相模湾の夏の風物詩のひとつであるスルメイカが、いよいよ期待を集めるシーズンに入った。
取材日は6月中旬の週末。
すでに暑い日差しが照りつける船上で、準備を終えた常連客の深沢さんがこう話してくれた。
「小田原エリアのスルメ船が昨日再開して、トップで50杯近く釣れた船もありましたよ」
この声で、船上に活気がみなぎる。
そして5時45分、我われ12名を乗せた第八平安丸は小田原早川港から出船した。
航程約50分で小田原南沖に到着。
小林義高船長は、魚探とソナーでイカの反応をじっくりと探す。
そして約15分後、バックギアが入り、開始をアナウンスした。
「はい、いいですよ。水深は105m。下から85mまでに反応がありますから、やってみてください」
アナウンスが終わると同時に11個のオモリが放り投げられる。
青い空、白い雲。
投入器に当たってカラカラと音を立てながら飛び出していく無数のツノ。
これぞまさしく夏の風物詩、スルメイカ釣りの光景だ。
直後に、左ミヨシに釣り座を構えた深沢さんが「乗ったよ!」と声を上げる。
電動リールの巻き上げ音が鳴り響き、衆目を集める。
しばらくして深沢さんは竿を置き、電動リールが止まると同時に仕掛けをたぐり始める。
プラヅノ12本で組んだ直結仕掛けの5本目に抱き付いた約30cmのスルメイカが、海面で潮鉄砲を吹き上げた。
仕掛けを上げるようにとアナウンスした船長が、再びリサーチを始める。
このタイミングで深沢さんは釣れたスルメイカを手際よくハサミで開き、2本の竹ぐしでロープに掛ける。
すると右ミヨシの小林さんも開いたスルメイカを干している。
しかも2枚。
深沢さんと同じタイミングで、ダブルで釣れたようだ。
手釣りのリズム
船上には、直結仕掛けを使う人もいれば、ブランコ仕掛けを使う人もいる。
スルメ釣りでは、魚の反応を探してその下にいるイカを狙う場合があるが、この日はブランコ仕掛けに掛かってきた魚は小サバと大きなイワシだった。
ある意味、この魚を狙うスルメイカが周囲にいることが期待できる。
そしてその釣り方だが、軽くシャクってはリールを巻いてを繰り返す人もいれば、大きく竿をあおって竿先を下げながらリールを巻いて、また大きく竿をあおるという動作を繰り返す人もいる。
そんな中で、この日の竿頭となる深沢さんの釣り方は独特だった。
「私は以前、スルメは手釣りでやっていたので、手釣りのリズムでツノが動くようにやってるんですよ」
そう話す深沢さんの釣り方はこうだ。
竿先を下げたまま、リールをカクッ、カクッと2回巻いて止める。
深沢さんが使っている電動リールはハンドル1回転で70cm巻き取るので、おおむね1mから1.4m巻いていると思われる。
リールを2回巻いたあとに止めている時間は1秒あるかないかなので、これはおそらくアタリを見ているというよりも、ツノが動いては止まるというリズムを作り出しているのだろう。
そしてこれを3回繰り返すと、竿を大きくあおって乗りを確かめる。
スルメイカがツノを抱いていれば、ズシッとくるのはこのタイミングだ。
「私の中では、この釣り方が一番釣れるんですよ」と深沢さんは話してくれた。
だが、その深沢さんが「今日は底潮が全然流れてないよ」と嘆いた。
何杯乗ったか予想しながら巻き上げる時間が楽しい。
出典:
直結仕掛けの取り込みはイカ釣り師の腕の見せどころ!
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(左)一日根気よく釣り続けることが大切。(右)この日は単発の乗りが多かった。
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移動が大当たり
船長は、このポイントを見限り移動する。
そして次の1投入目。
右胴の間の佐藤さんが、いきなりトリプルでスルメイカを釣る。
この撮影中に、左胴の間の江村さんがスルメイカを抜き上げると、その隣の新村さんがダブル。
左トモの栗原さんに続いて左2番目の林さんにもダブル。
深沢さんもこのタイミングでスルメイカを追釣し、右トモでもダブルでスルメイカが上がる。
苦心の操船を続けていた船長が、いわゆる「いい群れ」を発見したのだ。
この広い海で、さすが大したものだなあと感心していると、船長は仕掛けを上げるようにアナウンスした。
「なんていうんですかねぇ、散っちゃうっていうか。今日はどうしたのか、反応を見つけてもすぐいなくなっちゃうんですよ・・・」
船長がそうこぼしたとおり、この日は1回の流しでの釣り時間は短かった。
そして流れない底潮。
私は以前、数年間の釣果をデータベース管理ソフトに入れていたことがある。
統計を見ると、魚類は中潮のときの釣果がよかったが、イカ類は大潮のときが一番釣れていた。
つまりイカ類は潮が流れているときに最も活性が高まるということではないかと思う。
言い換えれば、潮が流れていないときのイカ釣りはかなり厳しいともいえる。
14時ごろに沖揚がりがアナウンスされる。
この日の釣果は、まだ固まっているとは言いがたいスルメイカの群れの状況と、流れない底潮とで奮わなかった。
しかし、新しい群れがまた入ってくるだろうし、この日はまだ胴長20~30cmだったスルメイカがひと潮ごとに大きくなってもいくだろう。
そうなれば、14cmのプラヅノ仕掛けが18cmのプラヅノ仕掛けに変わる日がきっとくるはずだ。
相模湾の夏の風物詩のひとつであるスルメイカの今後に大きく期待したい。
(左)青空のもと沖干し作りに精が出る。(右)これからはスルメ級も増えてくる。
出典:
この日は3点掛けが最高だった。
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夏を迎えるこれからが楽しみ。
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知っ得!イカ釣り職人の技
以前、仲乗りをやっていた経験があるという深沢さんが、面白いことを教えてくれた。
プラヅノが投入器から飛び出していくときにカンナが引っ掛かってしまうことがよくあるので、投入器の口の先に腕を添えてそれを防ぐと、スムーズにプラヅノが出ていくのだという。
ただし、あくまでもこれはツノを投入器に収めたときカンナの先端が下を向いている直結仕掛けでの話。
カンナの先端が上を向くブランコ仕掛けでは絶対やらないように。
深沢さんは、このようにツノ数が多い直結仕掛けをスムーズに投入する。
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当日のスルメイカ仕掛け
イカ釣りでは、上がってきたイカを取り込むことを優先するあまり、仕掛けを絡ませてしまうと次の投入に時間がかかる。
まだ慣れない人はツノマットを用意して、マットにツノを掛けながらイカを取り込み、すべて取り込み終えてからツノを投入器にしまうようにすると、トラブルがなく短時間で次の投入ができるようになる。
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【隔週刊つり情報(2021年7月15日号)※無断複製・転載禁止】