釣りへ出かけ、帰宅したオレは、ひとまず釣り道具と一緒にシャワーを浴び、いそいそと後片付けを済ませると、狭いキッチンの片隅へクーラーボックスを運び、まな板や包丁をいつもどおりに流し台の上へと並べる。
ここで、冷蔵庫からビールを取り出し、お気に入りの丸椅子に腰かけてからグラスへと注ぎ、泡が落ち着くのを待ちもせず、フ~ッと大きく息を吐き、ゴクッ、ゴクッ、ゴクゴクと一気に飲み干す。
そしてクーラーボックスのふたを開き、釣った魚たちを眺める。
オレにとって、このひと時に飲むビールが一番うまい。
銘柄やスタイルは関係ない。
プロフィール
沖釣り探偵〝K〟
沖釣りにまつわる謎や疑問を解き明かすフィッシングライター。
持ち前のフットワークの軽さで難調査を解決!
釣りの腕前はヘッポコな永遠の23歳。
監察官〝K〟
丸ブチメガネの奥に潜む鋭い眼差しで探偵Kを監視する目付役。
センベロ酒場とパチスロをこよなく愛するエディター。
基本データ#FILE01・そもそもビールってどんなお酒?
ビールとは、おおまかには二条大麦とホップを主原料とし、ビール酵母による発酵、貯酒(熟成)といった工程を踏んで醸造されるアルコール飲料のこと。
日本で一般的なビールはケグ(樽)、あるいは瓶や缶に詰められたラガー(下面発酵で作られるビール)だが、1994年の酒税法改正以降、小規模ビール醸造所の参入により、エール(上面発酵で作られるビール)がビール市場を賑わしている。
昨今はエールの販売を手がける大手ビールメーカーが増え、ビールの多様化が急速に進んでいる。
加えてローカルの醸造所の職人が、高い意識と技術で新たなビールの時代を築き始めている。
●今回の調査協力店
KAKURENBO CRAFT BEER CAFE
横浜市金沢区
Instagram:kakurenbo1317
店主の小野佳祐さんと奥様の小野明里さん
出典:
<店舗情報>神奈川県横浜市金沢区寺前1-3-17・電話045-294-9522・営業時間:要確認。定休日:日曜日
出典:
釣りの後のお楽しみはやっぱりビール
それはさておき、料理に合わせてお酒を選ぶことってない?
例えばマダイのカルパッチョなら白ワイン、ヒラメの昆布じめなら冷酒ってな感じで。
じゃあ、ビールを合わせたくなる料理ってなんだろう?
ソレが無性に知りたくなったため、100人余りの友人や知人へ向けて、LINEやらメールやらを送りまくった。
「今、魚をツマミにビールを飲むなら、どんな魚料理が食べたいですか?」と。
すると、全員が返信をくれた。
結果は上の写真のとおり。
やっぱりみんなアジが好きなんだなぁ・・・。
みんなやっぱりアジが好き!
出典:
基本データ#FILE02・エールとラガーの違いについて
ビールは、その発酵法によって上面発酵、下面発酵、自然発酵の3つに分類される。
上面発酵ビールとは、発酵中、酵母が麦汁の表面に浮かんでくる酵母を使用したビールのこと。
下面発酵ビールとは、発酵終了後、タンクの下に沈殿する酵母を使用したビールのこと。
日本で流通しているビールのほとんどがこのいずれかに該当し、上面発酵で造られるビールをエール、下面発酵で造られるビールをラガーと呼ぶ。
左がラガー、右がエール。クラフトビールにもラガーがあり、大手ビールにもエールがある
出典:
ビールの世界はとてつもなく奥が深い
ちなみに「ビール」と一言に述べるところですが、ビールの領域はグローバルに広がり、際限なく深淵を極めている。
それ故、知っているかのように思えて、無知な事ばかりなのだ。
それで、常連のビアバーKAKURENBOの小野氏の指導の下、「ビールの基本的な知識」をまとめて試みた。
基本データ#FILE03・主なビールの種類と味わい
基本データ#FILE04・生ビールって何?
生ビールとは、発酵工程終了時に麦汁から酵母を取り出す際、加熱処理をせず、ろ過することによって酵母を取り除いたビールのこと(酵母を取り除かないビールもある)。
つまり、樽に入っていようと缶に入っていようと、加熱処理していないビールはすべて生ビールになる。
樽詰めビールをタップで注いだビール=生ビールではないのでお間違いなく。
(左)これがビールを注ぐタップ(右)缶ビールの生ビールという表記を見たことがある人は多いはず
出典:
基本データ#FILE05・クラフトビールって何?
