『がま船 ひとつテンヤ真鯛Ⅲ』による冬~春のマダイゲームー当日の最適解を探るパターンフィッシングー
「ひとつテンヤのマダイは、自ら誘いを駆使してアタリを引き出して掛けていく。カワハギ釣りに凄く似ているから好きなんですよ」
10m超の北西の強風が吹き荒れる初見参の飯岡沖で、胴の間でありながら見事に竿頭を達成した田中さんは、取材を終えてこんなふうに語ってくれた。
取材前の年末(2021年)には、大原沖でやはり竿頭を取ったそうで、カワハギのエキスパートでもある田中さんにとって、前言の通りこの釣りは相性がいいのである。
「いや、それよりも生まれ変わった『がま船 ひとつテンヤ真鯛Ⅲ』の進化が、この釣りを楽しく面白くしてくれたことが大きいんですよ。カワハギと同じように、この釣りもロッドを使い分けることが武器になります。このシリーズはどのモデルを使っても、テンヤを操る操作感が変わらない。それが釣果を大きく伸ばしてくれる特性です」
取材当日は、荒れ模様の中でMH250からスタートして、途中からH250にスイッチしテンヤの「安定感」を徹底的にキープ。
ハイレベルな手感度と目感度を融合したロッドの特性を活かした戦略で、小さなアタリを掛けまくってロッドの実力を見事に証明してくれた。
【解説】がまかつフィールドテスター・田中義博
【写真・文】大山俊治
『がま船 ひとつテンヤ真鯛Ⅲ』の進化とロッドマネージメント
取材当日、飯岡港の「梅花丸」が攻めたのは水深30m前後の漁礁や平根の周り。
冬~春の定番のスポットで、この水深ならひとつテンヤに慣れた人なら、6~8号のテンヤで釣りができる。
だが、梅花船長のオススメは確実に底が取れる遊動テンヤの10号。
これは田中さんも同じ結論だ。
「軽いテンヤはフォールで喰わせる展開では有利で、これがサイズアップにもつながりますけど、海況が悪いことが多い冬~春の釣りでは、海が荒れるとロッドやラインが必ず風や波の影響を受けて、テンヤが軽いほどフォールが不自然になり、中層やボトムでのステイも安定しません。10m超の北西の強風が吹き荒れる今日の状況では、私も10号でないとアタリをもらえませんでした」と田中さん。
一般的に、ひとつテンヤ用のロッドにおけるパワークラスは、「使用するテンヤと狙う水深で使い分ける」と言われるが、実は当日の海況下で、いかにフォールやステイの安定感を作るかのほうが、遥かに重要なテーマなのだ。
この点をビギナーはもちろん中級者でも見逃しているケースが非常に多い。
なお、パワークラスの使い分けは・・・。
「幅広い状況に適応できるMH250からスタートして、海況が悪い時ほどテンヤを重く、ロッドを硬くしていきます。テンヤはラインがPE0.8号なら、よほど潮が速い時と、海況が悪い時を除けば、テンヤは大体10号までで何とかなりますね」と田中さん。
これを聞くと、釣りの経験者ほど「ロッドを硬くする?」と思うだろうが、細いラインを使うといっても、ギリギリのバランスでテンヤを沈めて操作するこの釣りでは、実は底を取れている状況でも、海中のラインはそれなりに弧を描いている。
この状態で海況の悪さをロッド(ティップ)の柔軟性でカバーしようとしても無理がある。
シケの中でロッドを軟らかくすれば、かえってアタリがボケるうえに、フッキングも悪くなってしまう。
むしろ、テンヤの安定はロッドを硬くすることでアングラーがマニュアルで行い、感度と操作性を優先する方向にロッドの選択を寄せていくのが上級者の戦略なのだ。
「だから、番手でいうと一番軟らかいM250は、私の中では海況がよくて浅場を釣る軽いテンヤを動かしすぎないためのアイテムなんですよ」と言う。
