相模湾のマルイカにムギイカが交じり始めたと編集部から一報が入る。
とっさに、このところハマっている大吟醸が脳裏をよぎった。
どちらも刺身にすると甲乙つけがたいおいしさで、一挙両得の感がある。
さっそくしばらく休眠していたマルイカスッテたちをたたき起こし、三浦半島葉山あぶずり港・愛正丸の大船長に電話で教えてもらったとおりに直結仕掛けを組んだ。
このスッテたちがうまいマルイカやムギイカを連れてきてくれるはずだ。
取材日は5月下旬の週末。
港に5時前に到着すると、無料駐車場はすでに満車。
まさに大盛況だ。
私が乗り込んだ第十一愛正丸は定刻より早い6時35分に出船し、約20分後に亀城根周りでスローダウン。
14名の釣りたい衝動をあおるかのようなしばしのリサーチのあと、7時15分に米山信一郎船長から開始がアナウンスされた。
「はい、いいですよ。水深は32mです。いい反応が出てますから、やってみてください」
直後に右ミヨシの杉山さんが合わせを入れリールを巻き始めた。
潮鉄砲を噴射しながら上がってきたのはムギイカ。
ここから本船とイカの群れとの追いかけっこが始まる。
竿の感度が物をいう
5分後に仕掛けを上げて10分後に再開すると、右胴の間の古川さんと杉山さんにマルイカ。
3分後に仕掛けを上げて6分後に再開すると、杉山さんと右胴の間の谷口さん、左3番の菅野さんにマルイカが釣れる。
続いて、左トモ2番の池上さんが3杯目、4杯目と連釣するも、その3分後にはまた仕掛けを上げるようにとアナウンスされた。
「いい反応があるんですけど、仕掛けを下ろすと散っちゃうんですよね。で、仕掛けを上げるとまた反応が戻ってくるし・・・」と船長もしばらく苦心の操船が続いた。
浅場で粘った船長もこの状況に業を煮やし、城ケ島沖へと移動する。
水深は45~50mとやや深くなって、ポツリポツリとマルイカが釣れるのだが、その中でもダントツのペースで釣り上げていたのが池上史哉さんだ。
この日は前半は亀城根周り、後半は城ケ島沖を中心に狙った。
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(左)赤帽スッテは外せない?!(右)城ケ島沖で着乗り。
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池上さんはシーズン中毎週マルイカ船に乗り続けること6年になるそうだが、不思議なことにジップロックは持参しているのにクーラーボックスを持っていない。
「釣れたらオデコとかの人に全部あげちゃうんですよ」と笑うが、それだけマルイカ釣りの腕を磨くことに情熱を燃やしているということだろう。
隣に座って見ていると、池上さんはほぼ1投入1杯の好ペースでマルイカを釣り上げている。
そこで、池上さんに極意を聞いてみた。
まず、一番重要なポイントは竿の感度。
私もメーカーが高感度を誇る竿を持参していたので池上さんに見てもらったが、それでも硬すぎてイカがスッテに触ったかどうかは分からないかもしれないと言う。
言い換えると、池上さんの愛竿はそれほど感度が高いということだ。
次に仕掛けだが、池上さんは3cm前後のスッテ5本で組んだ直結仕掛けを使っている。
3cm前後のスッテは今や相模湾のマルイカ釣りでは主流らしく、仕掛けを自作してきている釣り人は皆3cm前後のスッテを使っていた。
また、池上さんの仕掛けは、スッテ間と捨て糸は1mとごく一般的な仕様。
だとすれば、あとは釣り方だ。
池上さんは、オモリが着底するとまずタタキを入れる。
しかし、その回数は3~4回程度と思ったより少ない。
海中で道糸や幹糸がたわんでいることを考えれば、タタキ回数の半分もスッテには伝わっていないだろう。
そのことを尋ねると、「スッテはちょこっとだけ動いてくれればいいんです」と答えてくれた。
そしてタタキの後、じっと竿先を見つめる。
極細の竿先に、よく見ていないと分からないほどの動きがあるらしい。
それでビシッと合わせてリールを巻き始めると、マルイカが釣れている。
隣で見ていてもよく分からないほどの竿先の動きをとらえて合わせるその技は、神がかって見えた。
なるべく速く仕掛けを落とすようにしよう。
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誘った後、しっかり竿を止めてアタリを見る。
