東京湾のマダイ狙いで、コマセ釣りの対極としてあるのがエビタイ釣り。
かつては内房の「竹岡式シャクリ」と三浦半島の「鴨居式テンビン」とに大別されたが、10年ほど前から外房の主力釣法「一つテンヤ」が東京湾にも導入された。
さらにここ2~3年、エビタイ船で主流ともなっているのがタイラバである。
これについては以前解説してあるので、ここでは鴨居出船のエビタイ釣法、それもやや現代風にアレンジしたかたちで取り上げる。
鴨居沖は目下絶好調。連日3kg級の大型が釣れている。さて、どんな釣り方で狙うか。
出典:
鴨居式ほど簡単な釣りはない
三浦半島鴨居港、鴨居大室港出船のマダイ乗合がこれにあたる。
東京湾では鴨居式テンビン釣法だが、外房エリアでは「リールシャクリ」とも言われ、一つテンヤと同時に楽しんでいる時期もあった。
タックル、仕掛けを図にそって解説しよう。
タックル・仕掛け
まず専用竿は市販品には存在しない。
往年の釣り師は極端な先調子に作られた和竿を使う方が多いが、市販品でも十分に代用できるものがある。
その一つがゲームロッド。
それもできるだけ先調子の82(8:2調子)があればベスト。
鴨居式ではマゴチ釣りに似た鋭く、強い合わせが必要だからだ。
カワハギ釣りをされる方なら、硬いカワハギ竿を選んでもいい。
小型両軸リールにはこれも合わせ切れを防ぐため、PE2号以上とやや太めを巻いておく。
道糸の先に鋳込みテンビンをつなぎ、ハリスの先には2号程度の豆テンヤ、これにエビエサを付ける。
鴨居式独特の付け方もあるが、尾の切り口からハリを刺す付け方でもなんら問題はない。
詳細は船長に教わるのが一番だ。
この鴨居式は、まだ船釣りを始めて間もない、マダイを釣ったことがないという初心者におすすめしたい釣り方だ。
個人的には数あるマダイ釣りの中で、鴨居式が最も簡単だと思うからだ。
釣り方はオモリが着底したらハリス分(3m前後)巻いて待つだけ。
時おりは軽く竿を持ち上げて誘ったり、潮の速いときは少しタナを低くしたりという細工も必要だが、基本的にはハリス分巻いてジッとしていればいい。
豆テンヤが付いているので、ハリスは常に張った状態となり、小さなアタリも取りやすいシステムとなっている。
慣れてくればエサ取りと本命のアタリも区別できるようになる。
アタリがきたら即合わせ。
大きめの親バリをマダイの上アゴに貫通させるイメージで、強く合わせてやる。
うまく掛かれば至福の時間。
先調子の竿はタメが効きづらいぶん、容赦なくガンガンたたかれてスリル満点のヤリトリが楽しめるはずだ。
一つテンヤは重めのオモリで
東京湾で一つテンヤを楽しむ場合、それも乗合船であれば、ある程度のルールがあるのを覚えておきたい。
東京湾内のポイントは最浅で20m、深場は80m以上と、外房~茨城方面と比べると深め。
加えて船はスパンカーを上げて道糸を立てて流していくうえタイラバや鴨居式との同船となるので通常は15号を使用。
予備として20号までを用意するが、15号より軽いテンヤは必要ない。
したがって一つテンヤ専用竿でもおすすめは硬調子。
それもしっかり合わせて、ガッチリ掛かるよう穂持からバットにパワーがあるタイプを選びたい。
リールと道糸は通常の一つテンヤ用と変わらない。
外房エリアの一つテンヤと大きく変わるのが釣り方だ。
底から数メートル以上タナを切ってシャクリ、ステイといった釣り方はせず、基本は底を狙うスタイルとなる。
テンヤが着底したらすかさず竿を跳ね上げるようにシャクリ上げ、その位置で少しステイし、オモリの重さでテンションフォールさせながら、再びオモリを底に着ける。
ただ、船長の中にはステイもテンションフォールもしないで、着底、シャクリ、フリーフォールの繰り返しをすすめる方もいる。
アタリはフォールの最中、オモリ着底後にくる場合がほとんど。
鴨居式同様、これも即合わせが基本だ。
(左)一つテンヤのオモリは最低15号、予備として20号 。(右)鴨居式で狙う常連さん。いいアタリがきたものの残念ながらバラシ。
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(左)先調子竿で のヤリトリはスリル満点。(右)一つテンヤは東京湾ならではのルールがある。
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鴨居出船、今風の遊び方
鴨居式の特徴の一つに生きエビの使用があったが、現在は入手先の事情で入荷は年に数回。
あればラッキーと思ったほうがよい。
その代わり房丸では冷凍エビというより「冷蔵エビ」状態のものを、一人一人氷の入った小型のクーラーに入れて配ってくれる。
冷凍エビに比べて頭が取れにくく、はるかにエサ持ちもいい。
生きエビの用意がないといっても、個人的には食いに遜色はないと思っているので、これまでどおりのエビタイ釣りが楽しめるはずだ。
当日こそタイラバに分があったが、エビエサ釣りに大型、数でもタイラバを圧倒することもままあり、まさに日替わり状態ともいえる。
そんな鴨居出船にあって、どうしてもタイラバ、どうしてもエビエサという、こだわりがない方におすすめしたいのがハイブリッド釣法だ。
たとえば、タイラバ用品しかない人は、15号のテンヤを一つだけ持参しよう。
