波崎港がある利根川の河口から北東に10~12マイル、航程1時間ほどの位置にカンネコ根はある。
水深は110~150mとアカムツ釣り場としては浅く、ツブ根が点在するフラットな砂泥。
犬吠埼沖のような速潮も少ない。
水深が浅く釣りやすいとなれば、その分タックルもライトで済み、釣趣も増す。
ベテランはもちろんのこと、アカムツ釣り入門のフィールドとしてもうってつけ。
カンネコ根はアカムツの乗っ込み場でもあり、9~10月の産卵期に合わせて沖の深場から回遊してくる。
例年7月あたりから釣れ出して8月中旬~10月中旬にピークを迎え、その後はやや数は落ちるものの良型主体に年内一杯釣れ続くというパターンだ。
いずれにせよカンネコ根は、これまで沖釣りの釣り物としては極めてマイナーな存在だったアカムツを、一躍メジャーな釣り物にした最初の釣り場といっても過言ではない。
その人気が原動力となって、茨城県全域はもとより福島県いわき沖に至るまで、各地のアカムツ釣り場が開拓された。
メリットが多いハリ数2本のルール
のっけから余談に走ってしまったが、今シーズンのカンネコ根のアカムツは釣れ始めが早く、6月下旬よりスタートした。
取材したひろの丸も、7月に入りトップ釣果が規定数の10尾に達した日も数日あり、まずは好調な出だしとなったようだ。
7月下旬、今春導入した大型船に私を含む6名の釣り人が乗り込み、左右舷3名ずつに分かれて準備に取りかかる。
岸払いは4時15分。
風の町・波崎のシンボルとなっている風力発電の風車を見上げながら、油を流したようなベタナギの大海原へ繰り出した。
アカムツブームの火付け役となったカンネコ根にベストシーズン到来。
出典:
バッグリミットは一人10尾、15cm以下はリリースという取り決めがある。
出典:
ここでカンネコ根のアカムツ釣りのタックルと仕掛け、エサなどについて説明しておこう。
竿は各社からリリースされているアカムツ専用ロッドであれば間違いない。
代用するのであればウネリをかわしながらゼロテンをキープすることができ、誘い上げ下げの操作もしやすい長さ2m前後の7:3~6:4調子。
120~150号のオモリを背負ったときのバランスがよければ青物五目用や多目的用などでOKだ。
ロッドは竿先が鋭敏でアタリが分かりやすい7:3調子がおすすめ。
出典:
道糸はPE3号が船宿推奨(4号でも可)で、400m以上巻いた電動リールを用意すれば不意な高切れがあっても安心である。
仕掛けは胴つきスタイルの2本バリ。
ハリ数については資源保護という観点で、当地のルールにより2本までと定められている。
また、カンネコ根のトップシーズンはサバがとても多い。
ハリ数を増やせばサバに邪魔される頻度も多くなり、その対策として上バリを取って下バリ1本にすることもある。
カンネコ根の海底はほとんど平場なのでアカムツのタナが高く浮くこともあまりなく、ハリ数2本で十分事足りる。
つまりすべてが理にかなっているわけだ。
仕掛けのスペックは下図のとおりだが、ハリスと幹糸が多少太くても食いに影響を感じていない私は、幹糸7~8号、枝ス5号としている。
枝スの長さは50~60cmを標準に、潮が流れず、幹糸に枝スが絡みやすいときは30~40cmに詰める。
捨て糸の長さは1~1.2m。
下バリにドンコやサメが食ってくるときは1.5~2mと長めに・・・などと言われているが、私の経験では捨て糸を長くしてもこれらは変わらず掛かってくる。
唯一捨て糸を長くすることでアタリの数の違いを感じるのはノドグロカサゴ(ユメカサゴ)だ。
この魚が頻繁に食ってくるときだけ、捨て糸を2mに延ばしている。
