中学生ころのオレの趣味は数学だった(コレ、マジです)。
エ〇本をこっそり見るよりも、超難問だらけのドリルをニヤニヤしながら解くほうが好きだった。
名答を得たときの快感に体を火照らせる・・・オレは、そんな変態少年だった。
オッサンになった今、オレは芋焼酎のお湯割りで頬を火照らせ、超簡単な算数の問題を解いている。
例えばこんな問題だ。
問1、一人当たり平均10本のタチウオを毎日10人に釣らせている船があります。
1カ月当たりの出船日数が20日と仮定した場合、その船の1カ月での総釣果は何本ですか?
答えは2千本。
問2、ある湾にそんな船が20隻、その倍を釣らせた船が10隻、その半分しか釣らせなかった船が10隻あったとすると、全船における1カ月当たりの総釣果は何本ですか?
答えは9万本。
問3、1本当たりの平均重量を400gとすると、問2の解は何トンになりますか?
答えは、36トン。
問4、シーズンを7~2月として、毎月同じペースで釣れたと仮定した場合、1シーズンに何本および何トンのタチウオが釣られたことになりますか?
答えは72万本、288トン。・・・うーむ、スゴイ数字だ!と、ここで現実の話をしてみたい。
Team Okizuri Tantei
海釣り探偵”K"
●魚釣り師として偽装し、海釣り船で隠密調査を実行する調査員。独自の情報リソースを活用し困難な調査を解決...予定。釣り技術はまだまだの永遠の23歳。
パトロール員”K”
●写真家として偽装し、遊漁船内を歩き回る探偵Kの監視役。厄介な調査には関与せず。濃い抹茶高とホッピーが大好きなエディター。
基本データ#FILE01 タチウオという魚
スズキ目タチウオ科タチウオ属。
北海道以南の日本各地の沿岸に生息し、体長130cmほどまで成長する。
沖縄近海には別種のテンジクタチやオキナワオオタチがいる。
東京湾における産卵期は4~11月(現場の知見ではさらに長期とも言われている)とされており、瀬戸内海の5~7月、紀伊水道の4~10月と比べて長いのが特徴。
幼体の食性について、体長75mmまでは動物性プランクトン、76~175mmまではエビ・カニ類およびその幼生や小魚、176mm以上ではイワシ・アジ類などの小魚を捕食するとされる。
東京湾のタチウオの成長は早く、生後一年以内で300g超(体長70~80cm、体高で指幅3本級)まで成長するという。
※参考資料:環境省「漁獲量の推移及び変化の要因に係るこれまでの知見について」、神奈川県「神奈川県周辺海域における重要水産資源の動向」
タチウオの体表にはウロコがなく、グアニンという銀色の粉で覆われている。口元には鋭利な歯が並び、指を触れる程度でも流血するからハリを外す際には要注意。
出典:
今日も東京湾のタチウオはよく釣れた
2019年度の東京湾タチウオ戦線を振り返ると、春には観音崎で良型が釣れ盛り、夏は湾央部で夏タチシーンが盛り上がり、秋には湾奥~横浜で大盛況。
そしてこの冬は、例年よりグッと浅場で良型が爆釣している。
もしも算数の問題に当てはめた仮の数字を2019年度の東京湾における実際の数字に置き換えたなら、もっとでっかい数字が弾き出されるはずだ。
とすると、東京湾にタチウオはどんだけいるんだ?こんなに釣られちゃって、いなくならないのか?という疑問を抱かずにはいられないわけで・・・。
その疑問を解き明かすのが探偵の仕事っしょ!!
タチウオを釣らせたらピカイチな腕前を持つ船長がいるってんで、いつもの監察官Kと釣友マコちゃんを連れ、東京湾奥金沢漁港の忠彦丸へ潜入調査を試みた。
2月中旬に出かけたこの日のポイントは、航程20分の八景沖水深50m前後。
「海面から47~49mをやってみてください。エサが小さいと食いが悪くなるので、切らずに長いままハリに刺してください」と安田剛船長から指示が出て、オレもさっそく竿を出してみる。
すると、バンバンアタリがあって、指幅4本クラスの良型が連発。
竿がズキューンと絞り込まれて楽しいことこの上ない。
船上偵察中の監察官Kによると、メーター超級の大型もポチポチ顔を出しているらしい。
ハリ飲まれのハリス切れとか、エサがかじられるだけってなシーンもたびたび。
アタリの数だけ全部ヒットしたらすごいけど、そうは問屋が卸さないとはいえ、安田船長がいい魚群をとらえたおかげで、沖揚がりまでアタリが途絶えることはほとんどなかった。
当日の釣果は70~108cmのタチウオがトップ50本、2番手39本、3番手36本で7~50本。
のんびり釣ったオレでさえ20本。
船中での総数は、なんと455本を数えた。
「安田船長、ちょっと話を聞かせてください!」
タチウオを周年狙うようになって6年目を迎え、それでいて釣らせ上手な安田船長に、昨今の東京湾タチウオ事情について聞いてみたのであった。
(左)しっかりシャクってしっかり止める。 メリハリのある誘いがキモ。(右)初心者には朝、船長がエサ付けから釣り方までレクチャーしてくれる。
出典:
(左上)このサイズだから食べ応えもバッチリ。(真ん中)アタリを出せればけっこう上まで追いかけてくる。(左下)3月になってからはポイントが猿島~走水周辺へ移った様子。(右)チモトの補強を工夫する人も多い。
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(左上)食いの渋い日もあるから時合に釣ることが大切。(左下)トップは某船宿の船長で50本。(右上)釣り過ぎに注意しましょう。(右下)30本以上釣った人も数人いた。
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(左)型がいいのでハリは3/0がおすすめ。(真ん中)この日はほとんどの人がツ抜けした。(右)ハリを飲まれてのハリス切れも多い。
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基本データ#FILE02 忠彦丸のタチウオ釣り
東京湾奥金沢漁港・忠彦丸のタチウオ釣りはショート船(一日船より少し早い13時沖揚がり)、午前船、ライトアジとのリレー船(一日釣り)と、釣り人のニーズに合わせたスタイルで出船している。
道糸はPE3号以下厳守で、PE2号以下の場合はオモリ60号、PE3号の場合はオモリ80号を使用する。
仕掛けのハリ数は1本で、ここ最近は良型が多いため、3/0号推奨。
なるべくシンプルな仕掛けのほうがアタリが多いとのことだが、飲み込みによるハリス切れが頻発するときは、ハリのチモトに補強チューブを入れるといいだろう。
ポイントは2月末現在、八景沖の水深50m前後を狙っているが、状況により久里浜や観音崎沖の深場を狙う可能性もあるので、80~150m前後の水深も狙えるタックルを持参しておきたい。
(左)多数の大型船を有する忠彦丸。 取材日は2隻出しの大盛況。(右)待合所なども完備。ビギナーからベテランまで人気の船宿だ。
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(左)道糸の太さに応じてオモリは60号または80号を使用。(右)エサは状況によりサバまたはコノシロの切り身。
出典:
ダイジェスト動画も公開中!
