4泊5日の旅程で訪れたマレーシアは、とても気分がよかった。
色んなことがいいかげんで、テキトーで、ユルい。
オレには非常に過ごしやすい国だ。
オレはバイク乗りだから、マレーシアのライダーたちの姿が気になる。
半袖短パン、素手にビーサンという超お気楽スタイルでブッ飛ばす彼/彼女ら。
凸凹路面でバウンバウンと弾みながらも勢いよくアクセルを開ける姿は、爽快そのものだ。
5日間の滞在のうち、同じマクドナルドで3回朝食をとった。
1日目はクレジットカードが使えなかったがコーヒーは飲めた。
2日目はクレジットカードは使えたがコーヒーが飲めなかった。
3日目はクレジットカードが使えてコーヒーも飲めた。
3日とも同じ店員さんだし、ほぼ同じ時間だったんだよ?
ワケ分かんないよ。
テキトーな服装のライダーも、日によって対応が違うマクドナルドも、日本では考えられないユルさだ。
オレ個人としてはたとえ日本で半袖短パンビーサンのライダーを見かけても、マクドナルドのサービスにバラつきがあっても笑って許せるが、社会は許さないだろう。
そういえばマレーシアで飛行機に乗るとき、手荷物検査のお姉さんが「リュックからパソコンを出して。スマホも。できればベルトも外してね」と言うので、「OK、じゃあ上着もズボンもパンツも脱げばいい?」と返したら大笑いしていた。
そして日本に帰国すると、おじさんがアッチに並べコッチに並べと怒鳴り、冷たい目をして取りつく島のない税関のお兄さんがニコリともしなかった。
うーむ、とオレは思う。
万事がいい加減では社会運営が滞る。
だが、万事キチキチしていると、人間の根っこの部分がやられていくような感覚がある。
木更津・宮川丸の夜ソフトルアー船に乗り、バチコンでのアジ狙いにやや苦戦したオレと当コーナーの準レギュラー・イソメマン鹿島一郎を見かねた宮川邦夫船長が、「これ使いなよ」と笑いながらサビキ仕掛けを差し出してくれたとき、冬の夜風にふわっと南国の香りが漂った。
人として生きてるって感じがした。
ちょっとだけ迷ったが、オレとイソメマン鹿島はそそくさとサビキを装着した。
当日のタックル
南国的ユルユル状態だったオレの中にある大和魂に火が点いた
気温35度のマレーシアから帰国した翌日、2月11日夜のオレは、寒風吹きすさぶ東京湾上にいた。
まさに帰国直後だったため、例によって蒼一郎にすべての準備をお任せした。
マレーシアにいる間に、蒼一郎から通販購入希望品のリストがメールで送られてきた。
ワームやジグヘッド、ラインなど細ごました物品は、合わせて17品目、1万1263円。
ヒー。
宮川丸の夜ソフトルアー船の釣り物、アジ、メバル、カサゴに対し、17品目、1万1263円。
相変わらず蒼一郎の本気度がビシビシと伝わってくるものの、マレーシアで通販サイトを眺めながらポチポチしまくったオレが流した汗は、暑さのせいばかりではない・・・。
釣具がいいのは、今回限りではなく何度か使えるものがほとんどだ、ということだ。
1万円の買い物をしたって、3度の釣行で使えれば1回あたり3000円ちょっと。
親子ふたり分だと思えばひとりアタリわずか1500円・・・。
ひとりアタリ?
アタリ・・・。
アタリだ!
午後5時20分に出港し、午後6時前に釣りを開始すると、1投目から小気味のよいアジのアタリがきた。
バチコン─胴つき本1バリのワーム仕掛け─でのアジ釣りを得意とする蒼一郎はまだしも、「んー、どうするんだっけな?とりあえず着底したら上げたり下げたりしてみっか」と見よう見まねでぎこちなく誘うオレにさえ、アジは釣れてくれた。
優しいね、アジ。
ありがとう、アジ。
すっかりマレーシア流テキトーモードになっているオレにも、アジはちゃんと釣れてくれるのだ。
ありがたいことだ。
「夜だし、暗いし、目立ちゃいいんじゃね?」と選んだワームは2.5cmのグローチャートだったが、それが功を奏したのか誘いがうまくいったのかトンと分からない。
分からないことは考えても仕方がない(南国風)。
「まぁ釣れるからいっか~」とのんびり構えていた。
だが、しかし。
わが息子たる16歳の蒼一郎は、誘い方を変えたり、ワームを替えたり、実にキメ細やかにキビキビと色んなことをやっている。
かと思えばイソメマン鹿島も「ゴーさんも使いますぅ?」と悪魔のささやきとともに袖の下からアオイソメを見せてくる。
早くも禁断のアオイソメを投入しているらしい。
みんな工夫してるなぁ・・・。
みんな頑張ってるなぁ・・・。
オレも・・・。
旅の疲れもあったし、とりあえずアジ釣れちゃうし、このままでいっかぁ、と南国的ユルユル状態だったオレの中にある大和魂、すなわちサムライスピリッツに火が点いた。
なんと、オレも工夫し始めたのである。
