毛糸に似た人工繊維「ウイリー」を巻き付けた擬餌バリを使うこの釣りがスタートしたのは、およそ40年近く前のこと。
元もとは東京湾口のハナダイを釣るために考案された釣法だ。
疑似餌だからエサ付けの手間がなく、エサ取りにも強いのが特徴だが、特筆すべきは釣り方。
アジにしろマダイにしろ、コマセを振ったら船長の指示するタナでじっとアタリを待つのが従来のセオリー。
ところがウイリーの場合は、仕掛けが着底したら少しずつコマセを出しながら上へ上へと誘い上げていく。
安心して楽しめるのはウイリー+エサ仕掛け
従来のコマセ釣りを「静」とするなら、ウイリーはまさしく「動」。
この革新的かつ攻撃的なスタイルは、魚のみならず釣り人をも夢中にさせ、瞬く間に沖釣りの新機軸として定着した。
ウイリー五目という看板のほか、近年人気のライト五目、飯岡方面のハナダイ五目などもウイリー仕掛けで楽しむ釣り。
今や定番の釣り方だ。
4月中旬、この釣りのパイオニアの1軒である相模湾腰越港の喜久丸へ。
「賑やかなほうが画になるでしょう」との親方の計らいで、乗合ではなく7人グループの仕立船のほうに便乗させていただく。
6時15分、田村勇太船長の操船で岸壁を離れ、10分ほど走って到着したのは港前のポイント。
水深は73m。
絶えずシャクリを繰り返す釣りだけに、竿は硬めの先調子が向いているように思いがち。
確かにコマセ振りは楽だが、シャクリを入れると力がダイレクトに伝わるため、仕掛けの動きが速くなりすぎる。
理想は、グイとシャクリを入れると、穂先が大きくお辞儀するくらいの調子。
曲がった穂先は竿の反発力によって、ワンテンポ遅れてスーッと戻るわけだが、このときハリがコマセの中を絶妙なスピードで通過してアタリを誘う。
使用オモリが60号なので、オモリ負荷表示は20~30号が適当、調子は7:3で胴にはしっかりと張りがあり、穂先は柔軟なタイプが向く。
リールは小型の両軸タイプ。
ほぼ終日、手持ちでシャクリ続けるため、竿、リールともなるべく軽量なものが望ましい。
仕掛けはハリス2~3号、全長3m前後。
ハリ数は3~5本が標準で、構造的には比較的シンプル。
ただし、疑似餌であるウイリーは種類が多く、組み合わせ(配色)まで考慮すると膨大なパターンに達する。
その中から季節、魚種、潮の流れ、潮色など様ざまな条件に合った仕掛けを選び出すのが、この釣りの難しさであり、面白い所でもある。
とはいえ、そんな芸当は相当経験を積まないとできやしない。
この日は乗船者全員が船宿仕掛けを使用した。
パイオニアだけあって船宿仕掛けにもいくつかパターンがあるのだが、出船前に船長から渡されたのは、ハリス3号3mの3本バリで、先バリはオキアミエサを付ける空バリ、真ん中がグリーンのウイリー、上バリがピンクか白のウイリーだ。
数あるウイリーの中でも、グリーン、ピンク、白の3色はどんな条件下でも安定した効果を発揮するオールマイティなカラー。
これらを入れておけばまず間違いない。
また、最もヒット率が高い先バリにオキアミを刺して使うハイブリッド仕様にすることで、ウイリーに反応が悪い魚もターゲットにすることができる。
ハリスは太めの3号だからマダイやイナダなど大きめの魚が掛かっても安心だし、ハリ数も3本と少ないから手前マツリの軽減にも役立つ。
まさしくウイリー入門にはうってつけのパターンといえる。
ウイリーを巻き付けた擬餌バリ。繊維の間に気泡が交じり、それが魚を誘惑するのでは?との説もある。
出典:
竿の調子や硬さによってウイリー仕掛けの動きも変化し、ヒット率が変わってくるケースも多い。
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(左)先バリにオキアミを付けることで、何かしら釣れる安心感が得られる。(右)喜久丸のオリジナル仕掛けは全長3mの3本バリ。上2本がウイリー、先バリはエサ付け用の空バリ。
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ウイリー五目の花形はマダイ、クロダイ、ハナダイなどのタイ類。
