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【スターは遅れてやってくる!?】ヤリイカ

隔週刊つり情報編集部

イカ釣りファンをちょっと不安にさせているのが今シーズンのヤリイカ。

相模湾では、例年なら9月あたり、早い年は8月のお盆過ぎから胴長15cm前後の若いヤリイカが釣れ始めるのだが、今年はほぼ音なしだった。
 
ようやく顔を見せ始めたのは10月に入ってからで、城ケ島沖の水深150~200m付近や、瀬ノ海(二宮沖)の水深100m前後でポツリポツリ。

さらに10月中旬から開幕した期待の小田原南沖(初島周り)も出足は鈍く、今のところ景気のよい情報は見当たらない。
 
けれども相手は自然。

何らかの理由で冬~春の産卵期が1~2カ月ずれたとしたら、これからドッと群れが現れるかもしれない。
 
その可能性にかけて、ここでは初期の小さなヤリイカ(以下小ヤリ)釣りのツボを押さえておこう。

ヤリイカ専用ロッドで微かなアタリをとらえる

まず肝心なのは竿。

とくにシーズン初期の小ヤリ狙いは、穂先が繊細な先調子のヤリイカ専用ロッドが望ましい。

胴長15~20cmの小ヤリの引きは同サイズのマルイカやムギイカに比べるとかなり弱よわしく、そのアタリを水深100mを超える深場でキャッチするためにも、感度に優れた専用ロッドを推奨する。
 
電動リールはPE3号前後を300m以上巻ける番手で、ダイワ300~500番、シマノ800~3000番あたり。

ちなみに多点掛けすると強烈に重いスルメイカ釣りはパワフルなリールが必要だが、ヤリイカは通常パワーの中~小型電動リールで十分。
 
仕掛けは11cmのプラヅノを7本前後結んだブランコ仕掛け。

サバが多い日やヤリイカの乗りがよい場合は直結仕掛けも活躍するのでバッグに忍ばせておいてもいいけれど、身がやわらかい小ヤリは身切れバラシや、ちょっとした仕掛けの上下動でスッポ抜けることも多く、構造的にバラしにくいブランコ仕掛けのほうが無難だ。
 
ヤリイカの遊泳層はおおむね底から10mの範囲なので、全長10m強の7本ヅノ仕掛けでタナの大部分をカバーできる。
 
ただし、ヤリイカの活性が低いとタナも下がって、下側のツノ2~3本にしか乗らないことも多い。

こんなときはツノ数を5~6本に抑えて手返しを早めるのも一策。

一流しごとの投入回数を増やし、底にいるヤリイカを着実に拾っていく。
 
逆に、上ヅノ中心に乗ってくるときはヤリイカの群れが高めに浮いている可能性が高く、ツノ数を9~10本に増やして様子を見てもいい。

釣行の写真

まもなくヤリイカのやる気スイッチが入る・・・はず

竿の写真

手前マツリを防ぐため、釣り座の周りは整理整頓。スムースに仕掛けをさばいて投入回数を増やすことが大切

仕掛けの写真

(左上)誘いヅノとして、7cmの赤白ウキスッテも1本は交ぜておきたい(左下)相模湾のヤリイカ釣りはオモリ120号が標準(右)11cmのプラヅノが5~7本付いたブランコ仕掛け。市販品も豊富にラインアップ

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初期の小ヤリは細く短いプラヅノが有効

プラヅノは薄い水色、ピンク、ケイムラの3色がヤリイカ狙いの定番カラーで、隣合わせの色が重ならないよう交互に配置。

ボディ形状は、小ヤリには細めのほうが乗りがよく、太め(幅広)のタイプは後期の大型ヤリイカに効くといわれている。
 
過去、シーズン初期の取材を振り返ってみても、竹型と呼ばれるスリムなプラヅノを使っているベテランさんがダントツで乗せていた記憶がある。

細身のツノは小さなヤリイカの非力な腕でも抱きやすいのだろう。
 
さらに今回、相模湾腰越港・飯岡丸の船上でお会いした黒田さんに興味深い一手を教わった。
 
ムギイカ&マルイカ用としてリリースされている8cmのプラヅノ(ヤマシタのピッカピカ針8cm)が、小ヤリ狙いに効くらしいのだ。

当日も11cmのプラヅノに全くアタらない状況下で単発ながらもヤリイカを乗せていたから、困ったときは試してみる価値がある。
 
黒田さんはツノ数6本のブランコ仕掛けを使っていて、8cmのプラヅノに加えてマルイカ用のスッテも2本付けていた(下写真参照)。
 
ヤリイカ釣りは赤白のウキスッテを定番としたスッテ類を1~2本交ぜておくといいとされ、プラヅノとはちょっと異なる動きで自分の仕掛けにヤリイカを誘い込む効果が望める。
 
