今年は東京湾のマダコが異常な盛んさを示し、餌木タコブームが急速に広まった。そのブームの土台となったのが昨年の常磐エリアである。
昨年12月1日号の本誌では、鹿島から出るフグ船で同時にマダコが狙えるとの情報を元に、初めて常磐の餌木タコ釣りについて特集を組んだ。続いて12月15日号では、渡りタコの初瀬と思われる大型の群れに出会った様子を伝えた。
今年に入ってから、鹿島では餌木タコ専用船が運行を始めるなど、同時に手釣座、大洗船舶では日々竿釣りの人々が増えてきている。餌木タコの人気が確かに拡大している事実を実感することができる。
東京湾では既に餌木を用いた竿釣りが行われていたが、根がかりになることが敬遠される要因となっていた。
釣り場によっては、着底してすぐに根がかりしてしまい、餌木を用いた釣りが不可能になる事態も発生していた。
だが、常磐エリアでは海底に小石が転がっているゴロタ場を狙うため、根掛かりの可能性が少ない。
つまり、餌木を活用した竿釣りが十二分に楽しめるのだ。
今回は、そんな常磐特有の餌木タコをピックアップし紹介したいと思う。
(左)平成30年12月1日号で紹介した鹿島のフグ船での餌木タコ釣り。 実際には前年からフグ船でのタコ狙いが行われていた。(右)平成30年12月15日号では各メーカーのテスターに集まっていただき本格的に大洗沖で餌木タコにチャレンジ。大ダコ乱舞に一同悶絶した。
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取材した山正丸を始め、周囲の他船を見渡しても確実に竿釣りの人が増えている印象。
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タックルは大ダコに備えた準備を
今年、常磐のマダコ船が本格的に出船を開始したのは10月になってから。
本誌船宿データベース加入の船宿では鹿島港の不動丸と幸栄丸が餌木タコ専門船を出しており、釣り物欄にマダコと入れているほかの船宿も希望があれば出船する。
大洗港では大栄丸、第一東海丸、山正丸がマダコ狙いで出船している。
こちらはテンヤとの同船となるが、もちろん餌木を使った竿釣りもOKだ。
釣り場は大洗港から出船すれば航程20分ほどの大洗沖一帯で、水深は25~30m前後。
今回取材した山正丸では開幕からトップ10~15杯前後を釣っておりまずまずの出足と思われたのだが、台風19号が通過した10月中旬以降は河川から大量の雨水が流れ込んだ影響で潮が濁り、トップ4~5杯、オデコも出るなど急降下してしまった。
10月20日の取材日もそんな懸念の中での出船だったが、終わってみればオデコなしの1~10杯、平均4~5杯と復調の兆しが見られた。
おそらく潮色が元に戻れば、再び安定して乗ってくるのではないだろうか。
なお、現在釣れているタコのサイズは500~800g前後が中心。
いわゆる渡りの大ダコはまだ入ってきておらず、地ダコを釣っている状態。
小型は300gらいで、大きくても2kg弱といったところだ。
餌木タコに興味を持ち、初めてタコ釣りをやったという人も多い。
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例年、渡りの大ダコが南下してくるのは12月ごろからとされているが、昨年の取材では11月15日にいち早く2kg3kg当たり前といった大ダコの群れに遭遇している。
今年もいつ、渡りの大ダコがきてもいいように準備をしておきたい。
ということで、まずは竿の選択だが、今回の取材で竿釣りをしていた7人中4人はタコ専用竿を使っていた(残りの3人は青物用などのジギングロッド)ように、ブームの広まりとともに専用竿を使う人が増えている印象がある。
そのうち二人は、前日に専用竿を購入してきたとも話してくれた。
ただ、専用竿といっても調子や価格は様ざまで、本当に棍こん棒のような安価なガチガチの竿から、1kgくらいのタコを乗せただけで元からグンニャリ曲がってしまう竿まである。
