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[吉岡進の新世代沖釣り方程式(第6回)]東京湾サワラキャスティング(さわ浦丸/東京都深川)

隔週刊つり情報編集部

エキサイティング!

エネルギッシュ!

エクセレント! 

釣り人を興奮のるつぼに叩き込む、東京湾のサワラキャスティングゲーム。

一瞬に懸けるスリリングな釣りは、ヨッシーの大好物だ。

振り続けた竿が大きく曲がった瞬間、それまでの緊張感が弾け飛んだ。

プロフィール

先生◆よしおか すすむ

新型コロナウイルスの感染予防に最大限配慮しながらも、忙しく全国の船に乗り、多くの沖釣りファンたちとの交流を楽しむヨッシー。

船を降りてからもそのまま竿を担いで陸っぱり。

タックルさえあれば永遠に釣りし続けているのではないかという、夏休みの少年状態。

今日もどこかで竿を振っている。

生徒◆たかはし ごう

幼稚園のころから沖釣りをしているはずなのに、いつまでたっても上達しない「永遠の初心者」。

釣りそのものより海に浮かんでいることに喜びを感じている様子で、うまくなる気配なし・・・。

サワラってどうやって釣るの?

フィッシュイーターのサワラは格好のルアーターゲット。

宙層を泳ぐ魚でジギングでも食ってくるが、エキサイティングなのはなんといっても表層のナブラめがけてルアーを打ち込むキャスティングゲーム。

ベイトを海面まで追い上げ、捕食する気満まんのサワラの狙い撃ちに成功したときは、最高の充実感が得られる。

東京湾では秋から冬にかけ、ベイトのイワシを追った多数のサワラが湾奥まで入り込む。

釣行の写真

(左)それっ!(右)海中をハイスピードで駆け回るサワラは、ベイトを追い上げて海中から全身を見せるほど高くジャンプすることも。「サワラミサイル」と称されるゆえんだ。刺身、炙り寿司、西京漬け、 塩焼きと、食べてもうまい高級魚である

勢いと迫力に満ちたダイナミックな釣り

穏やかだった海が、突然、騒がしくなった。

空を待っていた鳥たちの動きが鋭くなり、海面に突っ込んでいく。

穏やかな波を割って、豪快な水しぶきが上がる。

生命感がわあっとあふれるエネルギッシュな光景に、血湧き肉躍る。

さわ浦丸は一気に速度を高め、現場に急行する。

ガーッというエンジン音に負けないぐらいの叫び声が東京湾に轟く。

「出た!出たぞナブラだ!」

船が速度を落とした瞬間に、「投げます!」というかけ声。

ヒュン、と竿が振られ、爽快にルアーがカッ飛んでいく。

「くるよ、くるよ!」という澤浦晋祐船長のアナウンスに、緊張と興奮が高まる。

そして――。

「食った~ッ!食ったよ」とお客さん。

「よっしゃ!降りて、降りて!」と澤浦船長。

魚の進む方向に合わせて、ミヨシのいわゆるお立ち台から降りるように、という指示だ。

胴の間でヤリトリが始まる。

竿が大きく曲がり、さらにグイグイと引き絞られる。

「本命か!?」

「本命だ!」

「巻いて、もっと巻いて!リーダー全部巻き込むぐらいでいいから」とタモを構えた船長から指示が飛ぶ。

そのほうがフックオフしてもルアーが飛んできづらく、魚をコントロールしやすい。

「回して回して!」

船長の誘導したとおりに魚を動かし、頭からネットに入れる。

「入った!緩めてね!」

ベイルを返し、糸をフリーにする。

船中から歓声が沸き起こる。

サワラだ。

これがほんの2、3分の間に起こる。

一気呵成とはこのことだ。

勢いと迫力に満ちたダイナミックな釣りである。

オフショアキャスティングゲーム──つまり船の上でルアーを投げる釣り──は正直なところだれにでもすすめられる釣りではない。

揺れる船の上からルアーを投げるにはある程度の技量が必要だし、一気にテンションが上がる中、冷静に周囲を確認して安全な釣りをするには、経験も求められる。

その一方で、ある程度の技量と経験さえクリアしてしまえば、だれにでもチャンスが訪れる可能性がある釣りでもある。

筆者(タカハシゴー)は、永遠の「中の下」もしくは「下の中」というレベルの釣り人だ。

それでも今回、初めて東京湾のサワラのキャスティングゲームに挑み、なんとかなった。

・・・なったのかなぁ?

