4~6月は相模湾にイワシの大群が回り、それを捕食するヒラメや根魚の活性も一気に高まる季節。
このチャンスを狙い撃つのが当エリアのヒラメ五目船。
近年話題のオオニベも高確率で交じるとのウワサも耳にして、平塚の庄三郎丸を訪れてみた。
ヒラメに不利でもオオニベには有利?
3月下旬、相模湾平塚港・庄三郎丸のヒラメ五目乗合に集まった釣り人は12名。
これから6月まで続く看板メニューとあってけっこうな人気ぶりだ。
しかしこの日の潮色はヒラメ釣りには不適な泥濁り。
やたらと吹きまくる春の嵐で海がかき回され、加えてちょうどこの時期発生する「春の濁り潮」が差し込んでいるせいだ。
「ごめん、取材のタイミングが悪くて」と受付でボヤくと、「それじゃキンメ、ムツに変更したら?こっちは潮が濁ってるおかげでよく釣れてるよ」なんて返される始末。
プライベートであれば乗っかるところだけれど、今回はヒラメ船でどうしても確認したいことがあった。
かなりの確率で交じると聞いた、オオニベの調査だ。
九州~四国の太平洋沿岸を本拠地とするオオニベが、ここ数年、関東~東海エリアで急増している。
このトピックは昨秋本誌で取り上げ、多くの方から各地の情報をいただいた。
その中でとくに気になったのは、早春~初夏にかけて出船する相模湾のヒラメ五目船で「オオニベを釣った」という情報。
1~3kgの若魚サイズながら、主に平塚港や茅ケ崎港の乗合船で何度か釣ったという話は他地区よりも頭抜けて多い。
「濁り潮はヒラメには厳しいけど、オオニベには好都合かも」
通称イシモチと呼ぶニベ科魚類は、潮が暗いほうが食いが立つからだ。
そんな話をヒラメ五目担当の中村友紀船長に持ちかけると、
「ですね。そういう主旨の取材ならイケるかな。たぶんオオニベは釣れると思いますよ」と心強い答えが返ってきた。
イワシエサの量に応じて2種の仕掛けを使い分け
実釣の前に庄三郎丸のヒラメ五目の概要を押さえておこう。
オモリは50号で統一。
タックルは7:3~6:4調子のゲームロッドに小型両軸リールを組み合わせる。
道糸はPE2号あたりを推奨。岩礁帯を流すこともあるから、根掛かりすると高切れしやすい極細PEラインは避けたほうがいい。
仕掛けは3つ。
生きエサのイワシを釣るサビキ(1枚無料サービス)と、ヒラメ五目用として一般的な胴つき1本バリ、さらに胴つき2本バリを用意しておく。
庄三郎丸は両種のオリジナル仕掛けを各々500円で販売していて、ライトゲームロッドの全長に合わせたショート仕様となっている。
下図に寸法取りの目安を描いたので、自作する際の参考になればと思う。
1本バリと2本バリの使い分けはエサのイワシの量による。
少なければ1本バリで大切に使い、ふんだんに確保できれば2本バリに付けてぜいたくに泳がせる。
というのも庄三郎丸は朝の1~2時間、エサにするイワシ(主にカタクチイワシ)をサビキ仕掛けで釣って自分のオケに溜め、ヒラメ五目に転じるスタイルだからである。
イワシの大群が回る季節に合わせて出船しているのでエサはほぼ確実に釣れるけれども、簡単に50匹以上釣れる日もあれば、食い渋るときはその半数しか釣れないこともある。
その結果に応じて二つの仕掛けを使い分け、イワシエサを温存していくというわけだ。
なお、コマセは使用しないから、イワシの群れに的確にサビキを入れないと多点掛けは望めない。
道糸のマーカーを見て船長が指示するタナの範囲にサビキをきっちりと入れ、上下に誘って食わせていこう。
エサ釣りが終わってヒラメ五目へ移行したら、サビキからヒラメ五目用の仕掛けに交換する。
エサ付けは船に積んであるザルでイワシをすくって、弱らせないようバケツの海水に浸した状態で行うとよい。
カタクチイワシは口が開きやすい構造で、開きっぱなしになると泳ぎが悪くなる。
それを防ぐために、ハリ先を下アゴから上アゴへ抜いて、口を閉じるようにエサ付けする。
また、胴つき2本バリを使用する場合は、上バリに大きなサイズのイワシを付けるのがちょっとしたキーポイント。
「不思議なもので、型のいいヒラメほど上バリに飛び付いてくる。絶対とはいえませんが、元気のいい大きめのエサを上バリに付けておけばその確率がさらにアップすると思います」と中村船長。
イワシ釣りの最中に交じってくる小アジや小サバもいいエサになるので、上バリに付けて様子を見るのもいいだろう。
タナ取りはオモリを底から20~30cm上げた位置。
「これがヒラメから根魚まで多種多様な魚を五目で釣る基本のタナです」と船長はいう。
相模湾のヒラメ五目仕掛け一例
イワシを入れるバケツは釣り座の両サイドに2つ用意し、循環ホースを差し込む。均等にイワシを分けて酸欠を防ぐわけだ。(右)道糸は根掛かりしても高切れしにくいPE2号程度がおすすめ。
出典:
エサのイワシ釣り
(左)庄三郎丸で配られるサビキは、夜光玉付きのサバ皮。(右)ラン&ガン方式で宙層に群れるイワシを釣る。指示ダナの範囲を小刻みに誘って食わせよう。
出典:
エサの付け方
(左)口が開きやすいカタクチイワシは、下アゴから上アゴにハリを抜くとよい。(右)胴つき2本バリは、大物がヒットしやすい上バリに大きめのエサを付ける。写真はサビキ釣りで交じった小アジを付けた例。
出典:
相模川河口に10年前から定着
