東京湾でテンヤタチウオがブームとなってから早一年、今では独自のスタイルで釣果をのばす上級者も増えてきている。
今回はその中の一人、ダイワ・フィールドテスター渡辺太吾さんの釣りを紹介しよう。
東京湾のタチウオ船の実状
東京湾のテンヤタチウオは昨夏、130cmを超えるまさにドラゴンサイズの大型が当たり前のように連日釣れて一気に注目を浴び、テンヤ専門船が続々登場した。
秋になってドラゴンフィーバーは終息、テンヤ専門船も次つぎと姿を消していき、多くはテンビン、テンヤ、ルアーと3通りの釣り方が楽しめる混合船へと戻っていった。
そんな中で数より型、独特の釣趣に魅せられたファンがテンヤOKの混合船で楽しみ続けたこともあり、東京湾でもテンヤのタチウオ釣りは一定の市民権を得た。
季節は進んで春。
ここ数年の傾向としてタチウオ乗合自体は休止することなく続行した船宿が多かったが、やはり一年のうちで最も食い渋る時期だけに釣果的には釣り方問わず低調で、トップで10本、15~20本も釣れれば上等という日が続くようになる。
当然、そうした状況ではほとんどの人が型を見るのに四苦八苦で平均釣果は一人数本ということが多くなるのだが、そんな日でも20本、30本、40本と一人だけ異次元とも言えるレベルで釣りまくっている人物がいた。
それが今回紹介するダイワ・フィールドテスターの渡辺太吾さん。
本来ならもう少し早い時期に取り上げたかったのだが、スケジュールの都合などで今回ようやく取材が実現した次第。
果たして異次元のテンヤテクニックとはどういったものなのだろう。
テンヤのタチウオ釣りは東京湾でもすっかり浸透、日によってはテンビンの人より多い船もある。
出典:
Profile
渡辺太吾(わたなべ だいご)
ダイワ・フィールドテスター。
マルイカの名手でもある渡辺さんだが、釣りの出発点はクロダイのヘチ釣りで、現在はワカサギ釣りにも傾倒する、合わせて掛ける積極的な釣りが好きなマルチアングラー。
誘いは変えずに竿を替える
本題に入る前に簡単に渡辺さんのテンタチ歴を紹介しておくと、初めてテンヤのタチウオ釣りをやったのが3年前、走水から仕立出船したときだった。
当時の様子を思い返してみると、初めてにもかかわらずトップタイの12本を釣っていたから、素質を開花させる片鱗は最初からあったのだろう。
時は過ぎて、本格的にテンヤのタチウオ釣りに取り組み始めたのが昨年9月から。
冬場に一時小休止を挟んだものの、今年は3月ごろから再び週一ペースで釣行を重ね、今に至る。
実質テンタチ経験は一年にも満たないのに、なぜ驚異的な釣果を上げられるようになったのか?
テンヤのタチウオ釣りにはアタリがあったらとにかく即合わせで掛けにいく「早掛け系」と、アタリがあってもすぐには合わせず、誘い続けてイワシをしっかりくわえ込ませてから合わせる「食わせ系」の2タイプがあるが、渡辺さんは前者、アタリに即合わせする「早掛け系」の釣りになる。
昨年9月にテンヤのタチウオ釣りを始めるに当たって独自に勉強はしたそうだが、現在のスタイルはかなり早い段階で確立したという。
その渡辺さんがメインに使っている竿は、ダイワの極鋭タチウオテンヤSPと、メタリアタチウオテンヤSPで、ともに硬めの9:1調子。
積極的に即合わせしていく釣り方なので硬めの竿が合っているという。
ただ、硬めの竿だとバレやすかったり、タチウオが違和感を感じやすいのか小さなアタリしか出ないこともあるという。
そんなときには極鋭タチウオテンヤSP82Sを使うことがある。
7:3と8:2の中間くらいの軟らかめの設定で、違和感なくタチウオがテンヤを突きにくるそうだ。
そのほか当日は予備としてタチウオXのH180も用意していたが、いずれの竿を使う場合でも、誘い方は変わらない。
逆にいうと、テンヤの動きに変化を持たせるためには、誘いを変えるのではなく、竿を替えるというのが渡辺さんの考え方。
例えば、あまり誘いを入れないほうがいい状況のとき、テンヤが動きやすい9:1調子から軟らかめの8:2調子に替えるだけでアタリが出始めることもあるという。
リールはシーボーグ200JLで、道糸はPE1.5号200m、リーダーはフロロカーボン10号を3mFGノットで直結しておき、先端部が傷ついたらどんどん結び替えていく。
2018年12月、テンヤタチウオに初挑戦した渡辺さんだったが、このときすでに現在のスタイルができていた!?
出典:
誘いだけではカバーできないこともあるので竿はタイプの違う何本かを持参したほうがいいと渡辺さん。
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(上)極鋭タチウオテンヤSP91-180AGSの曲がり。(下)極鋭タチウオテンヤSP82S-185AGSの曲がり。
出典:
渡辺太吾のテンヤタチウオタックル&仕掛け
イワシとテンヤはこだわりなし!?