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匂い程度にコマセをまくコマセカゴの調整がカギ
「仕掛けが底に着いたら3m上げて(ハリス全長分)、そこから5~6m上まで探ってください」との合図で釣り開始。
投入前の大事な作業がコマセカゴの放出口の調整。
ワラサ釣りのようなドバまきスタイルなら上窓、下窓とも開け気味でいいが、この釣りはシャクリを入れる度にほんの少量ずつ出るようにしなければならない。
匂い程度のコマセで魚を寄せ、ウイリーに食わせるためだ。
まず下窓は閉め、上窓だけを3分の1~4分の1開ける。
これによって、シャクリ上げたときの水圧で上窓から海水が流れ込み、水流によってパラッ、パラッと少量のコマセが放出される。
コマセはアミ。
詰め具合や潮の速さ、シャクリの強さによって放出量が変わってくるので、微調整は必要だ。
目安としてはタナを2往復した段階でカゴの中に少しコマセが残る程度でちょうどいい。
なお、上窓は動きやすいので、まめにチェックするようにしたい。
第1投は6時半。
「ここはタイ類の実績が高いポイント」とのことで、前日は2.5kgのマダイが仕留められている。
オキアミコマセに長ハリスの専用スタイルでもなかなか釣れない魚が、アミコマセの3m仕掛けで釣れてしまうところが面白い。
開始約10分で早くも右舷胴の間のお隣さんにアタリ。
お仲間にタモ取りされたのは40cm級の大アジ。
よく太って体高もあり、実に見事なコンディションだ。
ちなみにこのグループは大半が貸し道具を使用していることからも、釣り経験はあまりない方がた。
突き詰めるとテクニカルな部類に入るウイリー五目だが、なにかしら釣れるので初心者でも十分楽しむことができる。
20分後、再び同じ人にアタリがきて、今度は40cm級のサバ。
群れが回ってきたようで、しばらくは船内各所から歓声が聞こえてくる。
サバに交じり大アジもポツポツとは上がってくるが、次第に食いが下火になった7時45分、船長は移動を告げた。
コマセカゴの上窓を少し開けるだけでいい。アミコマセは8分目ほど詰める。
出典:
70~80cm刻みでシャクって止めを繰り返す
西へ10分ほど走った茅ケ崎沖で再開、水深は90m。
周囲には10隻ほどの僚船が広い範囲に散らばって操業中。
ウイリー五目やライト五目船もいるが多くはアジ船だ。
アジも産卵期を前にして食いが立ってきたようで、目下、ウイリー五目の本命ターゲットでもある。
イワシミンチにアカタンエサの専門船に匹敵する釣果が連日上がっているそうだ。
ウイリー釣法のセオリーどおり、底から7~8m上の範囲をテンポよく探ってくるが、なかなか反応はない。
そこでビシアジ釣りの基本を取り入れ、海底から4~6mの狭い範囲を重点的に探り、またシャクリ後の静止時間を10~15秒と長く取るようにすると、順調にアタリが出始めた。
コマセシャクリというよりは通常のコマセ釣りに近いのでテンポはあまりよくないが、ハイブリッド仕掛けならではの、臨機応変な対応が功を奏した。
念のため、ウイリー五目(ウイリーシャクリとも言う)の基本動作を紹介しておく。
仕掛けが着底したら、仕掛けの長さ分底を切った所からシャクリ始める。
シャクリといっても、コマセダイやワラサのコマセ振りのような大きな動きは禁物。
斜め下に構えた竿を手元で10~15cm、竿先で70~80cmの小さな幅で振り上げる。
シャクリ上げたらピタリと止めて、お辞儀した穂先がスーッと戻るのを見ながら3~4秒待つ。
アタリがなければリールのハンドルを2分の1~1回転しながら竿先を下げ、再びシャクリ上げるの繰り返し。
これを船長から指示されたタナの範囲でリズミカルに繰り返す。
要は、縦方向にのびるコマセの煙幕の中を、ハリがスイッ、スイッと泳ぐ様子をイメージすればいい。
アタリはシャクリ後の静止時や竿先がゆっくり戻る途中に訪れることがほとんど。
コツッとかククッといった手応えを感じたら、間髪入れずにシャープな合わせを入れる。
