7~8年前、茨城県鹿島港の遊漁船で流行し始めたテンヤマゴチは、タイテンヤやジグヘッドにワーム類をセットして楽しむルアー釣りの一種。
ときにエサ釣りにひけをとらない釣果に恵まれることから、今や東海エリア、そして西日本まで普及しつつある。
ルアー釣りといっても腕力や細かなテクニックはさほど必要なく、老若男女が楽しめる手軽さが魅力だ。
まずは、ルアーで狙うマゴチ釣りなのにどうしてテンヤの名が付くのかという話から。
きっかけは夏場、ここ鹿島沖の一つテンヤマダイ船でマゴチがよく交じったことに始まる。
ならばマゴチ専門船を出そうとなって、当初はそのままの道具立てとエビエサでテンヤマゴチ乗合がスタート。
ところがそのうち、テンヤに疑似餌のワームを付けてもバリバリ釣れることが判明し、これは効率がいいということで現在に至るというプロセスだ。
付けエサがエビからワームに変われども、根幹には「一つテンヤ用のタックルとテンヤで楽しむマゴチ釣り」という意味合いがあるから、テンヤマゴチと呼んでいる。
ルアーマゴチ自体はそれ以前から東京湾などで行われてきたが、一つテンヤの可能性を広げた鹿島の歴史に敬意を表して、今回はテンヤマゴチの呼称で統一させていただく。
一つテンヤ用のほかシロギスタックルもOK
テンヤマゴチのタックルは前段で触れたとおり、基本的に一つテンヤ用のスピニングタックルを流用すればよい。
竿の硬さは腰が強めのMHあたりが合わせが効いてハリ掛かりしやすく、竿先も適度に軟らかいのでマゴチの食い込みもいい。
全長1.8m程度のシロギス竿もおすすめ。
2.3m前後が主流のテンヤ竿より短いので、釣り座を問わずアンダーハンドでキャストしやすく、先調子ゆえテンヤの操作性も優れる。
しかし短いだけに竿のタメは効かず、60cmオーバーの大型マゴチが掛かるとかなりスリリングなヤリトリになることは覚悟しておこう。そのほか、右記2本の長所を集約した全長2.1m程度のテンヤマゴチ専用竿もある。
スピニングリールはPE0.8号前後を巻いた2500~3000番、ショックリーダーはやや太めのフロロカーボン3~4号を結ぶ。
マゴチは糸ノコギリのように細かく鋭い歯を持つので、これくらいの太さがないと不安だ。
ただ、穂先のガイドリングが小さい竿は、キャスト時にリーダーの結びコブが当たって飛距離が伸びない。
その場合はリーダーを2~2.5号まで細くし、先端に4~5号のハリスを20cmほど付け足せばスムースにキャストでき、マゴチの歯も防御できる。
ザリガニ型のワームを明暗2色用意する
鹿島沖のマゴチ釣り場は水深10m前後の浅い砂地。
使用するテンヤはタイテンヤの8~12号があれば十分だ。
30~50gのジグヘッド系も実績があって定番のスイミングテンヤのほか、ラバースカートが付いたマゴラバと呼ばれるマゴチ専用のジグヘッドも人気があるようだ。
いずれにせよ、キャストして砂底を引きずったときにコトコトと底を這う感触が分かる重さを選ぶこと。
テンヤが底から大きく浮いた状態が続くとマゴチのアタリは激減してしまう。
テンヤに付けるソフトワームのサイズは3~4.5cm。
形状はとても多様なので迷ってしまうが、一つ選ぶとすればクローとかホッグと呼ばれるザリガニ型のワームだろう。
海の生物に当てはめるとボケジャコやテッポウエビというイメージで、ボリュームがあってシルエットもよく目立つせいか安定してマゴチがヒットする。
カラーはラメ入りのオレンジ、茶色の2色。
つまり明色と暗色の2パターンを用意しておく。
鹿島ではオレンジがあらゆる条件下で効果的とされている鉄板カラーだが、しばらく釣ってアタリがないときは茶色などのダークカラーに替えたとたんにアタリが増えることも多い。
さらにもう1色追加するなら濃い赤色も当地で実績があるようだ。
欲をいえばイモムシ型のグラブ、小魚型のシャッドテールなども用意しておけば万全。
しかし、とくに入門者であればザリガニ型が基本と信じて迷いなく釣り続けたほうが好結果につながると思う。
取材した鹿島港・大久丸で仲乗りを務めている平塚さんもザリガニ型のワームを推奨していて、
「さらに私はワームを2つ付けてます。ヒラヒラ動くラバースカートなんかも追加するとアピール力がアップしていいですね。テンヤの存在を目立たせたほうがマゴチの食いはアップするようです」とアドバイスする。
下のワームセット例を参照していただきたい。
ただし3個、4個と不自然に付け過ぎるとワームの動きが悪くなるので逆効果、ほどほどにとどめよう。
タイテンヤのワームセット例
テンヤは8、10、12号を用意し、しっかり底が取れる重さを選択。親バリにワームをセットし、孫バリにはタコベイトなどを付けてアピール力をアップ。
