秋の訪れを感じる魚の中で、アマダイ(標準和名アカアマダイ)の容姿は実に華やか。
駆け出しの記者のころは「色合いが派手な魚は味が今イチ」という先入観を持っていたけれど、アマダイに出会って考えが変わった。
品のよい甘味があり、昆布締め、焼き物、揚げ物、蒸し物もいける。
一夜干しも実にうまい。
25年以上前、このアマダイを初めて釣り上げた船宿が今回取材した相模湾腰越港の多希志丸だった。
82歳となった鈴木猛船長は若いころアマダイの延縄漁を営んだ後、遊漁の専門乗合を始めた大ベテラン。
当然ポイントを熟知し、相模湾でシラカワと呼ぶ特別なアマダイの存在も教えてもらった。
関東~東海エリアでシロアマダイが増加中
シラカワとは標準和名シロアマダイのことで「アマダイの中で一番値が張る種類。ただし、めったに釣れない」と船長。
これを契機にアマダイに興味を持ち、シロアマダイ、アカアマダイ、キアマダイの3種の存在を知る。
シロアマダイ
アマダイ類の中で最も大型になり、最大で70cmに達する。
砂泥地に住み、主な釣獲水深は40~50mとアマダイ類の中で最も浅場に生息。
ただし採捕記録は水深20~100mと幅広く、アカアマダイのポイントでもたまに交じる。
希少性が高く、市場ではアカアマダイの1.5~2倍の単価で取引されることもあるとか。
その身は脂質が多く、うま味も強い。
アカアマダイ
遊漁船でよく釣れるアマダイ類の主役で、最大60cm近くまで成長。
主な釣獲水深は70~80m前後だが、採捕記録は水深30~150mに渡る。
砂泥底に巣穴を掘って周囲4~5m圏内に縄張りを作るといわれ、それでいて同じエリアでまとまって釣れることから、巣穴が掘りやすくエサも豊富な場所に集団で生活しているようだ。
つまり船内で1尾釣れたら、すぐ近くに別のアカアマダイがいる確率が高いチャンスタイムになる。
キアマダイ
3種のうち最も深場に生息する。
詳しい生態は不明だが、水深90~120mのアカアマダイ釣りやオニカサゴ(イズカサゴ)釣りで時どき交じり、採捕記録は水深200m付近まであるらしい。
身に水分を多く含むものの、干物にするとうま味が凝縮して美味との意見も。
最大40cm近くまで成長する。
この中で一度は釣ってみたい種は間違いなくシロアマダイだろう。
なかなかお目にかかれない希少種ながら、ちょっとした朗報もある。
ここ2~3年、相模湾、内房、駿河湾の各地で「シロアマダイが釣れた」という情報が増えているのだ。
正確な統計はないので個人的な表現で例えてみると、アマダイ100尾を釣って1尾交じっていたものが、100尾中3尾に増えた感覚。
幻魚クラスの釣獲率は相変わらずとはいえ、アカアマダイを釣りながらシロアマダイに出会えるチャンスが3倍に増えた(あくまでも想像)と考えればテンションは上がる。
(上)口周りが頑強そうで、ややいかつい風貌のシロアマダイ。(下)キアマダイは眼から口に伸びる白い線が特徴。
出典:
仕掛けの基本はアカもシロも同じ
タックルと仕掛け、そして釣り方はどの種のアマダイ狙いも変わりはない。
すなわち、おなじみのアカアマダイ用でOKだ。
タックル
主流の竿は全長2m前後の7:3調子、オモリ負荷30~80号クラスのゲームロッド。
アタリが取りやすく、大型アマダイの強い引きをかわす粘り腰も備える。
リールはPE2~3号を巻いた小型電動が一般的で、前記のゲームロッドにセットすると「ノーマルタックル」のくくりになる。
オモリは船宿の指定に合わせるが、おおむね60~80号。
同様のゲームロッドにPE0.8号前後を巻いた小型両軸リールや超小型電動リールをセットすると「ライトタックル」のくくりとなって、40~60号のオモリで軽快に誘って楽しめる。
多希志丸もそうだったが「オモリを調整してオマツリさえ避けてくれれば、ライトタックルも可」とする船宿が現況では大半。
ただし極細の道糸は根掛かりやオマツリで高切れするリスクをはらんでいるので、経験を積んだ釣り人向けといえるだろう。
(左)電動リールはダイワ200~300番、シマノ200~1000番あたり。道糸はPE2号前後を200m以上。(右)とことんライトに楽しむならPE0.8号を巻いた小型両軸リール。
出典:
仕掛け
ハリス3号、全長2mの2本バリ仕掛けを片テンビンにセット。
枝スの接続部は親子サルカンや回転ビーズを介し、巻き上げ時に生じる糸ヨレを防ぐ。
テンビンは腕長30cm前後のL字型が手前マツリしにくく、潮の抵抗を受けにくいライト用などの細軸タイプがおすすめだ。
エサはオキアミが万能で、アマダイの種類を問わず食ってくる。
ハリはケン付きのチヌ(オキアミチヌ)3~4号や、長軸のケン付き丸カイズ13~14号。
オキアミエサを姿勢よく保持し、小づきなどの誘いによるエサずれを防いでくれる。
そのほか、2B前後のガン玉も用意しておくといい。
今年は時間帯や釣り場によって非常に潮流が速く、道糸が斜めに入り、海底に下ろした仕掛けも吹き上げられてしまうことがある。
そんな場面に遭遇してアタリが遠くなったら、下バリから20~30cm離した位置にガン玉を1~2個打ち、付けエサを底近くへ強制的に沈めてみよう。
