東京湾のフグ釣り、いわゆる「湾フグ」は、アタリを取って掛ける釣趣がだいご味。
釣れるのはショウサイフグが主体だが、近年は春のトラフグ、秋~冬はヒガンフグ狙いもメニューに加わっている。
10月中旬現在、フグ乗合を出しているのは内房富津の川崎丸、東京湾奥浦安の吉久、吉野屋、羽田のえさ政釣船店、鶴見の新明丸、金沢八景の野毛屋、三浦半島鴨居大室の一郎丸の7軒。
それぞれ狙っている釣り場、釣れるフグの種類、仕掛けなどが変わってくるので、今回は各船宿の船長に仕掛けや釣れ具合、各地の模様や釣り方などを教えてもらった。
東京湾のフグ出船港MAP
【内房富津・川崎丸】石井広一船長
目下の釣り場は富津南沖の水深10m前後の根周りが中心。
釣況は始めたばかりなのでまだ傾向がつかめていないそうだが、コモンフグ、ヒガンフグ、ショウサイフグ交じりでトップ20~25尾ほど。
割合は日によってコモンフグが大半を占めるときもあれば、ショウサイフグが多いときもあり、ヒガンフグは1~2割とのこと。
富津出船のフグ乗合はカットウ仕掛けを使わない、「食わせフグ」という独特のスタイル。
仕掛けは胴つき3~4本バリでオモリ20号。
エサはアマエビを小さくカットして使う。
道糸はオマツリ防止のためPE1.5号以下で、川崎丸ではPE1号を推奨している。
釣り方についてうかがうと、「オモリを底に着け、ゼロテンションで数秒待って、アタリがなければ1m仕掛けを持ち上げ、ゆっくり底まで下ろします。アタリがきても鋭い合わせはしないで竿を持ち上げて乗せるように合わせましょう」と船長。
(左)竿は湾フグ専用竿がおすすめ。先調子のシロギス竿でも代用できる。(右)左からヒガンフグ、コモンフグ、ショウサイフグ。
出典:
【東京湾奥浦安・吉久】大澤正幸船長
釣り場は川崎~本牧沖の水深5~20m前後で、護岸の際など根周りでヒガンフグを狙っているとのこと。
釣況は25~35cmのヒガンフグがいい日で頭10尾前後、例年と比べて数は少ないらしい。
ほかにコモンフグ、ショウサイフグが交じるという。
根掛かりの多い場所を攻めることから、吉久ではチラシ仕掛けを推奨。
オモリは10号、道糸はPE1~1.5号をすすめている。
釣り方に関しては、「着底したらゼロテンションをキープして、5秒待つ間にアタリがあれば即合わせします。アタらなければ30~50cmほど空合わせして、底までゆっくり下ろします。下ろす途中でアタったときは海底までエサを追わせて、着底させてから合わせましょう」と船長。
【東京湾奥浦安・吉野屋】吉野公大船長
釣り場は大貫沖の水深10m前後の根周りが中心。
日によりショウサイフグが多いときとコモンフグが多いときがあるという。
いずれも20cm前後で、数はトップ20~30尾ほど。
寄りフグの時期は吉野屋では食わせ仕掛けを推奨。
仕掛けは胴つき3本バリにオモリ15号、エサはアルゼンチンアカエビのむき身を小さくカットして使う。
道糸はオマツリを軽減するためPE0.8号前後をすすめている。
釣り方は、たとえるならたるませすぎず、たたかないカワハギ釣り。
「オモリが底に着いた状態から2m上まで聞き上げます。2~3秒止めたらゆっくり海底まで下ろします。下ろしている途中で何度か食わせの間を入れます。アタリは止めたあとの動き出しに出ることが多いです」と船長。
吉野屋では釣り上げたフグをおいしく持ち帰るために、ハリを外したらバケツに入れず海水氷を作ったクーラーに素早く入れるようにすすめている。
【東京湾奥羽田・えさ政釣船店】岩越裕司船長
釣り場は川崎~本牧沖の水深5~15m前後、護岸沿いなどの根周りでヒガンフグを狙っている。
開幕して間もないが、釣況は例年に比べて少し厳しいらしく、20~35cm前後がいい日でトップ10尾ほど。
根掛かりが多い場所で釣るため、チラシ仕掛けを推奨。
根掛かりしたときの被害を最小限にするため、船宿仕掛けは掛けバリから切れるようハリス止め式にしている。
オモリが10号と軽いため道糸が太いと糸がフケてオマツリの原因となるため、PE1号までをすすめている。
釣り方はショウサイフグと同じ。
「オモリを底に着けてゼロテンションで待ちます。アタリを待つよりエサをアピールしたほうがいいので、5秒待ってアタリがなければ20cmシャクってゆっくり落とし込みます」
【東京湾奥鶴見・新明丸】林大地船長
新明丸の林大地船長によれば釣り場は川崎~本牧沖の水深5~15m前後で、護岸の際を探りヒガンフグを主体に狙っているとのこと。
釣れ具合は25~35cm級を一人平均5尾前後。
船宿仕掛けはスタンダードなカットウ仕掛けでオモリ10号。
道糸はPE2号までで、1号を推奨している。
2号はマゴチ、スミイカ船で使う道糸で、常連さんが巻き替えずにフグ釣りができるようにするためとのこと。
釣り方については、「オモリが着底したら3~5秒ごとに30~50cmくらいシャクり、ゆっくり仕掛けを下ろします。キュッとシャクることでエビがピョンと跳ねる姿を演出し、フグにアピールするわけです。下ろしているときが誘いになるので、竿先に出るアタリを見逃さないようにしてください」と船長。
