ここへきて、にわかにテンヤの釣りが再注目されるようになってきた東京湾のタチウオ。
今回は様ざまなテクニックを駆使するシマノ・フィールドテスター松本圭一さんのテンヤタチウオ釣りを紹介しよう。
Profile
松本圭一(まつもとけいいち)
コマセダイを始め、コマセ&ルアーキハダ、テンヤタチウオ、アオリイカ、はては淡水釣りまであらゆるジャンルの釣りに精通。
シマノフィールドテスター。
松本圭一さんもテンヤタチウオの魅力にどっぷりハマった一人
出典:
テンヤの動きをイメージして誘うことが重要
さて、ここからが今回の主役、松本圭一さんの釣りについて。
松本さんがテンヤタチウオに本格的に取り組んだのは東京湾でブームとなった昨シーズンから。
最初はイワシ5匹を持参してテンビンの船でお試し的にやっただけだというが、アタリの出方、合わせたときの衝撃、釣れる魚の大きさにシビれてドハマリする。
以降は相模湾のキハダ釣りの合間に釣行を重ねてそれなりの釣果を上げられるようになったそうだが、転機になったのはこの春。
ご存じタチウオ女王の三石忍、ダイワフィールドテスター渡辺太吾さんと3人で釣行し、色いろ教えてもらってから飛躍的に釣果がのびるようになった。
そんな松本さんのテンヤタチウオはどんなスタイルなのか。
松本圭一のテンヤタチウオタックル&仕掛け
早掛けと食わせを両立する7:3調子
松本さんのテンタチスタイルで特徴的なことの一つが竿。
現在はアタリに即合わせする「早掛け」系の釣りをする人が多く、竿も操作性のいい9:1~8:2調子が主流だが、松本さんはテンヤタチウオ竿としては軟らかめの7:3調子、具体的にはグラスソリッドを採用したシマノのサーベルマスターSS73MH185を愛用する。
当初は9:1調子の竿を使っていたが、あるとき7:3調子の竿を使ってみたところ、意外にしっくりきたため使い込むようになったという。
7:3調子の竿の利点は、9:1~8:2調子の竿に比べテンヤにアタックしてきたタチウオに違和感を与えにくいこと。
タチウオがテンヤをくわえている時間が長くなるため、合わせるチャンスが増えるという。
例えば跳ね上げアタリに合わせ切れなかったとき、硬い竿だとタチウオがテンヤを放してしまうところを、そのまま食い込む引き込みアタリに変わってくれることがあったり、アタリが分からなくても次の動作に移るときに引き込みアタリが出たりもするという。
基本的に松本さんも早掛け系の釣りではあるものの、状況によって食わせ系の釣りにもなってくれるところに7:3調子の竿を使うメリットがあるようだ。
ただし細かい操作性という点では劣るため、強めに誘わないとテンヤをしっかり動かせないところはデメリットになるという。
リールはフォースマスター200もしくは600で、道糸はPE1.5号。
リーダーはフロロカーボン7~8号を1.5~3mほど。
その先にバイトリーダーとしてフロロカーボン16号を1mくらい電車結びでつないでおく。
テンヤの釣りは取り込みでリーダーをつかんで抜き上げることが鉄則だが、大型は2kg近くにもなり、リーダーが指に食い込んで怪我をすることもある。
太めのバイトリーダーはタチウオが食い上げたときに鋭い歯で切られることを防ぐとともに、怪我をするリスクを減らすことができる。
テンヤタチウオとしては軟らかめの7:3調子の竿を使うのが松本さんならでは
出典:
フォースマスター200&600ともにPE1.5号を巻いてある
出典:
迷いを排除するためテンヤは一色だけ
テンヤに関しても、松本流は一風変わっている。
サーベルマスター船テンヤゲキハヤのフラッシュゴールド一色しか使わないのだ。
テンヤタチウオはアタリがないときに悩みどころがたくさんある釣り。
誘い方はもちろん、テンヤの色や形もその要因になってくるのだが、あまりに悩みどころが多いと逆に正解を見付けづらくなってしまう。
松本さんは釣れないとき、テンヤに悩まず、誘いを変化させることに集中するため、テンヤは一色に固定することにしたという。
テンヤはサーベルマスター船テンヤゲキハヤフラッシュゴールドの一択
出典:
エサのイワシは半日釣りで40~50匹を目安に準備。
生はほとんど使わず、スーパーなどで購入したものをそのまま冷凍している。
使用するときも鮮度を保つため10匹単位で解凍して頭をカット、すぐに使用する4~5匹分だけを船ベリに出しておき、残りはクーラーで保管。
なるべく小出しに使用する。
エサの巻き方は、最初は尾のほうへ軽く巻いてから、強めに頭のほうへ巻き戻していく2段階方式。
イワシの大きさによって内臓は出したり出さなかったりで、イワシがかなり大きい場合は片側の腹をトリミングしてラッピングする、三石忍方式で巻くこともある。