(左上)シンプルな2本バリの片テンビン仕掛け。エサのオキアミは軸に沿って真っすぐ付ける。(右)オモリは60号と80号を使い分ける。PE0.8号のライトタックルなら40~60号で楽しんでもいい。(下)ハリはオキアミエサの保持力が高いケン付きがおすすめ。丸カイズ13~14号、オキアミチヌ3~4号などが定番。
出典:
アマダイタックル&仕掛け一例
アマダイの摂餌層に付けエサを入れるコツ
アマダイ類は底近くが生活圏で、主な摂餌層は底ベタから1m上あたりまで。
その範囲に付けエサを入れ、上下に誘ってアピールしていく上で頭に入れておきたいのは、使っている仕掛けの寸法だ。
具体的には、
A:オモリを海底から何センチ上げたら上バリが底を切るのか(=モトス+枝スの長さ分)。
B:そこからさらに何cm上げると、下バリが底を切るのか(=仕掛けの全長ーA)。
この2点を押さえておく。
そうすると海底の付けエサの位置がイメージしやすくなり、確信を持って摂餌層を攻めることができる。
下図はその具体例。
オモリ着底後、まずは泥底を数回ドスンドスンと小づいて振動と砂煙でアマダイの気を引く。
そして上バリが底を切るくらいに仕掛けを持ち上げてしばらくアタリを待つ。
テンビンの先端から上バリまでの長さ、つまり前記Aの長さが頭に入っていれば迷うことはない。
続いて、下バリが底を切る位置(前記B)まで仕掛けを持ち上げてアタリを待つ。
フワフワと上下に揺すってエサを躍らせてみてもいい。
こうして竿先を上下すれば2つのエサバリは底に転がっては離れ、摂餌層を上昇・下降し、ときにフワフワと動き回ってアマダイを誘う。
底潮の流れでハリスは少し斜めに漂うだろうが、だいたいイメージした所に付けエサを持っていけるはずだ。
ただし底潮が極端に速く、仕掛けが真横へ吹き上がるときは例外。
底を小づいてからオモリを30~50cm持ち上げ、そのまま低めのタナ取りでジッと待ったほうがアタリは多い。
逆に潮の動きが鈍いときは積極的に誘いを入れて、食い渋るアマダイを刺激。
例えば図の右下に描いたようにモトスをカットしてショート仕掛けにすると、小づきや揺さぶりによる付けエサの動き方が機敏になり、アマダイが飛び付いてくることもある。
いずれのケースでも、ククッとアタリを感じたら即合わせ。
アマダイはエサを吸い込んで捕食し向こう合わせで掛かることも多い魚だが、喉奥まで飲まれるとハリ外しが面倒になり、ハリスも傷む。
その防止策として即合わせは有効で、タイミングが合えばほぼ口元にハリ掛かりして上がってくる。
(左)①ゆっくりと竿先を上げて、上バリ、下バリの順で底を切っていく。(右)②ゆっくりと着底させ、数回小づきを入れてから再び誘い上げる。
出典:
シロアマダイにはタイラバが効くのか?
今回の取材は腰越~江ノ島沖の水深70m付近で、25~40cmのアカアマダイが4~10尾と好調に釣れた。
ほかオニカサゴやアラの若魚、3kgのワラサも交じり、水深90m弱のポイントでは30cmのキアマダイも1尾浮上。
これにまさかのシロアマダイが加われば、3種のアマダイが登場するパーフェクトな取材で完結・・・そんな野望を船長に話すと、「全員アカアマダイは釣れたことだし、残りの1時間はシラカワ(シロアマダイ)や大きいイトヨリがいる場所を流してみっか」と水深50~55mの浅場へ走ってくれた。
エサ釣りはほかの皆さんに任せて、ここで私は100gのタイラバを下ろしてみる。
というのも今夏8月、駿河湾沼津のボート釣りでシロアマダイを釣り上げていて、さらには、やはりタイラバで釣れたという三浦半島長井沖のシロアマダイ情報も耳にしたからである。
あくまでもタイラバで偶然交じってきただけの話ではあるが、ひょっとするとシロアマダイを狙う優れた方法なのか?と試してみたわけで、船長も「好きにやんな、色いろ試すのはいいこと」と了承してくれた。
底から3mの範囲を巻いては落として30分。
アタリはまったくない。
さらにその後はテンビン仕掛けにタイラバ用のフック&ネクタイをセットして、オキアミエサまで装着する変則ワザも試したものの、周りで釣れているホウボウすらも食わなかった。
そして結局、シロアマダイは幻のまま沖揚がり。
各地で捕獲情報は増えているとはいえ、一発勝負で釣れるほど甘くはなかった。
ここ数年の傾向を見ると、相模湾のアマダイ乗合でシロアマダイが交じるベストシーズンは10~12月。
運よく釣れるのを期待したい。
適度に潮が効いていた朝の2時間、水深70m台で立て続けにアマダイが浮上した。
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サイズは25~40cmまで様ざま。
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(左)タイラバ用のフックとネクタイを、全長1mのハリスに結んでテンビンにセット。オキアミも付けてみた。(右)シロアマダイの実績がある水深50~55mのカケ上がりを流してもらった。
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取材した9月中旬は4~10尾と好況。秋から春先までが主な釣期だ。
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