ライトなタックルで楽しめる相模湾・湘南のヒラメ釣りは、今号発売のころから春のシーズンに入る。
春一番が吹き終えて気温が上がってくれば穏やかな海が続く季節だ。
泳がせ釣り入門にもうってつけだろう。
相模湾のヒラメは3~4月がトップシーズン
出典:
湘南ヒラメは湾内沿岸にイワシの群れが回遊する3~4月がピーク
相模湾のヒラメ釣りは、10年ほど前まではマイナーな釣り物だった。
一部の船宿や仕立船などで狙えることはあったが、船宿も季節も限定されていた。
神奈川近辺の釣り人は、ヒラメを釣りたいときは房総まで足をのばしていたものだ。
では相模湾にはヒラメは少なかったのか?と言えばそんなことはない。
昔から神奈川のヒラメは職漁の対象になっていたし、種苗放流もずっと行われていた。
私が小学生のころは、大磯あたりの砂浜からシロギスの投げ釣りをしていると、10cm足らずのヒラメの子がキス仕掛けに掛かってきた。
また、ヒラメ専門船ではないが、冬場の湘南のシロギス船では、釣り上げたシロギスやメゴチをエサに泳がせるハモノ狙いをすると、1kg前後のヒラメが上がっていた。
沖を攻めるビシアジ船でも、ハリに掛かったアジに大ビラメがウバ食いして上がってきた、ということもあった。
このように相模湾でも他地区同様に多くのヒラメが生息しているのだ。
相模湾のヒラメが他地区に比べて遊漁の対象としての普及が遅かったことは、生きエサの供給が安定しなかったことが原因だろう。
外房や茨城では毎朝港まで車でイワシを運んでくれる業者がいるが、神奈川にはそういう業者はいない。
現在、生きイワシをエサにした釣りをする相模湾の船宿は2つのタイプに分けられる。
1つは自前でイケスを管理し、イワシを生かしておく船宿。
もう1つは、カタクチイワシが回遊してくる時期限定で、朝にエサのイワシを釣り人自らが釣ってバケツで生かし、それをエサに使う船宿だ。
今回取材した三浦半島葉山芝崎の五エム丸は前者の船宿で、自前のイケスでイワシを保持している。
昔から小型のカタクチイワシをエサにしたイワシメバル釣りで人気がある船宿だけに、生きイワシの取り扱いはお手のものという強みもある。
釣期は水温が上がる初夏までとなる。
水温が高くなるとイケスの中のイワシが死んでしまうためだ。
昨年は7月まで続いたが、このくらいの時期までが相模湾ヒラメのシーズン。
そして、イワシの群れが湾内沿岸の浅場を回遊し、それを追ってヒラメが回ってくる3~4月が最盛期となる。
標準オモリ50号・状況で30~40号もOK・ライトで気軽に楽しもう
相模湾のヒラメはライトタックルによる手軽さも魅力だ。
五エム丸では、使用オモリは50号をベースに乗船人数が少ないときには30号、40号も使う。
軽いオモリが使える理由のひとつは、スパンカーで船首を風に向け、糸を立てて流す釣り方にある。
これだと仕掛けが吹き上がらないので、軽いオモリを使えるのだ。
さらに湾内のヒラメポイントは海が穏やかという特徴がある。
外海のように波長の長いウネリが入ってくることは多くない。
ヒラメ釣りで長竿を使う理由は、ウネリや揺れを吸収してエサ(仕掛け)を安定させることと、横流しで船下に糸が切れ込むときに、糸を船から離すことの2つがあげられるが、湾内で糸を立てて流す相模湾のヒラメ釣りでは2m前後の短い竿でも十分使える、むしろ短いほうが扱いやすいというメリットがある。
軽いオモリと短い竿の組み合わせによって、魚の引きも増幅されライトタックルの楽しさが発揮されると言えるだろう。
筆者はライトアジで使っているゲームロッドを選んだ。
片手で扱える軽さは手持ちでアタリを待つこの釣りにはピッタリだった。
しかしながら、ライトヒラメにはこれが絶対という竿はない。
メバル竿を使えば、軟調の長竿が満月になる釣趣が味わえるし、軟らかい胴調子なので食い込みもよい。
マゴチ竿やスズキ竿は操作性と感度がよいので海底の起伏や根にオモリがこすったことが分かりやすい。