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抱かせるテクニック
釣り座に戻り、池上さんの釣り方を実践してみる。
タタキを入れた後、竿先に全集中していると、”クン”といった感触はもとより、イカがスッテに触る”フッ”とか”スッ”といった微妙な感触が分かるようになってきた。
しかし、それで合わせても乗らない。
何度も同じ状況を繰り返し、再び池上さんにそのことを訴えてみた。
「ほんの少しだけ、仕掛けをたるませるんですよ。ゼロテンよりほんの少しだけですけど、そのほうがイカの抱きがいいんです。ゼロテンだと、イカがスッテに触ったときにテンションを感じちゃって抱きつかないんです。だから少しだけ仕掛けをたるませてやる。そうすると、イカがテンションを感じないのでちゃんと抱きつくんですよ」
しかし、仕掛けをゼロテンよりたるませたら、イカが触ったかどうか分かりにくくなりはしないだろうか?
そう尋ねると池上さんはこう答えた。
「だから竿の感度が重要なんです」
もう返す言葉はなかった。
釣り座に戻り、20cmくらい仕掛けをたるませるといとも簡単に釣れてきたマルイカ。
しかしアタリは分からず、なんだか恨めしく思えた。
イカの活性が上がった後半は上から1~2本のツノに乗ることが多かった。
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(左)マイクロサイズのアタリが分かると数ものびる。(右)プロポーションのいい良型も。
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(左)直ブラ仕掛けで本命ゲット。(右)マルイカもいよいよシーズン後半に突入。
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葉山沖で14時を過ぎたころ、船長が沖揚がりをアナウンスする。
釣果は15~25cmのマルイカが、ビギナーの2杯から池上さんの30杯まで。
この日はムギイカは少なく船中で5杯だった。
気分屋のイカばかりはその日にポイントへ行ってみないと分からないが、今シーズンの愛正丸のマルイカの最高記録は80杯。
この日も好反応があちらこちらで見られたので、これからますます楽しめるだろう。
そして、相模湾のマルイカ釣りは、一度体験したらハマること間違いなしだ。
30杯を釣った池上さんがトップ。
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(左)マルイカは女性にも人気。(右上)型は中小型主体。(右下)ブランコ仕掛けでも釣れる。
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(左)船中最初の1杯はムギイカ。(右)いい日は70~80杯の釣果も上がっている。
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知っ得!竿置きで釣果アップ!
見ていると、ビギナーが釣れたイカをバラしているのは取り込みで竿を置くときが多いようだ。
V字型のチョイ置きを持っていないために、置いた竿が安定せず気を取られたとき仕掛けが下がってしまい、せっかく釣れたイカがカンナから外れてしまう。
竿やリールをそろえるのも楽しいが、まず真っ先に購入を考えるべきなのは竿置きかもしれない。
チョイ置きと竿立て機能を備えたタイプがおすすめ。
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当日のマルイカ仕掛け
相模湾のマルイカスッテは3cm前後が主流のようだ。
しかし、ビギナーが使っていた仕掛けは5~6cmのスッテで組まれた市販仕掛けで、それでもマルイカは釣れた。
船長も言っていたが、従来から使われている5~6cmのスッテで組まれた仕掛けでも釣れないわけではない。
(上)幹糸はハリス4~5号が標準。ハリスはしなやかさと強度を備えた高性能フロロカーボンハリス、サンライン「アジーロ船ハリス」がおすすめ。(下)船長の推奨仕掛けは直結式4~5本ヅノ、 オモリ40号を使用。
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