以前、宗谷岬で日本一周バイクツーリングを終えたばかりの人と話をしたとき、最も印象に残っているのが伊豆半島だと語っていた。
関東在住の私としては意外に思ったのだが、東、南、西、富士山を含めそれぞれに魅力があり、常に景色が変わり続ける伊豆半島が一番楽しかったそうだ。
その絶景を海の上から、しかも夜明けから眺めることができる船釣りは、ぜいたくな遊びだ。
中でも南伊豆・石廊崎周辺は絶壁あり奇岩ありの景勝地。
しかも初夏から始まるマダイの乗っ込みポイントは陸を眼前に眺める場所ばかり。
絶景の中で大ダイを狙い、お土産がほしければ大きなイサキがいつでも釣れる。
そんな場所は3万5千kmに及ぶ海岸線を持つニッポンでも、南伊豆だけではないだろうか。
競合する船が少なく、大型船かつ定員制で席間にゆとりがあるので、おおらかな釣りができる
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風光明媚とはまさに南伊豆のこと。最高のリラックスタイム
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釣り方は海面からのタナ取りマダイを「浮かせる」とは?
ご存じのとおりコマセダイはコマセでマダイを寄せて食わせる釣りだが、コマセで「浮かせる」と思ったほうがいい。
海底付近には小魚を始めエサ取りがたくさんいる。
その中から、マダイをおびき出して食わせる、そんなイメージだ。
ただ、マダイは人工物であるコマセカゴを警戒するため、容易に近づいてはこない。
そこで、ハリスを長くしてコマセカゴを遠巻きに見ているマダイのもとへ届けてやる。
このプロセスにおいて大切なのが、マダイを警戒させないこと。
そのためタナ取りは、
①海面からの指示ダナ+5または6m以上落とさない。
②コマセをまいたら速やかに、正確に、指示ダナにコマセカゴを合わせる。
これが鉄則。
間違っても海底までコマセカゴを落とさないよう注意。
ちょっとフクザツになるが、コマセダイにおける指示ダナは、釣り場はもちろん、船長によっても異なる。
海底から何mマダイを浮かせたいのか。
そのためにはコマセカゴは海底からどれぐらい離れていればいいのか、その読み、作戦が「指示ダナ」になる。
このとき重要なのが、船長が頭の中で、何mのハリスをイメージしているのか?ということ。
もちろん船長に聞けば教えてくれるので、初めて行く船宿では必ず聞いておきたいし、毎回確認してもいい。
ちなみに今回釣行した南伊豆・米丸では、ハリス4号10~12mが基準(図①)。
このハリス長をもとに、釣り人は、「ハリスを長くしたほうがいいのではないか」とか、「潮が速いからガン玉を付けないと付けエサが沈まないかな・・・」とか、「船下ではなく横方向に離れているマダイに食わせたいからフロートを付けてフケさせてみよう」などなど、思い思いに作戦を立てては試行錯誤する。
図① 南伊豆のコマセダイ仕掛け
コマセダイ用ワンピースロッドは現在2.5m前後が主流。軽量で取り回しがよく、感触が非常に楽しい。写真はアリゲーターのビーダンサー250ライト
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ハリス+クッション=仕掛けの長さ・大ダイの食いの関係を考えてみる
コマセダイでは、食わぬなら、食うまでハリス(または仕掛け全長)を長くする、と強硬手段に出る人も少なくない。
また、ハリスを細くするのも常套手段だ。
コマセダイのキャリアが長ければ長いほど、変更したときの成功体験が蓄積されていくから、アブノーマルな仕掛けに傾倒しがち。
図②は、取材日に訪れた2回の時合と、ハリス+クッションゴムつまり仕掛け全長の関係をまとめたもの。
☆1回目の時合=6時~6時15分
・仕掛け全長11m=中、大ダイ3枚、小1枚
・仕掛け全長13m以上=中~大ダイ1枚、小3枚
☆2回目の時合=8時20分~8時50分
・仕掛け全長11m=小1枚
・仕掛け全長13m以上=4.2kgの大ダイ1枚、小1枚
あくまで当日の話だが、朝イチの時合では仕掛け全長11m(ハリス10m)の仕掛けに大型が食う傾向が見られた。
対して日が高く上った後は、仕掛け全長が長い仕掛けが好成績。
朝イチの時合に関していえば、食い気のある大ダイは短い仕掛け、つまり高い位置に浮いているエサを食っているから「マダイを浮かせて食わせる」船長の狙いどおりの結果。
潮の流れやマダイの食いにも左右されるだろうが、南伊豆のように競合する船が少ない場所では、朝から長いハリスを使う
そして8時台の時合では、なかなか浮いてこないマダイを、長い仕掛けで食わせた結果ともいえる。
[ここで空想してみる]
①スタート時=船長が基準としている仕掛け長からスタートする。
朝イチ、活性の高い大ダイが釣れるかも!
