一つテンヤも含めた、広い意味での「エビタイ」あるいは「マダイ乗合」は、東京湾から茨城の広い範囲で出船している。
釣り方は一つテンヤ、タイラバ、そしてタイジグと、主に3つの釣り方を同じ船で楽しむことができる。
釣り人は各自、仕掛けの重さ(テンヤやタイラバ、メタルジグの重さ)を決めて、オマツリしない範囲を目安に、好みの釣り方で釣ることができる。
つまり、どれか一つの釣り方でもいいし、あれこれ道具を取り替えながら釣ってもいい。
ここで頭に入れておいてほしいのが、「エリアによって船の流し方が異なり、仕掛けの重さや釣り方のコツが変わってくる」ということ。
船の流し方とは「エンジン流し」と「パラシュートアンカーまたはドテラ流し(横流し)」。
大まかにいえば、東京湾と南房ではエンジン流し、それ以外のエリアはパラシュートアンカーまたはドテラ流しとなる(下図)。
関東の「エビタイ」エリアと船の流し方
出典:
エビエサのマダイ船は一つテンヤを筆頭に色んな釣り方にチャレンジできる
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船と仕掛けの関係をイメージする
上の図はエンジン流しとパラシュートアンカーまたはドテラ流しの、船と仕掛けの関係をイメージしたもの。
Aは、東京湾と南房のエンジン流しで、Bは外房と茨城のパラシュートアンカーまたはドテラ流し。
誇張しているが、Aのエンジン流しで狙う東京湾と南房では、一つテンヤはテンヤ8~15号が標準。
タイラバ、タイジグは80gを軸に、キャスト用は40~60g。
小刻みに船の姿勢を修正しながら流していくので、深さに関係なく、ある程度の重さがある仕掛けで道糸を張らせておかないと、底ダチが取りにくく、オマツリしやすい。
一方、Bのパラシュートアンカーまたはドテラ流しで狙う外房と茨城エリアは、主に30m以浅を狙うこの時期、潮と風が弱ければ仕掛けは軽くてよく、テンヤ2~5号、ただし潮と風が強まると浅場でもテンヤ8~10号、15号の出番になることもある。
タイラバ、タイジグは30、45gを軸に、念のため60、80gを忍ばせておけば万全だ。
まとめると・・・
・東京湾と南房ではやや重めの仕掛け(その代わり重さの幅は少ない)
・外房と茨城では軽~重まで幅広く用意する
ということになる。
東京湾のエビタイ船で楽しめる釣法&タックル
上総湊出船で楽しむ東京湾のエビタイ
さて、ここからは今回取材で訪れた内房上総湊出船のマダイ釣りの話。
釣り場は内房、航路周辺、鴨居沖と東京湾一帯で、この時期は主に水深30mほどを狙い、秋が深まると徐々に50m、さらに深みへと落ちていく。
とはいえ、水深が少々変わっても、道糸を立てるように操船するため、テンヤやタイラバ、ジグの重さは前記のもので、大きく変わることはない。
ちなみに、操船しながら釣る船長の仕掛けは、道糸ナイロン6号で中オモリ10号、テンヤ4号。
単純計算でオモリ14号分(52.5g)の重さの仕掛けで、手バネからテンヤまでが水深と同じくなるように道糸を出してタナを取る。
イメージとしては、エビを付けたテンヤが海底スレスレを漂い、手バネをシャクるたび、エビが1mほど跳ね上がる感じ。
船長は仕掛けがフケ上がっていると判断、またはタナを探るときに、糸掛け1~2周(約0.5~1m)ほど道糸を出して修正するが、それ以外では道糸の出し入れはしない。
これでシャクっては落とし、を繰り返してマダイにエビを食わせる。
船長直伝・生きエビの付け方
(上)上が船長の手バネ、下が貸し道具用。最軽量のマダイ釣り道具(中)例年、年内は生きエビが確保できるが、シケが続いたりすると冷凍エビになることも(下)同船した今掛さんのタイラバ&タイジグのボックス。これぐらいの手軽さでいい
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重めのテンヤを使う東京湾ではテンヤ用の竿はMHを中心にHなど硬めが使いやすい
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東京湾での一つテンヤの落とし穴とコツ
手バネが道糸の長さを一定にして誘い続けてマダイを釣るのに対し、一つテンヤはどうか?