ちなみに松本さんは少しでも傷ついたイワシはアタリが出にくいと考えているから、ちょっとした噛み跡がついただけでもどんどんイワシを交換していく。
松本圭一流イワシエサの巻き方
①イワシはほぼ冷凍を使う。船で解凍して頭をカット
②船ベリへ用意しておくテンヤは4個くらい。残りのイワシはクーラーへしまっておく
③イワシはテンヤに合わせてこのくらいにカット
④腹を真っすぐに切る。内臓は状況によって取り出す
⑤軸へ真っすぐ乗せていく
⑥最初は形を整える感じで緩めに巻いていく
⑦折り返しはきつめにしっかり巻く
⑧最後はイワシとテンヤのヘッドを一緒に数回巻き付ける
⑨完成
Dトゥイッチとノンストップバイブレーションが釣法のベース
松本さんがテンヤのタチウオ釣りで重要視しているのは、テンヤの動きをイメージすること。
例えばよく釣る人がいて、誘い方を真似てもアタリが出ないことがある。
それは竿の動かし方ばかりにとらわれてテンヤの動きをイメージできていないからだという。
当然、同じ誘いをしても竿の調子によってテンヤの動き方は変わってくる。
だから、自分のタックルでどう誘うとテンヤがどう動くのかを把握しておくことが大切。
実際に松本さんもテンヤの動きをイメージするようになって、釣果が大きく変わってきたそうだ。
その松本さんが基本にしている誘い方は、渡辺太吾さんのDトゥイッチと、同じくダイワフィールドテスター高槻慧さん考案のノンストップバイブレーション。
Dトゥイッチはヘッドが波打つように上下、ノンストップバイブレーションはテンヤが水平姿勢でヒラを打つように左右に揺れ動く、そんなイメージをベースに、それぞれ誘い(テンヤの動き)に強弱をつけながらアタリが出る誘いを見つけていくのが松本流のテンヤタチウオ釣法の基礎になり、このところはどちらかの誘いがハマることが多いという。
釣りの組み立てパターンとしては、朝イチは釣れやすいチャンスタイムなので、なるべく早くタナを広範囲に探るためリールのハンドルを1回転させる間に誘いを3~4回入れるDトゥイッチからスタート。
アタリが出ればそのまま続行。
アタリが出なければ巻きスピードや止めの間を変えて様子を見ていく。
釣り始めはタナを幅広く素早く探れるDトゥイッチからスタート
出典:
それでもアタらない、アタリが出ても追ってこない、というときはノンストップバイブレーションにチェンジ。
松本さんはバイブレーション=たたくときは電動で巻き上げながら行う。
フォースマスター200の場合は巻き上げスピード2を基準とし、1に落としてねちっこく誘ったり、時には0にしてその場でたたいたり、逆に3、4とスピードを上げてアタリの出る速さを探していく。
釣り姿を横で見ていると、松本さんのたたきはかなり激しい。
これは7:3調子の竿を使っているため穂先を揺する程度ではテンヤが動かないからで、リールを両手で包み込むようにパーミングし、鞭打つように竿の胴部分を激しく上下させてテンヤをバイブレーションさせていく。
7:3調子の竿を使っているため松本さんのたたきはかなり激しい
出典:
また、小技として教えてくれたのが竿の操作で巻き上げスピードをコントロールすること。
電動の一定速で巻き上げていても、たたきながら道糸のマーカーの位置が変わらないように竿先を下げていくと定位置でのバイブレーションになるし、たたきながら竿先を上げていけば電動で設定したスピードよりも少し速い巻き上げになる。
一見せわしなく竿を上げたり下げたりしているなあと思ったのだが、そんなところでもテンヤの動きに微調整を加えていたのであった。
いずれにしろアタリが出ないときに同じことを繰り返していてもダメなことが多いので、タタキの強弱や巻きスピード、止めの間など色いろ誘い方に変化をつけていくわけだが、大切なのは漫然と釣りをするのではなく、何をどう変えたのか意識しながら釣りをすることだと松本さん。
今自分がどんな誘い方で釣っているのかを覚えておくと、アタリが出たときに次の投入でも同じ誘い方を再現できる。
とくに食いが立っているときにはそれで連チャンパターンに持っていけることが多くなるそうだ。
松本さんのテンヤタチウオはオリジナルではないが、人から教わったことをうまく取り入れ、独自のエッセンスを加えることで、松本流に昇華させている。
色いろやっているけど今一つ伸び悩んでいるというテンタチファンには参考になる話もあったのではないだろうか。
竿の操作でスピードコントロール
釣り船予約サイト「釣割」のスタッフがオススメする釣り船はこちら!
【三浦半島(神奈川県)タチウオ船】人気ランキング
【三浦半島(神奈川県)タチウオ船】価格ランキング
隔週刊つり情報(2021年9月15日号)※無断複製・転載禁止