私が東京湾奥川崎・中山丸の船長たちと知り合ったころ、お兄ちゃんの中山勝之船長は20歳そこそこで、弟の和哉船長はまだ10代だった。
彼らの父、中山賢船長が中心となって、親子3人の船長で釣り人を楽しませてきた中山丸は、親切ていねいな接客とユルリとした雰囲気が評判を呼び、平成の時代にじわじわとお客さんを増やしてきた。
一家の大黒柱で、店主として奮闘してきた賢船長も60代後半を迎えたことから、昨年9月に世代交代、長男の勝之船長が店主となった。
とはいえ、賢船長も現役続行。
今後も舵を握り、二人の息子船長をバックアップしていくという。
妻、那美さんと結婚して、二人の息子に恵まれた勝之船長は今年38歳。
さらなる中山丸の発展に向けて、弟の和哉船長とともに釣り人目線に立った経営を目指している。
店主の中山勝之船長と奥様の那美(ともみ)さん、長男の琥太郎(こたろう)くん、次男の竣太(しゅんた)くん。看板犬のチャッキーは13歳のおじいちゃん。
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最新鋭の新造船が就航、3隻体制に。
そんな中山丸にこの春、新造船がやってきた。
16年前に進水した第六中山丸が13トン。
今回進水した第八中山丸は、それより一回り大きな17トン。
850馬力のエンジンのほか運河最奥の桟橋への出入りが円滑に行える装備やソナーの二機配備など、まさに最新鋭の機器をフル装備した一隻である。
一方で、釣り人の動線や釣りやすさにもこだわった。
例えば傾斜により釣りにくいことが多いミヨシ近くの釣り座をフラットな床面にし、船ベリの低さを手すりでフォロー。
どの釣り座に入っても快適に釣りが楽しめる設計とした。
また、年配者や船に不慣れな方の動きやすさにも配慮して船前方の通り抜け通路は段差をなくし手すりを設置。
乗下船時の安全を確保するなど各所に工夫を凝らし、より一層安全で快適な船上を実現した。
これからのシーズンは通常、第八中山丸がタチウオ、第六中山丸がライトアジで出船。
予約が多い日の2隻目や仕立船を第五中山丸がフォローする体制を取るという。
主にタチウオ船で出船する第八中山丸。
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(上)主にライトアジで出船する第六中山丸。(下)乗合の2隻目や平日の仕 立船で出船する第五中山丸。
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タチウオは東京湾の人気ナンバー1ターゲット。
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一日船でたっぷりタチウオ釣りを堪能
8月初めに出かけたこの日は、勝之船長担当のタチウオ釣りに第八中山丸が配船された。
朝から燦さんさん々と陽射しが降り注ぐベタナギの東京湾。
穏やかな海面を滑るように船は突き進む。
振動が少なく、安定感は抜群。
快適な航行で最初のポイント、観音崎沖に到着した。
当日は観音崎沖、第二海堡周辺、走水沖の順で狙い、どこでも型は見られたが、なかなか難しい釣りとなる。
序盤は一生懸命シャクる人にはアタリすらなく、のんびりと置き竿に近いような状態でアタリを待つ人が3連発。
そうかと思えば中盤からは、積極的に誘う人が大型を連発。
気まぐれなタチウオに翻弄される一日となった。
朝一番に狙った観音崎 沖は中型主体だった。
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中盤から狙った走水沖では良型ばかり。
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「どこへ行っても反応はバッチリあるんですけど、ここ数日差している濁りを嫌っているのか、難しい展開が続いています。
でもね、タチウオは一杯います」と勝之船長は苦笑い。
魚探画面を覗くと、指示ダナ一杯にタチウオの反応がビッチリと映し出されていた。
この夏は例年になく大きなタチウオが釣れていて、この日もメーターオーバーはもちろんのこと、120cm級のドラゴンも顔を出した。
数釣りも楽しいけど、やっぱりこのサイズがうれしい。
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当日最大は120cm級。
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日々刻々と状況は変化するものの、昨今の東京湾のタチウオ釣りは、ほぼ周年楽しめる。
今後も釣れる水深や潮流の速さに臨機応変に対応できるよう40、60、80号と各号のオモリを携えて出かけてもらいたい。
(左)オモリは40号60号80号を状況で使い分ける。(右)エサはサバの切り身。きれいにカットされている。
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お日様が西に傾きかけたころ、第八中山丸は走水沖を後にした。
7時前に出船して、15時過ぎに着岸。
一日船は、休日のひと時をのんびり&じっくりと楽しめるのがいい。
船着き場に戻ると、若おかみの那美さん、長男の琥太郎くん、次男の竣太くんが出迎えてくれた。
お父さんが仕事をしてきた船でせっせと片付けを手伝う二人。
なんとも頼もしいこの少年たちも、いずれは中山丸の船長という道を選ぶのだろうか。
帰り支度を済ませると、電車で出かけた私を和哉船長が川崎駅まで車で送ってくれた。
この日、たくさんの来客があった第六中山丸のライトアジの釣果はぼちぼちだったとのこと。
前半は空振りの流しが続いて冷や汗ものだったが、後半盛り返して、なんとか格好がついたらしい。
知り合ったころの昔話や最近の釣り事情、船長の近況なんかを話しているうちにあっという間に駅前に到着。
すっかり落ち着きのある大人になった和哉船長に手を振り、川崎の町を後にした。
【船宿information】中山丸
乗船と下船の流れ
①到着したら乗船入口で車から荷物を降ろす。
②スタッフの誘導に従い車を駐車場へ移動する。
③乗船名簿に記入する。
④受付で会計を済ませて乗船。
⑤各自が出したゴミは下船時に分別して台船のゴミ箱へ。
⑥下船後はお茶のサービスをいただいて帰宅。
中山丸の設備とサービス
(左)受付前に設置されている 桟橋から乗船。(右)乗船しやすいようにステップが設置されている。
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(左上)ライフジャケットの貸し出しあり。(右上)乗船場の台船にもトイレがあって女性も安心。(下)下船後の手洗い場も完備。
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ココがいいね! 第八中山丸
(左)最新鋭機器のフル装備。今やタチウオ釣りに欠かせないソナーは2機搭載している。(中央)走行時も循環水を流し続けられる。(右)船前方の通路がフラットなので左右への移動がスムーズ。
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(左上)竿立て用の穴がたっぷりあるから予備竿はこちらへ。(右上)ボーズヘッド(ミヨシ席)はめちゃくちゃ広い。(左下)操舵室にレンジとポット。船長に声をかけて借りよう。(右下)第六、第八ともに探見丸 塔載船。
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(左)船体前部キャビン(中央)後部キャビンにはエアコンとポットを設置。(右)操舵室後ろのデッキでくつろげる。
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中山丸の釣り物とシーズン
カマちゃん・釜井昌二(かまいしょうじ)
電車やバスでどこでも釣りに行っちゃうフィッシングライター。
アトリエぷらりおさかなイラストレーター。
A.T.LAB フィールドアドバイザー。
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【 東京湾(神奈川県)タチウオ船】人気ランキング
隔週刊つり情報(2020年9月15日号)※無断複製・転載禁止