イワシに関しては1匹80~90gの大きさを目安にショート船で80匹、半日船で50匹ほどを目安に持参するが、入手できる範囲で冷凍、生どちらも使う。
イワシを締めるフォーミュラなどもとくに行わず朝、出船前に準備する。
イワシはテンヤに合わせてハリから尻尾が3~4cm出るくらいにカット、内臓は体高のあるイワシの場合は取り出すがそのまま付ける場合もある。
イワシをテンヤのハリ軸に対して真っすぐ乗せたら頭を多めに巻き、尾のほうへ巻き進めて、ハリの所で止める。
テンヤは船のルールに従い50号または40号、カラーはとくにこの色からスタートなどの決め事はなく、直近で実績の高い色を中心にローテーションしてアタリの出るテンヤを探していく。
テンヤは常時8個ほどエサを付けた状態でスタンバイ、すぐに交換できるようにして手返しアップを図っている。
【Daigo's LESSON】渡辺太吾流イワシの巻き方
①1匹80~90gのイワシを大量に用意。
②テンヤのサイズに合わせてカット。
③腹を真っすぐに切る。
④状況に応じて内臓を取り出す。
⑤テンヤに真っすぐ乗せる。
⑥斜めに3回巻く。
⑦斜めに3回巻き戻す。
⑧頭の部分を1回強く巻く。
⑨尾のほうへ緩く巻く。
⑩最後は強めに巻く。
⑪ハリに回して止める。
⑫でき上がり。
テンヤは各種カラーをローテーションしながらアタリが多く出るテンヤを探していく。
出典:
アタリを出すことが何よりも重要
渡辺さんはテンヤのタチウオ釣りで何より重要なことは、「アタリを出すこと」だと断言する。
もちろん多くの釣り人はアタリを出そうと思ってストップ&ゴーだ、デッドスローだ、はてはバイブレーションだと色んな誘いを試すわけだが、渡辺さんは終始一貫自分の誘いを崩さない。
それが「Dトゥイッチ」(三石忍命名)と呼ばれる誘い方。
合わせ幅を取るため竿先は海面へ向けやや下げた位置で構え、竿先を3~4回ほど揺すり(トゥイッチ)ながらリールのハンドルを細かく1/3回転ほど回していき、ピタッと1~2秒止める。
テンヤが小刻みにブルブルと震えながら40~50cm上昇してタチウオにアピール、止めた瞬間にリアクションで食い付かせる、こんなイメージだ。
基本的にはこのDトゥイッチをベースに指示ダナの範囲を上へ上へと探っていく。
アタリがなければトゥイッチを強めてみたり多めにしたり、リールの巻き幅を多くしたり少なくしたり、止めの時間を長くしたりしてアタリの出るパターンを見つけ出す。
それでもアタらなければテンヤを替えたりエサを巻き替えたり、あるいは竿を替えてみたり、とにかく色いろやってアタリを出すことに専念する。
そんなDトゥイッチ釣法のポイントは2点。
しっかり止めの間を作ることと、極力糸フケを出さずに常にテンヤのテンションを感じながら誘うこと。
アタリは竿先を持ち上げる、いわゆる跳ね上げアタリだったり、竿先を引き込む引ったくるようなアタリだったりと様ざまで、止めた瞬間や誘いの最中、はてはフォール中にもアタってくるから、いつでも合わせられる態勢を取っておく。
そして、とにかく違和感を感じたら電撃合わせ、掛かったと思ったらすぐに電動巻き上げに移る。
とくに跳ね上げアタリの場合はタチウオがテンヤをくわえて上へ泳いでいる状態なので、しっかり合わせないと糸フケが取れずに合わせが効かないばかりか飲まれてラインが切れたりする。
もし掛からなかったら、その場でシェイクを入れる。
活性が高い場合は再びアタリを出すことが多いという。
数回その場でシェイクしてアタらなければ、再び上へ誘い上げるか、仕掛けを回収してエサをチェックする。
渡辺さんはアタリの半分、5割掛けられればよしと考えており、アタリがあってもなくても、とにかく飽きずに一日誘い続けることが肝心だと言う。
Dトゥイッチ釣法はそんなに複雑で難しい釣り方ではない。
逆に言うと、だれでも簡単に真似できる釣り方、根気と集中力さえあればこれまで以上の釣果を上げられるかもしれないので、誘いに悩むテンタチファンは一度お試しいただきたい。
(左)常にテンヤのテンションを感じながら誘っていくことが大切。(右)竿先を3~4回トゥイッチさせながらリールを巻き、ピタッと止める。この繰り返しでタナを探り上げていくのが基本の釣り方。
出典:
アタリらしきはすべて即合わせ!
出典:
Dトゥイッチ釣法のイメージ
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【隔週刊つり情報(2021年9月1日号)※無断複製・転載禁止】