ヒガンフグやトラフグが一年のサイクルに加わる前は、湾フグといえばショウサイフグが一枚看板だった。
季節に応じて楽しみ方の幅が広がったのは歓迎すべきだが、昔からのファンには湾フグ=ショウサイにこだわる人もいる。
その理由は「浅い水深で、軽いオモリを使って、繊細なアタリを取って掛けていく」テクニカルな釣趣こそ湾フグの魅力、という考え方。
そんなショウサイフグには、季節的な盛り上がりが年に2回ある。
一つは秋、9~10月ごろの短期間に中小型が群れ集まり、ときにトップで1束を超える爆釣状態となる「寄りフグ」。
そしてもう一つが夏。
「寄りフグ」とまではいかないがトップで30~40尾、いい日は60~70尾と数釣れることがあるうえ、釣れるサイズが30cm前後の良型主体のために、釣り応えは満点。
さらに言えば食の魅力もタップリで、夏はこちらが目当てという人も多い(注:免許を持つ船宿がさばいたもの以外持ち帰らないこと)。
ただ、夏祭りも秋祭りも毎年定期的に開催されるわけではなく、年による差が激しい。
それが今年は2年連続での夏祭り開催、初めて湾フグにチャレンジするにも絶好のチャンスとなっている。
釣りやすいのは専用竿
使用オモリが平均10号と軽いのも湾フグの特徴。
ただ、竿先にコツンと小さく出るか出ないかのアタリが分からないと数をのばすのは難しくなる。
だから、専用竿の穂先は非常に細くしなやか。
かつ穂持~胴にかけては合わせが効くようしっかりとした張りを持つ。
コアなファンは自分で穂先を削って竿を自作したりする。
イメージとしてはマルイカのゼロテン竿、あの軟らかい部分がちょっと短くなった感じと思っていただければいいかもしれない。
一般に流用できるのは硬めのシロギス竿やカワハギ竿などとされるが、心配なら初挑戦は船宿の貸し道具を利用したほうがいいだろう。
今回の取材で湾フグ2回目という人と出会ったが、初回はカワハギ竿でチャレンジしたもののアタリがよく分からず2尾に終わったため、どうしても専用竿が欲しくなり道具を新調してきたと話してくれた。
そんな感じで「ハマる人はハマる」釣り。
最初からガッツリ道具をそろえてもいいし、一度経験してから慎重に吟味するもよし。
湾フグに通うなら、専用竿を1本は持っておきたい。
リールはスピニングを使う人もいるが、初めてなら小型両軸のほうが扱いやすい。
なるべく軽量で、ギア比の高いほうがいいだろう。
巻いておく道糸は船により2号以下、1号以下などルールはあるが、おおよそ0.8~1号を巻いている人が多い。
水深10mを切る浅場が主体の釣りだが、アンカーを入れてのカカリ釣りのため潮流の影響を受けやすく、道糸は細めのほうが釣りやすいからだ。
仕掛けはオモリとエサバリ、掛けバリであるカットウを1本出しただけのシンプルなものが基本。
外房~常磐のようなカットウを段差で2本出す仕掛けはよくないとされている。
オモリは10号が基準で、潮が緩ければ6~8号、速ければ12~18号と使い分ける人もいるが、ビギナーはとりあえず10号でいい。
(左)何回か通うなら専用竿はあったほうがいい。(右)道糸にはPE1号以下を巻いておくのがおすすめ。
出典:
(左)初めてなら船宿仕掛けか釣具店で湾フグ用の仕掛けを購入すればいい。(右上下)慣れている人は仕掛けをほとんど自作しており、オモリを交換できるようセパレート式にしている人が多い。
出典:
エサバリに関しては、テンヤバリやタチウオバリなど大きめのハリにエサのアルゼンチンアカエビを1匹付けにするオーソドックスなタイプと、丸カイズなどのハリを使ってエビを切り身にして複数付ける、いわゆる「チラシバリ」の2タイプ。
チラシバリのほうがフグの口がハリに当たりやすくアタリが分かりやすい、エサバリにもハリ掛かりしやすいという傾向はあるが、釣れる、釣れない、アタリが出る、出ないは別問題なので、好みで選べばいい。
なお、カットウ仕掛けの上に1~3本バリの胴つき仕掛け、いわゆる「食わせ仕掛け」を付けるのもありだ。
道具と仕掛けが準備できたらいざ釣行!というわけで、今回は7月最初の週末に三浦半島鴨居大室港の一郎丸にお世話になることにした。
アルゼンチンアカエビの付け方
凍っていたら海水に浸けて溶かしておく。
使わない分はクーラーで保管。
①エサバリに1匹そのまま付ける場合。
②まず頭をカット。
③3節分くらいの殻をむく。
④尾の付け根を2mmほど残してカット。
⑤切り口からハリ先を入れる。
⑥1節分くらいで背に抜く。
⑦チモトまでずらしたらハリの向きを変える。
⑧背側からハリ先を刺す。
チラシバリの場合はエビを1cm角くらいの切り身にしてエサバリ1本ずつに縫い刺しで付ける。
出典:
東京湾のフグ仕掛け例
ゆっくり、ていねいに釣ることが大切
湾フグ夏祭り、昨年は7月に入ってからフィーバーしたそうだが、今年は昨年より早く6月中旬よりお祭り状態が始まっており、釣行した時点ではちょっと一服気味。
加えて梅雨前線の北上による豪雨予報。
はたしてお客さんはいるのかな?
