スピニングタックルを使いアタリを取って掛けるアオリイカ釣り。
現在、主にティップランと呼ばれる釣り方が関東に広まったのは今から11年前。
当初は船宿、釣り人とも手探り状態でのスタートだったが、徐々にその面白さが認知され、出船エリアが拡大。
今では中オモリを使った餌木シャクリ船よりもティップラン船のほうが多く、完全に市民権を得たと言っていいだろう。
そんな関東のティップランブームを牽引してきた「よく釣るうまい人」はイカ先生こと富所潤さんを筆頭に中村イカ生こと中村勇生さんが知られるが、ヤマシタスタッフの山中陽介さんもよく釣るうまい人の一人だ。
タックルは軽さ重視でセレクト
山中さんがメインで使っているのは軽さ重視で選んだタックルで、竿はラグゼのEGTRXのS510M+、リールはシマノのヴァンキッシュC3000SHG。
道糸はPE0.6号で、リーダーはフロロカーボン2.5号2m。
根掛かりした餌木をなるべく回収できて、かつギリギリ高切れも防げるバランスとのこと。
使う餌木はもちろん自社製品になるが、エギ王TRとラトル入りのエギ王TRサーチの2種だけ。
餌木のカラーに関してアドバイスしてもらうと、山中さんはケイムラボディ系、金テープ系、紫&赤テープ系の3系統に分けて考えており、このうち相模湾ではマヅメ時に強いのがケイムラ系で、日中に強いのが金テープ系。
紫&赤テープ系は水深が深かったり濁り潮のときなどシルエットをしっかり出したいときに効果的とか。
なので、この3系統の餌木が、極端な話3本あれば、おおよその状況には対応できるという。
(左)山中さんがメインに使っている竿はラグゼのEGTR。予備でダイワのエメラルダス511MLSーSMTも使う。(右)山中さんは餌木のカラーはおおよそ3系統を使い分ける。
出典:
基本の3動作を繰り返すだけ
山中さんが考えるティップランはとってもシンプル。
①着底、②シャクリ、③ステイ。
この繰り返しを一日ていねいにやり続けられればおのずと釣果は付いてくるという。
まずは着底。
餌木を船下へ投入したら道糸のマーカーを見て、糸フケを出しながら餌木を沈めていく。
道糸がたるんだら着底のサインなので見逃さないようにする。
もし、ここで着底が分からないようなら、餌木を重くしていく。
山中さんの場合は重い餌木を使うというより追加のTRシンカーで重さを調節していくが、ポイントの水深、潮の流れ、風の強さなど状況に応じて7~30号を使い分ける。
よく使うのは10~15号で、20号までは常用範囲。
30号はよほど海が悪いときなど使う条件は限られるが、ティップランは底ダチが取れないと釣りにならないので、各号数を用意しておくのは必須になるとのこと。
基本動作①底ダチ取り
(左)投入は真下でOK。(右)スプールに指を当てて道糸の出をコントロール。(下)ラインの動きで底ダチを確認。
出典:
(左)エギ王TRシンカーはヘッドにかぶせるだけで餌木の重さを調節できる優れもの。愛用者も増えている。(右)最初は何も付けないで始め、底ダチが分からなかったら少しずつ重くしていく。
出典:
着底が確認できたらシャクリへ。
ティップランでは巻きシャクリと呼ばれるように、リールのハンドルを回しながら竿先を跳ね上げるようにして餌木を動かしてアオリイカにアピールする。
このとき大切なのは、しっかりシャクって動きに緩急をつけること。
イメージとしては餌木のヘッドが上がったり下がったりを繰り返しながら上へ泳いでいく感じになる。
しっかり動かせていないと静止している状態で上へ引っ張っているのと同じことになりアピール力が弱くなる。
この巻きシャクリを通常5~6回行ったらステイ。
肝心なのはこのステイで、いくらシャクリのアピールで興味を持たせても、止めたときに餌木がピタッと安定していないとイカは抱き付いてこない。
実際には止めていても船が流れているので餌木は横方向へ引かれる形になる(山中さんは餌木を泳がせると表現する)が、このとき餌木が上下したり横振れしているとイカは触ってこない。
ブレてさえいなければ、餌木の姿勢が水平でも、斜め上でも斜め下でも、アオリイカは抱き付いてくる、すなわち餌木をいかにブレさせずに直進運動させるかが重要と山中さんは考えている。
だから、海の状況などで餌木を止めきれないようなときは、強制的にブレを止めて直進運動させられる中村イカ生さん流の聞き誘い釣りも多用する。
基本動作②巻きシャクリ、基本動作③ステイ
聞き誘い釣りは強制的に餌木を安定させられる釣り方でもある。
出典:
ティップラン上達のコツ
以上が①着底、②シャクリ、③ステイという山中さん流のティップラン基本3動作で、止めたときにアタリがなければ①から繰り返していく。
ただ、いつまでも同じ場所で探っていると根掛かりしたり、餌木が新しいポイントへ入っていかないので、1回の投入での落とし直しは竿と道糸の角度が45度くらいになって、道糸が水深の1.5倍ほど出るまでが目安。
それ以上糸をのばしてシャクっても餌木が跳ね上がらなくなり根掛かりが増えていく。
逆にいうと、それを目安に仕掛けを回収して再投入するようにすれば、それほど根掛かりすることなく釣りができるようになる。
ちなみに1回の投入でだいたい2~3回落とし直せるペースが理想で、最初から道糸が大きく流されるときはシンカーを追加して餌木を重くする。
アタリは、潮が流れて餌木が引っ張られていると竿先を押さえ込むアタリが多いが、潮が緩いと跳ね上げるアタリが出ることもある。