理想を言えば、穂先は海底の変化や餌木の動き、タコの乗りが敏感に分かる柔軟かつ高感度で、4~5kgの大ダコが乗っても安心できる胴~バットにパワーのある竿。
もしこれから専用竿を購入しようという人は、釣具店でよく吟味したほうがいい。
専用竿以外なら先調子のビシアジ竿やイカ竿、ジギングロッドになるだろう。
常磐では場合によって800~100号のオモリまで使うことを想定すれば、カワハギ竿やフグ竿などの流用はおすすめできない。
リールはドラグ力の高い中小型の両軸もしくは小型の電動。水深が深めのうえ横流しで潮の抵抗も加わるうえ、タコが小石を抱いていることも多いから1kg前後のタコが乗ってもずいぶん巻き上げが重いと感じることがある。
なるべくパワフルに巻き上げられるギア比の低いリールがよく、腕力に自信のない人には電動がおすすめだ。
巻いておく道糸はPE3~4号。
根掛かりがほとんどないので2号でもいいが、少し傷がついていたりするとPE3~4号でも合わせ切れしたりする。
先糸(リーダー)はあってもなくてもいい。
結ぶなら8~10号を1~1.5mくらい、抜けないよう自分がしっかり結べる方法で接続しておきたい。
餌木に関しては、とくにこれといった正解はない。
釣具店に行くと色んなタコ用アイテムが売っているから、これはと思うものを試してみればいい。
それも根掛かりの心配がない大洗沖ならではだ。
ちなみに根掛かりが多発する東京湾では1本餌木をすすめるが、常磐では餌木は2本付けをベースと考えたい。
もちろん1本でも釣れるし、3本付ける人もいるが、大ダコが掛かったときは1本より2本のほうがバラシのリスクが減る、3本付けたからといってアピール力が高まり乗りが増えるわけではなくむしろ手前マツリなどのリスクが増える、など諸々のバランスを考えると、常磐では2本付けがベストである、とだけは言えそうだ。
(左上)穂先は柔軟ながら胴のしっかりした専用竿が理想。(左下)ジギングロッドを流用できるからルアーマンもタコを楽しむようになっている。(右上)低ギア比でシングルタイプのパワーハンドルが付いたタコ専用リールはやはり巻き心地が違う。(右下)電動リールもおすすめ。取材日はシマノ2000番を使っていた人がいた。
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(左上)餌木の接続は市販のタコスナップを利用してもいい。(左下)サルカン類を組み合わせて自作する人も多い。(右)常磐エリアでは餌木は2本付けがおすすめ。
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マダコ釣りの基本は横流し
常磐エリアのマダコ釣りは、横流しで広くポイントを探りながらタコを拾っていく。
人数が少なければ片舷での釣りになるが、人気のタコ釣りだけに両舷での釣りになることが多いと思われるが、ヒラメと違って流しごとに舷を入れ替えたりはしないから、基本的には左舷が道糸が払い出す側、右舷が道糸が入り込む側になる。
取材した山正丸は手釣りと竿釣りで席を分けたりせず、各々が好みの席を取る。
大洗ではおおよそこのスタイルの船が多いから、釣りやすい払い出しを望むなら左舷、釣りづらい入り込みでも先にポイントへ入っていくことを優先するなら右舷に席を取ろう。
ただ、船は必ず真横へ流れるのではなく、風や潮の流れによっては斜めに流れることもあり、そんなときは道糸がミヨシやトモ寄りへ斜めに流されることがあることも理解しておきたい。
使用オモリは60または80号が基本になるが、これもある程度釣り人の裁量に任されている。
周囲とオマツリしなければ40~50号と軽くしてもいいし、逆にオモリが軽くて釣りづらくなるようなら100号と重くする。
これは右舷と左舷でも変わってくるし、同じ舷でも底が取れる人と取れない人ではオモリの重さを替えたほうがいい。