タイラバの代わりにテンヤを付けてのエビタイ釣り、つまりはベイトテンヤだ。
一つテンヤ、鴨居式の用品しかない人は80gのタイラバを一つだけ用意しよう。
リーダーの先にタイラバを付けて巻き巻きするのだ。
釣れないより釣れたほうが楽しいはず。
フレキシブルに遊んで、少しでも可能性を探って釣果に結びつけるのもテクニックの一つだと思う。
周年マダイ一筋、御年83歳の大船長は釣れれば賞賛、バラせば悔しそうな表情で「目して語る」方。
船上での朝にコーヒー、昼にみそ汁の提供は船長の定番サービス。
たとえ本命が不発でも、充実した一日を過ごせるはずだ。
(左)潮止まりの時間帯を見計らって船長がみそ汁を作ってくれる。(右)房丸では一人一人にエビの入ったクーラーが渡される。
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当日はタイラバに軍配。次回こそ一つテンヤで。
鴨居沖は昔からエビタイ釣りで知られる名場所だ。
浦賀水道の速い潮の中で暮らすマダイは美味で、江戸時代は徳川将軍家への献上ダイでもあった。
三浦半島鴨居大室港の房丸、高橋房男船長は周年マダイを追いかける生活を何十年も続けている。
鴨居出船といえば30号の中オモリと2号の豆テンヤで釣る鴨居式伝統釣法で知られるが、最近は多様化していて、房丸もそれを受け入れている。
当日はタイラバに軍配が上がったが、日によってはエビエサ有利な日も。
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船中連続ヒットも
2月13日に本誌発行人の根岸さんと訪れたときは、9名の乗船者中、鴨居式が右舷大ドモ氏、一つテンヤが左舷大ドモの僕、他はタイラバだった。
つまりエビタイ釣りはたったの2名だ。
もちろんこの比率は日によって変わる。
ただ傾向として手軽なタイラバ人口が増えているのは間違いない。
僕なんかは「海老で鯛を釣る」という信仰が強くて、どうもタイラバにはなじめない。
古い人間なんですかねえ。
ともあれ定刻の8時に舫もやい綱を解いた船は、鴨居沖大根の50mダチへと走り、20分後にはスタートの合図が出る。
10分後に右舷胴の間のタイラバ氏が、いきなり3kg級のマダイを釣り上げたのにはビックリ。
いやあ、これでバッチリ目が覚めた。
船長の話ではしばらく前からこの場所で3kgとか6kgの大型が出ているらしい。
以後はアタリなく、70mダチへと移動。
10時過ぎには右舷ミヨシ2番で1kg弱の本命が上がる。
続けて右大ドモの鴨居式エビタイの常連氏が本命を掛けたが巻き上げ中にバラシ。
潮止まり前の時合なのだろうか、アタリが船中あちこちで出た。
左ミヨシでは1kg半弱の本命が上がった。
左ミヨシ氏は続けての投入でまたヒット!
連チャンとは、なんともうらやましいかぎりだ。
10時半に右舷ミヨシ氏が1kg程度のマダイを釣った直後のこと、スーッとシャクってテンションをかけながら落としていた僕の仕掛けに、モゾッという感触。
着底間際でのことだ。瞬間的に竿を跳ね上げてリールを巻いたら、キュキューンという引き込み。
間違いなく本命だ。
船長の差し出す玉網に入ったのは1kg半ほどのきれいなマダイ。
このサイズは食べてもうまい。
顔を見られてホッとした。
そのしばらく後に右舷大ドモ氏も1kg弱の本命をゲット。
これでエビタイの2人は型を見たことになる。
ベタナギのポカポカ陽気の海で、マダイの乱舞はまだまだ続いた。
好調な左舷ミヨシ氏が3枚目となる2kg級を釣った後、隣の根岸さんの竿も大きく曲がり、1kg半くらいのマダイを上げる。
船中ほぼ同時ヒットもあったりして、食いは潮止まりまで続いた。
ゆっくりと昼食を取った後に午後の上げ潮狙いが始まると、1時過ぎに右舷大ドモ氏の竿が折れんばかりに曲がった。
大ダイ間違いなしだったが、ラインブレイク。
しばらくして右舷胴の間でも大ダイを掛けたが、それもラインブレイク。
なんてこった。
上げ潮狙いでは、前寄りの席にアタリが集中した。
まだ型を見ていなかった残り2人の女性もマダイを釣り上げてうれしそうだった。
船中連続ヒットというシーンも何度かあり、まさに魚影の濃さを思い知らされた。
僕の竿にも微妙なアタリ2度あったが、合わせ損じた。
テンヤの落下がフッと止まったアタリと、スーッとシャクリ上げたときにコツンときたアタリだったが、悲しい結末だった。
4時に納竿となったが、3時過ぎに3kgを追釣した左舷ミヨシ氏が5枚でトップ。
船中0.6~3kg級を18枚の釣果でオデコなし。
初チャレンジの人も型を見たので、大漁旗はためくマダイ釣りとなった。
日によってエビタイが有利なこともあるので、再度出かけようと思っている。
ちなみに持ち帰ったマダイは、たっぷりと脂が乗って滅茶苦茶美味でした。
鴨居式の方も1枚に終わる。
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タイラバで狙った本誌発行人も1.5kg級。
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なんとか1.5kg級を釣って面目を保ちました。
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