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釣れる人とバラす人はここが違う!キハダを逃さない名手の戦略~名手1・根本聖紀さんのキハダ戦略~

隔週刊つり情報編集部

日々進化する釣りに正解はない。

しかしよく釣る人の戦略を知れば間違いなくスキルアップにつながる。

そこで今回は名手二人が実践するキハダ釣法を密着取材し、バラシを防ぎ、高確率で獲るキーポイントを探る。

カンヌキに掛かればキハダは獲れる。決め手は3kgドラグと合わせ方

一人目の名手はキハダのカンヌキ(口角)にハリを掛け、高確率で釣り上げてきた根本聖紀さん。

ハリス切れの「瞬殺が激減する」というその要点は、ドラグ設定と合わせのタイミングにある。

魚の写真

細かく鋭いキハダの歯。ここにハリスが擦れると瞬殺!

根本聖紀(ねもとまさのり)

キハダ釣り歴7年。

相模湾小田原早川港の坂口丸に通い、毎シーズン7~8本を釣り上げている。

久保田忍船長は幼なじみで、小学生のころ初めて入った映画館でなぜか「食人族」を見てブルブル震えながら帰宅した仲。

一人目の名手は相模湾小田原早川港・坂口丸の常連、根本聖紀さん。

久保田忍船長とは小学生のころの同級生という間柄だ。
 
冗談を交えながら話が弾む根本さんは、とにかく明るくて人当たりがいい方なのだがそこは釣りキチ。

キハダの話になると目の色が変わる。

「結局のところバラシや瞬殺のハリス切れを防ぐ一番のツボは、キハダのカンヌキ(口角)にハリを掛けること。あの鋭い歯に当たらないようにすることなんですよ」
 
最初の数年は緩めのドラグで走らせる方法やアタリ即合わせの釣り方など色いろと試したものの、ある程度のバラシは回避できなかった。

前者はハリが飲まれっぱなしになってハリスが切れたり、後者は掛かり所が悪くてハリがスッポ抜けたり、伸ばされたり。
 
決して間違った釣り方ではないけれど、もっと高い確率でカンヌキに掛ける方法はないものか?と、日々思案したそうだ。
 
そんなとき目に飛び込んできたのが、あるテレビ番組。

「よく放送されている、大間のマグロ漁師の特番です。あれは手釣りですけど、登場していた漁師は、アタリがきたらマグロを走らせながらギューッと引き絞るように合わせていました。目が釘付けになりましたね。ひょっとしてこれは、丸飲みしたハリをジワーッと引きずり出してカンヌキに掛けるための動作じゃないか? と」
 
それをヒントに試行錯誤してたどり着いた合わせ方が、

●3kgのドラグ設定でキハダを走らせながら・・・

●締め上げるように竿を立てて、キハダのカンヌキにハリを掛ける

という方法だ。
 
運よくキハダの当たり日に遭遇した8月下旬の取材も、根本さんは30kg級を2本キャッチ。

ハリは見事にカンヌキを貫いていた。
 
飲み込んだハリを喉から引きずり出してカンヌキに掛ける。

根本さんが考え、実践し、ここ4~5年の間にしっかり結果を出してきたその釣り方に迫っていくことにしよう。

釣行の写真

ドラグチェッカーで3kgに設定し、道糸を引き出して手感でも覚えておく

3kgのドラグ設定が瞬殺を防ぐ要点の一つ

まずは根本さんのタックルと仕掛けから。

竿

藤沢釣具のグラス素材を用いた全長1.7mのワンピースロッド。

長年の釣友で海釣りの師匠でもある中嶌さんのハンドメイドだ。

リール&道糸

手巻きにこだわる根本さんは、小型軽量、なおかつドラグが滑らかなリールが好みで、シマノのオシアジガー3000番にPE6号を300m巻いている。

道糸がやや細い理由はリールのラインキャパに合わせるためだが、6号あれば「強度は十分」という。

そして最も重要なのはドラグ設定。

必ず竿にセットした状態で計測し、ドラグチェッカーで約3kgに調整する。

キハダが突っ込んだとき、3kgのドラグ設定が最も瞬殺を防げるらしい。
 
また、キハダを引き上げるときは4~5kgに締めるのでスタードラグの場合は「何クリックで1kg締まるか」を確認しておく。

参考までに根本さんが使っているオシアジガーは4クリックで1kg締まるそうだ。

テンビンとビシ(コマセカゴ)

