北海道では船釣りによるサケ=アキアジ釣りが毎年9月の1カ月間限定で楽しむことができる。
昨今はサケの減少が叫ばれているが、期間限定、許可制、一人5本がリミットというルールを守ることによって、自然の恵みを享受できる。
今シーズンはすでに終了。
来年もすでに週末は予約が埋まってきているというので、興味がある人は早めの釣行計画を!
日本人にとって古くからなじみの深い魚であるサケ。
サケは産卵のため約4年で母川回帰するが、毎年決まった時期に接岸するため、いにしえから冬の厳しい環境の中での貴重なタンパク源としてこの地に住む住民の生活を支えてきた。
北海道民は「アキアジ」と呼び、特別の思いを持っているという。
資源保護のため河川での釣りや捕獲は原則禁止されているが、北海道では船釣りで楽しめる場所がある。
道東オホーツクエリアの網走~斜里沖では9月の1カ月間限定ながら、釣り船で比較的簡単に狙えるとあって道内では昔から人気が高く、近年では本州からの釣り人も多く訪れている。
道内では堤防やサーフからサケを狙える場所もあるが、遡上を間近に控えた個体が多く、やはり沖で釣れるもののほうが食味がよいという。
釣れるサケは4kg前後主体で、銀ピカの極上ものが多い。
メスはしっかりとイクラ(筋子)を抱えており、極上イクラ目当てで通う人も多いという。
このため、9月の1カ月間はファンが殺到し、週末ともなるとすでに1年前から予約が埋まってしまうとも珍しくない。
道内や地元の釣り人にとってはメジャーな釣りも、その内容についてあまり詳しく発信されることが少ない。
このため「いったいどんな釣りなんだろう?」、「行ってみたいんだけどよく分からない」という人も多いことだろう。
まずは、網走~斜里沖のサケ釣りとはどんなシステムで、どんな釣りなのかを紹介しよう。
釣期は9月の1カ月間のみで、今年はすでに終了したが、来年以降の釣行計画の参考にしていただきたい。
▲斜里郡出身で子どものころからサケ釣りを楽しんでいた千葉百々絵さん
出典:
▲大型のオスを釣ったのは、千歳市出身の富士村彩花さ ん
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リミットは一人5本まで
◎ライセンス制
厳密にいうと、このエリアでは遊漁によるサケ釣りは網走海区漁業調整委員会により禁止されている。
ただし、同委員会が発行する「秋さけ船釣りライセンス」を取得した船のみ9月1~30日の間に、規定のエリアでの遊漁が許可される。
この許可船では一人あたり釣って持ち帰れるリミットは一日5本までと規定されている。
乗船代はおおむね1万1000円前後。
出船は5時ごろ、沖揚がりは正午までだが、早揚がりも多いそう。
ライセンス、その他の規定については変更の可能性もあるので来シーズン開幕前に確認しておこう。
斜里町のウトロ港出船の場合は斜里沖、網走~常呂港出船の場合は網走沖で狙う。
今回、取材した網走港の竜神丸の山内克巳船長によると、すでに来年の予約を受け付けているそうなので、興味がある人は早めに計画を立てることをおすすめする。
羽田空港からなら女満別空港行きがJAL、ANAともに就航しているので利用したい。
女満別空港からはレンタカーを利用し、網走市内のビジネスホテルなどに宿泊する。
東京からのお客さんは釣行前日に現地入りして2~3泊する人が多いそう。
釣ったサケは、ビニール袋に入れてからサケ箱に入れて冷凍便で送る、発泡箱を購入して氷詰めにして送る、クーラーボックスに入れて飛行機で持ち帰る、などの方法を取る。
60Lクラスのクーラーボックスは飛行機に持ち込めるが、重量などについては事前に利用する航空会社で調べておこう。
ちなみに市内にある水産加工会社から送ると、ダンボール箱に2尾入れられて冷凍便で送料(東京)は約3000円。
次は釣りについて解説しよう。
▲ライセンスを取った船のみ釣りが可能
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オモリ250号の胴つき仕掛け
網走沖のポイントまでは航程40~50分ほどで到着する。
水深70~120mほどの海底は主に砂地で、およそサケの通り道が決まっているのだという。
この海域で反応を見付けると投入の合図が出る。
仕掛けは30年以上前からほとんど変わっていないようで、胴つき仕掛けで狙う。