問題はスッテを付ける位置。
 
最もスタンダードで手軽なのは「仕掛けのど真ん中に1本付ける」パターン。

ブランコ仕掛けの真ん中で揺らめくスッテにヤリイカを寄せ、その上下のプラヅノに乗せるイメージだ。
 
もう一つは黒田さんのように、仕掛けの上下に計2本のスッテを付けるパターン。

この場合は下から2番目および上から2番目に付け、スッテの上下のプラヅノにイカを乗せる。
 
下のスッテは底近くに沈んだヤリイカを誘い、上のスッテは少し浮いたヤリイカにアピール。

上下の二段構えで攻めていくこのスタイルは、乗り渋りの日に効果を発揮することがある。

「スッテのほか、状況によっては若草色(蛍光グリーン)のプラヅノにヤリイカが反応することもあります。スッテの効果が今一つのときは試してみてください」。

イカ釣り歴30年以上という黒田さんのアドバイスは、覚えておいて損はないだろう。

黒田さんの小ヤリ仕掛け

黒田さんによる手作り仕掛けは、初期の小型ヤリイカに特化しています。

このブランコ仕掛けは、8cmの光る針の間に、マルイカ目的のスッテ2本を挿入し、ツノの数が6本(最上部は11cm)となる設定で、比較用に横並びにされています。

竿の写真

感度のいい先調子の穂先が不可欠

リングの写真

黒田さんはイカ用ヨリ取りリングも愛用

釣行の写真

座ったままシャクリを繰り返す黒田さん。御年75歳というから恐れ入る

底から3~5mを粘り強く誘い続ける

ヤリイカ釣りの第一歩は素早い投入。

船長はヤリイカの群れにうまく仕掛けが入るよう投入合図を出すから、タイミングを逃さないようにサッとオモリを前方へ放り込み、仕掛けをスピーディーに着底させる。
 
一番のチャンスタイムはその着底直後。

糸フケをゆっくり巻き取って、スーッと竿先を持ち上げながらヤリイカのアタリを見る。
 
竿先がフワフワと上下したらもう乗っているので、すかさず手巻きか電動リールの低速で10mくらい巻き上げ、徐々にレベル17~19あたりまで速度を上げて回収。
 
アタリがなければシャクって誘う。

70~100cm刻みでスーッと竿先を持ち上げたら、3~5秒ピタリと止めて竿先に出るアタリを見る。

アタリを取る間を意識せずシャクリまくると、とくに小ヤリはまったく乗りが分からなくなるので注意しよう。
 
誘う範囲はツノ数7本の全長10m近い仕掛けなら、底から3~5mで十分。

前述したようにヤリイカの遊泳層は底から10の範囲が中心だから、これだけ誘えば十分にツノをアピールできる。
 
3~5m誘い上げたら今度は落とし込みで誘い、クラッチを切ってサミングしながら70~100cm刻みでストップ&ゴーを繰り返す。
 
こうして上下の誘いを3セットくらい繰り返したら、高速で20~30m巻き上げて再着底。

通称・巻き落としでイカの摂餌欲を刺激する。 

また、沖のイカ釣り全般に共通する心得として、仕掛けの取り込みは急がず慌てずマイペースで行うこと。
 
イカがいるにせよ、単なる巻き上げ回収にせよ、仕掛けが絡まないようていねいにさばいてツノを投入器の奥深くまで確実に収めていく。
 
釣果を下げる最大の要因は手前マツリ。

絡まった仕掛けをほどくロスタイムが生じると、必然的に投入回数が減って釣果ものびなくなる。

サクサクと仕掛けをさばくベテランのペースに無理して合わせず、自分なりにスムースな取り込みを心がけたい。

ヤリイカ釣りの基本イメージ

着底直後はそーっとアタリを聞く

釣行の写真

(左)オモリが着底した直後はヤリイカが抱きつく一番のチャンス。まずはゆっくりと糸フケを巻き取って・・・(右)そーっとオモリを持ち上げて静止し、竿先を注視してアタリを確認。乗っていれば巻き上げる

釣行の写真

ツノが泳ぎ上がるようにスーッとシャクリ上げて、3~5秒ストップ。穂先が小さく上下したらヤリイカが乗っている

怪しいアタリはとにかく巻いてみる!

ツノにヤリイカの身切れした腕や墨だけが付いて上がってくる・・・。

初期の小ヤリ釣りではよくあるシーンだ。

これを完全に防ぐのは難しいものの、小さなアタリをキャッチするために次のような手順を踏んでみるといい。
 
シャクったり落と込んだりしてツノを動かした後は、先にも述べたように竿先をできる限りピタリと止めてアタリを見る。

昔、長井のある船長は「ヤリイカが乗っていればアタリはおおむね5秒以内に出る」と言い「それ以上待ってもツノが止まったままなので乗らないよ」と話していた。
 
5秒以内の間にアタリかどうか分からない微妙な変化を察知したら、カンナに掛かったヤリイカを引き上げるイメージで竿を立てつつ、手巻きや電動の低速で5~10m巻き上げてみる。

