せっかくの南伊豆釣行だから旅気分も味わおうと日野の菜の花畑に埋もれてから弓ケ浜の温泉に浸かり、船宿の仮眠所でひと休み。
ここ手石に生まれ、育ち、暮らす佐野譲太郎船長を訪ねた。
南伊豆町手石、青野川のほとりにある愛丸は父、佐野讓船長が1号船第6愛丸でキンメダイ、息子、譲太郎船長が2号船第7愛丸でハタ五目やモロコといった根魚を担当。
2隻の船で周年釣り人を迎えている。
(左上・右上)伊豆急下田駅から手石まではバスで30分ほど。(左下)南伊豆町日野の菜の花畑。(右下)弓ケ浜大橋から見る青野川河口。
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ポイントは神子元島沖を中心に下田~石廊崎沖の水深50~100mほど。風向きや潮流を見て攻め分けている。
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カマちゃんのプロフィール
釜井 昌二(かまいしょうじ)
青春のひとときを南伊豆で過ごしたフィッシングライター。アトリエぷらりおさかなイラストレーター。A.T.LABフィールドアドバイザー。
親子で営む南伊豆の人気船宿
当地の沿岸は、伊豆諸島の島々を間近に望む抜群のロケーションと好漁場に恵まれた知る人ぞ知る人気エリア。
町には小規模ながらも温泉が湧き、野には花が咲き、夜は満天の星空に覆われる。非日常に身をゆだね余暇を楽しむには、理想的な所だ。
「都会からちょっと遠い南伊豆まで足を運んでくれる釣り人に少しでも満足して帰ってもらいたい」
そう話す愛丸の二代目、佐野譲太郎船長は昭和50年生まれの44歳。
アイドルグループ「嵐」のメンバー相葉雅紀似の爽やかなルックスとスラリとした立ち姿は、憎いくらいにカッコいい。
にこやかで優しい接客とあいまって、好感度は◎。
初めて訪れる釣り人をホッとさせ、リピーターにも愛されている。
そんな譲太郎船長は、高校卒業後に某釣具チェーン店で働いた経歴を持つ。
いずれ家業の愛丸を継ぐことを先方へ伝えた上での就職だったそうで、2年間の釣具店勤務をへて、船長の道へと進み、父である讓船長の元で一から漁師の仕事をたたき込まれた。
何が一番つらかったかたずねると、ひどい船酔いだったと苦笑する。
今では一年のほとんどを船での仕事に費やす海の男。
乗合の出船がない日は讓船長と伯父が二人でキンメ漁へ出るのだが、伯父が行かない日には、親子で出漁することもあり、自分だけ出番のない日はキンメ漁で使うエサ切りなどに追われる。
家へ帰れば一男二女の父。
手の空いた余暇には、野球好きの長男とキャッチボールをして過ごすこともあるそうだ。
話の端々に家族をとても大事にしている様子がうかがえる譲太郎船長、就職して独り立ちした長女の話をするその横顔が少し寂しそうに見えるのだった。
(左)佐野譲太郎船長。(真ん中)船上アナウンスはカラオケマイクで。(右)南伊豆町湊にある公衆温泉「みなと湯」。
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大型のウッカリカサゴが連発
譲太郎船長は、ここ南伊豆で気軽かつ手軽に楽しめる釣り船を目指してきた。
ベテランから初心者まで、愛丸へ遊びに来てくれた釣り人全員に根魚の激しい引きを味わう喜びを感じてもらいたいと願っている。
「せっかく南伊豆まで来たからには、たっぷり二日間楽しんでいきます」という二人組に感化されたわけではないが、私も二日間、第7愛丸のハタ五目に乗り込んだ。
好天に恵まれた初日は5人の釣り人を乗せて神子元島沖へ。
ポイントは水深60~90m、海底は高低差のある根周りだ。
良型のアヤメカサゴやウッカリカサゴがポツポツと釣れ上がった後、いよいよ右舷トモで海面を割ったのは、1kg超級のイヤゴハタ。
「私自身が釣った最大のハタもこのイヤゴハタで、10kgを超えていました」と譲太郎船長が話してくれた。
しばらくすると左舷トモでも同級のイヤゴハタ、モザイク柄が特徴的なハタの仲間だ。
いやはや羨ましい。
愛丸で釣れるハタは、マハタをメインにホウキハタやイヤゴハタ、近年増えてきたというアオハタなど。
希少なマハタモドキが釣れたこともあるとか。
速かった潮が緩んだ終盤に右舷ミヨシで強いアタリ。
一度は根に潜られ、万事休すと思われたが、運よく根を抜け出して、海面にポコンと浮かび上がったその魚は2.7kgのホウキハタ。
黄金に輝くその魚体は、まぶしいほどだった。
二日目は定員一杯の8名がそろって出船。
強い北東風を避けるようにして西へと進路を取り、石廊崎沖へ。