事前に隔週刊つり情報などで大いに勉強させてもらったが、それでも思うようにはいかない。

お立ち台からナブラにミノーを投げ込み、ヒットはした。

船から魚影が見える程度まで魚を寄せることはできたが、結果的にはバラしてしまった。

それでも、常連で、ほぼ仲乗りとして活躍している工藤くんも、「あれはサワラだったね」と言ってくれたから、初めてのサワラキャスティングとしては満足だ。

何よりも無事に船を降りることができた。

だれにもケガをさせず、自分もケガをしなかった。

最初の一歩としては上出来だ。

非日常的な緊張感こそが、サワラキャスティングの魅力だ。

いつ起こるか分からないナブラを追い、ワンチャンスに懸け、モノにする。

しかも、無事に。

テクニックとメンタルの両方が求められる時間は、オフショアキャスティングゲームのだいご味である。

ヨッシーはブラインド(ナブラが立っていない状態での釣り)で見事に本命のサワラを手にした。

興奮のるつぼのような船中で冷静に状況を見極めての勝利だった。

そう、まさに「勝利」という言葉がふさわしい。

ヨッシーは戦いに勝ったのである。

そういえばサワラという魚、デカいトロフィーのように見えなくもない。

釣行の写真

釣り場は浦安~五井沖の水深10m前後

タックルの方程式

ラインシステム>ロッド&リール

ロッドはシイラやシーバス向けのオフショアキャスティング用が最適。

2m前後と短めのほうが取り回しやすい。

ジャッカルでは汎用性の高いキャスティングロッドGSWーS68Lがオススメだ。

リールはシマノなら4000~5000番台のスピニングリールがジャストサイズ。

とにかくハイスピードな魚なので、ギア比が高く早巻きできるHGやXGがいいだろう。

ドラグは締めすぎても緩めすぎてもNGなので、最初は船長に見てもらったほうがいい。

とくに重視してほしいのはラインシステムだ。

引きが強く歯も鋭い魚なので、PEはできれば新品の1.5~2号、リーダーはナイロンの50lbを選ぶ。

1尾でもヒットしたら必ずリーダーをチェックし、傷んでいたら即交換しよう。

釣行の写真

(左)状況によってはジギングが有効なので、ベイトタックルの持ち込みもアリ。(右)最適なドラグ設定を船長に教えてもらったら、手で強度を覚えておこう。

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ルアーの方程式

ミノーを中心にシンペン、ジグも

使うルアーは主に3種類。

重めのシンキングミノー、シンキングペンシル、そしてジグだ。

ミノーはただ巻きでもオートマチックにアクションするので扱いやすい。

サワラキャスティングゲームのオールマイティルアーだ。

波動は強めで、食い気が立っているサワラにはとくに有効。

ナブラ撃ちに活用したい。

シンキングペンシルはリップがない分、波動は弱め。

ロッドのジャーク次第でアクションを自在に変えられるため、うまくハマればひとり勝ちも。

ジャーク中、ロッドが止まった瞬間のフォールで食ってくることも多い。

「フォールトリック」は落下中にヒラヒラ舞い、サワラにアピールする。

縦の動きに反応することも多いので、ジグも用意しておきたい。

ベイトが小さいときにはシルエットの小さいタングステンジグが効果的だ。

東京湾でもスピンテールジグは実績がある。

サワラは気分屋。

日によって反応するルアーが異なるので、少なくとも「三種の神器」は用意したいね!

釣り具の写真

(左)ただ巻きでアクションするミノーは食い気が立っているサワラに効く。ナブラ撃ちに。(右)波動が弱いシンペンは渋い状況で効果を発揮することも。アクションに工夫が必要だ。

釣り具の写真

(左)バーチカル(垂直方向)だけでなく、 キャスティングでも使う。 ベイトが小さいときに。(右)東京湾で流行中!大当たりすることもあるので、タックルボックスに忍ばせておこう。

釣行の写真

(左)キャスティングゲームは危険もいっぱい。フックのカエシは必ずつぶしてバーブレスに。(右)ヒットしたら、釣れた・釣れないにかかわらず必ずルアーとリーダーをチェック。ルアーはハリがのばされていることがあるし、リーダーの傷は致命的だ。決して多くはないチャンスをモノにしよう

先生が教える基本釣法

ある程度のスキルと経験が必要

ゴーさんを見ていて改めて分かったけど、サワラキャスティングゲームにはある程度のスキルと経験が必要だね。

釣りという側面では、まずルアーを正確に投げられなくちゃいけない。

オレの考えでは、飛距離よりも方向を定められることが重要かな。

狙いどおりにナブラに撃ち込みたいからね。

ゴーさんはギリギリOKだったけど(笑)、キャスティング経験の少ない釣り人も多いから、ある程度の「投げスキル」は必要だ。

揺れる船の上からの動作になるしね。

そしてなにより大事なのは、船長や周りの人たちとコミュニケーションが取れるかどうか。

最初は分からないことが多いだろうから、船長にあれこれ聞かなくちゃいけないし、投げるにあたっては、また、ヒットしたときには周りの人に声をかける必要もある。

とかく声を出す釣りだから、コミュニケーション能力が求められるんだ。

正直、ハードルはあるけど、それを乗り越えて得た1尾がまた格別なんだよね。

釣行の写真

さわ浦丸はオーバーキャスト可能。まず後方を視認してから、竿を後ろに振りかぶる。 必ず竿をいったん止め、「投げます!」と周囲に声をかけてからキャスト動作に入ろう。

釣行の写真

(左)ナブラをめがけてフルキャスト 。(右)ヘビーウエイトミノーは早巻き、 シンペンはジャークが有効だ。

生徒なりのお気付きポイント

緊張感に耐えつつ安全最優先で!

