定置網の仕事を切り上げてきた三浦德人船長が原チャリで船着き場にやってきたのは出船の30分くらい前だった。
「今日はウルメイワシとアジ。あとは小さいスミイカが少し入っていただけだったよ」と苦笑いしながらヤリイカ船の出船準備を進める。
週に3日ほど、早朝に組合の定置網での作業を担っている德人船長がいない朝は、キハダ・カツオ船担当で弟の三浦公士船長と仲乗りの本田久雄さんが船着き場で釣り人を出迎える。
受付担当は德人船長の奥さんでおかみの尚子さん。
本田さんはいないときもあるが、総勢4人のスタッフと2隻の釣り船で日々、釣り人を出迎えている。
PROFILE
カマちゃん:釜井 昌二(かまい しょうじ)
ママチャリで釣りに出かけるフィッシングライター。
アトリエぷらりおさかなイラストレーター。
A.T.LABフィールドアドバイザー。
代々漁師の家系も現在は兄弟船で遊漁専門
飯岡丸には私も何度かお邪魔しているが、いつもユルリとした空気が流れる船宿で、毎度心地いい。
事前に釣り座を電話予約できるせいもあるのだろう、朝のお客さんの動きものんびりしている。
飯岡丸は代々漁師の一家で、釣り船は先代から。
「爺さんの代まで専業の漁師でね、主に小アジの釣り漁をしていたんだ。親父の代から遊漁を始めて、まあ、漁も刺し網程度はやっていたけどね。そして俺の代から遊漁専門になったんだ」と德人船長が話してくれた。
三浦德人船長は、昭和39年生まれの56歳。
生まれも育ちも腰越の湘南ボーイ。
両親に大学進学を懇願して、逗子開成高校から北里大学水産学部(現、海洋生命科学部)へ現役で進学。
卒業後は家業である飯岡丸の船長の道を選んだ。
「当時、北里大学の水産学部には、水産増殖学科と水産食品学科という2つの学科があって、どちらかを選んで3年生へ進級する仕組みだったんだ。魚と直に触れ合えて面白そうだから水産増殖学科へ進級したかったんだけど、選べるのは2年生までの成績がよかった学生だけ。俺はデキが悪かったから選択の余地はなくて、残念ながら水産食品学科に進んで卒業したんだ」と笑う。
尚子さんとの間には、二男一女3人のお子さんがいて、各々が選んだ道へと進んだそうだ。
「一時期、長男が船の仕事をしてくれてたんだけど、しばらくしたら来なくなっちゃったんだ。弟はまだ独身だから、今のところ飯岡丸の跡継ぎはいないことになるね」と頭をかいた。
飯岡丸の4人のスタッフ
(右上)ヤリイカ船担当の三浦德人船長(右下)キハダ・カツオ船担当の三浦公士船長(左上)おかみの三浦尚子さん(左下)仲乗りの本田久雄さん
出典:
小型が多いだけにバラシも多い
お邪魔した9月初めのこの日は、キハダ・カツオ船とヤリイカ船が出船、私は德人船長が担当するヤリイカ船に乗船。
朝6時に綱が放たれた。
江ノ島のハーバー、防波堤、シーキャンドルを右に見て、ややウネリのある海上を南下。
航程30分ほどの江ノ島沖、水深120m。
シーズン序盤、いわゆる走りのヤリイカは小ぶりなサイズが多いから、難易度はやや高め。
乗りをとらえてもバレてしまうこともしばしばある。
流し変えるたびにだれかしらに乗りはあるが、取り込めたり、取り込めなかったりともどかしい。
序盤は単発ばかりだったものの、次第に2点掛けや3点掛けでヤリイカが取り込まれ、盛り上がってきた。
単発で取り込んだ方の仕掛けには、墨がベッチョリ付いているプラヅノが散見されたから、巻き上げ中にバレてしまうイカも多いようだ。
飯岡丸は2隻の釣り船で四季折々の釣り物に対応している
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(左上)合図が出たら即投入しよう(左下)タナは底中心(右)初期は小型主体、乗りを見逃さないようにしたい
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小型が多いので取り込みでのバラシも多くなる。直結仕掛けの場合は慎重かつ手早くたぐり込もう(左下)仕掛けとオモリは船上でも購入できる
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(左)中盤は2~3点掛けもたびたびあった(右)小さなシグナルをとらえての1杯に笑みがこぼれる
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昼前のこと。
船中ほとんどの方が竿を曲げる山場がやってきた。
が、しかし、そんな場面に限って、海面直下をうろつくS(アオザメ)の襲撃に遭遇。
言葉を失い、オモリも失った。
この日釣れたヤリイカは大きなもので胴長20cmほどと小型中心だったけど、日を追うごとに成長していくから、今後は徐々にサイズアップしていく。
ところでこの日もそうだったけれど、飯岡丸のお客さんは気さくで親切な方が多い。
船宿が築き上げた雰囲気と、ここを訪れる釣り人の人柄から生まれる心地いい船上の空気感。
いつまでもこんな釣り船であってほしいと願いつつ、13時少し前に早揚がり、雷雲迫りくる相模湾の海上を後にした。
腰越漁港は、数年前にきれいに整備されて港内に広大な駐車スペースもできた。
飯岡丸が横着けする岸壁のすぐ目の前が駐車場だ。
「この便利な環境もありがたいよね」と年配の常連さんは話す。
かくいう私は、いつも目の前に湘南のシンボル江ノ島の眺望があるこのロケーションが大好き。
お出かけ気分をくすぐられ、なんともうれしく楽しい気分になるのだった。
初期だけに型は大きくても20cmほど
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(左)スルメイカも少し交じった(右)サバに交じって釣れるオアカムロがうまい
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なんだかんだ言って多点掛けがやっぱりうれしい
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飯岡丸のヤリイカ仕掛け例
船宿information
『飯岡丸』
TEL:0467・31・1560
URL:http://www.gyo.ne.jp/iioka/
予約乗合。仕立も応相談。釣り座は電話(毎朝8時~18時までの間)予約制。
船宿アクセス
●車/腰越漁港は国道134号の小動交差点と腰越橋交差点の間の海側にある。腰越漁港入口を入り、突きあたりで駐車料金を支払う。そこを左折し、ちょうど曲がり角となるところが船宿受付。そのまま進んで、港中央付近、飯岡丸係留場所の目の前が駐車スペースとなる。
●電車/江ノ電腰越駅から海岸方面へ3分ほど歩いたところが腰越漁港。
乗船の流れ
①腰越漁港の開門時間5時以降に港内へ。
②港内に入ってすぐ左にある小屋で受付する。
③車は船着き場前の駐車スペースへ。
④受付で確認した釣り座で準備して出船。
⑤氷は出船前に配ってくれる。
⑥下船後は船の前に手洗い場が用意される。
飯岡丸のサービスと船上設備
(左)各釣り座に循環ホース(右)バッテリーの貸し出しあり
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(左)投入器完備(右上)受付で各種仕掛け販売中(右下)船ベリのそこかしこに当て木とカンナ掃除用の歯ブラシあり
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(左)港入口の目の前で釣具店も併営(右)各種釣具のほかオリジナルTシャツなども販売
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飯岡丸の釣り物とシーズン
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【隔週刊つり情報(2020年10月15日号)※無断複製・転載禁止】