(左)宙層でメバルと分かっていてもボトムをたたかないと安心できない2人であった。(右)釣りに来ているのだが、1投目からアタリが出て釣れると驚いてしまうのであった。
出典:
「これ使いなよ」優しい笑顔とともに船長が差し出してくれたモノ
アジ釣りはタナが大切とはよく言ったものである。
アジがいる場所にワームがありさえすれば、まずバックリと食いついてくるようだ。
タナだタナだ。
とにかくタナを探せ!水深15m前後。
着底して糸を立てると、ワームは底から60cmぐらい上を漂っていることになる。
竿を立てながら、どのあたりでアタリが出るかを探索する。
ギュ、イ、イ、イ、イ、ン。
腕がほぼ垂直になるぐらい竿を立て、さらにリールを1巻きしたぐらい、つまり推定底から3mぐらいにアジがいるようだ。
ほぼ正確にその位置で食ってくる。
タナだ。
なぁんだ、とオレは思った。
オレの中でのアジの絶対法則は「底3」すなわち底から3mがタナ、である。
アジに限らずだいたいの魚は「底3」を基準に、上下に調整すればいい(と信じている)。
もちろん全然当てはまらない魚も多々いるが、まずは底3がオレの中のモノサシになっている。
そして今宵の東京湾アジは、日本人(日本魚と言うのか)らしくモノサシどおりにキッチリと底3を泳いでいらっしゃるようだった。
あとは誘い方だ。
色いろやってみたが、放っておけば釣れることが分かった。
適度な潮の流れがあるようだったから、ワームもピロピロとほどよく動いているだろう、という読みだ。
いや待て、そんなことないな。
誘い上げたほうが食いつきがいいぞ。
オレに釣れてくれるアジのほとんどが、リフト中に食ってきていた。
竿をゆっくりと50cmほど持ち上げたときにちょうど底3にくるような誘い方がいいようだ。
いや待て、もっと精密に測ろう。
底3とは言うものの、正確には底2.8かもしれないし、底3.1かもしれない。
誘いスピードの「ゆっくり」も、1秒間に10cm上げるのか、12cmなのか、それが問題だ。
ワームもずっと同じのを使っているけど、替えたほうがいいのかもしれない。
オモリは途中で12号から8号に替えたけど、6号まで攻めてみるか・・・?
いつしかオレは眉をしかめていた。
マジメに、ストイックに、アジを釣ろうとしていた。
いやもちろんそれはいいことだ。
17品目・1万1263円を投入して夜ソフトルアー船に臨む蒼一郎の姿勢は、まったくもって正しいし、眉をしかめるオレだって正しい。
真剣になるからこそ、遊びは面白いし、飽きないのだ。
どうにかしてやろう、もっとよい釣りをしようという理想を持つからこそ向上するわけですし、向上するからこそ「もっと、もっと」と次につながっていくんですよ。
よ~し頑張るぞオレも!と、思い始めた矢先、空気のように、海水のようにふんだんにいたはずのアジの食いがちょっとおとなしくなった。
ん~。
頑張っても釣れない。
工夫しても掛かってこない。
んん~。
もっと精密に、もっともっと緻密に。
ワームを替えるぞ。
ジグヘッドも0.1gを付けっぱなしだから替えてみるか。
誘いも変えよう。
タナも再探索だ。
オモリ見直すか。
よーし、食い渋っているときこそバチコンを極める好機。
いざ突き進まんバチコンの道を、いざ登らんバチコンの山・・・。
「これ使いなよ」宮川船長が優しい笑顔とともにサビキ仕掛けを差し出してくれたのは、そんなときだった。
船長は「コレなら簡単に釣れるよぉ」と屈託のない笑顔を浮かべている。
い、いいのか? 簡単に釣っちゃっていいのか?ソフトルアー船でサビキ仕掛けを使っちゃっても?いやでも船長がオススメしてくれてるんだしな。
何事も試してみないと分かんないしな。なんかワームを諦めるみたいでちょっと悔しいけどな・・・。
乙男ゴコロが揺れ動いたのはほんの数秒で、オレとイソメマン鹿島はサビキ仕掛けを採用し、投入した。
いきなり釣れた。
サビキ、恐るべし・・・。
メバッた蒼一郎と、結局南国的お気楽ノーテンキなおやじの夜
ワームひとつで勝負を仕掛けるストイックなバチコンに対して、ズラリと5本のバケが装着されたサビキ仕掛けは何とも楽天的というか、釣りなんだから釣りまっせ感が剥むき出しで気持ちいい。
実績に裏打ちされた仕掛けだからテキトーとは言わないが、バチコンに比べるとどうにも欲望ダイレクトで、つい笑いが込み上げてくる。
そして実際に、パカスカとアジが釣れるようになった。
ただし、ちょっと悔しかったので一番上にワームを付けたままにしていた。
すると6割がたワームに食ってきた。
今宵はかなりワームに対する反応がよかったようだが、いやいや、サビキ楽しいわ。
木更津の夜風に南国のユルさを感じさせてくれた船長、ありがとうございます。