テンビンはビシ遊動式のスーパーランナー。

キハダ疾走時の抵抗を減らしてショック切れを防ぐ。

ステン缶は細身のFLサイズ100~120号。

落下が速く、コマセワークのヌケもいい。

ハリ

通常は閂(かんぬき)キハダ16~18号の濃いケイムラが、軽量で安定して実績あり。

ノットは南方延縄結び。

40~50kgクラスの大型キハダが回ってきたら強度に優れるジャイアンとキハダマグロの16~18号。

ノットは坂本結びだ。
 
いずれもハリ先が緩やかにネムり、キハダの喉奥から滑り出てカンヌキに掛かりやすい形状が気に入っている。

ハリス

全長5~6m。

しなやかで締まりのいいプレミアム万鮪を使用。

太さは通常で16~20号、大型が回ってきたら22~24号(太さや長さに船長の指示があるときは準じる)。

サルカンへの結び方は漁師結び(別名・最強結び)+端糸をハーフヒッチで8回編み込んでいる。

オキアミエサの付け方

丸付けが好み。

写真のように1匹+カットした胴を使ってハリを包み隠す。

ほか2匹を抱き合わせにしたり、身がゆるんでエサ持ちが悪いときはオキアミを模したソフトワーム(特船オキアミなど)と抱き合わせることもある。

テンビンの写真

(上)ビシ(コマセカゴ)が遊動するテンビンと、細身のステン缶。これでキハダが突っ走ったときの余分な抵抗を減らす(左下)お気に入りのハリは「閂キハダ(濃いケイムラ)」と「ジャイアンとキハダマグロ」の16~18号(右下)ハリスはしなやかで締まりのいいシーガー・プレミアム万鮪を愛用

ハリの写真

(左)タタキバリは南方延縄、環付きバリは坂本結び。パイプ類は一切使用しないシンプルな結びだ(中)オキアミエサの付け方例。カットした胴をチモトにこき上げ、さらに1匹を通して丸付けにする(右)解凍したオキアミの身が緩んできたら、エサ締め液を使用してエサ持ちアップ

根本聖紀さんのキハダタックル&仕掛け

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コマセは温存させて食い気のある反応でまく

続いて根本さんの釣り方に移ろう。
 
コマセはステン缶に8分目くらい詰めて投入。

指示ダナからハリスの全長分落とし、3~4回に分けて軽く振り出しながらタナまで巻き上げて待つ。
 
ただしコマセはすべて振り切らず、半分くらいは温存する。

「探見丸(モバイル魚探)も活用していて、キハダの反応を見ながらステン缶に残したコマセをまきます」
 
振り出すタイミングは、船下に入ってきたキハダが最初にまいたコマセに反応して足を止めたとき。

魚探にはコマセを食べるキハダが上下に動き回る反応がしばらく映し出される。
 
そんなときが一番の狙い目となり、再びタナ下からコマセをまいて自分の仕掛けにキハダを寄せる。

「食いが立っていれば誘いも入れます。コマセをまいたら竿先を目一杯持ち上げて、ゆっくりタナまで戻す落とし込みが効くこともありますね」 

取材で釣り上げた2本のキハダは、まさにこのコマセワークと、落とし込みの誘いで食わせたもの。

短いチャンスタイムを逃さない戦術の一つだ。
 
ちなみに魚群が固まったまま通過する反応は期待薄で、タナで仕掛けを止めたままラッキー・ヒットを待つしかないようである。

コマセ振りのコツ

魚群データ

(反応1)動き回るバラけた反応はコマセを食べている証拠。コマセカゴに温存したオキアミをまいて、自分の仕掛けに寄せるチャンス(反応2)群れが固まったまま素通りしていく反応。コマセをまいても無視されがちなので、付けエサを止めたままラッキー・ヒットを待つ