竿先に集中して小さなアタリをとらえる。
出典:
【金沢八景・野毛屋】黒川健太郎船長
釣り場は八景沖の水深15m前後で、根掛かりはほとんどないという。
ショウサイフグをメインに狙い16~38cmをトップ20尾ほど。
ゼロの方はほとんどおらず船中全体でよく釣れているとのこと。
ちなみに同じ場所でコモンフグも交じるが、釣果には加えていないそうだ。
仕掛けはスタンダードなカットウ仕掛けを推奨しているが、チラシ仕掛けを使ってもOK。
ただし道糸が太いとオマツリの原因となるため、PE1号までを厳守してほしいとのこと。
釣り方は毎日出船前にレクチャーしているとおりで、「オモリを着けてゼロテンションで待ち、3~5秒ごとに1回20cm幅で小さく鋭く誘い、ゆっくり落とし込みます。落とし込みでアタったら、合わせずにオモリを底に着け、一呼吸置いてから合わせるようにしてください。ゼロテンで待つときは目線より上に構えて穂先を見るとアタリが分かりやすくなります」とのこと。
【鴨居大室港・一郎丸】青木淳船長
釣り場は大貫沖の水深10m前後の根周りが中心で、コモンフグをメインに狙っている。
釣況は15cm前後のコモンフグを主体に同サイズのショウサイフグや20~35cm前後のヒガンフグ交じりでトップ50尾前後。
食いが活発なので、オモリ10号のカットウ仕掛けの上に2~3本バリの食わせ仕掛けを併用した仕掛けを推奨。
食わせ用のハリは小型がよく、丸カイズ11号が船長のおすすめ。
カットウ仕掛けの上に食わせ仕掛けを付けるため、これがリーダーの代わりにもなる。
釣り方は、「オモリを底に着けてゼロテンションで待ち、3~4秒間隔で手首を返すようにして50cmほどシャクり、ゆっくり底まで下ろします」
コモンフグはヒガンフグとショウサイフグの間くらいの歯応えで刺身がおいしいとのこと。
東京湾のフグ仕掛け例
仕掛けごとのエサ付け例
(左)食わせバリとカットウ併用仕掛けのエサ付け例。(真ん中)チラシ仕掛けのエサ付け例。(右)スタンダードなカットウ仕掛けのエサ付け例。
出典:
カットウ仕掛けと食わせ仕掛けの釣り方例
掛けた瞬間の重さが病みつきに。良型ヒガンフグにお土産付き
9月下旬、ヒガンフグを狙って出船している東京湾奥鶴見の新明丸を訪れた。
同宿ではこれまでショウサイフグを狙っていたが、9月中旬からヒガンフグ主体に狙いを切り替えている。
平日にもかかわらず当日は10名のフグファンが集まり、7時半に出船。
鶴見川を下り、最初に向かったのは横浜沖。
ベイブリッジ周辺の岸壁際、水深10m前後で、「根掛かりに注意してください」とのアナウンスでスタート。
すると早くも岸壁に近いミヨシ側でアタリがあったらしく、左ミヨシ、ミヨシ2番で良型のヒガンフグが上がる。
右ミヨシではコモンフグが上がった。
続いて胴の間、トモの順に船全体でアタリが増え、25~30cm級のヒガンフグが次つぎと取り込まれた。
掛かりどころを確かめて抜き上げる。
出典:
デカいのがきた!
左ミヨシの萩原さんは、前回海況が悪く型が見られなかったので、今回は再挑戦とのこと。
アタリを見逃さないと気迫伝わる真剣さで竿先を見つめる萩原さん。
すると、小さなアタリをとらえてキュッと合わせを入れた。
青物のようにギュンギュン走り回って上がってきたのは当日最大、38cmのヒガンフグ。
「掛かった瞬間の重量感がたまらないよ。このサイズが釣れるとうれしいねぇ。今日はこれで3尾目。活性が高そうだからまだ釣れそう」と萩原さん。
日が高くなるとアタリが遠くなり、本牧方面へ移動。
水深5mの岸壁際でお土産狙いに転じる。
お土産とはショウサイフグやコモンフグのことで、同宿ではどちらも釣果にはカウントされないものの、アタリが頻繁にあるので、ここでアタリを見て掛けるフグ釣りのだいご味を堪能してもらおうと船長がプランに組み込んでいるそうだ。
船中ではあちこちで竿が曲がり、20~25cm級のショウサイフグ、コモンフグ交じりで一人5~10尾ほど釣り上げる。
この日は船長のお姉さんも同船していて、初めてのフグ釣りでショウサイフグをゲットしている。
全員がお土産を確保したところで川崎沖へ移動し、岸壁をゆっくり流してヒガンフグを狙っていく。
朝イチのような頻繁なアタリはないものの、諦めずに誘い続けている右トモの吉田夫妻が立て続けに30cm級のヒガンフグを取り込んだところで15時の沖揚がり。
釣果は22~38cmのヒガンフグがトップ7尾、一人平均5尾前後の釣果を得た。
秋が深まり水温が下がると、ヒガンフグの群れも固まり数も期待できるという。
湾フグを楽しむなら今がチャンス。
未体験の方もチャレンジしてみてはいかが。
船長の姉のあさみさんはショウサイフグを釣り上げた。
出典:
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【隔週刊つり情報(2021年11月1日号)※無断複製・転載禁止】