【掛かりを高めるエサ付け考案】イカブリ
夜の海に浮かび、ヤリイカを1杯掛けしてタナに沈める。
本命は寒くなる年の瀬に向かって、太くおいしくなっていくブリだ。
11月13日、師走の夜の風物詩、通称イカブリが東伊豆で開幕。
取材先の宇佐美港・秀正丸では5kg前後が船中50本近く浮上したから、今冬も滑り出しは上々といっていい。
乗合船や仕立船は宇佐美、網代、伊東など東伊豆の各港から出船し、タイムスケジュールは出船16時、沖揚がり22時ごろ。
良日に遭遇すると開始数時間で早揚がりということもあり、食いが立てば凄まじい爆発力を見せるところもイカブリファンの心をかき立てる。
釣り場は海岸から1km弱の近場に浮かぶ初島周り、水深は60~80m。
本来は夕刻の1~2時間ヤリイカ釣りにあててイケスに溜め込み生きエサにするのだが、近年続く不漁によってイカ釣りはパス。
冷凍・冷蔵のヤリイカエサを付けて、最初からブリを狙っている。
土日祝の往路は大渋滞にご用心
緊急事態宣言が解除されて以降、週末の東伊豆は観光客で賑わい始めている。
そこで注意すべきは往路の渋滞。
ことさら土日祝の海岸線はすさまじく渋滞するので、16時出船といえども「現地で昼食を食べる」つもりで早めに到着したほうが無難だ。
時間を持て余したら、地元の鮮魚店を巡るなどして新鮮なイカを物色するのもいい。
それほど時間に余裕がない人は東京方面から向かう場合、箱根ターンパイク→伊豆スカイライン経由で東伊豆の各港へ下りるコースがおすすめ。
ちょっと高めの有料道路なので渋滞もなく、ほぼカーナビの到着予想時刻どおりに到着できるはずだ。
もちろん帰りはスイスイ。
夜間、しかも上りになるので渋滞知らずで帰宅できる。
秀正丸がある宇佐美港へは伊豆スカイラインの亀石峠を下りて向かうといい
出典:
釣り場は初島の周り。港から10分ちょっとで到着する
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極太ハリスと頑強タックルでブリ&ワラサを釣り込む
イカブリ用の仕掛けは胴つき式ではなく、オモリ120号をセットした大型片テンビンに全長3~4.5mのハリスをつなぐ。
フカセ効果を高め、船の挙動でイカエサが跳ね回るのを防ぐためだろう。
ハリスも極太。
22~24号を基準に、7~10kg級のブリが回り始めたら28号前後を使用する。
その理由は、
・夜間はブリの目が効かず、ハリスの太さに関係なく食ってくる。
・初島周りに集まるブリはイカや小魚などを捕食する。ベイトを追う群れはバタバタと釣れてすぐに去ってしまうことも多く、通過するまでの短時間が勝負。そのチャンスタイムにきっちり釣るためには、太ハリスを使ってドラグを締め込み、豪快に巻き上げて再投入したほうが数がのびる。
・手早く取り込めばオマツリも減り、全員に釣果が行きわたる・・・といったところ。
なお、相手は鋭い歯を持たないブリだからハリスはナイロンで十分、ハリの結びもしっかり締まる。
ハリはヒラマサ15~16号などを、掛けバリ・先バリの2段で結ぶ。
さらに5号前後の中通しナツメオモリをハリスに通し、掛けバリのチモト近くに爪楊枝などで固定。
ナツメオモリはイカエサを狙ったタナへ的確に沈める役割があり、生きエサを使う場合はオモリの重さでイカの動きが抑制され、ブリに食い付きやすくさせる効果がある。
2段バリの結び方はヒラメ仕掛けのように2本ともハリスに直結する方法のほか、掛けバリのフトコロに先バリのハリスを結ぶ方法もあり、いずれもヤリイカのサイズ(全長が目安)に合わせてハリ間を決める。