(左上) 道糸が入り込む舷で釣りづらいと思ったらオモリを重くして調整しよう。(右上)主に使うオモリは60号と80号だが、40~100号まで豊富に用意しておいたほうがいい 。(左下)道糸が払い出す舷では巻き上げにも一層の負荷がかかる。
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以上のポイントをまとめると・・・、
①船は基本的に横流しのため、道糸は斜めになる。
②オモリは60号、80号、100号を基準に自分の釣りやすい号数を使い分ける。これに加えてタコ釣りの基本である。
③道糸を出しすぎない。
ことに注意していれば、もはやマダコは釣れたようなもの。
投入は、道糸が払い出す側なら船下に、入り込む側ならできるだけ遠くにキャストする。
誘いは「定点小づき」と言われる、オモリを底に着けたまま、餌木が浮き上がらないように竿先を小さく上下させる動作が基本。
トントントンと10回ほど小づいたら、数秒乗りを聞く間を取る。
乗りがなかったら再び小づき、この繰り返しだ。
一定のペースで船が流れていれば底をキープし続けることは難しくないが、実際には船の体勢を保つために頻繁にクラッチがオンオフされたり、ウネリによるアップダウンで道糸が張ったり緩んだりする。
道糸が緩んだ場合はたるんだ分だけ素早くリールで道糸を巻き取る。
道糸が引っ張られて仕掛けが浮きそうになったらリールのクラッチを切って道糸を出す。
こうしてなるべく糸フケを出さないように底ダチをキープする。
ただ、道糸が引っ張られたときに底をキープしようと糸を出しすぎると周囲の人とオマツリしたり、仕掛けの位置が変わらない。
理想はなるべく道糸を出さず、船の移動とともに仕掛けを移動させながら底をキープすること。
とくに船の動きで糸が張ったときは、引っ張られている最中にリールのクラッチを切ると道糸がドンドン出ていってしまうことがある。
しばらく仕掛けが浮いた状態で我慢して、船の動きが落ち着いたところでリールのクラッチを切るようにすると、潮の流れが緩い場合には、それほど道糸が出ないで再着底する。
タコの乗りは、小づきにより動いていた餌木のガチャガチャ感がなくなったり、竿先がモタッと押さえ込まれるような感触で察知できる。
このときに道糸が引っ張られそうになったら、躊躇なく道糸を送り出して底をキープ。
そのまま5~10秒ほど小づき続けたら、軽く竿先で聞き上げて乗りを再確認。
やっぱりタコだと思ったら、もう一度5~10秒ほど小づきを入れてから、しっかり大きく合わせる。
合わせた瞬間に竿全体にググッと荷重がかかったら、道糸を緩めないように竿を立てたままリールを巻く。
あとは竿を一定の角度に保ったまま、ひたすらリールを巻く。
重いからとポンピングするようなヤリトリは道糸が緩んでのバラシにつながるので注意。
取り込みは小型なら掛かり所を見て抜き上げてもいいが、心配ならタモ取りが無難。
船によっては船長や仲乗りさんがすっ飛んできてすくってくれる。
タモ入れするときも、抜き上げきれない大型は別にして、中小型の場合はそのままストンと網の中へ落とし込むのではなく、タモと一緒に抜き上げるように取り込むと、餌木のカンナが網に絡みづらくなる。
とくに2本3本と餌木を付けていると、タモに絡んだときに外すのに手間取ってしまう。
手返しが悪くなるばかりか、次の人のタモ入れに間に合わなくなることもあるので、タモ入れ後はできるだけ速やかに餌木を外したい。
(上)道糸が入り込む舷の場合はキャストして投入しよう。(下)道糸を伸ばし過ぎず、かつ仕掛けが浮かないように小づくのがコツ。
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タモはタコが外れたときに拾ってもらうサポートと思って抜き上げよう。
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【隔週刊つり情報(2019年11月15日号)※無断複製・転載禁止】