分かっているようで分かっていない?テンヤとは何か
沖釣りを始めると、様ざまな沖釣り専門用語に出会うが、その中でも「テンヤ」は普段の生活では聞いたことがない独特の響きを持っている。 実は漁具としての「テンヤ」は広辞苑には掲載され…
隔週刊つり情報編集部PR
数あるマダイ釣りの中でも、ハリスの先に昔ながらのテンヤを一つ結んだ、きわめてシンプルな仕掛けで狙う〝一つテンヤ〟は、スピニングタックルで楽しむライトなマダイ釣りだ。
目次
一つテンヤは、ハリスの先にオモリとハリが一体化した昔ながらのテンヤ(カブラ)を結び、エビエサを刺し、マダイのもとへ沈めて誘う。
およそ14年前に大原の船長とともに一つテンヤを開発した藤井克彦さんは、軽いテンヤ、ゆっくり沈んでいくテンヤはマダイの食いがいいという持論にもとづき、糸を出すときの抵抗がないスピニングリールと潮切れがいい細い道糸を使い、軽いテンヤをマダイのもとへ沈める一つテンヤ釣法を確立。
その基本タックルは現在も当時と変わりなく、専用竿とPE0.8号前後の道糸を巻いたスピニングリールの組み合わせがメイン。
ただし近年は回転性能に優れた小型両軸を使ったベイトタックルの愛用者も増えている。
テンヤのサイズは、パラシュートアンカーやドテラ流しで船を潮と風なりに流して狙う外房~茨城方面では、水深10m×オモリ1号、初心者なら10m×2号が目安で、主に水深20~40m前後を狙うこの時期は3~8号を中心に、風と潮が強いときに備えて10~15号があると安心だ。
しかし、エンジン流しで狙う南房~東京湾では、道糸が立つように小刻みに船の姿勢を修正しながら流していくため、水深に関係なく、8~15号と重めのテンヤを使う。
道糸を張らせておくと、底ダチが取りやすくオマツリも軽減できるからだ。
さて、ひと口に「一つテンヤ」と言っても各メーカーから様ざまなアイテムが発売されているが、本来のテンヤ(カブラ)の形式である固定式と、遊式テンヤの2タイプに大まかに分けられる。
ここでは、それぞれの特徴を考えてみよう。
シマノ(SHIMANO) 炎月 一つテンヤIII 4号 RG-H04Q 02T エビレッド
ダイワ(DAIWA) テンヤ 紅牙 タイカブラSS+エビロック ケイムラ オレンジ/金 5号
ハヤブサ(Hayabusa) テンヤ 無双真鯛 貫撃遊動テンヤ 12号 SE105#10 ケイムラチャート
テンヤはオモリと大きな親バリが一体化した構造で、当初は親バリ、孫バリともに一体型だったが、現在の市販品は孫バリが交換できるタイプが主流。
テンヤは台形のオモリの底面が潮を受けるため、ゆっくり沈んで魚にアピールするといわれている。
カブラはオモリが丸型で潮の抵抗を受けにくいのが特徴で、仕掛けを速く下ろしたい場合や、潮が速く仕掛けが吹き上げられるときにも有効。
固定式のテンヤとカブラに共通する主な長所は次の2つ。
長所①=大きな親バリに刺すとエビが固定され、シャクって誘う、もしくは沈めるときエビの姿勢が安定し魚に違和感を与えない。
長所②=落下中の仕掛けに魚が食いつく、いわるゆフォールのアタリが取りやすい。
しかし、ハリ掛かりしたマダイが走ると頭を振るような暴れ方をすることがあり、そのときテンヤ(カブラ)はオモリの重量が負荷となってハリが外れることがあるため、重いテンヤほどバラシのリスクが高くなる。
ラインがオモリの中を通り抜ける仕組みになっていて、海面をのぞいて投入したテンヤを見ると、オモリが先に落下し、それを追うように少し離れてエサが落ちていくのが分かる。
この仕組みがもたらす長所としては、長所①=着底するときもオモリが先で、エサが後から落ちるのだが、このときエサだけの重みでゆっくり落ちていくフカセ状態が絶妙な誘いになるといわれている。
長所②=遊動テンヤは魚が走るとオモリが離れるため、ハリにオモリの負荷が直接かからずバラシを軽減できる。
といった点があげられる。