なお、エサの大きさに合わせて掛けバリの位置を変えられる遊動バリは、オマツリして絡みつくとほどきづらいなどの理由で使用を禁止する船宿もあるので、事前に確認したほうがいい。
前記したように「ヒットしたらドラグを締めてゴリ巻きファイト」がイカブリ釣りの基本。
そのためタックルにも相応の配慮が必要だ。
まず気を付けたいのは道糸の太さ。
理想は8~10号、最低でも6号(その場合は無傷の新品)を推奨する。
強引に手早く巻いたつもりでも相手は暴れ回る青物、ある程度のオマツリは避けられない。
とくに厄介なのは船底に擦れやすい反対舷とのオマツリ。
PE5号以下の道糸は、あっけなく高切れしてしまうことが多い。
リールはPE8号前後が200~300m以上巻けるパワー&トルクに優れた中型電動、シマノなら3000~6000番、ダイワなら500~800番あたり。
ロッドはワラサ、ブリ、ヒラマサ対応の青物用や遠征五目用などグラス素材のワンピースタイプがおすすめで、イカエサの食い込みもいい。
また、もしもヤリイカの釣況が急上昇したらイカ釣り用のタックルとプラヅノ11cmのヤリイカ仕掛けも持参することになるので、釣行前に船宿に確認しておくこと。
夜釣りなので水深70~90mの浅場がポイントになり、オモリも80号と軽いので先調子のゲームロッドなどでも対応できる。
(左)ハリはヒラマサ系の15~16号を使用(右)片テンビンは青物対応の頑強なタイプを選択。オモリは120号
出典:
キハダ用に購入した電動リールを流用する人も多い
出典:
東伊豆のイカブリ仕掛け
釣果につなげるヤリイカエサの付け方
イカブリ釣法のキーポイントは、言うまでもなくイカエサ。
現地でヤリイカが釣れ始めればそれに勝るエサはないものの、当面は冷凍・冷蔵のヤリイカを使うことになるだろう。
冷凍モノは船宿でも購入(要予約)できるが、入荷が不安定で数に限りがあるので持参したほうがいい。
サイズは胴長15~20cmくらいが目安で、釣行日の1~2週間前からスーパーや鮮魚店を回ってストックしておく。
鮮度がいいほどブリの食いもいいから、表皮の色つやがよい冷蔵モノが入手できれば最良。
ヤリイカが見当たらなければ、マルイカやヒイカなども代用可能だ。
用意するイカの数は「自分が釣りたいブリの本数の2倍」とは秀正丸の船長のアドバイスだが、平均すると20杯ほど持参する釣り人が多い。
余ったとしても、鮮魚店で購入したイカであれば持ち帰って食材にできる。
エサの付け方は冷凍・冷蔵モノと生きたイカで若干違う。
いずれにせよ雑に付けるとアタリが遠のいてしまうから、以下に要点をまとめておく。
鮮度のいい冷蔵のヤリイカが入手できればベスト
出典:
冷凍・冷蔵ヤリイカのエサ付け
掛けバリは、胴の先端部に刺す。
適当に付けると海中でイカが回転してしまうので、背筋に沿ってセンターラインにハリを刺すのがコツ。
鮮度がよければチョン掛け、身崩れしやすいイカは2回くらい縫い刺しにする。
先バリは、イカの腹を上に向けて置き、胴の裾からハリ先を入れて内側からすくい上げるようにロウトへ刺し抜く。
これで胴体と頭部(ゲソ側)が外れにくくなる。
もう一つ、秀正丸の船長がすすめる付け方がある。
先バリを取り去った1本バリ仕掛けを胴の先端部にチョン掛けするだけの、シンプルな方法だ。
「冷凍・冷蔵のイカは動かないから、ブリが丸飲みしやすいんですよ。だから食いが立っている時間帯は1本バリでも問題なく掛かります。取り込んだタモにハリが絡みにくいから手返しも早まって、数ものびる」
船長の言葉どおり、取材日も数名の釣り人が1本バリ仕掛けで食わせていたから、チャンスタイムがきたら試してみる価値はある。
参考までに秀正丸オリジナルの1本バリ仕掛けはハリス22号3m、ハリはアジバリ15~16号(同号のヒラマサバリでもOK)、チモトには3号のナツメオモリを固定。
