釣りにガチ!
いつも本気で竿を振るジャッカルプロスタッフ、吉岡進さん。
「ヨッシー」のニックネームで親しまれている彼が、様ざまな沖釣りに挑戦する新連載「ツリガチ!」のスタートだ!
本気だからこそ、おもしろいドラマが生まれる。
本気だからこそ、熱い感動がある。
新連載1回目は、夢の大ダイを求めて鹿島沖に浮かんだ!
平和なニッポンにおいて殺気立った人々の集団を見たいと思ったら、早朝の港に行けばいい。
午前4時。
まだ日も昇らぬ茨城県鹿島の港に集う者たちは、皆一様にマスクをしてカッパのフードをかぶり、ギラついた目だけのぞかせていた。
だれかが「まだ寒ぃッぺよ」と言ったのだろう、ドラム缶にボンボンと盛大に火が焚かれ、群がった連中が無言で揺らめく炎を見つめている。
そしてたまにクルマが通ると「だれだ、ありゃ?」「なんか来たぞ」といったフンイキでジロリと睨みを効かせるのだ。
貴重だ。
貴重でしょう。
剥むき出しの殺気、やる気、そして前のめりな戦闘態勢を、暑苦しいまでに存分に発揮できる場は、わが国においてすっかり減ってしまった。
だが、沖釣りに挑む者たちは、「魚を釣る」というたった4文字の行為に対して、全力で取り組むのである。
しかもこの時期の鹿島沖は、大ダイの可能性がある。
夢に満ち、野望が燃え盛る海なのだ。
「周りはみんなライバルだ、だれも釣れなくてもオレはぜってぇ釣ってやる。オレは。オレだけは!」という内に秘めた熱い意気込みは、結構いい金額の買い物から前夜の抜かりない準備に至る多大な手間によって膨れあがり、ムワッという殺気になって立ちのぼるのである。
ガチである。
みんな、釣りという趣味に本気だ。
だからこそ釣りというのはおもしろいってもんである。
浮いているマダイをカーブフォールで狙う!
メインの船着き場からひと角曲がった所にある大春丸の船宿は、その殺気がわずかに和らいでいるようだったが、暗がりに集いひそやかに語り合う人々の間に漂っているのは、やはり気合いがこもった空気であった。
吉岡進。
愛称はヨッシー。
茶髪にカッコよくパーマをあて、いつもスタイリッシュなファッションでスキなく身を固めている(ギリギリ)30代の好青年も、根っからの釣り人である。
大春丸に乗り込み、周りのお客さんと笑顔であいさつしながらも、緊張感がみなぎる。
「吉岡さんはプロだから、全部釣られちゃうなあ」
「いやいや・・・」
苦笑いするヨッシーの肩に、ずしりずしりとプレッシャーがかかっていく。
釣具メーカーとして名だたるジャッカルのプロスタッフであり、今日も本誌の取材で編集者やライターを引き連れての釣りだ。
「結果を出して当たり前」なのである。
だが一方で、プロといえども「結果が出なくても当たり前」という面があるのも事実。
これが釣りの奥深さであり、怖さなのだ・・・。
4時45分、大春丸はスルリと岸を離れた。
どんよりと暗い空に、少し強い風が吹いている。
午前中から晴れる予報が外れ、冷たい雨も落ちてきた。
5時半ごろに最初のポイントに到着し、釣り開始となった。水深30m前後、底はフラットな砂利のようだ。
ライターのタカハシゴーがいきなりホウボウを釣り、「魚ッケ、あるね~」などと分かったようなことを言いながら満足げに鼻の穴をふくらませている。
日本全国津々浦々での釣り経験が豊富なヨッシーは、「鹿島のマダイは浮いているはず」と読んでいた。
そして浮いているマダイを釣ることの難しさも深く理解していた。
開始からおよそ1時間。
ヨッシーの合わせがビシッと決まった。
1kg弱。
小ぶりながら、立派なマダイである。
「ビンビンテンヤをカーブフォールさせている途中で食ってきたね。やっぱり今は底では食ってこない。浮いてるね」
ヨッシーの釣友、鹿島一郎さんは「イソメマン」と呼ばれている。
どんな釣りでも「これなら釣れるっしょー」と、アオイソメを持ち込むのだ。
砂利底の鹿島沖ともなれば、「アオイソメを使えば釣れて釣れて仕方ないだろう間違いなく大ダイくるなウヒヒ」的な皮算用であったが、恐るべきことに底にアオイソメを落とし込んでもピクリともアタリがない。
ならばと「巻きアオイソメ」で宙層を狙っても、やはりアタらないのである。
万能エサとしか思えないアオイソメが、ここでは完全にシカトされているのである。
げに恐ろしや、鹿島の魚。
さらに恐ろしいことが起きたのは、7時過ぎのことだった。
船長がヨッシーにこう声をかけたのである。
「ヨッシー頑張って。右舷大ドモのお客さん、もういいサイズのマダイ3枚釣ってるよ!」
な、なに!?という表情は見せなかった。
あくまでもクールに、「ははは、そっスか。頑張ります~」と微笑むヨッシーである。
しかし、その笑みも消し去ってしまうほどの勢いが、大ドモのお客さん──青木陵司さんにはあった。
それから2時間弱の間にさらに4枚を追加。
3kg級も交じり、圧巻の釣果をたたき出したのである。
カーブフォールさせている途中で食ってきたね。やっぱり今は底では食ってこない。浮いてる・狙いどおりフォールで食わせた
出典:
次つぎとマダイを上げる青木さん
出典:
これぞ鹿島沖のポテンシャル・6.5kgの大ダイ浮上!