いずれにしろ違和感があったら即合わせ。
もし合わせても掛からなかったら、基本的には餌木を落としてシャクリ直すが、秋は2~3杯のイカが追ってきていることもあるので、チップしたらその場でステイするのも方法。
近くにいたほかのイカが乗ってくるケースも多い。
そのほか釣れないときの対処法を聞いてみると、
①まめに仕掛けを入れ直す
ティップランの場合は船が流れてポイントがどんどん移動しているので、餌木をまめに船下へ落とし直す(新しいポイントへ入れていく)ことが大切。とくに胴の間ではそれが攻略ポイントにもなる。
②誘いを変えてみる
釣れないときはシャクリの回数を増やしたり減らしたりして狙うレンジ、タナを変えてみる。前述の聞き誘い釣りを織り交ぜてみるのも有効とのこと。
それでも乗らない、アタリがないようなら餌木の色を替えていく。
最後にティップラン上達のコツを聞いてみると、一つの餌木を使い続けて、その餌木の特性に慣れることが大切と山中さん。
餌木は製品によりシャクった感触や動き方も変わるので、同じ餌木を使い続けて安定のさせ方やシャクリの強さを把握すると、海中で餌木の動きをイメージでき、より釣りがしやすくなるという。
山中さんのティップランは、取り立てて難しいテクニックを駆使したり、餌木の種類や色にこだわったりするものではない。
単純に着底、シャクリ、ステイを一日ていねいに繰り返す。
だれでも簡単にできることではあるが、それを持続するのは難しい。
そこに山中陽介流ティップランの答えがあるのだろう。
アタリを待つときの竿の構え方は人それぞれだが、山中さんは竿先が目線の先にくるよう水平よりやや上で待つ。この位置だと竿先のブレが見やすいという。
出典:
海中での餌木の写真。動きをイメージできるかどうかで釣果も変わってくる。
出典:
山中陽介のティップラン基本手順
開幕直後のティップランを満喫。10~11月は入門に最適な季節
相模湾の秋の人気ターゲット、ティップランエギングのアオリイカが開幕。
台風一過の10月3日、開幕2日目に釣行した模様をお伝えしよう。
お世話になったのは相模湾のティップラン創成期から出船している三浦半島佐島の鶴丸。
前日の釣果は6~21杯と好スタートだったので期待は高まる。
初日の状況を岩崎船長に聞くと、終始ポツポツの拾い釣りだったものの空振りの流しはほとんどなく、どのポイントでも型は見られ、広範囲にイカが点在している感じだったとのこと。
サイズアップする今後が楽しみ
朝6時ごろに出船。
天気予報は晴れのち曇り、北風がそよそよ程度とティップランエギングには好条件。
港を出てすぐ、やや浅めの水深15m前後からスタートとなる。
餌木は水中姿勢の安定感が抜群なエギ王TRを使用(潮具合や水深を見てエギ王TRシンカー7~15gを装着)。
カラーは日の出直後で太陽光が海中に差し込む時間帯なので、アピール力の強い紫外線発光するケイムラボディをセレクト。
開始直後は潮も適度に流れており、アオリイカの活性もよく、海底から4~5m辺りまでシャクリ上げてステイさせているとティップを揺らすアタリが連発。
船中でも続々とヒットが続く。
怒涛の連発こそないものの、各ポイントを短時間で転々とし、船中釣果は増えていく。
サイズはこの時期のアベレージ200~300g級。
中には100g前後の小型も交じるが、このサイズは今後のためにリリース。
朝の好時合に私は早ばやと6杯をキャッチして好調な滑り出し。
しかし9時ごろになると潮の流れが止まり、イカの活性は一気に落ち、アタリのない流しが目立つように。
ここまでは着底→シャクリ→止めというティップランエギングの基本に忠実な誘いをしていたが、潮が流れていないと止めたときに餌木が安定しにくいため、シャクリを入れた後、聞き誘いで強制的に安定して直進するよう餌木を泳がせる釣り方に変更。
聞き誘いは竿先を2mほど上げていくので通常よりもシャクリ回数を2~3回少なめにし、テンションを一定に保ちながら竿先を目一杯上げていく。
潮の流れが弱くなってしまった後半はこの聞き誘いが効果を発揮、渋いなりにもポツポツと追加、終了間際に450gほどのこの日一番のサイズも含め11杯を釣ることができた。
開幕2日目ということもあり、前日には劣るものの船中30杯ほどとまずまずの釣果。
昨年に比べて水温がやや高いせいかアオリイカがまだ広範囲に散らばっているようで船中で連発する流しは少なかったが、これから水温が下がっていくにつれて群れが深みに固まれば、ティップランエギングらしい船中連発ヒットも期待できる。
今回の釣行時は三浦半島周辺は佐島エリアだけの解禁だったが、10月11日には長井エリア、10月20日には葉山エリアも開幕する予定。
また300g前後だったアオリイカも成長期のこの時期は一潮ごとに大きくなり、釣れる数は少しずつ減っていくものの10月末ごろには大きなもので800g前後、11月に入るころには1kgを超えるサイズも釣れるようになる。
10月、11月はアオリイカも多くアタリも多いのでティップランエギング入門には最適なシーズン。
これから始めようと思っている方はぜひともこの時期にチャレンジしていただきたい。
後半は聞き誘い釣りが効いた。
出典:
今シーズンのティップランエギングも大いに盛り上がりそうだ。
出典:
シーズン初期は入門に最適。
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