イカが乗っていれば少し暴れてアタリが明確になり、合わせにもなる。

それでも全く暴れない、けれどもなんとなく重みはあるような気も・・・という中途半端な状況ならばそのまま巻き上げて回収し、ヤリイカが付いているかどうかをチェック。

乗っていればラッキーだし、たとえ空振りであっても仕切り直しの再投入となってヤリイカにアピールできるわけだ。
 
よくないのは「これはイカのアタリなのだろうか?」と10秒以上も竿先を止めて、待ち続けてしまう行為。

その間にカンナからスーッとイカが抜けて、墨の付いたプラヅノだけが上がってくることになる。

初期の小型ヤリイカ釣りの要点

釣行の写真

乗りが判然としないときはひとまず巻き上げて確認。空振りであっても仕掛けを入れ直すメリットが得られる 

さて、先行き不透明な今シーズンのヤリイカ。

冒頭で11月から小ヤリが釣れ出すのではと希望的観測を記したものの、ひょっとするとどこかに隠れて成長した胴長25cm程度の中型の群れが出現する可能性もある。
 
サイズはどうあれ、まだスレていない最初の一群に遭遇すれば入れ乗り間違いなし。

ヤリイカファンはその一時に期待して船に乗り続けるのだ。

今年のヤリはスロースタート。群れよこい、早くこーい!

釣れようが釣れまいが、なじみの船宿へ顔を出す。

インターネットが普及するまではそんな釣り人が多かった。

10月11日に相模湾腰越港の飯岡丸で同船した黒田さんもそのタイプで、75歳となった今も潮風を求めて足繁く通っている。
 
そして、釣れようが釣れまいがヤリイカ船を出してくれたのは三浦徳人船長。

不調なのは承知の上ながら、季節物のヤリイカを取材したいと申し出ると、「まだダメかもしれないけど、探してみましょう」と快諾してくれた。
 
黒田さんと私を乗せて7時に出船。

瀬ノ海(二宮沖)へ向かいながら今シーズンの様子を聞くと、どうにか釣れているのは城ケ島沖の水深150~200mあたりで、釣果はスルメを交えてトップ8杯前後とか。
 
釣れ始めに小型ヤリイカが集まる秋谷沖や江ノ島沖の水深100m付近も覗いているものの、今のところ大きな群れは見られないという。

「もう10月中旬なのに水温が25度もある。ちょっと高すぎるよね」というのが船長の見解。

もう少し水温が下がればいつもの所にヤリイカが現れるだろうと日々願っているそうだ。
 
ちなみに当日は南西風が強まる予報で、直に吹き付ける城ケ島沖はパス。

風を避けながら、まだリサーチしていない瀬ノ海の様子を見ることになった。
 
魚探を見ながら旋回し、投入合図が出たのは水深100m付近。

瀬ノ海の西側に位置する崖っぷちの肩で、初期の小型ヤリイカが集まるエリアだ。
 
すぐ近くの小田原沖には、50隻近くのキハダ船が浮かんでいる。

実はその船長たちの間で、「瀬ノ海の縁にヤリイカっぽい反応がある」という情報が流れていた。

船の写真

飯岡丸は釣り座の予約ができるので、席取りのために早起きする必要はない

瀬ノ海にもいた!

「乗ったよ~」
 
流し変えを繰り返しながら1時間が経過したところで、底から3mの間を丹念にシャクっていた左舷大ドモの黒田さんが声を上げる。
 
秋の青空に水鉄砲を吹いて海面を割ったのは胴長25cmのヤリイカ。

この時期にしては立派なサイズだ。

「小ヤリ用の仕掛けを使ってるのに、いい型が乗りました」と笑顔の黒田さん、そのプラヅノが先述したピッカピカ針の8cmだった。
 
途中で11cmのプラヅノで組んだ仕掛けも試していた黒田さんだが、1時間後に乗った胴長20cmの2杯目も、やっぱり8cmのプラヅノ。

「いやね、仲間が先日このツノでポツポツ乗せていたから今日初めて試したんですよ。いけるねぇ、これは」
 
持ち合わせがないこちらは指をくわえて見るしかなかったが、このプラヅノは初期のヤリイカ狙いで定番になっていくかもしれない・・・。
 
しかし喜びもここまで。

残り時間はいくらシャクってもヤリイカは乗らず、時どき掛かってくるのは小さなサバだけ。
 
12時過ぎまでがんばったものの状況は変わらず、いよいよ南西風が強まってきたところで、「もう揚がろうよ」と黒田さんが提案。

船長ともどもうなずいて、早揚がりを決めた。
 
ちなみに城ケ島沖は10時過ぎに風が強まり、全船早揚がりとなったようだ。

「甘くはなかったけど、瀬ノ海にヤリイカがいたのは小さな収穫。遅れた分だけこれから盛り上がってほしいね」
 
船長、そして釣り人の期待がかかる11月がやってくる。

つい最近雪化粧した富士山がヤリイカを呼び寄せてくれると信じて、動向を注視していこう。

釣り人の写真

黒田さんのおかげで、今シーズンの初物を撮影できた

イカの写真

ヤリイカはいる。あとは大きな群れの出現を待つのみ

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