もちろん市販のライトヒラメ専用竿を使えばそれに越したことはない。
自分の気に入った竿でヒラメを狙えるのも湾内のヒラメのよいところだ。
釣り場の水深は20~60mほどで20~30mが主となる。
リールは小型両軸が軽くて使いやすいだろう。
超小型電動リールを使っている人も多く見かける。
道糸はPE1.5~2号を巻いておこう。
軽く、そして使い慣れたリールが一番だ。
仕掛けは基本的に他地区と同じでよい。
船長のおすすめは孫バリはシングルフックで、船で用意されている仕掛けもシングルフック仕様だ。
孫バリは遊ばせておくか、背側に刺す方法を推奨している。
底を切ってアタリを待つので、捨て糸はハリスよりも短くしておく。
筆者がおすすめしたいのは、親子サルカンから10cmほどの位置に極小サルカンを介してハリスを接続する方法(仕掛け図参照)。
胴つき仕掛けでは、潮が緩い日はイワシが泳ぐと糸にヨリが入って捨て糸とハリスが絡むことがしばしばあるが、このように極小サルカンを介すことでハリスの絡みを軽減できる。
イワシに負担をかけないように8号くらいの極小サイズを使うことがポイントだ。
相模湾のヒラメ五目仕掛け・三浦半島葉山芝崎・五エム丸の例
定番タックルはライトゲームロッドと小型両軸リール
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オモリは30~50号を用意
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イワシエサの付け方・口掛けのコツ
エサのイワシの付け方はとても重要だ。
ヒラメ釣りのうち半分くらいの重要度を占めると言っても過言ではないだろう。
きちんとした方法で付けたイワシはなかなか弱らず、海中での泳ぎがよいのでそれ自体が誘いになる。
また、ヒラメがアタックした衝撃でハリからちぎれ落ちることもない。
イワシの口にハリ先を入れ、鼻先の硬いところを貫通させて上アゴに抜く。
このとき、頭の付け根の骨を折ってしまわないように注意が必要だ。
そのためには、親指の腹をイワシの頭に沿えて、枕にするようにして、ハリ先が出るまで押し込む。
ハリ先が出たら、ハリを返すようにしてカエシまで抜き刺す(前ページ図1参照)。
このほかに鼻孔を貫く「鼻掛け」があるが、こちらはハリが回ってイワシの目に刺さることがあるので私はおすすめしない。
孫バリは背ビレ後方に浅く刺す、もしくは刺さずに遊ばせてもいい。
図1・イワシエサの付け方~口掛けのコツ~
ONE POINT ADVICE・親バリと孫バリの間隔を考える
ヒラメ仕掛けを作るときに迷うのが、親バリと孫バリの間隔をどのくらい取るかということだ。
市販仕掛けだと13~18cmくらいのものが多い。
こだわりが強い人になると、当日用意されるイワシの大きさを見てからハリの間隔を決めるという人もいる。
手間をかけて、親バリを遊動式にする人もよく見る。
多いのは、少し遊びが出るくらい、心もち長めで作っておこう、という人だろうか。
孫バリを刺さずに遊ばせておく釣り方も一般的だ。
とくにイワシが小さいときや、水温が高めでエサが弱りやすいときには、孫バリを刺さずに遊ばせておいたほうがよい。
この日は孫バリを遊ばせておくようにした。
そして、親孫間は8cmほどと短くした。
短いほうがエサとともに孫バリが飲み込まれる確率が高そうだということと、短いほうが根掛かりのリスクが減るだろう、という理由からだ。
この日私に釣れた唯一のヒラメは親バリが掛かっていたので、間隔を詰めた効果はまだ分からないが、親バリと孫バリの間隔については、今後も注目していきたい。
親孫間を8cmにして孫バリを遊ばせたエサ付け例
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誘いよりも大切なのはまめな底ダチの取り直し