ハリはホタバリ、アカムツ専用、ムツなどの17~18号。
ホタバリは今や定番中の定番で、太軸ながらバレにくいので評価が高い。
アカムツバリは細軸でエサ付けもしやすく、軽量な分、エサも潮に乗りやすい。
ムツバリは古くからの定番で、過去の取材ではグロー系に大当たりした場面に何度か出くわしたことがある。
オモリは120号か150号が使用される。
潮況や使用する道糸で使い分けるので、念のため両方2個ずつ用意しておくといいだろう(当日は150号)。
仕掛け上部に10~20号の中オモリを付けておくと、後述するたるませの誘いに有効だ。
同じ場所にケミホタルなどをセットしてもよいが、サバの状況で装着を判断したい。
波崎沖のアカムツ仕掛け
必須のマシュマロボールと発光アイテムの使い所
アカムツ釣りでマストアイテムとなっているのが、枝スのチモト側に通すマシュマロボール。
集魚の目的もあるが、一番の狙いはその浮力と抵抗でエサを潮に乗せ、漂わせながらゆっくり落とし込むこと。
とくに軸が太く重量があるホタバリを使用する場合は、2個もしくは3個付けやフロートパイプとの併用などで浮力調整する。
色はケイムラやグロー系が集魚効果は高い。
ただしサバにも効果絶大なので、サバが多いときはオレンジやイエロー、レッドなどの無発光タイプを選択する。
それでもサバにつかまってしまうときは、潔く全部取り外そう。
ほかフラッシャー巻きのハリを使ったり、チモトに夜光玉やルミックスダンサー、ケミホタルの小型版「ちもとホタル」などを付けるのも有効とされているが、これらもサバを寄せるので状況に応じて使い分けたい。
マシュマロボールにプラスするセッティング例。右からケイムラパイプ、ルミックスダンサー、ちもとホタル。
出典:
エサは冷凍のホタルイカ。
ひろの丸の場合は、船代込みで支給される。
一日分としては使いきれない大入りパックなのでエサの追加を心配する必要もない。
付け方は胴から肝付きのゲソを抜き取って(ツボ抜き)、口からハリを刺し入れて眼と眼の間に抜く。
基本はこれでよいが、ホタルイカはエサ持ちが悪く、集魚効果のある肝と眼が取れてしまうと極端に食いが落ちる。
そのため保険の意味も含めて、サバの切り身をチョン掛けにして追加する人がほとんどだ。
サバのカットサイズは幅7~8m、長さ5cmくらい。
ホタルイカのゲソと同じくらいの長さにするのがポイント。
ちなみにサバエサは船宿で用意されていないので、持参するか、釣れたサバを船上でカットしよう。
肝が取れにくいツボ抜きの方法
古く傷んだ食べ物より、新鮮な食べ物のほうがいい。
これは人も魚も同じだろう。
暑さも厳しい時期、エサは出しっ放しにせず、クーラーボックスに入れて小出しにし、常に鮮度がいい状態を保つよう心がけよう。
また、エサのホタルイカは胴から頭を引き抜くときに肝が千切れてしまったり、目が潰れてしまったりすることがある。
何かいい方法はないかと思案していたところ、昨シーズン、平潟沖のアカムツに釣行した際に同乗されていた方からこんな方法を教わった。
①ホタルイカの胴の腹側をハサミで切り開く。
②開いた胴の左右を背骨(軟甲)に沿って切り落とす。
ひと手間かけたツボ抜きの一種で、骨から肝を引き剥がすのではなく「肝に骨をつけたままの状態」にするのだ。
こうすると肝持ちがよくなるばかりでなく、頭部をつかんで引き抜く必要もないので、集魚効果があるといわれる眼も傷まない。
当日もこの方法を試してみたところ、回収時に全部とはいかないまでもかなりの確率で肝と眼が残っていた。
軟甲と内臓はくっ付いているため、エサ持ちがいい。写真はサバの切り身とダブルで付けた状態。