【今回の調査結果】結果いなくなるどころか増えていそう。タチウオが減っている気配はない!
安田船長に聞く 東京湾タチウオ事情
Q1:以前に比べて、タチウオは増えている? 減っている?
「今は八景沖でやっていますが、ほかの場所にもタチウオの群れはいるはずです。東京湾のあちこちにタチウオの群れがいるという感覚でいます。八景沖だけを見ても、今皆さんに釣ってもらっている大きな群れ以外にも、周辺にはコマ切れ状に群れが多数点在しています。この海域だけでも相当数のタチウオがいるはずです。増えているかどうかと聞かれれば、増えている気がします」
Q2:増えている理由はなんだと思いますか?
「一年中発情しているのではないかと感じるくらい、長い時期に渡って抱卵したメスが釣れます。この産卵期の長さ、繁殖力の高さが影響している気がします。天敵がいないことやエサが豊富なことも背景になっているかもしれませんね」
Q3:こんなに釣れていなくならないですかね?
「よく釣れているのは、何も資源量の多さばかりが理由ではないでしょう。ソナーや魚探などの機器を使いこなし、いい群れを見つけられる船長が増えていることが主因だと思います。『たくさん釣れる=魚がいなくなる』は、早合点し過ぎです。私も乗船してくれた方に少しでもたくさん釣らせられるように頑張っている一人です」
タチウオが釣れているのは魚影の濃さだけではない。 船の装備や船長の操船技術も多分に影響しているようだ。
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周年タチウオを追いかける安田船長、経験談や貴重なご意見ありがとうございました。
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平均サイズは70~90cm前後。
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(左)船長いわく「秋の最盛期のような釣れっぷり」。(右)指示ダナから7~8mくらいの間でアタリを出させることが肝心。
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(左)1mオーバーもそこそこ交じる。(右)この日は終日アタリが途切れなかった。
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東京湾のタチウオに天敵現る!?
湾奥S丸S船長から、12月28日の行徳沖、1月13日の観音崎大根にて、釣れたサワラがタチウオの稚魚を吐き出したという情報が飛び込んできた。
長年サワラを狙っているが、こんな経験は初めてだそうだ。
また、今シーズンの青物がロングジグへ好反応を示すそうで、「明らかにタチウオがサワラやワラサのベイトになっている」とS丸S船長は断言する。
これは成魚ばかりでなく、稚魚も増えているという証か?今後の動向を見守りたい。
(左)サワラの嘔吐物その一。12月28日、行徳沖にて。(真ん中)サワラの嘔吐物その二。1月13日、観音崎大根にて。(右)「今シーズンの青物は、ロングジグでっせ~」とS船長。
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探偵”K”の報告書
現在、東京湾内のタチウオ資源量に関するデータはない。
一刻も早い資源量データの算出を行政に求めたいところ。
今回は、農林水産省発表「海面漁業生産統計調査」と神奈川県発表「神奈川県周辺海域における重要水産資源の動向」の二つを参考に話をまとめたい。
2012年以降の漁獲量データが図1となる。
後者の資料には、横浜市漁協柴支所の小型底引き網漁の漁獲量が掲げられていて、「遊漁やまき網による漁獲も多い中、小型底引き網漁によってコンスタントな漁獲があり、東京湾漁業の中では堅調」という専門家の見解が示され、資源の動向は「中位・増加」と示されている。
その見解を踏まえ、図1を見る限り、なんらかの環境変化つまり外的要因が影響を及ぼさない限り、タチウオの資源量は安泰といえそうだ。
この漁獲量データと安田船長の話に鑑みて考察すると、
・職漁による漁獲量と遊漁による釣獲量の総量が、今後突出してのびないこと
・東京湾の環境(水温や水質など)に大きな変化が生じ、タチウオが暮らしにくい環境にならないこと
この2点が維持されれば、東京湾のタチウオは今後も資源が維持される、あるいは一層増えていくのではないだろうか。
タチウオの豊漁が続けば我われ釣り人もその食味を楽しみ続けられる。
出典:
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