏級のマダイも釣れた
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この日のマダイの船中釣果は0.3~3.2㎏が12枚。
特筆すべきはバラエティ豊かな外道の数かず。
定番のハナダイとイナダを始めワラサ、マハタ、ホウボウ、マトウダイ、ヒラメ、ウスメバル、マサバが交じり、日立沖らしい釣果でにぎわった。
釣れた魚はすべて血抜きと生け絞め(今回はナイフでエラの上の髄を切断)を施し、船宿支給の氷で覆って自宅へ搬送。
よ~し、帰ったら魚を熟成させるぞ~!
アタリが多いからとにかく楽しい!!日立沖の一つテンヤマダイ好調・当日最大は3.2㎏
出典:
手軽にできる釣った魚の熟成法を探れ!
下処理した魚を保鮮紙とビニール袋でくるみ、氷水の中に浸して保存させればいい!
釣ってきた魚の熟成を手軽に楽しむ方法の一例を道木大輔さんにアドバイスしてもらったので、ここではその手順を紹介しよう。
「魚を熟成させるには、まず下処理が重要になってきます」と大輔さん。
その下処理の手順は下の写真のとおり。
・船上で血抜きして、生け絞めする
・ウロコと内臓、血合をきれいに取り除く
・水分をしっかり拭って保鮮紙にくるみ、ビニール袋にしまう生け絞めについては、「死後硬直を遅らせることができるので、できれば神経絞めがおすすめ」だそうだが、できなければナイフなどで絞めるだけでもいい。
また、「輸送時は氷や水に魚体が直接触れないよう、ビニール袋などに魚を入れてからクーラーボックスにしまうといい」とのこと。
帰宅後の下処理は、腹の中の血合をきれいに掃除することと、魚体の水分を十分に拭い去ることが重要。
最後は保鮮紙(なければ吸湿性の高いキッチンペーパーでも可)にくるみ、ビニール袋に入れて密閉。
あとは用意した氷水に浸けて、熟成させるだけ。翌日、保鮮紙が湿っているようなら、新しい保鮮紙に交換する」と熟成開始までの手順を説明してくれた。
(上)船上で生き絞め&血抜き。本来は神経絞めして、魚に余計な水分を吸わせないよう氷や海水に直接触れないように持ち帰るのが理想的(中)ウロコと内臓、血合をきれいに取り除く。とくに血合は徹底的に掃除する(下)水分をしっかり拭って、保鮮紙にくるみ、ビニール袋にしまう
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これが保鮮紙。吸湿性の高いキッチンペーパーで代用してもいい
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ここで気になるのは、なぜ冷蔵庫ではなく、氷水の中で熟成させるのか?ということ。
その理由は、「家庭用の冷蔵庫は、扉の開閉などにより温度が不安定になるうえ調整もできない。また、庫内は乾燥していて、熟成に適さない環境。その点、氷水は温度が一定に保たれ、湿度も十分。家庭でも理想的な環境で魚を熟成させることができる」からだそうだ。
こうして、イノシン酸が増す食べごろまで魚を保存すれば、熟成魚の完成となる。
探偵”K”の報告書
プロのアドバイスをもらって魚を熟成させたのは、オレにとっても初めての経験。
結果として、釣り上げてから10日近くもたったマダイの刺身がとてもおいしく食べられたことに心底驚いた。
「おっ、マダイが熟成したな!」と感じたのは、氷水に浸け始めてから4日目のこと。
うま味が増したせいだろう、舌の上で感じる魚の甘みのようなものがグッと強まった気がした。
その後は、翌5日目も、原稿の締め切りを踏まえて熟成最終日とした9日目も同様においしかったから、今回の検証では、氷水に浸け始めてから4~9日目に味わったマダイが、いわゆる熟成魚だったと振り返る。
こうしてDさんから教えていただいた方法で、オレは魚を熟成させることに成功した。
自分で釣って、自分で熟成させたマダイの刺身は、確かにおいしかった。
でもオレは、釣りたての、身がプリップリとした刺身も好きだな~。
(左)臭いもチェックしながら毎日試食。9日間に渡る熟成で臭うなと感じたのはイナダと終盤戦の魚の頭部のみ(右)監察官Kが釣ったイナダは熟成開始から4日目で「夕方のスーパーで半額売りされていた刺身」状態となりギブアップ
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(左上)熟成用の氷水は魚が入るサイズのクーラーボックスに作るといい(右上)検証中、氷水の水温は毎日2~3度をキープしていた(左下)マダイのほかハナダイ、イナダ、ウスメバルも熟成させてみた(右下)熟成させて9日目のハナダイとマダイ。目は沈んでいるが光沢は消えていない
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(左上)熟成させて4日目のマダイ(中)上から熟成させて5日目のウスメバル、ハナダイ、マダイ。こんなにうまいウスメバルの刺身を食べたのは初めてだ(右上)釣ってから9日目 とは思えないきれいなマダイの身(左下)マダイだけでなく脂が乗っていたハナダイも熟成させて9日目まで刺身でおいしくいただけた(右下)冷蔵庫で9日間寝かせたマダイ。明らかに熟成魚よりも鮮度が落ちている
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隔週刊つり情報(2020年3月1日号)※無断複製・転載禁止