東京湾のアナゴは主に夜釣りで、例年4月中旬ごろに開幕し、長い年では7月まで乗合船が出る。
主な釣り場は木更津沖で、水深は14~18m前後。
状況によっては中ノ瀬や富岡沖などを狙うこともある。
釣れ具合は年によってムラがあり、ここ数年はトップで20本を超えればまずまずといった感じだったが、今年はトップ20~30本超えは当たり前、いい日は40~50本と数が出ている。
そんな数字だけを見ればオレでもイケんじゃね?と気軽に思ってしまうが、一筋縄ではいかないところが夜アナゴの難しくも面白いところ。
夜アナゴはアンカーを打ってのカカリ釣りで狙うため、どうしても釣り座による有利不利が出てしまう。
例えば今回取材した東京湾奥羽田のかみや、4月20日の釣果を見てみると、20本を超えたのは四隅の3人だけ。
もっと顕著なのは4月23日の釣果で、左ミヨシの40本以外は全員1桁。
こうなると釣り座の有利不利だけではなく、テクニックが大きく影響していることが分かる。
さすがに名人たちには及ばないにしてもまずは5本、10本釣れればそこそこ楽しめるから、最初はそこを目標に頑張ってみたい。
タックルと仕掛けは人それぞれ
アナゴの微妙なアタリを取って、硬い口にハリ掛かりさせる必要があるから竿は穂先が柔軟で、胴~元に張りのある全長1.5m前後の専用竿が釣りやすい。
リールは底ダチを取り直しやすい小型の両軸が主流で、人によってはスピニングを使う。
道糸はPE1~1.5号。
夜釣りでのライントラブルは致命傷となるので、細すぎる道糸はおすすめしない。
仕掛けは人によって様ざまだが、慣れないうちはオーソドックスなツリガネオモリの1本バリが無難。
仕掛けの扱いなどに慣れてきたらオモリの下か上にもう1本ハリを追加、2本バリにするといい。
基本的にアナゴはたくさんのエサでアピールしたほうが寄りがいいとされる。
なおオモリは20号、25号、30号の3サイズはあったほうがいい。
カカリ釣りなので潮や風向きによっては道糸が大きく流され、軽いオモリでは非常に釣りにくくなることがある。
エサはアオイソメで、ハリへは1匹を縫い刺しにするか、小さく2cmくらいに切ったものを房掛けに付ける。
今シーズンのアナゴの特徴として、小型が多いことがあげられる。
仕掛け的に何か対処法はあるのか何人かの名人に聞いたところ、ウナギバリ10~11号と普段使っているより1サイズ落とすくらいで、エサの付け方などは変えていないということだった。
(左)オーソドックスなツリガネオモリの1本バリ。(右)まずはこれからスタート。
出典:
アナゴ釣りの基本は船下小づき
仕掛けはチョイ投げもしくは船下へ真っすぐ下ろす。
仕掛けを投げるときは前方、または潮上(道糸が流れる逆方向)へ、両隣の人のラインとかぶらないように注意して投げる。
仕掛けが着底したら、軽く糸フケを取り、トントン小づいてエサを踊らせる。
小づきはオモリを持ち上げ、下ろすのではなく、道糸を張ったり緩めたりしてオモリが海底で立ったり寝たりする程度のイメージ。
小づいている最中、または動きを止めたときにモゾモゾ、ゴツゴツッとアタリが出たら一呼吸置き、グググッと食い込みアタリに変わったところで竿を大きく振り上げてしっかり合わせる。
竿先に重みが乗ったらそのままリールを巻きながら竿を水平に戻していく。
合わせたときに竿先に重みが乗らなかったらハリ掛かりに失敗、すぐに竿を下げて仕掛けを着底させ、小づきを入れてみる。
アナゴはけっこう貪欲な魚で、エサが残っていれば再び食いついてくることもけっこうある。
取り込みは仕掛け(ケミホタルなどの発光体)が海面下に見えたら巻き上げを止め、竿を立ててそのまま一気に船内へ抜き上げる。
巻き上げ中や取り込みでのハリ外れもあるから、合わせから巻き上げ、抜き上げまでは道糸を緩めないようにスピーディーに行うことが大切。
以上が釣り方の基礎になり、慣れている人は2本竿でリズムよく小づきながら、時合となれば手返しよく釣って数をのばすが、アナゴ釣り初めてなら1本竿で集中して釣ったほうがいい。
アナゴ釣りイメージ
2本竿でのちょい投げもしくは船下小づきが基本スタイル。
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竿先をやや上に構えて小づくのが基本。
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アタリがないときの打開策
基本的な釣り方自体は至ってシンプルで、多少の違いこそあれ、かみやで常に竿頭争いをする名人たちも、基本は船下小づき。
差が出るのはここからで、普通の人が最初に悩むのが「アタっても掛からない、合わせのタイミングが分からない」など。
これは使っている仕掛けやアナゴの活性によっても変わってくる。
取材日に26本で竿頭になった吉瀬さんは「アタったら止めて待つ」のを基本としているが、「食いのいいときは動かし続けたほうがハリ掛かりしやすい」と教えてくれた。
一方、大塚さんはアナゴの活性がよく潮も流れているときは「即合わせで掛かる」こともある。
それで掛からなければ、待つ。
要はそのときの状況で合わせのタイミングを変えていくのだが、クッとかモタッとしたアナゴがエサを口にしただけの小さなアタリは、動かすにせよ止めるにせよ、一呼吸置いたほうが合わせのタイミングである食い込みのアタリにつながりやすい傾向にはあるようだ。
ちなみにアタリを出すための誘いについて大塚さんに聞くと、小づいている最中はあまりアタリが出ないことがあるという。
そんなときは小づきっぱなしではなく、適度に止めの間を入れてやる。
誘って誘って誘って、竿を置いたとたんにコツッと小さいアタリが出ることがあるそうだ。
いずれにしろ潮の流れはもちろん、よく釣れる日とそうでない日で誘いや合わせのタイミングを微調整していくことが肝心となる。
とまあ、理屈ではなんとなく分かっても、どうにもならないこともある。
冒頭でも述べたようにテクニックだけではなく、釣り座にも影響されるアナゴ釣り。
周りでは連発入れ食いなのに、自分にはコツともアタリがない。
実はアナゴ釣りでドツボにハマるときはこのパターンが多い。
そんな絶体絶命の状況に陥ったときに、どうにかする手立てはないものか。
大塚さんに聞くと、とにかく「同じ場所で、同じパターンで小づき続けない」こと。
釣れないときは、仮にアナゴが近くにいても食ってこない。
小づきのリズムを変えたり、50cm、1m仕掛けの場所を変えるだけで状況が変わることがあるそうだ。
同じく吉瀬さんに聞くと、「食いの悪いときほどエサを替えたほうがいい」とのこと。
アタリもなくエサすらかじられないとついそのまま続行しがちだが、アオイソメは臭いで寄せる効果もあるから、アタリがないときほど全部取り替えて新しいエサを使ったほうがアピール力が高まるという。
そして、常に自分の仕掛けにアナゴを寄せるイメージで、周りに「小づき負け」しないよう、小づき続けることが肝心とアドバイスしてくれた。
アタリがないときは色いろパターンを変えてみることが大切。
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(左)最近メキメキ腕を上げている吉瀬さん。(右)今期、大塚さんを押さえて竿頭になること2回。
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吉瀬さんのエサ付け。このボリューム感がアナゴを寄せる。
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【隔週刊つり情報(2022年6月1日号)※無断複製・転載禁止】