(左)南国帰りで寒いと思ったそうだが、この夜はやはり冬と思えぬほど暖かかった。(右)3人の共通した意見は「アジはえらい!」である。
出典:
途中、ジグ単も試してみた。
1~2gの超軽量ジグヘッド+ワームだけ、というムダ削ぎ落としまくりのハイパーストイック釣法、フカセ釣りのイメージだ。
そして「今のオレの精神状態ではヒジョーに難しい・・・」とすぐに分かった。
目がショボショボでラインの動きがよく見えず、ジグヘッドが落ちてるのかどうかよく分からない。
もっと集中すればいいのだが、集中できない。
ココン、コココンとアタリは頻発する。
突き詰めたら面白そうだな、という予感があるが、サビキのイージーさを知ってしまった今、突き詰めるだけの気持ちの張りがない。
すっかりユルんじゃってるのだ。
ポイントを大きく変えてのカサゴ狙いは、最高だった。
仕掛けを落とし「トントン」と小さく小づけば、7割ぐらいの確率でクククッと食ってくる。
そんな中でも蒼一郎はメバルに照準を合わせ、難しい顔をしてあれやこれや試し、見事にターゲットを釣り上げた。
「メバった!」やるべきことをやり切り何事かを達成した彼の叫びは、それはそれで清々しかった。
でも今のオレはトロピカルカサゴちゃんと遊び、サビキでアジをいじめ、ひたすらお気楽ノーテンキなときを過ごすのだった。
タカハシゴーの船釣りあるある「夜ソフトルアー船編」
(右上)夕暮~夜景+工場とくれば、撮るでしょ!(右下)「木更津、サイバーな夕暮れ」剛作。(左下)到着後すぐ開始。写真を撮っていたため出遅れる。
出典:
最初はちょっとだけ気恥ずかしいサビキ仕掛けだが釣れると手放せなくなる。
出典:
蒼一郎のためになる手記『色んなパターンを楽しめた夜ソフトルアー船』
アジ、メバル、カサゴ狙いのソフトルアー船に挑戦です。
まずはアジから。
水深は15m前後。
底に着いたら早めの動きで誘ったもののアタリがないので、早めのままで止める時間を増やし、食わせの間を長く取ったら狙いどおりきました。
アタリが少し遠のいたら、ワームの色をチャート系からクリアカラーに、サイズも3から2インチに変更。
すると着底後、即ヒット。
カラーチェンジが効いたようです。
その後も大きい誘いで強くアピールし、5~6秒ステイさせるとアタリが続きます。
バチコンは十分に楽しめたので、ジグ単に挑戦。
1.8gのジグヘッドを30カウントぐらい落とし、誘い上げてみるとアタるものの乗りません、そのままフワフワさせておくと、今度はガツッと強いアタリ。
バチコンよりさらにダイレクト、これは楽しい! !
海面にボイルが出たので、「何だろう?」と表層をタダ巻きするとシーバスが掛かってきました。
正体が分かったところで再び30カウント取ってのアジ狙い。
すると上から5mぐらいのところでアジ!かなり上にもアジがいます。
ここでカサゴ&メバルポイントに移動。
着底させてピョン、ピョンとワームを跳ねさせると毎投カサゴがアタります。
そこで早々にジグ単でのメバル狙いに切り替えました。
テトラ沿いに投げて、2秒カウント。
宙層タダ巻きを基本に、見切られないようたまにチョンとアクションを入れると・・・ガガッと食って根に潜ろうとする引きでメバルをゲットしました。
再びアジポイントに戻ると、かなりアジが浮いてジグ単でも釣りやすいタナまで上がってきていました。
バチコンなら軽く投げてカーブフォールさせるパターンが炸裂。
色いろ試せて、いい釣りができました!
チビチヌヘッド10gをベイトテンヤタックルでキャストしてカサゴを連発、 次はジグ単でメバルです。
出典:
(左)沖揚がり前は潮が緩くアジも浮いて1.2gのジグ単で楽しめました。(右)アジの胃からイワシの稚魚が。 まさにマッチ・ザ・ベイト!イソメよりもワームによく食ってきたのは、これが理由か?
出典:
(左)アジさばき職人と化した蒼一郎。黙々と、ひらすらに、親子で釣った47尾をサクサクさばく。(真ん中)へいらっしゃい!丹精込めて握らせてもらいやす。寿司職人と化した蒼一郎。(右)へいお待ち!うまいに決まってるシリーズ第1弾、アジの握りでごぜえやす!プリ プリで甘くて、あっという間に完売。
出典:
(左)今回は干物にも挑戦 。 一夜干しした後は・・・。(右)耐湿紙グリーンパーチでくるんでもうひと寝かせ。塩加減絶妙!ホクホクの干物ももちろん完食。
出典:
狙い澄ましてゲットしたメバルに思わず叫んだ蒼一郎であった。
出典:
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【隔週刊つり情報(2020年3月15日号)※無断複製・転載禁止】