ウイリー五目の釣り方イメージ
カイワリやハナダイは、底から15mくらいまで仕掛けを追いかけてくる。
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シャクって数秒止め。その繰り返しでウイリー仕掛けを追わせて食わせる。
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四季折々の魚たちが色いろ釣れるオモシロさ
さて、最初のうちは先バリのオキアミにポツポツと口を使う程度だったアジも、やがてコマセが効いて活性が上がってくると上のウイリーバリにも食ってくるようになり、ときには一荷で取り込む光景も見られるようになった。
また、カイワリ、アカタチ、0.7kg級のマダイも姿を見せ、さらに海面から20mほどのタナにウルメイワシが回遊して落ちていく仕掛けを止めることも。
こう書くと邪魔者のようだが、ウルメイワシのサイズは25cm級の大型で、刺身で食べたが脂も乗って実に美味。
くれぐれも邪険にしないように。
肝心のアジはしばらく入れ食いが続いた。
ムツバリではないので口切れやハリ穴が広がってのバラシも多かったものの、全員型を見ることができた。
やがて徐々にアタリが遠くなったが、お土産程度は確保したことを確認した船長は、再び移動を告げる。
「ウチはアジ船じゃないから」がその理由。
そのまま粘っていれば次の波がくることは十分予想できたが、五目の看板を掲げる以上、多彩な釣果でクーラーボックスを賑わせることが1魚種で好釣果を上げるよりも重要と考えての判断だろう。
ポイントは東へ35分ほど走った亀城根、水深は43m。
ここでは海面から25mのタナが指示された。
マダイのポイントでもあるそうだが、この日の狙いはメジナ。
タナでコマセを振り、そのままジッとアタリを待つという通常のウイリーとは異なる釣り方だった。
周囲のタイ船ではときおりタモが入り、1kg前後のメジナが取り込まれているが、こちらには一向にアタリがない。
集魚力に勝るオキアミコマセと、警戒心に強い長ハリスには太刀打ちできなかったようで、残念ながら最後の釣り場で有終の美を飾ることができぬまま13時過ぎの沖揚がりを迎える。
釣果のほうは30~40cmのアジが一人6~11尾で平均7~8尾。
ほかにマダイ、サバ、ムシガレイ、ウルメイワシ、カイワリ、小型のイサキなども交じった。
周年の釣りながら、季節に応じて魚の顔ぶれが変わっていくのがウイリー五目の大きな特徴。
現在は大アジがメインだが、今後は浅場のクロダイや深場ではイトヨリ、夏になればワカシ、イナダが狙えるようになる。
入門者からベテランまで四季折々の魚を釣って楽しみ、味わっていただきたい。
アジはピンクやグリーンのウイリーに食いついてきた。
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皆さん大アジを確保して大満足!
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旬魚の一品「アジの干物」
梅雨入り前に旬をストック
一年を通じて美味なアジだが、最も脂が乗るのはこれから夏。
以前、伊豆の有名な干物屋に聞いた話では、この時期に獲れるアジを大量にストックし、周年の材料として使っているそうだ。
刺身や塩焼きもうまいが、たくさん釣れたら干物にすることで長く楽しめ、梅雨入り前に一仕事するのもいい。
ウロコを落とし、内臓を取ったら、腹を割いて開きにする。
背開きでもいい。
洗って血合などの汚れをきれいにしたら、7%ほどの塩水に酒を加えた漬け汁に浸し、冷蔵庫で1時間ほど置く。
アジの数が少ないときは、身に塩をまぶす振り塩式でもいい。
その後、風通しのいい場所で6~8時間干して、身の表面にベッタリ感が残るくらいになったらでき上がりだ。
アジの干物を焼けばジュワジュワと脂が滴る季節。
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