そんな心配をしつつ6時ごろに船宿に到着。
店主の青木利夫船長に聞くと、「いや~休もうかと思ったんだけど、だれもキャンセルしないんだもん」とのこと(笑)。
雨が降ろうが槍が降ろうがナギなら行きますって、ホント釣り人はたくましい。
いや、それだけ湾フグ釣りは魅力に満ち溢れているということだろう。
フグ船担当の青木淳船長の操船で定刻7時20分より10分ほど早く13名で出船。
このところメインにしているポイントは大貫沖だが、少し前に夏祭りがあったのは岸から離れた沖目のポイントらしい。
ゆっくり30分ほど走って釣り場に到着すると、遠くモヤの上に突き出た大貫の東京湾観音が見える。
それでも水深は8~9mだから、この辺りのポイントは遠浅なのだろう。
さて、とりあえず集中して釣るしかない。
カッパの上からたたき付ける雨粒が痛いくらいの豪雨だからカメラなんて出せるわけないし、竿先を見つめていないと心が折れそうになる、まさに修行だ。
ともあれここで基本的な釣り方を説明しておくと、やることは簡単&シンプル。
オモリを底へ着けたらゼロテンションでアタリを見る。
5秒くらい待ってアタリがなければ竿で軽く30~50cmくらい持ち上げ、ゆっくり下ろして再びゼロテン状態。
この繰り返しだ。
オモリが底に着いているときは、なるべく仕掛けが動かないようにする。
かといって道糸をたるませすぎるとアタリが分からなかったり隣の人とオマツリしてしまうので注意。
また、アタリを待ちすぎて仕掛けを底に置きっ放しにするのもよくない。
一定の間隔で仕掛けを持ち上げ、下ろし直すようにする。
通常5秒、潮が速ければ3秒、緩ければ10秒くらいとされるが、このあたりはアタリの出方との相談、色いろ試してみるほかない。
いずれにしろ仕掛けを持ち上げ、下ろす動作はゆっくりていねいに。
乱雑に行うとアタリが分からなかったり、近寄ってきたフグを散らせてしまうことにもなりかねないうえ、カットウバリがひっくり返ってエサやオモリに絡まってしまうことがある。
持ち上げたときに魚は掛かってないけどなんか重いなと感じたら、一度巻き上げ仕掛けをチェックしよう。
カットウがひっくり返っていることが多い。
アタリの出方は様ざまで、底で待っているときにコツッときたり、モゾモゾしたり、持ち上げたときにゴソゴソッときたり、下ろしていく途中でカツカツきたり、あるいは全くアタリが分からなかったり。
それらは竿先がピクッと動くこともあれば、手に伝わってくることもある。
いずれにしろ違和感があれば即合わせが基本になるが、カットウに引っ掛けようと大振りに合わせるのは厳禁。
掛け損なったときにフグを散らせてしまうことになる。
ていねいに小さく合わせていれば、空振りしても仕掛けを底へ戻せば、エサが残っていると再び食ってくることがある。
合わせは手首を軽く返す程度と表現されるが、感覚的には仕掛けを持ち上げるときの動作と同じで、このときに魚の重みや暴れを感じたら、そのまま竿を立てていき巻き合わせる。
掛かり所にもよるが、良型は巻き上げ中に横走りしたりする。
ガリガリ巻かず、竿の操作でいなしつつ浮かせてこよう。
取り込みは中小型ならそのまま竿で抜き上げ、良型はリーダーをつかんで引き上げる。
(左)ゼロテンでアタリを待ちつつ一定の間隔で仕掛けを上げ下げする。この繰り返しが基本の釣り方。(右)違和感を感じたら仕掛けをチェック。こうなっているとハリ掛かりしない。
出典:
濁り水の襲来とともに食いが上向く
集中して湾フグ釣りをするのは久しぶりだったが、とにかくていねいに、静かな誘いを心がけていると、底で待っているときにモヤモヤとした感触。
軽く仕掛けを持ち上げるとアタリに変わったのでそのまま巻き合わせ。
意外に早く手にできた1尾目は25cm級だった。
その後もアタリ自体は少ないが、諦めずに誘っているとたま~にコツコツきたり、竿先がヒョコンと動いたりして2時間ほどで2尾をキープ。
ここで船内を見て回ると、釣ってる人でも3尾くらいだったからまずまずのペース。
その後なんとか1尾を追加した11時ごろ、雨が小降りになってきたのでここがチャンスと撮影に回る。
問題はこのタイミングで調子よくフグが釣れるのかどうか。
しかも陸ではかなり大量の雨が降ったのだろう、河川から流れてきた雨水がこんな沖合まで押し寄せてきている。
海の色が変わるほどの濁りでどうなるか心配したものの、濁りが近づくにつれてポツン、ポツンと上がるようになり船内連続ヒットも。
船長に聞くと少し反応が出ていたとのこと。
まさかフグが避難してきたわけでもあるまいが、いずれにしろこれで取材は成立、一安心である。
1時間もすると再び雨脚が強くなってきたため釣りに専念。
相変わらずアタリは少なかったが、ゼロテンで待っているときにコツンと出たアタリに合わせが決まると気持ちいい。
これぞ湾フグの面白さだろう。
通常の沖揚がりは14時半ごろだが、この日は土砂崩れが発生、高速道路が通行止めになり一般道が大渋滞しているとの情報が入ったため13時半に早揚がり。
釣果は18~34cmをトップ8尾で2番手6尾、自分も納得&満足の5尾。
船中ではほかにトラフグやヒガンフグも交じった。
数のほうは今後の好転に期待といったところだが、食の魅力は7月一杯は十分堪能できるはず。
テクニカルな小物釣りが好きな方は、この機会にぜひチャレンジしていただきたい。
(左)食べたい派の人は今すぐ行こう。(右)陸から押し寄せた雨水で海の色が変わっていく。
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夏は湾フグ入門にも最適な季節。
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【隔週刊つり情報(2021年8月1日号)※無断複製・転載禁止】