「真ダナ」を作り、誘って、掛ける攻めの釣り! 実は奥が深いがまかつ田中流「LTアジ」の極め方
東京湾で一番人気の釣り物といえば、浅場を軽快なLTタックルで釣る「LTアジ」。
手軽でよく釣れるから、初心者向きの釣り物というのが一般の認識だ。
だが、がまかつフィールドテスターの田中義博さんは、こう力説する。
「LTアジは誰でもボーズにはならないけれど、突き詰めれば、カワハギやコマセマダイに匹敵するぐらい、凄く奥が深い釣りなんですよ」
その釣法を凝視してみると、LTタックルならではの軽さと感度を極限まで活用した独特のスタイルを完成させていた。
「この軽さと感度を使えば、ノーマルタックルでは、感じ取れなかったアジの気配や微妙なアタリも取れるうえに、水深が浅いから極論すれば数cm単位の誘いすら可能になります。やってみれば分かりますけど、アジはルアーでも釣れる魚だから、反応する誘いの種類も豊富。1日の中でもパターンが結構変わりますよ。特に冬~春の釣りは難しい局面が多いから、本当に面白くて通ってしまいますよ(笑)」と言う。
居ても口を使わないテクニカルな展開こそLTアジの魅力・・・そんな「LTアジ」を極めるためのタックル&釣り方を、がまかつフィールドテスター・田中義博さんに解説してもらおう。
【解説】がまかつフィールドテスター・田中義博
【写真・文】大山俊治
LTアジを極めるロッドとラインの選択
「尖った調子が多かった先代モデルよりも、全機種が扱いやすくなった『ライブラⅡ』が完成したので、さらにLTアジが面白くなりました(笑)」と田中さん。
ライブラⅡシリーズはお手頃な価格ながら、「LTタックル」の歴史が鍛えた感度と操作性のレベルは、ハイエンドモデルにも引けを取らない。
取材当日は『L180(オモリ負荷10~50号)』と『ML180(オモリ負荷20~60号)』を状況に合わせて使い分けていた。
ちなみに、東京湾のLTアジは標準のビシ=オモリは40号(一部30号の船もあり)となる。
「ロッドを選ぶ時、注意してほしいのは小さな魚を釣るから軽くて軟らかい竿を使うわけじゃないということです。今回のチョイスでは、食いが渋い時に細かく動かすための『ML』と、ラフな海況でもエサを動かさないための『L』という狙いです。ちなみに、25cm以上の良型の活性が高くて連掛けがありそうなら、私はスムーズに曲がり込む『L』で取りこぼしを防ぎます。ただし、慣れない人ほど少し張りのある竿を使うほうが上達は早いですよ。この釣りでは、軟らかい竿ほどコマセワークやタナ探りの難易度が上がることは覚えておきたいですね」
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なお、水温が高くて「最盛期」とされる晩夏~秋になれば、早い誘いが効果的なので『M180(オモリ負荷30~80号)』を使うのも面白いそうだ。
「LTアジで1本選ぶなら『ML180』。2本持てる人なら『L180』と『ML180』を揃えておくとロッド選びは完璧ですよ」と田中さん。
組み合わせるリールは、軽さ=感度を優先して、田中さんは『シマノ/バルケッタFカスタム151DH』等の小型でダブルハンドルの左巻きの両軸リールを愛用している。
ラインはPE1号。
先端に二重にした「サージェンスノット」のループ作りスナップスイベルを介して、テンビンに直結する感度優先の仕様だ。
「ラインが細いと思われる方もいるでしょうけど、このループを使ってつなげば、先糸は要りません。私はテンビンのタチウオも1号でやっているけど、傷のチェックなどのメンテをしてあげれば問題はありませんよ」と田中さんは言うから試してみよう。
おすすめのラインは、水の抵抗が小さくなる中級品以上の8ブレイドのモデル。
ラインは細いほど消耗が激しくなるから150m以上の長巻ものをスプールに入れておきたい。
「誘って掛けにいく」仕掛けと必携のアイテム
田中さんは、仕掛けのチョイスは前述のようにすべてが感度と操作性を優先している。
だからテンビンはよくある弓型(アームが湾曲したもの)ではなく、力の伝達がいい=感度の高いストレートアームのY字型と呼ばれる腕長20~25㎝のものを愛用している。