さて、取材日は朝方の2時間ほどをイワシ釣りにあて、沿岸の水深10~20m付近を走り回って各自30~50匹のカタクチイワシ(小アジも少し交じった)を確保。
続くヒラメ五目の釣り場を中村船長に聞くと、東は鎌倉方面から西は大磯沖にかけての水深10~30m付近とか。
まだイワシ着きのヒラメが回ってないので、転々と探っている状況らしい。
「イワシ着きのヒラメ」とは、イワシの大群を追いかけ回すヒラメの一群。
今年は4月あたりから回ってくるんじゃないかと船長は予想していて、そうなるとトップ平均4~5枚、好日は10枚に達するそうだ。
時同じくしてカサゴやメバル、ハタ類、スズキ、カサゴやメバルとあらゆる魚の活性が高まり、ヒラメ五目船が最高潮に達するベストシーズンに突入する。
だが当日は冒頭に記した悪条件が重なり、ヒラメの食いは最悪。
江ノ島~七里ケ浜沖でメバルやカサゴがポツンと顔を見せる程度で10時を回ってしまった。
連載・珍魚ファイルの執筆者である宮崎佑介さんも自腹で乗り込んでいたけれど、まだ自分で釣り上げたことがないというヒラメ、さらにはオオニベも音沙汰なしである。
唯一の救いは、「移動します。オオニベも交じる場所へ行きましょう」という船長のアナウンスだった。
あわてて操舵室へ向かい、取材の裏本命でもあるオオニベ釣り場の詳細を聞いてみる。
「1~2kgの若魚の群れがいるのは相模川の河口沖、水深は20~30mあたり。毎年2~4月いっぱい回ってますから、おそらく今日も釣れるんじゃないかな」
さらに船長はこう続けた。
「ここらの海では、かれこれ10年くらい前からオオニベが釣れてるんです。もう完全に定着してますね」・・・開いた口が塞がらなかった。
そんなに前からいたのに、なぜ編集部で気づかなかったのだろう?
思えば当時の釣果欄に交じる魚として表記されていたのはニベとかイシモチ。
陸っぱりでよく釣れる普通種の標準和名「ニベ」と思い込んでいた節があり、当地の船長たちも大型のニベと考えていたようだ。
相模湾のヒラメ五目で釣れる主な魚たち
オオニベラッシュにただただ唖然・・・
オオニベの湧き具合は、釣り始めてすぐに分かった。
流したポイントは相模川河口沖の水深25m付近。
もちろんヒラメも釣れる場所とのことでタナ取りも同様だが、左舷胴の間でズンと引き込んだ魚はいきなりのオオニベ。
そのタモ取り途中、立て続けに大ドモ両名のロッドが曲がってこれまたオオニベの登場である。
いずれも1kg級の同サイズだから、同じ群れだろう。
魚探反応をチェックしながら船長が流し変えると、二流しに一度は群れに当たって、約1時間で船中半数の6名が1~3尾(計10尾)のオオニベを釣り上げてしまった。
以前見た水中映像には50~100尾単位で遊泳するオオニベの群れが映し出されていたから、少なくとも今日の釣果の数十倍はいるだろう。
気になるのは、さらに大きなオオニベがどこにいるか。
成長式によると5歳前後で全長1m、体重10kg、7歳前後で全長1.4m、体重20kgに達する。
相模川河口沖で釣れ始めて10年経過しているのであれば、どこかに大型がいるはずだ。
「毎年2月前後にライトウイリー五目で狙う大磯沖の魚礁周り、水深にすると60~70mあたりで、5kg前後のオオニベがハモノ仕掛けで釣れてます。でも、10~20kg級は見てませんねぇ」船長も気になっているようだが、それ以上のことは不明だった。
生態学的にもオオニベの詳細は分かっておらず、幼魚のころは河口などの汽水域で過ごすといった程度。
その後の成長に伴った回遊経路は謎だ。
ただ相模川河口周辺における出没具合から見ると、1~2級までは河口のすぐ沖に群れ、5kg前後に育つと沖の魚礁周りへ移動するらしい。
大型の居場所は不明だが、調査を続行すれば分かってくるだろう。
オオニベを狙った後、船長はヒラメ狙いで最後の勝負。
ラスト1時間を水深10mの浅場狙いにあて、1kg級を頭に船中3枚のヒラメをキャッチ、なんとか「ヒラメ五目」の取材成立となった。
うち2枚は右舷大ドモの鈴木さん、そしてもう1枚は右舷胴の間の宮崎先生。
オオニベは釣れなかったけれど、念願の初ヒラメに大満足の様子だ。
「本番は潮色が落ち着く4月から。その後、ヒラメは5~6月にかけて深みへ移動し、水深60m付近まで探ります。深みではマダイが食い付く日もあって、さらにおもしろくなりますよ」と船長。
今や釣れて当然のオオニベを含め、いよいよ相模湾のヒラメ五目はピークに突入する。
オオニベの不思議
定期的に底ダチを取り直し、底スレスレのタナをキープする
出典:
当日ヒラメが釣れたのは水深10m前後の浅場だった。
出典:
(左)オオニベの群れが船下を通過した瞬間、数名に連続ヒット!(右上)将来、ヒラメと並ぶ本命魚になりそうな勢いだ。(右下)当地で最も出現率が高いのは2~4月だというが、まだまだ詳細は不明。
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相模川河口沖の水深25~30m付近で、1kg級のオオニベが計10尾浮上。
出典:
ソゲながら人生初の1枚を手にした宮崎先生。写真を撮ってリリース。
出典:
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