鮮魚店のあふれる魚の中で、特に目を惹く鮮やかな赤い宝石のようなキンメダイ。
見た目の綺麗さは言うまでもなく、味の良さも皆さんよくご存知。
特に伊豆半島と利島・新島の海域(通称新島沖)で捕られるキンメは脂の乗りがいっそう良く、「地キンメ」、「トロキンメ」、「日戻りキンメ」とも呼ばれています。一般市場にはほぼ出回らず、直接豊洲市場へと流通し、超高級魚の待遇を受ける。
このようなブランドキンメを存分に楽しむのは釣り師だけのプライベレッジ。
新島キンメが釣れる船宿、南伊豆下田須崎港の八倉丸に訪れたのは3月下旬。
同乗者は2名。
指示を受け、右舷ミヨシから先に稲葉さん、次に宮崎さん、そして私の順に座る。
準備が整ってから4時20分に出船。
新島沖までは約1時間の航海。
前夜、家でエサ (カツオのハラモ)付けを終わらせ、クーラーから取り出した仕掛けを道糸に付け、2kgの鉄筋オモリを付けて投げ入れ待機。
開始時間の5時20分は過ぎたが、経験豊かな船長は落ち着いてリサーチを続ける。
回転灯を回す船団から離れ、船長の指示を受けて「ここらでやってみようか。460m。カケ上がりだよ」のところで、一投目が稲葉さんから開始される。
船長の合図でミヨシから順番に投入する
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ハリ数は20本までで鉄筋オモリ2kgを使用
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タックルは深海専用竿とPE12号を1000m以上巻ける大型電動リールの組み合わせ
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魚探の画面にキンメとおぼしき反応がビッシリ
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潮が流れない!?
続いて2番目の宮崎さんの投入も完了したところで、最後に私の仕掛けが投じられる。
投入時の注意点は、竿先からのびる道糸を常に張った状態にしておくこと。
たるんでいると掛け枠から放たれたハリが道糸に引っ掛かることがあるからだ。
もう一点は、リールのクラッチをフリーにするのは、仕掛けがすべて海中に入り、竿にテンションがかかってから行うこと。
最初からクラッチをフリーにしておくと、仕掛けが出きった勢いでバックラッシュを起こすことがある。
リールのカウンターが430mを示したところで着底。
仕掛けの長さを合わせると、ほぼ水深と同じ程度しかラインが出ていない。
オモリを底に着けた状態で仕掛けが浮かないよう、潮流の抵抗に合わせながら道糸を送り込んでいくのが新島沖の基本的な釣り方だ。
しかし、いつもは激流のように速いことが多い潮が今日はまったく流れていないようで、道糸の出も緩く、1投目は船中アタリなく終わる。
「下り込みをやってみよう。470mだよ」
このアナウンスを聞いて前の人が投入している間に60号の中オモリを100号にチェンジ。
さらに長さ6mの捨て糸を3mにカットした。
カケ下がり斜面で送り込まれた仕掛けは、底に着いているオモリを軸にして仕掛け上部の中オモリを先端に扇を描くように沈んでいくイメージ。
捨て糸を短くしたのは下バリをカケ下がり斜面から離さないため。
また中オモリを100号に交換したのは仕掛け全体を早くカケ下がりの斜面に近づけるためだ。
そのため、道糸もほぼクラッチフリーでズルズルと送り出している状態でありながらも、さらに道糸が引っ張り出されるような感触が伝わる。
アタリだ!
そのまま道糸を700mまで送り出したところで巻き上げ開始。
仕掛けをたぐり上げていくと1つだけだがシルバーピンクの魚影が見えてきた。
「デカいよ!船長タモお願い!」
口切れ寸前でヒヤッとしたが、無事キャッチしたキンメはこれぞ新島キンメと呼ぶにふさわしい2.1kgのメガサイズだ。
次の流しでも同じ狙い方で1.9kgをキャッチしたものの、ほかの人にはアタリがこなかったのでポイント移動となる。
当日の新島沖は驚くほど穏やかなナギ日和。水深450m付近を中心に狙った
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深海釣りのエキスパート・本誌APCの椎名さんが2kgオーバーをキャッチ
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投入回数は一日8投が目安
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久びさの快感
30分ほど探索したが、これといった反応は見当たらないようで、船長のヤマ勘で4投目を迎える。
「460m。平たいらっぱだよ」
このアナウンスに今度は中オモリを60号にチェンジ。
先ほどのカケ下がりの流しで上バリにドンコ、ソコダラも掛かってきたので、この緩い潮況と平たんな場所で中オモリ100号では仕掛けが底を這ってしまうと読んだからだ。
スプールを押さえながら道糸を送り出していくとアタリ到来。
道糸が引き出されるように強いアタリが続くので複数枚は掛かったようだ。
650mまで道糸を送り出したところで巻き上げを開始すると、いい感じに竿が曲がり込む。
仕掛けが上がってくると澄んだ海中に上バリからズラズラと連なるキンメの魚影。
1枚、2枚と取り込み、8枚のキンメが足元を埋めつくす。
型も1~1.8kgと申し分ない。
久びさの快感だ。
交じりで釣れたサバは最高のエサになる。
捨ててしまう人が多いが、私の場合はその場で切り身にカット。
効果はてきめんで、次の流しでは4点掛けでキンメが連なってきた。
にわかに調子を上げてきたのは稲葉さん。
2点掛け、続いて3点掛けと投入ごとに数をのばしていく。
道糸の高切れなど不運に見舞われ、ここまで型を見ていない宮崎さん。
7投目に、「やっときました。本日のハイライトです!」と良型の5点掛けを披露。
私も6投目に4枚、7投目に5枚と続き、ラスト8投目でも1枚追加し当日の釣りを終えた。
釣果は一人5~23枚。
もちろん新島沖ならではのサイズばかりだ。
私は2投目以降はラストまでアタリが途絶えることなく、新島沖のキンメ釣りを堪能できた。
さらなる楽しみはアフターフィッシング。
ブランドキンメの食味をとことん堪能するとしよう。
取り込みは、手が空いている人が魚の下にタモを添えてサポートしよう
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釣れたサバの切り身は最高の特エサ
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1kg以上のキンメは脂の乗りも格別
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知っ得!フラッシャーが大当たり!
前半アタリが遠かったので、実は4投目からフラッシャーを巻いたハリを1本置きに付けた仕掛けを使用していた。
その結果、いきなり私だけにアタリがきて8点掛けを達成。
その後もラストまでアタリは私に集中し、ダントツの釣果を上げることができた。
使用したフラッシャーの色はケイムラ。
水中に入ると青白く光を反射する。
片貝沖のキンメ釣りでフラッシャーサビキが成果を上げているように、この日は選んだようにフラッシャーバリに掛かる確率が高かった。
効果の高いアイテムといえるだろう。
フラッシャーの長さは5cmほど
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Tackle Guide
この釣りは事前準備が肝心。
仕掛けはあらかじめエサを付け、投入回数分の8組を用意すること。
またオマツリしたときだれのハリか分かるようにチモトをマジックで色付けしておくとよい。
当日のキンメ仕掛け
隔週刊つり情報(2022年5月1日号)※無断複製・転載禁止