風に乗せて船を流し、横方向へ餌木を引っ張りながら広範囲を探る釣法がティップ・ラン。
対して道糸とハリスの間に10号前後の中オモリ(釣具店の餌木コーナーで販売)を介して餌木を垂直に下ろし、アオリイカが集まるピンポイントをラン&ガンで攻めていく手法が通称・餌木シャクリ。
ルアー釣りっぽく楽しめるティップランも好きだが、餌木シャクリも定期的に行きたくなる魅力ある釣りだ。
まず、リズミカルにシャクリ続ける単純な動作が小気味よい。無我の境地・・・とまではいかないけれども、浮き世にこんがらがった頭の中がスッキリと空っぽになる。
こうしてシャクっていると突如ドンとロッドが曲線を描いて止まり、驚いた身体が固まる。
アオリイカもビックリして固まるのだろう、必ず一拍置いてから、ゴムが大きく伸び縮みするような明確な引きがくる。
秋の小型アオリは春のビッグサイズのようにドラグが滑り出すジェット噴射は期待はできないけれど、コウイカ類やタコ類とは違うこの明確な引き込みが、たまらなく心地いい。
10月中旬現在、餌木シャクリのアオリ乗合は数軒にとどまっているが、釣り物が切り替わる11月以降は下図マップの船宿が乗合船を開始するだろう。
いずれもほぼ毎年出船する船宿なので、現況メニューになくても電話で問い合わせてみてほしい。
10月16日に取材した相模湾湘南片瀬港の萬司郎丸は、比較的早めにアオリ乗合をスタートさせている。
釣り場は江ノ島沖の水深15~25m、仕掛けは中オモリ10号、ハリス4~5号4m。
ただし今のところは平日限定の出船なので、ホームページなどで今後の予定をチェックしていただきたい。
釣況はトップでツ抜けの良日もあれば、乗り渋る日もあって、さすがは気分屋のアオリイカという感じ。
ただし個人的には夏の稚イカを数多く見かけているから、今シーズンのアオリイカの湧き具合は上々と期待している。
マグロ乗合が終われば、各船宿も続々とスタートするだろう
出典:
中オモリとハリス全長は船宿毎に必ず統一
餌木シャクリの専用ロッドは片手で軽快にシャクる1.3~1.4mの短竿もあれば、3mクラスのロングロッドもあって、ここ数年の船上で見るかぎりマニアックなファンはロングロッドを好んでいるようだ。
ロングロッドはテコの原理により、手元側が小幅な動きであっても、竿先側が大きな幅で動く。
結果、餌木がしっかり跳ね上がってアピールする。
とはいえロングロッドが大きなアドバンテージとなるのは、水深40mを超す深場を攻める冬の厳寒期。
深場は水圧や二枚潮などでシャクリ抵抗が増し、浅場と同じ力でシャクっても餌木の動きが鈍くなりがち。
そんな場面でこそ、シャクリ・パワーに優れたロングロッドは有効になる。
一方、20m前後の浅いポイントを流すこの時期、しかも初めて餌木シャクリに挑戦するならライトゲーム用のタックルで十分。具体的には「PE1.5~2号を巻いた、ライトアジ用の両軸タックル」の流用でばっちり楽しむことができる。
また、釣行前に必ず確認しておきたい重要事項が、中オモリの号数とハリスの全長。
萬司郎丸は前記のとおりだが、船宿によって中オモリは6、8、10、12、15号、ハリスは3、4、4.5mまで幅があって、各々の基準に合わせないとアオリのヒット率は下がってしまう。
各船長は餌木が漂う位置(おおむね底から1~1.5m)を頭に描いて指示ダナを決める。
ほとんどの船でタナは海面から取るのだが、ここで注意すべきは指示される数値が「中オモリの位置」という点。
例えば水深20mの釣り場でタナ15mとコールされたら、道糸のマーカーを正確にカウントしながら海面下15mまで中オモリを下ろす。
ハリス全長が4mであれば、餌木は底上1mの適正な位置を漂う計算になり、根掛かりを避け、アオリイカもよく乗るスイート・スポットに餌木が入る。
このように船長たちは指定したハリス長を念頭に置き、道糸の角度(中オモリの重さで立ち具合が変わる)をチェックしながら指示ダナを計算していく。
その指示を無視するとどうなるかは、言わずともお分かりだろう。
(左)3.5号を基準に、3号と4号も用意すれば完璧。(中央)餌木をつなぐスナップ。写真はカルティバの「ダイレクトスナップ」0号サイズ。(右)ハリスと中オモリの接続はボールベアリング入りスナップサルカンもおすすめ。糸ヨレが軽減!