出典:
極端に食い渋ったらタルマセ釣りも一手
ゆっくりと航行することおよそ1時間。
同じ波崎船籍の先着船と合流して釣り開始となる。
「はい、どうぞー。115m」
全員がホタルイカとサバの切り身を付けて仕掛けを投入。
当地におけるアカムツの基本釣法は、オモリを底に着けて糸を張らず緩めずでアタリを待つ、いわゆるゼロテン方式。
時どき仕掛けを持ち上げて、フワリと落とし込んで付けエサをアピールし、再びゼロテンで待つ。
本命アカムツからのシグナルは開始からおよそ10分後、左舷トモの高橋さんの竿にきた。
竿を手持ちで大事に巻き上げ、海面下に見えてきたのはルビーレッドの魚影。
30cmサイズのアカムツが無事タモに収まった。
4回目の流し変えでは私の竿にアタリ到来。
本命ではなさそうだが手応えはよく、見えてきたのは白っぽい魚影。
最後にポッコリ海面に浮上したのは35cmサイズのアラ。
小型ではあるが、アカムツと並ぶうれしい魚だ。
釣行前日の情報では「数日前から潮が流れず、釣果も急降下」と船長。
やはりというか当日もまったく流れない潮況に、いつもは頻繁に釣れてくるドンコやノドグロカサゴ、ムシガレイもポツポツの食い。
底魚だけでなく、サバのアタリすら乏しい。
沖揚がりが迫る中、何とかあと1尾でも写真に収めたいところだ。
ゼロテン待ちでアタリが出ないので、さらに道糸を2mほど送り込み仕掛けを這わせ気味にする。
そのまま待っていれば船が流れて仕掛けが徐々に張り、たるませて漂っていたエサが引っ張られていくのだが、当日はいつまでたってもたるんだまま・・・。
そこでリールのハンドルをゆっくりと巻いて、ラインのたるみを少しずつ巻き取る。
ゴンゴンッ。
ここでアタリがきた。
もしやこれはと聞き上げるように竿を立てると、さらに明確に竿先がたたかれた。
巻き上げは中速よりやや早め。
アカムツは口周りが弱くバレやすいといわれているが、口が切れるケースよりも、口膜に掛かったハリ穴が広がったところにテンションの緩みが一瞬生じてハリがスッポ抜けてしまうパターンがほとんど・・・と私は思っている。
そんなことから巻き上げ速度は比較的スピーディーにしてラインテンションを保ち、竿を手にして、なおかつ緩めのドラグで船の揺れやウネリをかわすようにしている。
無事取り込んだのは22cmと小型だったが、誘って食わせた1尾はうれしいものだ。
サバの邪魔がほとんどなかったので、この流しではチモトに極小の「ちもとホタル」を装着。
これも効果があったのだろう。
沖揚がり間際、木澤さん、そして朝一にアカムツを釣った高橋さんにアタリ。
残り30~40mのところで暴れたから、本命だろう。
高橋さんの魚が先に上がり、古川さんのタモ取りで無事取り込まれた。
30cm超えの1尾に笑顔がこぼれ、撮影を済ませた私も一安心。
かたや木澤さんのアタリは、残りあと5mというところでサメに横取りされる残念な結果になった。
中オモリもタルマセ釣りに効果を発揮。
出典:
当日のアカムツの釣果は0~2尾。
潮がまったく流れず、これにはひろの丸のご常連、村山さんや佐藤さんもお手上げだったが、
「ま、アカムツ釣りではよくあることですよ」
「それでもまた来ちゃう価値があるんですよ、アカムツは」
さすがアカムツフリーク、こんなことではメゲないのだ。
「ナギが長く続いているので、少しシケでもきて海をかき回してくれれば新群れが乗っ込んでくると思いますよ」と船長。
例年どおり、お盆明けからの本格シーズン突入に期待しよう。
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