釣り場に着いたらいよいよ投入だ。
エサ付けしたイワシは合図があるまで海水循環させたオケで泳がしておこう。
宙にブラブラぶら下げておくとイワシを弱らせてしまう。
生きエサだからこそ元気さが命、ていねいに扱おう。
オモリが底に着いたら糸フケを取り、1mくらいタナを切る。
相模湾のヒラメポイントは砂地が多いが、所どころ根が点在している。
底を引きずると根掛かりすることも少なくないので、注意が必要だ。
ヒラメ釣りは基本的に誘いが必須ではないが、たまにゆっくりと大きく竿を立ててエサを浮かせてやって、イワシが上から降りてくるような動きを演出する誘い方もある。
その場合は、イワシを弱らせないよう、優しく動かすのがよい。
誘いよりも大切なのは、まめなタナの取り直しだ。
船はゆっくりと動いている、そして水深も変化する。
根周りのほか、カケ上がりやヨブなど、海底地形に変化がある場所は小魚も多く、それを狙うヒラメが居着いている。
水深が変わったときを見逃さないようにしよう。
また、タナの取り直しについては、竿先を海面に向けた状態で底を取ってから、竿先を1m持ち上げる、というやり方をおすすめしたい(図2参照)。
図2・タナ取りのイメージ
合わせ時を知らせる2つのサイン
ライト系のロッドを使っているとイワシが泳ぐプルプルとした動きが竿先に出るが、ヒラメのアタリは鋭くガツンと出ることが多い。
アタリがあったときは基本的にそのタナで食い込ませる。
竿先は引っ張られた分だけ、わずかに下げて食い込みを待とう。
このときに糸を送り込んでオモリを底に着けたり、ハリスをたるませたりするのはかえって食い込みが悪くなる。
糸を張ったまま竿先は動かさず、ヒラメの動きを見張るような感じだ。
食い込みのサインは2通りある、1つは竿先が大きく引き込まれたとき。
もう1つは、ゴンゴン!と魚が頭を振るような動きが伝わったときだ(図3参照)。
いずれの場合も、ゆっくりと大きく竿を立てて、魚の重みを竿に乗せてやることで合わせになる。
ハリ掛かりしたら、竿を水平に保ったままリールをゆっくりと巻いて浮かせる。
魚が引き込んだときには巻く手を止めて竿でためてやる。
ポンピングはバラシの原因となるので、おすすめしない。
ヒラメはいつ大物が食ってくるか分からないので(五エム丸の船宿記録は7kg)、ドラグは忘れずに調整しておこう。
海面に魚を浮かせたら、船長がタモ取りしてくれる。
外道はマゴチやホウボウなど砂地に生息する魚や、回遊魚のイナダ、根魚のマハタ、カサゴなどが交じることが多い。
どの魚も最初のアタリでは合わせずに食い込みを待つのはヒラメと一緒だが、根魚は一気に竿を絞り込むことも多い。
図3・ヒラメのアタリと、合わせのタイミング
巻き上げ中のバラシを軽減するために
2月下旬の取材日は好天に恵まれ、港の前の葉山沖を中心に、西は江ノ島沖、東は長者ケ崎近くまで広く探った。
水深はどこも20m前後。
船中ポツポツとヒラメが上がる中、筆者の竿にもヒラメが食ってくれた。
ゲームロッドをゴンゴンたたき、手元に伝わる鋭い引き込みはライトタックルでの釣りならではの釣趣で、ヒラメ釣りの楽しさを再確認できた。
船長が差し出したタモに収まった1kgのヒラメはしばし船底に横たわっていたが、ハリ先がわずかに口に刺さっていただけで、写真を撮っているとヒラを打ったはずみでハリが外れてしまった。
このようにヒラメの口の硬い部分にハリ先が当たった場合はカエシまで貫通していないので、巻き上げ途中でハリから外れることもしばしばある。
ポンピングをしたり、取り込みのときにハリスをたるませたりすることのないように気を付けたい。
焦らずゆっくり巻き上げればヒラメはおとなしく上がってくる
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隔週刊つり情報(2022年4月1日号)※無断複製・転載禁止