2月中旬、南伊豆下田須崎港の若宮丸へ向かう。
狙いはオニカサゴ。
同地区の看板であるマダイ、イサキがやや下火になる冬場、にわかに注目を集めるのがこの釣り。
オニカサゴとは俗称で、標準和名はイズカサゴ。
いうまでもなく伊豆エリアに多く生息することからこの名がある。
今でこそ各地区で人気のターゲットになったものの、伊豆こそがこの釣り発祥の地なのだ。
集合は午前6時。
2名の同船者は右舷、私は左舷トモに釣り座を構え、準備が整った6時半に土屋嘉公船長の操船で岸壁を離れる。
この日は暖かいものの、雲の多い空模様で、北寄りの風が吹いている。
ポイントの須崎沖へは15分ほどで到着する。
水深は150m前後。
2本バリ仕掛けに持参したコノシロの切り身(青染め)を付けて投入する。
道糸が真っすぐ下りているところを見ると、潮はあまり動いていないようだ。
オニカサゴは群れを作らず、底生生活を送る。
潮が動かないという状態は、あらゆる釣りで悪条件となるが、とくに底べったりの魚を狙うには致命的といえる。
キンメやクロムツのように底から上の層に群れでいる魚なら魚探で存在を確認できるが、オニカサゴは無理。
エサを魚の目の前に持っていくには、船を潮で流してできるだけ広い範囲を探るしかないわけだ。
常連さんがスロジギでチャレンジ
出典:
当地のオニカサゴは今がベストシーズン
出典:
カサゴ類でトップクラスの食味
オニカサゴの魅力は最後までグイグイと力強く抵抗するファイトもさることながら、カサゴ類でもトップクラスの食味も見逃せない。
寒い時期の定番は鍋。
骨などのあらから実にいいダシが出るので、ちり鍋がおすすめだ。
鍋もいいが絶品は刺身。
それも生かして持ち帰った魚で作る薄造りは、死後硬直前のプリプリした食感と独特の甘みが堪能でき、イセエビに匹敵する食味を誇る。
手間は多少かかるがぜひお試しいただきたい。
水中ランプが効果あり
船長も少しでも潮が動く場所を当てようと、少しずつ南下しながらポイントを探ってくれている。
そんな努力の甲斐あって、約1時間後に右ミヨシのお客さんに最初のアタリがあり、小型のユメカサゴが取り込まれる。
続けて、私の竿先も小さくカクカクと震え出す。
巻き上げを開始しても、引き、重量感とも乏しく、これもてっきり小型外道かと思いきや、浮上したのは本命のオニカサゴ。
サイズも35級とまずまずだ。
ところで、仕掛けはできるだけシンプルなものが一番と考えて、余分な抵抗となる集魚アイテムは極力使わないように心がけている。
しかしオニカサゴは別。
以前、伊東沖でゴテゴテの派手仕掛けの人には順調にアタるのに、こちらはさっぱり。
試しに水中ライトを付けた途端にググッと竿先が曲がるという経験をして以来、その効果を信じるようになった。
やはり、仕掛けから少し離れた位置にいる魚にも気付いてもらうという観点から、アピールアイテムは有効なのだろう。
この日も、テンビンの先に赤色の水中ライトを装着していた。
ただし、この手のアイテムは水色や潮の緩急、魚の活性など、その日の条件によっては外道を寄せたり、オマツリの原因にもなりえるから、必要に応じて着脱するようにしたい。
釣り場は須崎沖の水深150~190m前後
出典:
Tackle Guide
竿は全長1.8~2.4m。
果敢に誘いをかけ続けてアタリを取っていく釣り方なら8:2調子、置き竿主体で攻めるなら7:3から、波が高いときなどは仕掛けを落ち着かせる意味で6:4調子もいいだろう。
ただし、カケ上がりを攻めることが多いので置きっぱなしはダメで、こまめに底ダチを取り直す作業が不可欠になる。
当日のオニカサゴ仕掛け
ジグは250~300gが中心
出典:
デカイのきたぞ!
9時45分、右トモのお客さんにアタリ。
この人はルアーマンで、この日もスロジギで狙っていた。
本人によると、スロジギでのオニカサゴ狙いはかなり難しいとのこと。
理由は、底ベタの魚は、縦の誘いの幅が限られるため。
それでも、貴重な時間とお金をさいて課題に挑戦する姿には頭が下がる。
ヒットしたのは30㎝超級のオキメバルだった。
メバル類らしく群れていたのだろう、直後にミヨシの人にもアタリがあり、同サイズを一荷で取り込む。
続けて、私にもゴゴゴッと強烈なアタリ。
すかさず竿を立てるとガッチリと根掛かりした感触。
どうやら掛かった魚が根に潜り込んだようだ。
仕方なく竿をキーパーに置き、道糸をつかんで仕掛けを切ろうと引っ張ったら、運よくズズッと抜けてくれた。
潜り込みが甘かったのだろう。
巻き上げに移るとかなりの重量感が伝わる。
オニなら特大サイズと期待したが、取り込んだのは45㎝級のカンコ(ウッカリカサゴ)。
1㎏オーバーのウッカリカサゴが上がった
出典:
このころになると潮もようやくトロトロと流れ出し、急に魚っ気が出てきた。
ルアーマンが大型のサバを連発したかと思ったら、ミヨシに本命のオニカサゴが登場。
サイズはやや小ぶりだったが、この条件下では喜びもひとしおだろう。
私にもいいアタリがきた。
海面近くまでググッ、ググッと何度も引き込むオニカサゴ特有のファイトを堪能させてくれたのは1尾目と同サイズの35㎝級。
やはり潮が動き出したことで魚の活性も上がってきたのだろう。
しかし、調子がよかったのはここまで。
その後は上潮がかっ飛び、底潮が止まるという二枚潮になり、釣りにくいうえにアタリも止まるという二重苦のまま12時半の沖揚がりを迎えることとなる。
この日は今ひとつの結果に終わったものの、前日のトップは8尾を釣り上げたというから、潮具合さえよければ、まだまだ期待は持てる。
以前に比べると出船軒数も限られているから、かなり狙い目のターゲットといえるだろう。
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隔週刊つり情報(2021年3月15日号)※無断複製・転載禁止