中深場のムツやキンメを狙える釣り場は各地にあるが、今回はイカ用やビシアジタックルでも楽しめる相模湾のライト系の中深場五目を紹介しよう。
相模湾のライト系の中深場五目乗合の主な基準は次の2つ。
①使用オモリ150号。
②道糸PE4~5号を400~500m巻いた電動リールを用いる。
つまり、ビシアジ用やイカタックルで中深場にチャレンジできるのだ。
主な釣り場は相模湾内の水深200~350m付近で、ムツ主体にキンメやアカムツ、シロムツ、アラ、メダイ、カサゴ類など多様な魚種が釣れる。
当地の中深場乗合がスタートするのは例年1月ごろで、長い年は7月まで出船する船宿もある。
中深場五目初挑戦なら3本バリがおすすめ
ここからは、取材で釣行した秋田屋の斉藤太俊船長のアドバイスを踏まえて、相模湾の中深場五目を紹介していこう。
下図のタックル&仕掛けは相模湾の中深場五目の一例。
使用オモリが150号だから、竿はそれを背負える中深場専用竿を始め、ビシアジ竿、イカ竿、青物竿、各種汎用竿など様ざまな竿が使える。
前述したとおり、電動リールはPE4~5号が400~500m巻けるサイズを用いる。シマノなら3000番、ダイワなら500番が該当する。
またPE3号を巻いておけばもう一回り小さいリールでも対応できるが、「PE3号は潮切れがいいので速潮時に効果的ですが、オマツリしたとき傷が付くと高切れしやすいんですよ。この釣りはオマツリがつきものなので、絡んだときのほどきやすさや耐久性を考慮して、うちでは4~5号をおすすめしています」と船長。
仕掛けは胴つき式で、ハリ数は3~8本くらい。
釣具店で様ざまな種類の市販仕掛けが販売されており、初めてならそれらを利用するのもいいが、せっかくなら自分で作ってみたいという人のために仕掛けの概要を説明しておこう。
仕掛けの仕様は図のとおり。
ハリは、鋭い歯を持つムツに飲み込まれても口元に掛かりやすいムツバリの16~18号を使用する。
仕掛けの寸法は枝スが7~8号を50~60cm、幹糸は10~12号を130~140cm、捨て糸は5~6号を100~150cmほど。
ハリ数は5~8本が主流だが、「初めての人は3本バリがおすすめです。まずは3本で釣ってみて、仕掛けの扱いに慣れてきたら5~8本バリにチャレンジしてください」と船長。
仕掛け作りのラインの結びは様ざまだが、下図の「外掛け結び」と「深海結び」は強度に優れており結び方も比較的簡単。
この2つの結びで大半の仕掛けが作れるので覚えておこう。
胴つき仕掛けを作るときは、最初に必要な数の枝ス、幹糸、捨て糸を切っておくと作業がスムーズになる。
続いて、すべての枝スにハリを結び、幹糸と捨て糸をサルカン類につなぐ。
最後に幹糸の親子サルカンに、ハリを結んだ枝スをつないででき上がり。
完成した仕掛けの収納は、ハシゴタイプや円板タイプなど市販の仕掛け巻きが便利だ。
竿は全長2m前後の7:3~8:2調子。「手持ちで積極的に誘うなら硬め、置き竿を視野に入れるなら軟らかめのほうがいい」とは斉藤船長のアドバイス。
出典:
(左)秋田屋の船宿仕掛けは5本バリと3本バリの2種。(右)仕掛け上部に付けるヨリ取りリングは、イカ用など小型タイプがおすすめ。
出典:
(左)ムツは鋭い歯を持つ。ハリを外すときはペンチなどを使いたい。(右上)枝スを結んだ替えバリを持参、枝スがヨレたら交換しよう。(右下)仕掛け巻きは、繰り返し使えるプラスチック製がおすすめ。
出典:
中深場の仕掛け作りにおすすめの結び
ハリの結び[外掛け結び]
①ハリの軸にハリスを添わせて持つ。
②端糸をハリの軸の下に折り返してループを作る。
③軸とループを押さえ、端糸で本線と軸を巻き止める。
④5回くらい巻き止める。
⑤巻き止めた部分をしっかり押さえ、端糸をループに通す。
⑥本線を引きループを絞り、端糸、本線の順でしっかり引いて結びを締める。最後に余分な端糸をカットして完成。
サルカン類の結び[深海結び]
①ラインをサルカンに通してループを作り、端糸を1~2cm出してラインの重なる部分を押さえる。
②端糸を折り返し、ループに下から通す。
③ループを1回ひねる。
④サルカン側のループの下から端糸を通す。
⑤端糸をつまみ、本線を引いて結びを締める。
⑥余分な端糸をカットして完成。
25cm~35cm級のムツ主体にキンメ、メダイも登場!