これなら自作するのも簡単だ。
船長によると先バリを結んだ2段バリを使っても構わないのだが「あれは基本的に、生きたイカエサで使う仕掛け」とか。
生きたイカはブリに追われると逃げ回るから、ハリ数を増やしてヒット率を高めるのだという。
冷蔵・冷凍ヤリイカの付け方。掛けバリは胴の先端、先バリは胴の裾から刺してロウトに抜く
出典:
入れ食いの時間帯は1本バリでも十分釣れる。手返しも早い
出典:
冷蔵・冷凍ヤリイカの付け方
生きヤリイカのエサ付け
ヤリイカの釣況が好転して生きエサが使えるようになったら、ダメージを与えないように、できるだけ素早いエサ付けを心がけよう。
イカをイケスから取り出したら腹を上にして置き、まずは掛けバリを胴の先端部に刺す。
背筋に沿う軟骨を傷つけるとイカが弱りやすいといわれているので、下図のようにエンペラと平行にハリを刺すのがコツだ。
先バリはブリが狙いを定めて食ってくるイカの急所、つまり頭部付近に付けたい。
けれども適当に刺すとイカの神経を傷めて死んでしまう。
それを防ぐ付け方を2例紹介しておこう。
一つ目はロウトの側面を浅くすくい上げるようにハリを刺す方法。
ロウトであれば頭部の神経を傷付けないし、側面に刺すことで海水の循環(イカの呼吸)も妨げない。
もう一つはイカの背中を上にして置き、腕の付け根付近にハリを浅く刺す方法。
頭部から離れているのでダメージも少なく、イカの呼吸にも支障をきたさない。
左が先バリで、イカの頭部側に刺す。オモリが付いた右の掛けバリは胴の先端に刺す
出典:
生きヤリイカの付け方
アドレナリン全開のパワフルファイト!
タナは底から取ることが多く、例えば「底から仕掛け分プラス3m」などと指示される。
仕掛けの全長が3mなら、糸フケを取って底から6m巻き上げればいい。
ドラグは最初から締め込んでおこう。
タナ取り後はこれといった誘いも不要で、置き竿にしてアタリがくるのを静かに待つ。
ただし海底は起伏もあればカケ上がりもあるので、定期的に底ダチを取り直すこと。
それがちょっとした誘いにもなる。
最初にくるアタリは竿先が上下に揺さぶられる程度。
まだエサを飲み込んでいないので、ここで即合わせするとスッポ抜けてしまう。
しっかり飲み込むまで焦らずに待ち、竿が大きく引き込まれたところで竿を引き上げるように合わせてやれば、ガッチリとハリ掛かりする。
あとは竿の弾力を生かして若干ヤリトリをしつつ、ほぼフルスピードで電動巻き上げ。
ハリスは太いので、結びさえしっかりしていれば切れる心配はほとんどない。
横へ下へと逃げようとする魚をねじ伏せ、頭を上に向かせながら豪快に巻き上げる。
その結果、100%とはいかないまでも隣人とのオマツリが減り、短いチャンスタイムに船中一丸となって数をのばしていけるのだ。
入れ食いともなれば次つぎにロッドが突っ込んで、船上は興奮のるつぼ。
スタッフのタモ取りも追いつかなくなるので、互いに協力しながら魚を取り込んでいく。
嵐のような時合が過ぎ去った後は、僚船の漁火や東伊豆沿岸の夜景を眺めながら小休止。
まったりとしたこの一時も心地がいい。
なお、血抜きはクーラーの中で行い海へ流さないのが当地のルール。
厄介なサメを寄せてしまうと釣りにならなくなるので厳守してほしい。
ドラグはギッチリ締めて、電動フルパワーで巻き上げる。その豪快さもイカブリの魅力
出典:
イカブリ釣りの基本イメージ
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隔週刊つり情報(2021年12月15日号)※無断複製・転載禁止