②日中に釣れない=仕掛けを1~2m長くしてみる。
③エサも取られないとき=ハリの上50cmの所にガン玉(Bサイズ前後)を付けて沈めてみる。
①と②への変更は、ハリスを交換するのもいいが、2mのクッションゴムにする、あるいは、クッションゴムを連結して仕掛け全長を長くするのも一手(図③)。
そのほか、ハリスの上にフロロカーボン7~8号を3m、電車結びで足すのもあり。
いずれも手早くできて、すぐ元に戻せるのが長所だ。
仕掛け
(上)マニアの間では定番となっている2mのクッションゴム。人徳丸のロングライフクッションは3mなど、長さのバリエーションが豊富(左下)-2Bのウエイトスイベルを仕掛け中間付近にセットしたテーパー式は、中間まで素早く沈み、その先はゆっくりなじむ。傷んだときに交換が早く、節約にもなるのも長所(右下)ハリは無塗装(銀)、金、ケイムラ、フッ素コート黒など様ざま。写真は「真鯛王ケイムラパール」10号。チモトに小さなソフト玉、その上にパールをセット。これで3.7kg含め3枚キャッチ
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図② 朝の時合は短い(標準)仕掛けが有効?
図③ 仕掛け全長を変える方法
イサキが釣れたら大ダイも?意外なエサ取りがきた場合の対処
南伊豆のコマセダイでは(イサキ狙いでなくても)しばしばイサキが釣れる。
これは根が近いポイントを狙っているためで、イサキが釣れたからといってマダイが釣れないことはない。
仕掛けを替えたり、タナを変えることなく、指示ダナで根気よく釣っていくことが肝心。
根の近いポイントでは大ダイが釣れるので、油断は禁物だ。
また、本誌が発売される6月は分からないが、5月上旬の取材時はマダイ乗っ込みと同時に、釣り場にサバが回ってきた。
船長いわく、乗っ込みの大ダイはコマセを振った後、ていねいに誘いを入れて付けエサを動かして食わせてやるといいそうだが、サバがいるときに誘うと、サバが先に食ってしまうから困ったもの。
5月上~中旬、マダイの型、数、ともに上がってはいるものの、実は、サバが回っていなければもっと釣れていた。
取材日もマダイが釣れ始めた途端にサバが回ってきて、泣く泣く移動した流しが何回もあった。
ある意味、サバが釣り人のハリからマダイをガードした格好になっているのだが、釣り人としてはやっかいだ。
この意外なエサ取り対策としては、投入してコマセをまいて指示ダナに合わせたら、誘わずガマンすること。
なるべく手返しせず、誘うときは道糸を手でゆっくりと出す程度にしたい。
◇
なお、ハリスを4号以下に細くすることはおすすめできない。
確かに食い渋り攻略の一手ではあるが、今は一年で最も大ダイが食ってくる確率が高い時期。
レコードサイズが次の投入で食ってくるかもしれないのだ。
ダイナミックな景観と大きなマダイ。
時間が許すなら、ぜひ宿泊して南伊豆の景色と釣りと食を満喫したいものだ。
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隔週刊つり情報(2022年6月15日号)※無断複製・転載禁止