しかし、遊動式の構造がハリスにエビ(ハリ)が絡む、オマツリしやすいといったトラブルの原因にもなり、シャクるとエビがクルクル回るため魚が違和感を覚えるともいわれている。
後述する遊動式テンヤの釣り方では、こうした短所をカバーする方法を紹介する。
10月31日、茨城県日立久慈漁港の弘漁丸へ。
日立エリアでは10月中旬ごろからマダイの模様が上向いており、当日は水深30m前後を狙って早朝からアタリが連発。
400~600g級主体で大ダイこそ交じらなかったものの一人5~19枚と数は文句なし。
取材に同行していただいた藤井克彦さんも自作のテンヤ3~4号でマダイの引きを楽しんだ。
ここからは、きわめてシンプルな仕掛けで狙う一つテンヤの釣り方を紹介していこう。
スタンダードなテンヤと遊動テンヤは釣り方の基本は同じ。
最初はリフト&フォールを軸に底付近を探り、マダイの食いや釣り場の状況に合わせて様ざまな釣り方や誘いを試し、その日のヒットパターンを探っていく。
リフト&フォールの釣り方は図①のとおり。
マダイに限らずほとんどの魚は上目づかいでエサを探して落ちてくるエサに敏感に反応するといわれており、着底前後にアタリがくることが多いのもそのためだろう。
当然、着底前後がチャンスなのだが、糸フケが出て道糸がたるんでいる状態だと、魚がエサに食い付いてもアタリが伝わりにくく、糸フケを巻き取り底ダチを確かめたころにはエサが取られて食い逃げされることがある。
このアタリが伝わりにくい状態を軽減するために、投入後に、リールのスプールの縁に軽く指を添え(サミング)、できるだけ糸フケを出さないようにしながらテンヤを下ろす。
着底したら糸フケを取って50~100㎝ほど持ち上げ、10秒ほど待つ。
これでアタリがなければ誘いの動作に移り、頭上一杯まで誘い上げ、スッと竿を下ろしてフリーフォール、もしくは竿先でテンヤの重みを感じながらゆっくり下ろす誘いを繰り返す。
ただし、潮が速く大きくシャクると一気にテンヤが吹き上がってしまうときは、小幅なシャクリを繰り返し、潮にまかせてタナを広く探る。
誘いを繰り返すうちに、道糸の角度が海面に対して45度くらい、もしくは2~3分誘ってアタリがなければ仕掛けを上げてエサをチェックし、再投入する。
アタリはフォール中に出ることもあれば、道糸が張った瞬間や着底して止まったときにも出るし、シャクった直後に出ることもある。
またアタリはコツッ、クイッと竿先に明確に出ることもあれば、見た目に変化はなくても竿を握る手にモゾモゾと伝わったり、竿先がモタ~ッと重く感じることもある。
ともあれ、何かを感じたら大きくビシッと竿を振り上げて合わせる。
底にテンヤを着けた状態でアタリを待つこの釣り方は、リフト&フォールでエサを取られないとき、つまり浮いているエサにマダイが興味を示さないときに効果的(図②参照)。
仕掛けが着底したら底ダチを確かめ、続いてテンヤを底に着けて糸フケを出す。
この状態で3~5秒ほど待ち、ゆっくり上げる。テンヤが底を離れてもアタリがなければ、頭上までシャクってゆっくり下ろし、再び底に着ける。
アタリは竿先を持ち上げ、たるんでいた道糸が張ったときに出ることが多い。
テンヤを底に着けて待つとき道糸を張っていると、波や船の揺れを竿でかわしきれずにテンヤが動いて魚が違和感を覚えるためか、アタリが出にくい傾向があるので、必ず糸フケを出して待つのがコツだ。
この釣り方は根掛かりのリスクを伴うため、根が荒い場所ではもちろん、潮が速いときは周囲とオマツリしやすいので、すみやかにほかの釣り方に変えよう。
リフト&フォールやボトムステイで底中心に探ってもアタリがないときは、落とし込み(図3参照)で宙層を探る。
落とし込みの釣り方は様ざまで、竿先でアタリを取る場合は、おおよその水深を把握しておき、テンヤが底上10mに到達したあたりでスプールの縁(エッジ)を指で押さえて道糸を張らせる。
そこから1m落として再び止め、1秒待つ。
この誘いを繰り返し、仕掛けが底に着いたらしばらくリフト&フォールで様子を見て、アタリがなければ入れ替える。