竿は250号のオモリを背負える全長2m前後、7:3調子の中深場竿などが扱いやすい。
オモリは250号だが、誘って釣るのであまり長い竿は向かない。
リールは中小型電動。ダイワなら400~500番、シマノなら2000~3000番程度を選ぶ。
道糸はPE5~6号が安心。
オモリが重いことやサケが掛かるとオマツリも多く、あまり細い道糸だと高切れのリスクが増える。
基本は魚が掛かったら全速で巻き上げるので丈夫さを優先したい。
仕掛けは胴つき2~3本バリ。
乗船した竜神丸では2本バリをすすめている。
幹糸22号、枝ス20号、ハリはソイバリの20号などを使用する。
仕掛けは船によっても微妙に異なるが、キラキラのシールを発泡に巻きタコベイトを装着したものが定番のようだ。
ハリス20号といえどサケの強烈な引きで傷むし、フグに仕掛けをかみ切られることもあるのでその都度、枝スを交換してやる。
誘って食わせる
エサはサンマのブツ切りが定番エサで、集魚効果のあるタレに漬け込んだものを使用する。
各船で秘伝のレシピがあるようで、魚粉やエビ、ニンニクなどで強烈な匂いを付けたものがいいそうだ。
エサ付けはサンマの背中側1cmほどの場所にハリを入れる。
腹側だとエサが外れやすく回転してしまうので注意を。
船長から投入の合図があったら仕掛けを入れてから最後にオモリを落とす。
軽くサミングしながら着底させる。
船長からとくに指示がなければベタ底狙い。
オモリが着底したら、30cmほど仕掛けを持ち上げてストンと落とす。
このときにエサが落ちていく動きが誘いになる。
ストンと落とし込んだらゼロテンション気味にして待ち、アタリがなければまめに30cm上げてはストンと落とし込むのを繰り返す。
「反応が入ってきたよ」などのアナウンスがあったらチャンス到来。
アタリはガツガツと引っ張られるような前触れのあと、ギューンと入り込む。
このときにしっかりと竿を持ち上げて合わせを入れる。
ハリ掛かりしたら急激な引き込みを見せるが、竿を起こした状態でハイスピードで巻き上げる。
重量感で竿が起こせない場合は、いったんスピードを緩めて巻き上げ体勢を整えてから再びガンガン巻き上げる。
巻き上げ途中にフッと軽くなってしまうことがあるが、これはバレたのではなく食い上げのことが多い。
そのままにしておくとオマツリしてバラすので、食い上げた分は一気に電動で巻き取りテンションがかかる状態にしてやる。
そして最後は周りの人と協力しながらタモ入れする。
基本は底狙いだが、反応が浮くこともある。
そんなときは船長からアナウンスがあるので、指示にしたがってタナを上げて誘ってやる。
アタリがあるのになかなか食い込まなかったりコツコツやっているだけのときはカレイやフグのことが多いので、アタリがなくなったら一度回収してエサをチェックする。
釣れるサケは銀ピカのものから、オス特有の鼻曲がりのものなど様ざま。
釣って楽しいのは大型だが、地元の人によると、小型の丸まるっとした個体のほうが「当たり」だ。
こちらはまだ卵巣などが成熟しておらず、身がうまいのだという。
サケは通常、4年で母川回帰すると言われている。
半年ほど早く春ごろに帰ってきてしまったのが「トキシラズ」、未成熟のまま秋に帰ってきた若魚を「鮭児」と呼ぶ。
鮭児は1万分の1の確率とも言われる幻のサケだ。
鮭児ではないにせよ、小型で身に脂肪分を蓄えた個体も多いそう。
オスメスの違いは鼻の曲がり具合、成長した尾ビレからある程度判断できるようだが、パッと見だけでは確実ではないよう。
水産会社の従業員の人に聞いたところ、一番確実に判断するのは、肛門から指を突っ込んで筋子が指に触れればメスだという。
釣ったサケはすぐに絞めて血抜きし、クーラーボックスへ。
氷は各自持参という場合が多いそうなので、事前にコンビニでブロック氷を購入していこう。
筆者は2本持ち帰ったが、オスメス1本ずつだと思っていたら両方ともメスだった。
筋子はイクラのしょう油漬けに、身はちゃんちゃん焼き、ホイル焼き、塩麹漬け、塩ザケなどにして、秋の味覚を大いに堪能した。
今回は取材での釣行だったが、来年はプライベートでの参戦を考えている。
興味のある人は、くれぐれも早めの計画を!
▲引きは荒あらしく強烈だが、食わせるには誘いが必要
出典:
INFORMATION
北海道・網走港 竜神丸
090・1523・9898
隔週刊つり情報(2023年11月1号)※無断複製・転載禁止