秋田屋に釣行したのは1月下旬の平日、品川区の軽部さんと仲乗りの高野さんの2名とともに6時半に港を離れた。
20分ほど走って江ノ島沖の水深170cm前後に到着し、底から1mの指示ダナで、2人はともに5本バリ仕掛けにサバの切り身を付けてスタート。
開始間もなく軽部さんと高野さんにアタリがきて30cmほどのサバが上がる。
いきなり本命とはいかなかったものの、新鮮なサバの切り身は最高の特エサ。
高野さんは再投入したのち置き竿にしてサバをさばき使っていた。
次投は軽部さんが25cm級のムツを取り込み、高野さんはムツとアジの一荷。
しかしその後はアタリが遠のき移動となった。
2流し目は水深250m。
着底間もなく2人の竿に明確なアタリが出て、30~35cm級のムツがダブル、トリプルでバタバタと取り込まれる。
船長によれば、数日前に好調に釣れたポイントとのことで、この日も仕掛けを下ろせばアタリがくる展開。
しかし軽部さんは、アタリに合わせても掛からないことが度たびあり、仕掛けを上げるとエサが取られていることが多いと言う。
食いが浅いのだろうか?
そこで、アタリに合わせて掛からないときの対処法を船長に聞くと、「この釣りは色んな魚が釣れますが、基本はアタリに即合わせがいいようです。それで掛からないときは、食いが浅いか魚が小さいか・・・。
いずれにせよ、今のところ釣果のほとんどがムツなので、エサ(ハリ)を飲まれてノド奥に掛かると、巻き上げ中に鋭い歯に当たってハリス切れを起こします。
掛け損ねても気にしないで、アタリがきたら合わせてください」とアドバイスしてくれた。
食いが一段落すると船長は移動してくれて、その後は水深250~280m前後を流してムツ主体に、キンメやメダイ、シロムツなどが飽きない程度に釣れ上がる。
13時に沖揚がり。
ムツは23~38cmが16~20尾。
ほかキンメ、シロムツ、メダイ、ユメカサゴ、アジ、サバなど多彩な魚が釣れて中深場五目らしい賑やかな釣果を得た。
エサはサバの切り身。先端中央へチョン掛けする。
出典:
(左)投入はマグネット板の横に立ち、オモリを軽く投げればOK。(右)サミングはこのようにリールのスプールを軽く親指で押さえる。
出典:
何かしらの変化を感じたら、しっかり竿を立てて合わせよう。
出典:
まめな底ダチの取り直しとエサを踊らせる誘いが大事
中深場五目の釣り方は下図のとおり。
投入はエサの付いたハリを船ベリに並べ、オモリを放り投げるスタイル。
オモリを投げて、仕掛けが海へ下りてからリールのクラッチを切る。
投入時の注意点は、仕掛けが絡まっていないかよく確認すること。
海水循環用のホースなどに引っ掛かったまま投入すると、捨て糸が切れてオモリだけが飛んでいくことがある。
またマグネット板があればハリを付けておけるので、移動や強風時に手前マツリが防げる。
秋田屋では無料で貸してくれるので活用したい。
深場の釣りで仕掛けの着底を見逃さないコツは、投入前にアナウンスされる水深を覚えておいて、リールのカウンターが水深まで残り20mくらいになったら、リールのスプールを親指で軽く押さえて(サミング)下ろす方法。
トンと竿先に変化が出たり、勢いよく出ていた道糸がたるんだりしたらオモリが底に着いたサインだ。
着底後、しっかり糸フケを取り、1mくらい巻き上げて数秒待つ。
アタリがなければ竿一杯にシャクリ、竿先をストンと下げ、エサを踊らせて誘う。
この釣りのメインになるムツは積極的な誘いが効果的だ。
釣り場は平たんなポイントもあれば、斜面のポイントを流していくこともあり、少なからず水深が変化する。
数回誘いを繰り返したら底ダチを取り直し、底から1m付近に仕掛けをキープしよう。
アタリはコツンと明確に出ることもあれば、モターッと竿先が重くなるだけの場合もあるのだが、いずれにせよ前述したとおり「アタリ=即合わせ」が基本だ。
数をのばすなら、1尾目が掛かってもすぐ巻き上げないこと。
しばらくそのタナで待つか、1mずつゆっくり巻いてはしばらく止めて追い食いを狙う。
なお底付近でアタリが遠いときは、5mほど巻き上げ、1m刻みで落としては数秒止めて待つ、といった誘いを着底まで繰り返してタナを探ってみよう。
巻き上げは電動の中速くらいで、ドラグ調節はきつめを推奨。
船長によれば、ドラグが緩いとウネリなどで船が持ち上がったときにズルッと滑り、そのとき枝スがたるむのかハリが外れてバレやすいとのこと。
仕掛けが上がってきたら、上バリから順に枝スのヨリを取りながら、ハリをマグネット板(船ベリ)に並べて回収していく。
魚が掛かっているハリは足元によけておき、オモリまで回収してから魚を外そう。
「うちのライト中深場五目は、釣り座の間隔に余裕を持たせて10名限定でお願いしています。週末は満船になることもあり予約が取れなかったお客さんには申し訳ないと思っています。しかし最近平日はガラガラです。取材日はお客さんにキャンセルがあって1名でしたが、通常は2名から出船しています。ぜひ遊びにきてください」とは斉藤船長の談。
相模湾の中深場五目は春の濁り潮が差し込む2~4月ごろがトップシーズン。
ぜひチャレンジしていただきたい。
中深場五目の釣り方イメージ
枝スがヨレて幹糸に絡んだときは、片方の手でサルカンのやや上を持ち、もう片方の手でハリを持って引っ張ると簡単にヨレが取れる。
出典:
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