分かっているようで分かっていない?テンヤとは何か
沖釣りを始めると、様ざまな沖釣り専門用語に出会うが、その中でも「テンヤ」は普段の生活では聞いたことがない独特の響きを持っている。 実は漁具としての「テンヤ」は広辞苑には掲載され…
隔週刊つり情報編集部PR
6月にスタートした東京湾奥のマダコ。
異常発生とも言える今年は、300~500g級の小型が主体ながら次から次へと湧いてくるように夏の間釣れ続けた。
例年ならお盆を過ぎたころから乗りが落ち着き一時的にシーズンを終えるのだが、今年は台風15号が関東を直撃した9月中旬ごろまではトップでツ抜け当たり前と順調に釣れ続け、9月一杯出船した船が多かった。
10月になると一時休船する船宿が増え、出船していた船宿も台風の影響でトップで5~6杯と低迷することもあれば規定の20杯に到達する日もありと釣果は乱高下したが、11月になって再びトップ15杯前後と安定模様になってきている。
今号発売の11月中旬以降は、年末ダコで狙いで出船を再開する船宿も増えてくるだろう。
そんな中で今回取材した横浜本牧の長崎屋は、毎年シーズンを通して休まずマダコ乗合を出し続ける船宿の一軒。
果たして夏から秋~冬シーズンへ湾奥ダコはどう変わったのか?様子を見るにはうってつけと11月1日に出かけてきた。
東京湾のマダコ釣りがこの夏、大きく変わったのは一気に餌木タコブームが到来したこと。
長崎屋でも当初は手釣りと竿釣りでトラブルがないよう席を分けるなどしていたが、今では手釣り竿釣り自由に楽しんでいいとしている。
また、前回取材したときにはなかった餌木を受付で販売するなど、いち早く餌木タコファンに対応していることがうかがい知れた。
とはいえ、夏には根掛かりのない平場にいたマダコも、これからの時期はガラ場といわれる引っ掛かりやすい所に潜むことが多くなる。
とくに今年は相次いだ台風の影響で海底の泥が流され、それまで平場と思っていたポイントでも岩が露出して引っ掛かることが多くなっているという。
だからといって餌木がダメとか釣れないということはないのだが、どちらかといえば餌木よりも根掛かりしにくいテンヤのほうがこの時期は釣りやすくなる。
確かに餌木を使った竿釣りは面白く自分も大好きだが、手釣りは手釣りで独特の魅力と合理性がある。
せっかくだから、竿釣りからタコ釣りを始めた人も、この機会にテンヤの手釣りを体験してみてはどうだろう。
ということで、まずは道具の説明から。
東京湾のマダコ船は、餌木専門船以外は必ず手釣り糸を無料で貸し出している。
通い慣れた常連さんはマイ手釣り糸を持参する人も多いが、普通は借りる人が多い。
ちなみに新品の手釣り糸は張りがあり扱いづらいが、何年も使い込まれた貸し道具はしなやかになっておりさばきやすいというメリットもある。
もし自分の手釣り糸を用意したいなら、釣具店でメートルごとに色分けされた24~28号の手釣り糸を購入すればいい。
先糸はあってもなくてもいいのだが、根ズレで傷むため貸し道具にはナイロン22~24号前後の先糸が結ばれていることが多い。
余談だが長崎昭船長に聞くと、長崎屋の手釣り糸は24号で、先糸はナイロン22号とのこと。
以前は24号の先糸を使っていたが、根掛かりを外すのに苦労したという。
簡単に切れても困るが、切れなくても困る。
そのバランスで、この太さに落ち着いたようだ。
テンヤは、東京湾ではオモリ50号が標準。
これも船に貸し出し用があり、オモリぶらぶら式のプラスチック製か、オモリに竹の板が埋め込まれた羽子板式のどちらかがほとんどで、長崎屋では後者。
ぶらぶら式は根掛かりしにくいとは言われているが、プラ製のためか板が浮きやすいとか。
その点、板が底で落ち着くからか羽子板式のほうが小さなタコは掛かりやすい気がすると長崎船長。
いずれにしろテンヤは根掛かりで紛失したときは船により700~1000円の実費となる。
3~4個はなくす可能性があるから釣具店で予備を購入しておくか、船上で購入できるよう現金を用意しておく必要がある。
テンヤにはカニエサ(主に冷凍のイシガニ)を縛るが、船によりあらかじめ縛ってある場合と、カニだけ用意してあり自分で縛る場合がある。
とくに縛り方にルールがあるわけではないが、自分で縛る場合は外れないようにしっかり縛る、合わせが効くようカンナとカニの間を少し空けておく、この2点に注意したい。
また、カラーページでも触れたが、潮が速いときは抵抗の少ない縦縛りのカニ、潮の緩いときはアピール力の高い横縛りのカニ、という使い分けもありだ。
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湾奥のマダコ釣り場は船により狙うポイントが変わってくるが、長崎屋を始めとした横浜方面の船は横浜~本牧周りや富岡沖などを主に狙う。