決してこうするから釣れない、こうすれば釣れる、と断言はできないが、一つテンヤは「軽いテンヤ」を使う人ほど「糸を出して底ダチを取り直す」きらいがあり、それが落とし穴になっている。
前記のとおり、東京湾と南房では船をエンジン流しで小刻みに姿勢を変えつつ流す。
すると、そのたびに道糸が斜めになる。
このとき、一つテンヤでリフト&フォールで誘っていたら、竿先を下げても海底にテンヤが着かない。
テンヤが重め(たとえば8~15号)であれば、そのまま待っていれば道糸が戻ってきて、竿を下ろすと再び海底に着くのだが、テンヤが軽いと、浮いたままになる。
ここでつい、底ダチを取ろうと道糸を出してしまう。
実際には船が動いただけで、水深は変わっていないため、船の姿勢が戻ると道糸が余分に出ていることになる。
すると・・・
①底ベタで外道にエサ(大切な生きエビ)を取られてばかりになる
②根掛かりが増える(手バネのマダイ釣りはまず根掛かりはない)
③アタっても合わせが効かない(軟らかい竿を使っていればなおさら)
ということになる。
ただ、宙層を狙うよりもアタリは多く、ベタ底でマダイが食うことも多いので「釣れないワケではない」。
ただ、もし、前記①~③の繰り返しで釣れないスパイラルに陥ってしまったら、ぜひ・・・
※テンヤを重くして、船が動いて道糸が斜めになっても底ダチを取り直さずに我慢して、道糸が戻ってきたタイミングで底ダチを取ってみてほしい。
慣れてくると、船が動いてテンヤがフワッと浮いたときにマダイがアタるパターンや、シャクって止めて、潮の抵抗を感じつつ下ろしているときにアタるパターン、または海底に置いているときにアタるパターンなど、色いろ見えてくるハズ。
そうなると、船長の手バネといい勝負ができるかもしれない。
(左上)竿先からテンヤからまではほぼ水深分。余分な糸を出さずにマダイを釣っている。一つテンヤは糸を出し過ぎていないか注意(右上)風上に船を向けてエンジンでこまめに姿勢を調整しつつ流していく(下)手バネでシャクリながら道糸が立つように操船する船長
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東京湾での一つテンヤの落とし穴とコツ
タイラバ&タイジグは誘惑との戦い?
上総湊のエビタイ船も、タイラバ、タイジグを併用するお客さんが多い。
取材に訪れた9月28日に乗船した7名のお客さんのうち5名が持参していたほどだ。
とくにタイラバはこの秋、東京湾でよく釣れている。
10月上旬の大潮回りでは、第二海堡~鴨居沖を狙う船がトップ5枚、9枚なんていう、驚くべき釣果が出ている。
間違いなくチャンスなのである。
ただ、タイラバは釣果に対してアタリが少なく、時合も短い。
取材日を例にすれば、エビエサが2投に1回は「なんかしら」の魚信があるのに対し、タイラバとジグは数十回往復させても音沙汰なし。
エビエサがアタリ10回、いや、エサ取りも多い秋は、アタリ20回でマダイ1枚だとすれば、タイラバはアタリ2回でマダイ1枚といった感じ。
これを我慢してタイラバで通すのは相当な覚悟が必要、というか、我慢する意味を見いだせない限り、無理だ。
当日も、朝方はタイラバ、タイジグを投入した人も、2~3流しアタリなく、エビエサで魚が釣れるのを目にすると、次から次に一つテンヤに転向、開始1時間を待たずに8人中7人がエビエサになった。
その中にあってタイラバとタイジグで粘っていたのが右舷2番に入った佐藤さんだったが、上げ潮が効いてバタバタッとマダイが食ってきた昼すぎ、ついにエビエサのテンヤに手を伸ばし、すぐ本命を手にして溜飲を下げた。
もし、あのとき、貴重な時合で佐藤さんがタイラバを巻き続けていればマダイが釣れたのか……そればかりは分からない。
ひとつだけ確かなことは、生きエビが用意されている「エビタイ」船で、いつアタるか分からないタイラバを巻き続けるのは相当な忍耐力が必要ということ。
ただし、マダイが徐々に深みに移動する10月中旬以降の鴨居沖はタイラバの実績が高いのも事実。そのとき、あなたなら、どうする?
この悩ましさこそ、秋のエビタイ船ならではの味わい深さだ。
タイラバ、タイジグ、一つテンヤと試した佐藤さんが本命を食わせたのは遊動式テンヤ
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手バネを片手に操船する山田孝一船長。色鮮やかな、いかにも秋らしいマダイ
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朝方、グローのテンヤでマハタ3連続だった和田さん
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ワカシ・イナダもよく交じる
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珍しや、自作テンヤで釣る藤原さんはマダイとホウボウの一荷
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隔週刊つり情報(2019年11月1日号)※無断複製・転載禁止