3kgドラグで走らせながら締め上げるように合わせる

最後は一番のキーポイント、合わせの要点。
 
タナ取り後、根本さんは「楽に釣りたいから」と置き竿で待つことが多いのだが、それでもこの釣り方ならキハダを掛けられるという。
 
カタカタと竿先を上下させるアタリがきたら、まずはズーンと突っ込むまで待つ。

なかなか引き込まないときは、「ハンドルを2回くらい巻くと異変に気付いて突っ込む」そうだ。
 
3kg設定のドラグを滑らせながら道糸はあっという間に10m以上引き出されるものの、「道糸が30~40m出るまでに合わせれば、カンヌキにしっかり掛かる。あわてずに竿を手に持ち、下へ突っ込むキハダの走りも利用してギューッと締め上げるように竿を起こして合わせるのがコツ」とのこと。

その際はスプールに親指を当て、やけどしない程度に軽くブレーキをかけてやる。
 
根本さんのイメージは、

①キハダは一発で付けエサを喉の奥まで吸い込む。

②3kgドラグの負荷をかけて少し走らせると、ほどよくハリスにテンションがかかって、喉の奥からハリがズルズルと引き出される。

③最後の仕上げで締め上げるように合わせを入れて、ハリをカンヌキに貫通させる・・・

というもの。

「今のところこの方法で、瞬殺のハリス切れはほぼなし。ハリもカンヌキに刺さってます」と自信を持っている。
 
カンヌキに掛かれば、とにかくひと安心。

再び竿をロッドキーパーに預け、キハダのファーストランが失速するまでのんびり待つ。

その間にグローブをゆっくりと着けて、デカアテを竿尻に装着する。
 
そしてキハダの足が止まったらドラグを4クリック締め、4kg設定にシフトアップしてスタンディングファイトを開始。

ポンピングで引き上げながら、セカンドラン、サードランはドラグを滑らせてしのぎキハダを浮かせる。
 
上層でサメが待ち構えているときは、キハダの動きに注意。

「急に上下左右に暴れ始めたらサメ接近のシグナル。ヤリトリを中断してドラグを3kgに戻し、キハダを下へ走らせて逃がしてやります」
 
こうしてひと呼吸置くとパーフェクトではないもののサメ被害が減る。

あまりにもサメがしつこいときはキハダを走らせた後でマグロリングを入れ、手早く巻き上げるのも一策とのこと。

「現時点はこの釣り方がベストと思ってますが、数年後には変わっているかもしれませんね。まぁキハダに限らず、そうして日々研究していくプロセスも釣りの楽しみですから」
 
明るく笑う根本さんの目標は5kg級のオダモン。

小田原モンスターと呼ばれる大型のキハダだ。

自己レコードの3kgを塗り替えるべく、週一ペースで、そしてこの釣り方で、坂口丸へ通う日々がしばらく続く。

アイテムの写真

ラバー仕様のグローブ、竿尻に付けるY字のデカアテ、マグロリング。これが根本さんのヤリトリ用必携アイテム

【KEY POINT】根本さんの合わせ~ヤリトリ

①一気に突っ込んでドラグが滑り出しても慌てずに走らせ、道糸が20~40m出たあたりで竿を手にする

②スプールに親指を軽くあて、やけどしない程度に負荷をかけながら絞り上げるように合わせてカンヌキに掛ける

③カンヌキに掛ければひと安心。置き竿にしてファーストランを見守りながらグローブを着け、デカアテを竿尻にセット

④ドラグを4kgにし、スタンディングファイト開始。道糸と竿を一緒に握り込んで引き上げ、竿先を下げながら巻く

カンヌキに掛ける合わせからヤリトリの手順

釣り人の写真

今シーズン初のキハダを2本キャッチした根本さん。サイズは30kgと31kg

魚の写真

ハリは見事にカンヌキを貫いていた

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