「いやぁ、たいしたことはやってないですよ」と謙虚な青木さんだが、いくらなんでも圧倒的すぎる。
毎週のように足繁く通っている、とのことだが、それにしてもスゴイ。
詳しく釣り方を聞くと、これも王者の風格というものか、青木さん、あっさりと、そしてていねいに教えてくれるのである。
青木さんは、生きエビを付けたテンヤをポーンと船後方にキャストする。
だいたい20mぐらいだろうか。
着水からさらに5m前後PEラインが出たところでベールを返し、糸の出を止めてしまう。
するとテンヤはゆっくりとカーブフォールすることになる。
「そして、途中でテンヤが止まるんですよ。そしたら合わせる。ホント、それだけ」と、青木さんは笑った。
どれぐらい投げるか、そして着水後にどれぐらい糸を出すかは「カンですよ」と青木さん。
そのカンこそが、通い詰めた者だけが知り得る「妙技」なのである。
そして追い打ちをかけるかのように、8時45分、ヨッシーのはす向かい、右ミヨシにいた大徳伸之さんの竿が大きく曲がり、激しくたたかれた。
これはもう、間違いなく大ダイだ。
素早く、力強いヤリトリをへてボカンと浮かんだのは、6.5kgの大ダイだった。
いつしか晴れていた青い空に、桜色の魚体が美しく映える。
迫力の大ダイを抱きかかえながらも、「ええ、一応、自己記録です、はい」と、青木さん同様に謙虚さがにじみ出る大徳さんである。
そして「特別なことはしていません。カーブフォールさせただけで・・・」と、青木さんと同じことを言って静かに微笑むのだった。
最初からカーブフォールで攻めていたヨッシーの読みは、完全に当たっていたことになる。
だが、残念なことに、何かが微妙にうまくかみ合っていない。
のちにヨッシーはこう振り返った。「釣り座の関係で思うような向きにキャストできず、テンヤを浮き上がらせるコースが取れなかった」
しかし、それは乗合船に乗るだれにでも起こり得る運命のようなもの。
そこを打破してこそプロというものだ。
船長の言うとおり、頑張れヨッシー!
・・・頑張った。
しかし結果は出ないまま、11時半の沖揚がり時間を迎え、大春丸の午前船は終わった。
船着き場に戻るや「ねえねえ、このまま終わっちゃっていいの?」と、ヨッシーが編集チカダに迫った。
「これじゃ書くネタならないなあ」と、ライターのタカハシゴーがボヤいた。
「新連載のしょっぱなが、1kg弱のマダイでいいの?」とヨッシーが畳みかけた。
「うっ、ああっ、えっ、どうしよっかな・・・」。
原稿仕事を抱えていた編集チカダの目が泳ぐ。
瀕死のイワシのように、ヨロヨロと。
船中では青木さんの7枚を筆頭に、大徳さんの6.5kgの大ダイも上がり、ページを作るにあたって十分な写真素材はすでに確保できている。
そこへ気風のいいおかみさんがやってきて、「はい、これ。午後も乗るんでしょ? 食べて食べて」とお弁当とお茶を手渡してくれた。
船長も「おう、乗んなよ」と軽い調子で後押しをした。
空揚げをつまむ編集チカダの目に、もう迷いはなかった。オレたちはガチだ・・・!
