地域によってはメヌケとも呼ばれるアコウダイの仲間は、沖釣りの中では最も深い水深を狙うターゲット(ベニアコウ含む)になる。
釣り場は各地にあるが、今回は外房以北の代表的なアコウ・メヌケ釣り場である九十九里沖(片貝海底谷、片貝海溝。いわゆる“ミゾ”)を狙う場合を想定して話を進めたい。
タフコンディションに対応できるタックルが必要
隔週刊つり情報船宿データベース加入の船宿で常時九十九里沖のアコウ・メヌケ狙いで出船しているのは銚子外川港の福田丸、九十九里片貝港の正一丸、外房大原港の鈴栄丸の3軒。
釣り場が外洋のため出船は天候に左右されるうえ、出船できたとしても潮流によっては全く釣りにならないこともある。
加えて基本的にレンタルタックルはなく、付けエサも持参。
クーラー一つで気軽にどうぞ、といかないところがマニアックターゲットとされる所以でもある。
逆にいうと九十九里沖のアコウ・メヌケには、そうしたハードルを乗り越えてでも挑戦したくなる魅力がある。
(左)けっこうタフなコンディションの日も多い(右)航程2時間以上かかるので、釣り場に着くまではタックルは船ベリへ立てかけ、キーパーへ縛り付けておく
出典:
ポイントの水深は浅くて300m、深くて500~600mで、標準オモリは500号。
さらに複雑な海底地形から潮流の負荷も相当あり、仮に水深が300mくらいであっても道糸は水深の倍、600m以上出てしまうこともザラにある。
そんな状況に対応するため、基本とされるタックルは最大オモリ負荷表示で500~700号をカバーするグラスワンピースロッドとPE12号が1000m以上巻ける大型の電動リール。
具体的にいうとリールはミヤマエ9番や15番、ダイワ3000番になり、リールの価格だけでも30万円前後になる。
さすがにこれではハードルが高すぎるので、最近は10万円前後で購入できて、巻き上げパワーにも遜色のないダイワ1200番、シマノ9000番でもOKとされている。
ただし、補い切れないのが糸巻き量。
例えばミヤマエ9番クラスでもPE12号が1400m巻けるのに対し、ダイワ1200番はPE10号が800m、シマノ9000番はPE10号が650mしか巻けない(いずれもスペック上)。
道糸が細くなるぶん潮切れがよく底ダチを取りやすい、サイズがコンパクトになって持ち運びやすい、リールのハンドルを回しやすいなどのメリットはあるが、オマツリしたときに高切れしやすい、糸巻き量が少ないため一度高切れすると道糸が足りなくなってしまう可能性がある、予備のリールか道糸を用意しておかないと不安、といったデメリットもあることは理解しておきたい。
とくに初心者は底ダチが分からず道糸を伸ばし過ぎてオマツリしがちなので、予備の道糸を必ず持参したい。
(左)オーソドックスなのはミヤマエ9番や15番だが、最近はこのサイズのリールにもPE10号を巻く人が多いという(右)ダイワ1200番ならPE10号が800m巻けるが、高切れに備えて予備の道糸は必須
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仕掛けは基本的な深場仕掛けがベース
仕掛けは図に示したように1ヒロ×半ピロ(幹糸1.5m前後、枝ス70~80の略称)の基本的な深場仕掛けがベースで、ハリ数は10本以内とし、船ベリにハリを並べて投入、繰り返し使うスタイルの人が多い。
付けエサは持参が基本で、万能なのはエサ持ちのよいスルメイカ。
ほかに市販のサケ皮やカツオのハラモなどを持参する人もいる。
いずれも幅1~1.5㎝、長さ15㎝ほどの切り身にして、ハリ数×投入回数分を考慮すれば、最低でも30~60切れくらいは用意しておく必要がある。
(左上)スルメイカを塩漬けしたり、カツオのハラモやサケの皮を持ち込む人もいる(右上)取材した福田丸ではハリ数は10本までOKだが、初心者や潮の速いときは5~6本と少なくしたほうがいい(左下)エサ持ちのよいスルメイカの切り身が基本
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着底が分かるかどうかが最大のポイント
深場釣りは準備で決まる、とも言われるようにタックル、仕掛け、エサの用意ができればあとは釣るだけ。
基本的にはほかの深場釣りと同様で、おおよその釣り方の手順はイラストに示したとおり。
順を追って要点を説明していこう。
①投入
投入は船長の指示でトモ(状況でミヨシ)から順番に行う。
これはオマツリを避けるためで、投入に間に合わなければ1回休みとするのが基本ルール。
だから、船長の合図で確実に投入できるよう態勢を整えておくことがまずは大切。
投入してからは、負荷をかけずにフリーで仕掛けを落とし込んでいく。
サミングして道糸の出方が変わるとオマツリの原因になる。
マグネット板を利用して投入すれば仕掛けを繰り返し使える
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②着底
ここが深場釣り最大の勘どころ。
タナは海底付近なので、オモリの着底を把握することが肝心。
潮の流れが素直ならトンッとオモリが底を打つ感触が分かるが、速潮、二枚潮、三枚潮といった悪条件下では着底が全く分からず道糸が際限なく出ていってしまうことがある。
そんなときは、船長が告げる水深や「○m出たら止めて」といった指示に従うほか、周りの人が底ダチを取り始めたり、リールのカウンターで何mで止めているのかを参考にするといい。
オモリが底に着いたときの竿先の曲がりを覚えておくと底ダチを把握しやすい
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③タナ取り
底ダチが取れたら、オモリを1~2m浮かせてタナを取る。
タナを取るときの注意点は、糸フケをしっかり取ること。
手でリールのハンドルを数回回した程度では、速潮時に糸フケは取り切れない。
電動で5~10mはしっかり道糸を巻き取るようにしたい。
④根歩き
一概には言えないが、大抵はポイントの手前で投入して、船の流れとともに仕掛けを移動させつつアタリを待つ、という釣り方になる。
潮の流れや風向きによって水深が深くなったり浅くなったりするが、船長のアナウンスをよく聞いて、まめに底ダチを取り直してタナをキープする。
オモリを底へ着けっ放しにしていると根掛かりしてしまったり、仕掛けの位置が変わらなくなってしまう。
なお底を取り直すときはスプールを押さえて負荷をかけながら下ろす。
投入時のようにフリーで下ろすと糸フケが出て底ダチが分かりにくくなる。
⑤アタリ
数百mの深海とはいえ、アコウ・メヌケのアタリはけっこう明確に竿先に出る。
アタリがあったら、基本的にはそのタナをキープして追い食いを待つ。
場合によってはオモリを底へ着けたままにしておいたほうがいいこともあるが、糸フケが出るほどに道糸を送り出すと根掛かりして、魚ごと仕掛けを取られてしまうことがある。
⑥巻き上げ
どのくらい追い食いを待つかはケースバイケースになるが、巻き上げのタイミングが分からなければ、船長に聞くのが一番。
巻き上げスピードは中速くらいで、ドラグはウネリで船が持ち上がったり強い魚の引きがあったときにズルッと滑るくらいに調整する。
あとは何が掛かっているのか?
何尾ハリ掛かりしているのか?
ドキドキワクワクしながら仕掛けが巻き上がるのを待つ。
アコウ・メヌケであれば仕掛けが上がる直前に浮き袋が膨らんだ魚体が前方ヘボコンと浮上する。
それが何尾も掛かっていれば、いわゆる提灯行列、この釣り最大のクライマックスになる。
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隔週刊つり情報(2021年3月15日号)※無断複製・転載禁止