関東近郊でのひとつテンヤのポイントは、水深は深くても40m前後で、瀬戸内海のように潮がぶっ飛ぶエリアは少ない。
だからロッドの使い分けは、現在の主力となっている6・8・10号のテンヤを海況に合わせて、どう演出できるかという方向性で選ぶのが、釣果を伸ばすポイントなのだ。
「感度のいいロッドを使っても海況が悪ければ、カワハギほどではないにせよ”見えていなかったアタリ”が凄くあるのもこの釣りです」ということをお忘れなく。
「喰わせのパターンを探る」ためのテンヤのセレクト
隆盛を極めるこの釣りは大小さまざまなメーカーから意匠を凝らしたテンヤがリリースされて、入門者は戸惑うことが多いだろう。
田中さんによれば、選択の一番の基準はウエイトの形状で、それにより操作感がかなり変わってくるそうだ。
「ウエイトが台形のオーソドックスな固定式のテンヤは、よく潮を噛んでくれるので今日のような荒れ気味の時は、案外使いやすいですね。曲面で構成されたエコギアのオーバルテンヤのヘッドは、中層でもボトムでもテンヤをステイさせた時に流れに馴染むので安定感が高いようです」というのが田中さんの実感だ。
なお、田中さんは自らの誘いでアタリを出したいマニュアル派なので、「遊動テンヤ」は使わないが、遊動テンヤでも速く落ちる「カブラ型」とカーブフォール中の安定感を重視した「船型」では、同じように動かしても軌道が変わり、日並みで反応するパターンが変わってくるのは同じだ。
「そういう意味では、派手なロッドアクションはしないものの、この釣りもルアーに通じるテンヤの操作が決め手になりますよね。テンヤの選択は、号数はもちろんカラーも含めてパターンを探る重要なテーマです」と田中さん。
必携のカラーは赤やゴールドの定番色のほかに、チャート(明色)、黒や緑等(暗色)、グローの出番も多いというからお忘れなく。
なお、どんなに優れたロッドやテンヤを選んでいても、ひとつテンヤのマダイで忘れてはいけないのが、正しいエビの装着法だ。
飯岡の「梅花丸」では、うれしいことにエサ持ちがいい活エビを可能な限り供給しくれるので、これが同宿の釣果の安定にもつながっている。
まずは掛かりがよく、テンヤ=エビの水中姿勢を安定させる田中さんの装着法をマスターしておこう。
活エビを使う時の田中さんの装餌法
①活エビは頭が取れにくいので、孫バリは頭の付け根からエビの正中線に沿って、この角度に刺して針先を出す。
②エビの尾羽をハサミでカットして針先を身の中心から入れてハリを通し、フトコロまでエビがきたら真っすぐ針先を抜く。
③エビの形を整えると、このように真っすぐになる。2つのハリ先が同じ向きに揃うので、フッキングは抜群によくなる。
押さえておきたい田中さんの必殺メソッド
「ひとつテンヤのマダイは奥が深い釣りではありますけど、軽くて感度のいいロッドを使えば、基本の釣り方を守るだけでも十分マダイが釣れるので、長いハリスをさばくコマセマダイよりも遥かに敷居が低い釣りなんですよ」と田中さんは言う。
そんな「基本の釣り方」は「底狙い」。
着底させたら50㎝~1mほど、テンヤを静かにリフトして数秒ステイ。
その後ラインを張ったまま、ロッドの操作でスローにテンヤを着底させステイ。
これを2~3回繰り返すと、潮の抵抗でテンヤが吹きあがり始めるから、着底感がボケ始めたら巻きあげて入れ直す。
入門者なら、確実に底が取れる重めのテンヤ(PE0.8~1号+リーダー2.5~3号3~5mで10~12号。ちなみに5m以上リーダーを長くするとアタリがボケるので注意!)を使って、これに徹するだけでゲスト(美味しいカサゴやハナダイなど美味しい魚が多い)も含めれば、まず空のクーラーで帰ることはないのが、この釣りのいいところだ。