やや尻込み気味だったが、やってみたらやっぱり難しかった(笑)。

興奮のなか、安全最優先の作法を覚えるのでめいっぱいだった。

ナブラ撃ちでワンヒットしたが、お立ち台から降りるのに戸惑っているうちに痛恨のバラシ・・・。

隣の人とのコミュニケーション不足もあったかな。

いろんな意味で、沖釣りのすべての要素を高い次元でまとめる必要がある、と感じた。

コレがうまくこなせれば釣り人としてのレベルが上がりそうな気がしたよ!

釣行の写真

(左)胴の間アンダースローでミノーに食ってきたイナダ。(右)ヘビーウエイトミノーをフォールさせるとシーバスが遊んでくれた。

釣行の写真

タカハシゴーにサワラがヒット!お立ち台から降りるのにモタついているうちに(よく分かっていなかった!?)バレてしまった。

ヨッシーの実釣レポート

高速巻きを駆使して価値ある1尾をゲット!

結論からいうと、オレのサワラは1尾で終わり!

正直言って大満足だ!

負け惜しみじゃないぞ。

というのは、ナブラが立たないこともザラな釣りなのに、この日は何度もナブラが見られたからだ。

それだけでもよかった(笑)。

オレが釣ったのはナブラなしのブラインドで。

釣れている人を見ていたら早巻きが有効そうだったので、コピーしてみてのヒットだった。

高速巻きでもバランスを崩さないナブラミノーの特性を生かしながら、リアクションバイトをうまく引き出せたかな。

当日は船中14尾!

オデコの人もいた一方で、一人で5尾を上げた人も。

気まぐれでその日によってパターンが異なるサワラらしい釣果だったね。

この難しさにハマるんだ!

釣行の写真

(左)当日最大5.3kgを筆頭に5尾で竿頭。お見事です。(右)当日釣れたサワラは3kg級が主体だった。

釣行の写真

(左)イナダも交じった。(真ん中)ドンピシャのタイミングで投げると食ってきた。(右)船中第1号を釣り上げた工藤くん。

東京湾のサワラキャスティングの解

サワラの気分をいち早く見抜け!

釣り方を超カンタンにまとめれば、「投げて巻く」。

基本的にはそれだけの釣りだけど、そうカンタンじゃない。

サワラの気まぐれさと、船の上で投げるということの合わせ技で、奥深さが増しているんだ。

ナブラが見られるかは魚次第。

必ず起こるわけじゃないという点でもギャンブル性が高い。

だれにでも気軽にすすめられる釣りではないけど、ハマる人は抜け出せなくなる中毒性の高さが魅力だね。

オレももちろんハマっている側の一人(笑)。

ナブラを目にするだけで興奮するのに、そこに狙いどおりにルアーを撃ち込んでドーンとヒットした瞬間は、最高としか言いようがないよ。

法則はただ一つ、当日のサワラの好みをいち早く見抜くこと。

早巻きか、ゆっくり巻きか、横か、縦か。

幅広く試してみるという柔軟な発想が大切かな。

釣り以外に気を付けるべきことが多いけど、やっているうちに必ず慣れるものでもある。

頑張って挑戦して、ハマっちゃってください!(笑)

釣行の写真

(左)釣行当日は高速巻きがヒットパターンだったが、別の日が同じとは限らない。引き出し全開で色いろ試してみよう!(右)難易度が高いだけに、狙いどおりに釣れたときは最高に気持ちいい!中毒性が高く、ハマる人が多いのもうなずける。

船宿インフォメーション

サワラキャスティングは、船によってスタイルが色いろ。

さわ浦丸はナブラ撃ちが中心で、お立ち台をローテーションする方式だ。

これがまたエキサイティング! 

マグロのキャスティングゲームに匹敵する緊張感と興奮を楽しめる。

さわ浦丸は、明るい中にもどこかインテリジェンスがにじみ出る(?)

澤浦晋祐船長を筆頭に、スタッフさながらにサポートしてくれる優しい常連さんも多く、初めて挑戦するにも最適。

ただ、分からないことをそのままにせず、積極的に質問することも大事。

みんな必ず親切に教えてくれるし、そのほうがずっと安全だよ。

釣行の写真

(左)ミヨシのお立ち台は広いので5人同時に釣りができる。(右)19tの大型船、第十六さわ浦丸で快適にキャスティングゲームが楽しめる。

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【隔週刊つり情報(2020年12月1日号)※無断複製・転載禁止】

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