落とし込んでいく途中でアタリがきたら、リールのベイルを戻して合わせる。
道糸の色変わりとマーカーでアタリがきたタナを把握し、次の投入ではアタリがあった水深の2~3m上から落とし込めば効率よく探れる。
道糸でアタリを取る方法は、フリーフォールで魚にアピールするために、できるだけ軽めのテンヤを使う。
リールのベイルを起こし、竿を上げて道糸を引き出したらサミングし、海面に道糸の円を描くように竿を操作する。
テンヤに引かれて動いていた道糸が止まる、もしくは不規則に動いたらそれがアタリ。
なお、道糸でアタリを取る方法はスタンダードなテンヤ限定。
遊動テンヤは落とし込みでエサ(ハリ)にマダイが食い付いても、沈んでいくオモリに道糸が引かれるためアタリが分かりにくいからだ。
この方法はテンヤをキャストして広範囲を探るのが狙いで、船下を探ってアタリがないときに効果的。
釣り方の手順は図のようになる。
テンヤをアンダーハンドでキャストして、着底したら糸フケを巻き取る。続いて頭上までシャクって竿を止め、テンヤの着底を待つ。このとき竿先を支点にしてテンヤが斜めに沈み込む。
これがカーブフォール。
着底したらボトムステイで数秒待ち、アタリがなければ道糸を巻き取りつつ竿先を下げる。
これをテンヤが船下にくるまで繰り返す。
釣り場が深いとキャストしたテンヤが着底する前に船下に戻ってしまうため、この釣り方で探れるのは水深30~40mまでが目安となり、根掛かりしない場所であることも条件となる。
遊動テンヤの効果的な釣り方が下の図⑤。
先述したとおり、オモリが先に着底して、後からエサがゆっくり落ちる着底前後が一番のチャンス。
着底後は糸フケを取り、オモリを底に着けて〝ボトムステイ〟で数秒待つ。
アタリがなければリフト&フォールで誘うのだが、シャープにシャクるとエビがクルクル回るので、スローに竿一杯に誘い上げ、スーッと下げる。根掛かりしない場所なら再び着底させボトムステイで待つ。
遊動テンヤで出るアタリは、竿先が震えるような微かな変化もあれば、コツン、ゴンと明確なこともある。
とくに着底前後は、エサがフカセ状態になって吸い込みやすいためか、グイッと竿先が引ったくられるような派手なアタリが出る場合が多い。
いずれにせよ、アタリが出たら即合わせで掛けるのだが、ビシッとシャープに合わせてもなかなか掛からないときがある。
そんなときは、スーッと聞き上げるように竿を立てるとハリ掛かりしやすい場合もあるので、ぜひ試していただきたい。
根掛かりする場所では、底から50~100㎝ほど持ち上げて待つ。
しばらく待ってアタリがなければ、ゆっくり誘い上げ、スーッと下げて誘った後、しっかり止めて1~2分と長めに待ってエサを魚に見せ続ける〝ロングステイ〟も有効だ。
なお、落下中や着底時のオモリとエサの距離は水深や潮具合によっても変わり、離れすぎると絡む原因になるのだが、投入後に軽くサミングして糸フケを抑えれば手前マツリを軽減することができる。
スタンダードなテンヤと遊動テンヤの特徴と釣り方をまとめると・・・
ハリとオモリが一体化したテンヤは扱いやすく、ダイレクト感があり、底付近はリフト&フォールとボトムステイ、広範囲を探るときはキャスト&カーブフォール、宙層を探る落とし込みでの掛けやすさなど、基本釣法からアクティブな誘いまで様ざまなパターンに対応する。
ラインがオモリの中を通り抜ける仕組みの遊動テンヤは、オモリの大きさにかかわらず着底前後のフカセ状態を演出でき、かつバラしにくいため、初心者でも釣りやすいテンヤといえる。
釣り方は、道糸でアタリを取る落とし込みを除けばスタンダードなテンヤと同じ釣り方に対応できる。
フカセ状態を演出しやすいリフト&フォールが最も効果的な釣り方となり、スローな誘い上げと、誘った後の止めの間を長めに取るのがコツとなる。
隔週刊つり情報(2019年12月1日号)※無断複製・転載禁止
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