なお、ビギナーが重いテンヤを使う時には、即アワセをしなくても掛かりがいい遊動テンヤを使うほうが、「間違いは少ない」とは当日担当の梅花船長の弁。
「この基本の中で、アタリを感じ掛けられるようになってきたら、応用編としてタナの釣りやフォールの釣り、キャスティングの釣りを覚えていきましょう」と田中さん。
タナの釣りは小型のマダイを避けて遊泳力の高い中大型を狙うサイズアップのセオリーで、着底からテンヤを冬は1~2m、反応が浮いていれば5m以上は上げて、中層のステイでアタリを待つ釣り方だ。
フォールの釣りはリフト&フォール、または入れ替えのテンポをあげて、マダイの反応するフォール速度を探る釣り方で、6~8号のテンヤでスローに沈めるか、高比重のタングステン製テンヤを使って早く落とすことが効果的なこともある。
「ハナダイ(チダイ)が多い場所では、フォールの誘いに徹するとマダイを選択的に掛けられることは覚えておいてください。イワシなどの小魚の群れがいる時は、想像以上にマダイが浮くことがあるので、タナの釣り+テンヤをスローに巻く誘いもありですよ」と田中さん。
忘れてはいけないのが、大型狙いで有効なキャスティングの釣り。
春本番~初夏には、これは絶対に外せないメソッドだ。
「アンダースローで潮上にテンヤを投入して着底させたら、ロッド一杯にテンヤをリフトしてから、ロッドを立てたままで軌道の長いカーブフォールを演出します。アタリはカーブフォール中に出るのが大半で、フォールの誘いで広く探れるから、どんなエリアでも大型狙いのセオリーですね。ただ、今日のように強風が吹いていると、ラインスラッグが大きくなるので、アワセが効かないことが難点です。当然のことながら、トモやミヨシの広角で探れる釣座ならさらに有利。逆に胴の間では、左右の人のラインの角度をよく見て、投げる距離や入れる角度を計算しないとオマツリするので注意です」と言う。
なお、ラインの入射角度はアタリを取りこぼさないフッキングのためにも、常に注意が必要なファクターなことも押さえておきたい。
「梅花丸さんは、潮流しでラインを立ててくれますけど、風が強い日はどうしても船が振られて横流し気味になる場面もあります。こうなるとラインが船下に入る〝食い込み〟の側では、普通にロッドを立てても水中の糸フケが伸びるだけでアワセが効きません。その時はリールを巻いてロッドを下げ、バットとラインを90度にしてフッキングさせますが、対応が遅れがちになります。これを避けるためにも、テンヤの入れ替えはマメにやるべきでしょうね」とのこと。
また、当日はアタリを引き出す小技として、田中さんは小さなエビを2個付けして数を伸ばしていた。
この釣りでは、とかく大きなエビを使いたがる人が多いが、これも覚えておきたいテクニックだ。
「今日はともかく、胴の間の私の釣り座では、風が強すぎて底の釣りでボトム~50㎝ぐらいの間を釣るしかなかったですね。そんな釣り座の不利をカバーしたのが小エビの2個付けでした(笑)」と田中さん。
体感気温は氷点下になるこの条件下で、田中さんは撮影に応じながらも、尻上がりに調子をあげて枚数を重ね、最終的には14枚。
トモに座る「梅花丸」の名手と同率だったので、この悪条件の中では、十分すぎる結果である。
「後半の小1時間だけ風が落ちたので、逃していた小さなアタリを掛けられたのが幸いして数をまとめられました。渋いといっても魚影が濃いので、凪なら倍は釣れたかもしれませんね」と田中さん。
次の機会には、ぜひ好条件下で100%の田中さんの釣りと『がま船 ひとつテンヤ真鯛Ⅲ』のポテンシャルを拝見したいものだ。
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