クラフトビールとは、地域に根差した小規模醸造所(マイクロブルワリー)で、ブルワーと呼ばれるビール職人によって造られるビールのこと。
大手ビールと対比させるために生まれた名称とも言え、地ビールと呼ばれることもある。
小規模醸造所で作るビールは、アレンジしやすいことや個性を出しやすいことで、多様なビールを醸造することができる。
ビール愛飲家が個性的なビールを楽しめる機会に恵まれるのは、クラフトビールがあるからこそといえる。
日本には全国各地にクラフトビールの小規模醸造所が400余りあるという
出典:
皆さんが普段飲んでいるビールのほとんどは、ラガーのうちのピルスナーというスタイル。
K社のIも、A社のSも、S社のPもピルスナーだ。
ピルスナーが日本で普及したワケは色いろあって、その飲み口が日本人の舌にマッチしたことや、品質の管理がしやすく、大量生産に向いていることなどが理由らしい。
ところが、日本のビール=ピルスナーが主力だった時代は、平成の中ごろまで。
巷のビール事情は、ラガーだけでは語れなくなっている。
なぜなら、昨今のクラフトビール人気が後押しして、ビール通や飲兵衛の間でエールのおいしさ、それを楽しむことのおもしろさが芽生えてきたからだ。
例えば今回のアンケートでアジフライと答えた人のほとんどは、質問のビール=ピルスナーをイメージして回答したと思われるが、中にはペールエールやIPAをイメージした人もいるかもしれない。
そう考えると、ビールという大きなくくりでアンケートを取ったことは、ちと反省すべきだったかもしれない。
それはさておき、実際のところ、ビールに合う魚料理ってどんな料理なんだろう?
最後に魚やビールと毎日向き合っているプロの方がたに電話取材、今回の調査結果としてまとめた。
「もしもし、〇〇さん!ビールに合う魚料理、教えてくださ~い」
今回の調査結果・ビールに合う魚料理ってなんだ?
正解はないのでビールと魚料理のペアリングを自由に楽しめばいい
料理とビールを合わせることを、ビールの世界ではペアリングと呼ぶ。
これを教えてくれたのは、今回の取材に協力していただいた「KAKURENBO CRAFT BEER CAFE」の小野さん。
「アジを釣って、アジフライを作ったから〇〇醸造のIPAで乾杯しよう」とか、「セゾンスタイルのビールが手に入ったから、アジの南蛮漬けと合わせてみよう」とか、「アジのタタキを食べながらピルスナーとペールエールの飲み比べをしてみよう」というように、ビールと釣魚料理のペアリングが楽しめたら、釣行後の食卓がいっそう賑わうのではないか。
「仮にそのペアリングが合わなかったとしても、次はアレと合わせてみようとか、あの魚料理となら合うんじゃないかとか、考える時間も楽しいですよね。食の好みは人それぞれだから、選ぶビール、好まれる魚料理もまた人それぞれ。よく釣ってくる魚の料理と好みのビールの最強のペアリングが見つけられたら、うれしくないですか?」と小野さんは話してくれた。
釣り好きビアカフェ店主、KAKURENBO小野佳祐さんの最強ペアリング
セゾン(PASCAL/奈良醸造)&アジのスパイスカレー
「オススメはスパイスカレーとクラフトビールのペアリング。ということで、今回はアジを使ったスパイスカレーです。3種類のスパイスでマリネにしたアジをココナッツベースのスリランカ風カレーに仕上げました。合わせるビールはセゾン。苦み、香りのバランスが非常にいいビールで、比較的どんな料理にも合います」とのこと。
なおスパイスカレーには、ほかのスタイルのビールも合うそうなので、魚のカレーとビールのペアリングを色いろ試してみたらおもしろそうだ。
釣り好き寿司職人、男前みよし鮨・道木大輔さんの最強ペアリング
ドルトムンダー(ヱビスビール/ サッポロビール)&空豆とアジのかき揚げ
毎日魚と向き合いながら、肴とビールをお客さんへ提供している道木大輔さん。
「旬の空豆とアジのかき揚げをおすすめしたいです。合わせるビールは、サッポロのヱビスビールがいいですね。揚げたての空豆とアジのかき揚げは、ヱビスビールのまろやかで豊かなコクのある味わいにピッタリの一品です。好みで塩、カレー塩、レモンに付けてお召し上がりください」とのこと。
ちなみに大輔さんがお店で提供している一品料理は、趣向を凝らした旬の魚が多く、いつもおいしいのだ。
ビール大好き!平和島まる八・髙橋広司船長の最強ペアリング
ピルスナー(スーパードライ/ アサヒビール)&海苔でくるんだアジのなめろう
アンケート結果上位をアジ料理が占めたことから、ほぼ周年ライトアジ船担当のビール&魚料理好きな船長に聞いてみた。
「ビールのつまみといえば、なんといってもアジのなめろうを海苔で巻いたヤツっすね。それに合わせるビールは、飲み口がスッキリしているアサヒのスーパードライがオレの好みです。もちろんオレの船で釣ったアジで作るなめろうが一番うまいッス」とのこと。
髙橋船長はほかにもアジ料理のネタを色いろ持っているから、遊びに行ったときに聞いてみて。
探偵”K”の報告書
これまで、日本のビールといえば大手ビールメーカーが一定品質で量産するインダストリアル(工業的)なビールが主流だった。
ところが、今や日本には様ざまなスタイルのビールが存在し、市場を賑わせている。
一方、魚料理には、ご存じのとおり和洋中といったジャンルに加え焼く、煮る、揚げるなどバリエーションに富んだ調理法があって、そのレシピは無限大かつグローバルだ。
小野さんが話すように「色んなスタイルのビールと魚料理のペアリングを楽しむ」という魚の味わい方は、釣り人がゆえに楽しめる遊び心ともいえよう。
今回の調査をきっかけに、ビールに興味を抱き、魚料理とのペアリングを楽しんでもらえたらメッチャうれしいっす。
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隔週刊つり情報(2020年7月1日号)※無断複製・転載禁止