「アームがストレートなテンビンはやっぱり感度が違います。私はタチウオと兼用で、仕掛けの絡みが非常に少ない『アマノ釣具/チドリ天秤No.305T型』を使っています。LTアジ専用なら、線径はもう少し細くても(リンク参照)いいですね」と田中さん。
東京湾のLTアジは、イワシのミンチをコマセにするので40号の「アンドンビシ」を組み合わせるのが基本となる。
これにつなぐ仕掛けは、季節によってメインとなるハリスの号数が変わってくるので注意したい。
「LTアジのポイントは、よほど深くても30m、通常は15~20mの浅場で釣ります。ご承知のように、アジは非常に目がいい魚なので、水温が高くて潮が濁っている夏~秋は2号のハリスでもバリバリ食いますけど、水温が下がって水色がクリアになると1.2~1.5号ぐらいの仕掛けでないと、全く勝負にならないので注意してください。仕掛けはハリスが細くなるほど耐久性が下がるので、晩秋~早春の間は、予備の仕掛けは多めに用意しておきましょう」と田中さん。
かつては、アジの仕掛けというと完成品の仕掛けはハリスが2~3号のものしかなかったが、近年はLTアジが主流となったことから、細めのハリスで組んだものも増えてきた。
市販の仕掛けを買う時は、季節や釣況に合わせて万全の配備で乗船しよう。
ちなみに、通常仕掛けは船宿でも購入できるが、細番手の仕掛けは一般的に品薄なので、釣具店で購入していくほうが安全である。
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なお、田中さんが本気モードでLTアジに出掛けるのは、冬~早春の3月が多い。
この時期は水温が最も低く水色が最もクリアになる時期だ。
だから、たとえ中小型のアジといえども手を抜くと痛い目に遭うという。
「ハリスは標準で1.2号、食い渋りに備えて1号で組んだ仕掛けも用意します。“真ダナ”を探り当てるために3本バリ仕掛けを使います。こういう細ハリスは、仕掛けの耐久性を高めるために、硬質なハリスで組むといいですよ」と田中さん。
愛用のハリスは『東レ/トヨフロンLハード』で、全長は1.6mとやや短め、ハリはムツ9~10号で、先バリから下の枝スまで50㎝、そこから50㎝上に3本目の枝スを配置する。
チモトにケイムラビーズ0号を通し、枝バリの付け根は「三角編みつけ」で補強して仕上げるそうだ。
これを直結で天秤につないで、感度と仕掛けの操作性をさらにアップして使うのが基本のスタイルだ。
「クッションは中型の連掛けが多い日やサバが回っている時以外は使いません。直結で使うとそれだけで感度はだいぶ上がりますよ。LTアジの仕掛けで、”そこまでやるか”という人もいるでしょうけど、三角編みつけと硬質ハリスを使ってやると仕掛けの持ちが違います。自分のミスやオマツリなどのトラブルがなければ、1本の仕掛けで束釣りを達成することもありますよ(笑)」と言う。
そのためには必ずいい位置(上あごの中央)にハリが掛かるためバラシがなくなる「真ダナ」を見つけて釣れるパターンを探り出し、釣れた魚に絶対に触らないようにハリ外しを活用することだ。
「仕掛けが一番傷むのは、取り込んだ魚を外す間です。ハリ外しを上手に使うと、仕掛けは張っている時間が長いので絡むリスクが激減します。ハリスに重度のキンクが起こるのは、アジを枝バリに付けたまま仕掛けを緩ませ暴れさせてしまうからですよ」
もちろん、常に手持ちで誘って掛けにいく釣りをするので、置き竿になることはない。
だからロッドホルダーは使わないそうだ。
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これに加えて、田中さんがLTアジで心がけているのは、付けエサの動きを最優先にするエサの準備だ。
この釣りでは、付けエサとして青イソメまたは赤タン(塩漬けのイカを食紅で染めたもの)が支給されるが、出船前にこれをハサミでトリミングしてから使うのが田中さんの流儀である。
「青イソメも赤タンも自分で動かして釣る一種のルアーだと思って使いましょう。赤タンは通常の半分、青イソメも5㎜ぐらいに切って使います。私は付けエサではなく、どちらもハリを吸い込ませるアトラクターだと思って使います。確かに、イソメを大きく付ければ、そのニオイと水中での光でアジが釣れることがあります。けれども、その付けエサの大きさこそが仕掛けが絡む原因になることもありますよ。それにエサを大きく付けると場所によってはゲストのイシモチが掛かってくる確率が上がるので、(イシモチは回転しながら上がってくるから)仕掛けのダメージが大きくなります。ともかく“釣れてしまった”アジではなく、自分から効率よく掛けていくことを心がけるほうが、上達のスピードは一気にあがるはずです」と田中さんは言う。