取材日もまずは港前の水深5~6m前後から始め、横浜沖の水深10~15m前後を探っていったが、時には富岡方面へ走ることもあるという。
水深は、深くても20~30mくらいまでとか。
一見、夏とやっているポイントはそんなに変わらないように思えるが、海底の状態は違うらしく、「ここは根掛かりに注意して」というアナウンスが船長から頻繁に出される。
ともあれ、釣り場に着いて開始の合図が出たら、まずはテンヤを下ろしながら糸枠から手釣り糸を出していく。
このとき注意することは2点。
水深の変化などに対応できるよう手釣り糸は余分に3mくらいは出しておく。
糸枠は船床に置かず、座席や船ベリなど一段高い場所へ置いておく。
足元へ置いておくと、取り込んだタコが乗っかって糸が絡むなどのトラブルが起こるからだ。
あとは海底の変化を感じながらコツコツと小づき、テンヤを動かしてタコを誘うが、テンヤを底へ置きすぎると根の荒い場所ではすぐに引っ掛かってしまう。
船長は拳1個分浮かせる感じと言っていたが、テンヤを縦に上下させ、カンナが海底に当たってカチカチと伝わってくる金属的な感触で海底を把握するイメージだ。
小づいていると、ガキガキッといかにも岩っぽい感触や、あたかもタコが乗ったかのようなジワーッと重くなる感触など、手釣り糸を通して様ざまな情報が伝わってくるが、明らかに根と思われる感触ならスッとテンヤを持ち上げて根掛かりを回避。
タコっぽい感触なら、ある程度は根掛かり覚悟で小づき続ける。
とくにこれからの時期は水温が下がり、タコの活性も下がってくるから早合わせは禁物、よりじっくり乗せるつもりで小づいたほうがいいとは船長のアドバイス。
小づきながらもヌタ~ッとした感触が続いたら、ころ合いを見て合わせる。
船ベリの外へ伸ばした腕を胸元へ引き付けるように1~2手は強くたぐってしっかり合わせる。
重さが残っていたら、あとは段を付けずに一定のスピードで糸が緩まないようにたぐり上げていく。
取り込む直前にはタコが船体に張り付かないように腕を船ベリの外へ伸ばし、船長や仲乗りさん、周りの人がタモですくってくれる場合はタモへ。
一方、根掛かりの場合は合わせた瞬間にガシッと糸がたぐれなくなる。
そのまま無理に引っ張り続けると余計に掛かってしまうので、いったん手釣り糸を緩めてみる。
小づきと同じような要領でテンヤが外れないかカタカタと数回揺すってみてからもう一度ギュ~ッと糸を引っ張って、外れなければパッと糸を放してたるませる。
この根掛かり外しを繰り返すときに船長に引っ掛かってしまったことを合図しておくと、船によっては船長や仲乗りさんが手伝ってくれる。
場合によってはほかの人に仕掛けを上げてもらい船を反対向きにしてくれる。
根掛かりが外れる率は高くなるが、それでも外れない場合は仕掛けを切るしかない。
船のボウズなどに糸を巻き付けて、船で引っ張って切ってもらう。
このとき、危険なので手釣り糸を腕に巻き付けたり絶対しないように。
ちなみに根掛かりしているけどタコも乗っている、というケースは珍しくなく、取材日も船長がお客さんの根掛かりを外したときに「タコも乗ってるよ!」というシーンがたびたびあった。
船長はタコがテンヤを抱いたまま岩の中へ潜っていると言うが、根掛かりしても最後まで諦めず、なるべく仕掛けを切らないように回収すれば、いいことがあるかもしれない。
以上が一連の釣り方になるが、夏と違ってイージーに釣れる感じではない。
ポイントをまめに流しながら拾っていく感じで、タコが固まっている場所に差しかかるとパタパタッと乗る。
それも同じ人が何杯も連釣したり、それまで釣れなかった人が突如として追い上げたりと、いかにもタコらしい釣れ具合。
だから、ツボにはまらないと周りではポツポツ上がっているのに自分にはサッパリ乗りがこない、なんてことも起こる。
取材日もそんな感じの釣れ方だったのだが、終わってみればトップ9杯が2人(別船は11杯)、スソで2杯。
5~6杯を釣っている人が多かったから、秋~冬のタコ模様としては決して悪くない。
平均サイズも500~800g前後と夏よりよくなっているうえ、400gほどの小ダコもいたから、おそらく年末まで数、型とも期待できるのではないだろうか。
長崎屋の大船長に餌木が引っ掛かるならテンヤの竿釣りでいいんじゃない?
と聞くと、根掛かりするとどうしてもラインから切れるし、餌木に比べて合わせも効きづらいのでテンヤの竿釣りはあまりすすめないという。
となると竿釣り=餌木になるが、時には20本もなくす人がいるとのこと。
ロスト前提もどうかと思うので、餌木で楽しむなら仕掛けを投げない、底を引きずらない、餌木の本数を少なくする、といったことを心がけたいものである。
隔週刊つり情報(2019年12月1日号)※無断複製・転載禁止
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