当日最大6.5kgを釣り上げた大徳さん
出典:
ビンビンテキサステンヤで1kg級のマダイをゲット
出典:
大ダイとの新たな出会いが次の釣りへのモチベーション
賑やかな満船だった午前船とは打って変わって、午後船で竿を出しているのはヨッシーとタカハシゴーを含め、4人だった。
そしてその中には、午前船ですでに十分な釣果を出したはずの青木さんの姿もあった。
この貪欲さ。
釣りに対してガチなこの姿勢が、また次の大釣りを呼ぶのだ・・・ろうか?
海はいっそう穏やかになり、静まり返った大春丸の船上には、やはり殺気のようなものがみなぎ
っていた。
「ああ~っ!」
ヨッシーが吠えたのは、午後船終了間際の午後5時45分ごろのことだった。
虚しい遠吠えが鹿島の空に舞い散る。
ヒザをたたく。
顔をしかめる。
全力で悔しがっている。
そして、「自分の弱さッスね」と苦笑いした。
大ダイをバラしてしまったのだ。
夕方になり、潮向きが変わった。
すぐ隣の船から「5kgの大ダイが上がった」との情報が飛び込んできた。
ここだ・・・!
満を持して、テンヤからバンブルズTG SLJにスイッチする。
ジグを長く引くことができる潮だ。
必ず食ってくる。
その読みどおり、大ダイがジグにアタックしてきた。
姿こそ見えなかったが、ジャーッと激しいドラグ音を立ててPEラインを引き出す勢いや、ゴン、ゴ
ゴンという重おもしい段引きは、間違いなく大ダイだった。
だが、ほんの何秒かのヤリトリの後、ロッドがプンッと跳ね上がり、軽くなった。
「あっ、えっ、やっぱり!?」
何が起きたのか、すぐに分かった。
だが、後悔しても手遅れだ。
大ダイはヨッシーのハリから逃れ、もといた鹿島の海へ悠々と帰っていった。
「弱気だったね」とヨッシーは肩を落とした。
午後も、ビンビンテンヤとビンビンテキサステンヤで1kg級のマダイを2枚、釣ってはいた。
だが、午前の爆発的な釣果と、6.5kgの大ダイの姿が頭から離れない。
大ダイは、いる。
なんとしても仕留めたい。
あの大ダイを・・・。
その強い思いが、しかし、ヨッシーを守りに入らせていた。
ガシッという手応えがあったとき、瞬時に「これは大ダイだ」と分かった。
ドラグには1kgの荷重をかけていたが、PEラインがやすやすと引き出されていく。
「ハリが曲がるかもしれない」と判断したヨッシーは、とっさにドラグを半周だけ緩めたのだ。
これがヨッシーの言う「弱気」だった。ドラグが効いていれば、ヤリトリしながら徐々にハリ掛かりが深くなっていく。
しかし弱いドラグでは、十分な力がハリ先にかからない。
甘いフッキングのまま、大ダイに主導権を握られた。
「ジグだからテールフックでフォローが効くかな、と思ったけど、午前、午後と通しで船に乗って最後の最後にきた大ダイだったからね・・・。完全に守りに入ってしまった。テンヤなら話は別。大きくて強い親バリは、最初から大ダイ仕様。強気でヤリトリできる。でもジグだから、ハリが折れる可能性を考えてしまったんだ。合わせも弱かったし、その後の巻きも自分としては遅かった。そう、弱気だったんだ・・・」
燃えるような思いを携えて午後船に臨んだヨッシー。
熱意が強すぎた結果守りに入り、大ダイを逃すスキを生んでしまった。
午後船では、小泉さんが2.7kgを上げたが、午前ほどの爆発力はなかった。
「実はもう1回、大ダイらしき手応えがあったけど、やっぱりバラしてしまった。鹿島の海に、自分から負けちゃったかたちだね。悔しいな、ホント・・・」
今まで何回マダイ釣りで船に乗り、何枚釣ったか分からないヨッシーである。
自己記録は9.1kg。
それでもなお、新たな出会いを求めて、心をたぎらせるのである。
そして熱い熱い炎は、次の釣りへのモチベーションとなった。
大ダイとのファイト!慎重に寄せてくるが・・・
出典:
大ダイをバラした瞬間、悔しさで天を仰ぐ
出典:
鹿島沖の一つテンヤ真鯛で釣りがちなゲストたち!
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隔週刊つり情報(2021年7月1日号)※無断複製・転載禁止