ここでは1kg級のオニカサゴを皮切りに、前日同様カサゴ類がポツポツ釣れ続けた。
その合間に1.5~3kg級のヒラメや1kg級のチカメキントキ、マトウダイなど多彩な魚が顔を出し、まさに五目釣り。
いい根には魚が固まって着いているようで、2kg前後のウッカリカサゴが連発した流しには驚かされた。
残念ながら二日目はハタの顔は拝めなかったが、南伊豆の海の豊かさを感じるには十分。
二日間の満足感と心地よい疲労とともに、ガランとした東海バスに揺られて帰路についたのであった。
船中2尾目のイヤゴハタ。ホウキハタと異なり胴体の模様が不鮮明なのが特徴。
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「流れていた潮がたるんだときなどはチャンスです」と譲太郎船長が話すとおり、潮がたるんだときに2.7kgのホウキハタが食ってきた。
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(左上)ハタ五目は重量感のある引きが楽しめる。(左下)アヤメカサゴも良型がそろう。(右)2日間の取材で一番よく釣れたのがウッカリカサゴ。
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(左)すわマハタか!という力強い引きで大型のチカメキントキが登場。(真ん中)2日目のファーストヒットは1kg級のオニカサゴ。(右上)チカメキントキのエンガワの刺身は絶品。(右下)アヤメカサゴも良型がそろう。
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(左)ヒラメもしばしば釣れる。この日は3kg級が上がった。(真ん中)愛丸ではマトウダイはハタが食う前兆とまことしやかにささやかれている。(右)ウッカリカサゴとアヤメカサゴはハタ五目の定番。
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(左)2kgオーバーのウッカリカサゴ。もっと大きいサイズもよく釣れるとか。(右上)大型のウッカリカサゴが連発する流しもあった。(右下)ハリス10号は使いたい。 オモリは80号。エサは生きイワシ。中羽のいいサイズがそろっていた。
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船宿information
乗船の流れ
①車の場合、船宿手前の駐車スペースに車を止める。
②先着順で釣り座を確保する。
③船宿裏手の製氷機から各自で氷を入れる。
④下船後に乗船料を支払う。
愛丸のうれしいサービス
(左)18時以降に入室可能な無料仮眠所あり。21時以降は 静粛厳守。入室者は譲り合って利用のこと。予約不可。(右)ハタ釣り用電動リール&ロッドのセットは無料でレンタルできる。
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船着き場に真水のホースがあり、釣具の洗浄ができる。
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第7愛丸の設備
(左)船の前後3カ所に生きイワシ用のイケスあり。(真ん中)バッテリーの貸し出しあり。(右)船後部に水洗トイレ。
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(左)イワシを入れておくバケツは船の前後に置いてある。(真ん中)各釣り座に小物入れがある。(右)座り心地のいい木製の椅子も設置。
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アクセス
(左)主にキンメで出船する1号船の第6愛丸。(右)ハタ五目、モロコで出船する2号船の第7愛丸。
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●車/下田市街から国道136号を南伊豆方面へ。日野交差点を直進し、県道16号を石廊崎方面へ進む。新湊橋交差点を右折し、弓ケ浜大橋を渡って約500m進んだ左側に船宿。その手前のスペースが駐車場。
●電車/伊豆急下田駅から東海バス石廊崎方面行きに乗車して手石バス停下車。バス停手前に船宿。
釣り物とシーズン
愛丸の釣り物とシーズン
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【隔週刊つり情報(2020年4月15日号)※無断複製・転載禁止】