これが、エキスパートクラスが「ガチ」で釣りに行く時のLTアジの準備なのだ。
「真ダナ」を作るタナ探りとLTならではの誘い
攻撃的にLTアジを釣る第一段階は、小さな40号のアンドンビシに入れたコマセ(イワシのミンチ)を高密度に集中させて、「自分のタナ」を作ることにある。
かといって、パンパンに詰めてしまうのは逆効果。
フンワリ6~7分目をベースに、あえて仕掛けを動かさない「ロングステイ」などで、コマセを絞りたい時は4分目もあるという。
「コマセは竿先を下げて小さくチョン!と小さく鋭く振りましょう。瞬間的にビシに強い水圧をかけて水中で“コマセのボール”を作るようなイメージです。よくロッドを大きくあおる人がいますが、そうするとコマセが広く拡散して、間違いなくアタリが減りますよ」
前述のように、アジにはその位置にビシを置くだけで、上あごの真ん中にしっかり掛かる(だから、まずバレない)「真ダナ」が存在するが、それもコマセワーク次第。
この作業の中で、周辺より密度の濃いコマセ煙幕によって「自分の真ダナ」を作ることが理想だ。
「さらにいえば、コマセはあくまで見せるもの。アジを仕掛けの近くに呼び寄せて、あとは誘いで口を使わせるイメージで釣りたいですね」
おおむねLTアジの船では、「底から2~3mでやって~」という指示が船長から出る。
つまり、着底からコマセを撒きつつ指示ダナまで巻き上げるなかで、探れる幅はわずか2~3m間の1mしかない。
イサキのように、さらにプラス1mぐらいまで探るのもありだが、アジの場合は、指示ダナの上でアタリが続くケースはそうは多くないそうだ。
普通は「LTアジの誘い方」というと、コマセワーク1/5ぐらいのイメージで「フワリ」と動かすのが相場で、これを指示ダナ下50cmぐらいから指示ダナまで2回ほど入れるのがセオリー。
だが、食いが渋い=食いダナが狭い時は、これが逆効果になることもある。
一方で、この狭い探り幅でもLTタックルを最大限活用すれば、さまざまな誘い方で細かく繊細にタナを探り刻むことができるのだ。
田中さんは、アタリの出方(『ライブラⅡ』ならハリには掛からないレベルのアタリも分かる)や船内の釣れ具合も見ながら、独特の4つの誘いを使い分けている。
タチウオやコマセマダイの誘いをミクロサイズしたような狙い方だが、実はこれが非常に効く。
LTアジに出掛ける際は、ぜひマスターして戦略の幅を広げていこう。
田中さんが使うLTアジの誘いのパターン
こうしたコマセワークと誘いを繰り返して、アタリを確実に出せる「自分のタナ」ができたら、次は「自分のタナ」に仕掛けの一番上のハリを合わせてアジを食わせ、そこから超スローに巻きダブル~トリプルを狙うのだ。
「ジンタ(10cm級の小アジ)と中アジが混在していれば、間違いなく大きめのアジは上にいます。イシモチが掛かってくるケースは、タナが低い証拠なので要修正です。船が前や後ろに滑っている時は、ビシが斜めに落ちていくので、そのままコマセワークに入るとタナがズレます。必ず糸が立った瞬間を狙って丁寧なタナ取りを心がけましょう」
LTアジで一番面白く、かつ難しいのがこの作業だ。
誘い幅が狭いだけに、時には10㎝タナがズレるだけで、掛かり方が悪くなり口腔の左右にハリの位置がズレてバレが増えてしまう。
反対に田中さんが“タナのスィートスポット”とも呼ぶ「自分の真ダナ」を作ることができれば、水中のアジを拾いあげるように3点掛けの連発劇が続く。
このように、タックルと全てのアイテムが綺麗に連動してドライブがかかると、半日船やショート船で100尾以上という驚異的な釣果を叩きだすことも可能だ。
一年で一番アジを釣りにくい厳寒期に、このレベルの釣りができれば、コマセ釣りの全てに通じるスキルがアナタのものになる。
だから、LTアジを釣り込むベテランたちが後を絶たないのである。
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