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(左上)タナは道糸のマーカーで正確に。視認性のよさではPE2号がおすすめ。(左下)パッケージに沈下速度が書いてあれば、ノーマルタイプの餌木。おおむね3秒前後がスタンダードだ。(右上)中オモリは船宿指定の号数に加え、速潮に備えてワンランク重めも用意。
出典:
タナを守り、確実にシャクり、餌木に悩みぬくひと時
肝心の餌木は、陸っぱり兼用のごくノーマルな3.5号サイズ。
沈下スピードの目安は1mにつき2.5~3.5秒あたりだ。
悩みどころはカラー。
背色/腹色で必携の4本をあえて絞り込むなら、
・オレンジ/マーブル(濁り潮用)
・ピンク/マーブルと、オリーブ/金(オールラウンド)
・茶/金(澄み潮、晴天用)
釣りスタート時はこれらをローテーションして様子を探る。
釣り方はすさまじくシンプル。
「タナに合わせ、5秒間隔で鋭くシャクる」の一言で済み、老若男女、ほぼお悩み無用(餌木選びの迷宮は除く)で楽しめる。
シャクリの要点は3つある。
1・海底の高低変化に応じて刻々と変わる指示ダナに、機敏に合わせていくこと。
2・シャクリはハリスが張った状態で、餌木にしっかり水圧がかかる方向を読み取って行う。これが餌木の動きをアップさせるキーポイント。
3・シャクったら即座に竿先を下げ、餌木が落ちきるまで4~6秒待機。このフォール時にアオリイカが餌木に抱き付くことも多く、竿先にフワフワとした怪しいアタリが出たら頃合いを見て大きく合わせてみる。
以上を心がけていてもアオリイカが丸っきり乗らないときは、餌木を疑う。
周りでアオリを乗せた人がいれば、それに近い色味の餌木にチェンジして様子を見るのが手っ取り早い。
乗りが渋かった今回の取材も朝イチにそんな場面があった。
潮色はささ濁りで、天候は雨。
光量が少なく薄暗いこの時間帯に、右舷トモの丸山さんが立て続けに2杯を乗せた。
3.5号サイズ。
それを見た右舷ミヨシの今井さんは、すかさずオレンジの餌木(ただし腹色は金)に取り替えて1杯確保。
続けとばかりに私も同色系の餌木に交換したら1杯乗った。
しかし雨が上がり、曇り空が白っぽく明るくなった日中は、オレンジの効能はダウン。
ただ一人「おっ、さわった!」と興奮しながら2杯を追加した今井さんの餌木は背がオリーブ、腹が金の餌木だ。
取っかえ引っかえの餌木地獄に陥らないよう、あえて最小限の餌木しか持ち合わせていなかった私はオリーブ系の持ち駒がなく、スソという名の地獄落ち。
いつものように20本以上持参して悩みまくったほうが幸せだった。
取り込むときは竿先近くまで中オモリを巻き、ハリスをつかんでたぐる。移動、投入時もこの態勢でOK。
出典:
刻々と変わるタナに合わせながら、無我の境地でシャクリ続ける。
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【隔週刊つり情報(2019年11月15日号)※無断複製・転載禁止】