出典:
ジグヘッド系のワームセット例
ジグヘッドタイプは30、40、50gを用意。写真は仲乗りの平塚さんの一例で、ワームを2個付けしてある。うち一つはフトコロにチョン掛け。
出典:
(左)ワームはサイズ3~4.5cm。初めて購入するならザリガニ型で、カラーはラメ入りのオレンジとブラウンの2色。(右)カワハギやタイラバ用のスカート類をプラスしてもOK。
出典:
(左)竿は一つテンヤマダイ用が定番だが、シロギス竿でも十分楽しめる。(右)スピニングリールはシマノ3000番、ダイワ2500番台、道糸はPE0.8号が基準。
出典:
横流しの注意点と食わせるテクニック
ワームをセットしたテンヤを、アンダーハンドでキャスト。
道糸を出しながら着底させたらシロギス釣りのイメージで海底をズル引き。
5年くらい前まではこのシンプルな釣り方でもそこそこ釣れていたのだが、次第にマゴチも学習したのか、近年は攻めの誘いを織り交ぜてやらないと反応が鈍くなってきている。
また、船は基本的に横流しで、1流しごとに左右の舷を入れ替えながら釣っていく。
つまりヒラメ釣りのように仕掛けが払い出す側と、手前に切れ込む側が生じるので、それに合わせた釣り方のコツがある。
◎仕掛けが払い出す側
テンヤを軽くキャストし着底させたら、糸フケを取ってしばし待機。
道糸が張ると船に引っ張られてテンヤが移動し始め、テンヤがコトコトと底を引きずる状態が持続すれば適正。
次第に底から浮き上がってしまう場合はテンヤを重くして、しっかり底が取れるように調整する。
船の流れがちょうどいい感じならそのまま引きずってもいいし、流れるスピードが遅いときはゆっくりリールを巻いてテンヤを手前に寄せながらマゴチの居場所を探ろう。
その合間に織り交ぜたいのがリフト&テンションフォール。
竿先を立ててテンヤを浮かせ、ラインを張ったまま斜めにスライドさせるようにフォール。
この間、チョンチョンと竿先を動かし、テンヤにアクションを加えながら落とし込んでもいい。
テンヤが着底したら竿先をスッと下げてひと呼吸静止。
食わせの間を作ることで、狙いを定めたマゴチが飛び付くチャンスを与えてやる。
こうしてズル引きと誘いを繰り返していくうちにガツガツとマゴチのアタリがきたら、竿先を少し送り込んでしっかり食わせ、ゆっくり竿を立てて聞き合わせてみよう。
逃げようとするワームをマゴチがくわえ込んで反転したら、すかさずギュッと追い合わせ。
確実にハリ掛かりさせてヤリトリに入る。
仕掛けが払い出す側は、とかくマゴチと綱引き状態になりやすい。
とくにアタリがきた直後は、少し送り込んで飲ませたほうがヒット率は高まる。
◎仕掛けが手前に切れ込む側
投げ込んだテンヤに向かって船が流れていくため、テンヤはすぐに船下に寄ってきてしまう。
そこで、できるかぎりロングキャスト。
船の流れより速いテンポでリールを巻いてテンヤをズル引きし、船下まできたら再びフルキャストする。
キャストとズル引きを繰り返しながら、所どころで小刻みなシャクリを入れてマゴチにアピールするのも有効。
跳ね上げたテンヤが着底した直後に糸がフケ、自然と食わせの間も生じる。
仕掛けが手前に切れ込む側は、糸フケが出やすいのでマゴチのアタリが分かりづらい欠点がある。
アタリを感じたらリールを巻きながらラインテンションをキープし、しっかりと重みを感じたところで早めに合わせたほうがハリ掛かりしやすい。
なお、いずれの流し方でもヤリトリの最中に糸を緩めないこと。
テンションが抜けるとテンヤのヘッドが下がってハリが外れやすくなる。
テンヤが上下に振れ回るポンピング操作も避けたほうがよく、竿の角度を一定に構えたままドラグを効かせてリールを巻くこと。
それがテンヤマゴチでバラシを防ぐコツだ。
仕掛けが払い出す側のテンヤマゴチ釣り
仕掛けが切れ込む側のテンヤマゴチ釣り
釣り方の手順
①安全のため必ずアンダーハンドでキャストし、テンヤを着底させる。
②仕掛けが払い出す側は、海底をズル引きしながらリフト&フォールも織り交ぜる。
③テンヤが再着底したら竿先を下げて海底に1~2秒止め、食わせの間を取ってみる。
仕掛けが切れ込む側はどんどんリールを巻いてテンヤを移動させ、合間に小刻みなシャクリも入れてみたい。
出典:
日が差す時間にマゴチの食いが立つ!
鹿島沖のマゴチ釣りは6~7月に最盛期を迎え、鹿島港と鹿島新港の7割ほどの船宿が釣りメニューの一つに掲げる。
そしてその大半の釣り方が、このテンヤマゴチだ。
5月末に訪れた大久丸は、その中にあって異色の存在。
大川久明船長の息子である勝久船長のつてで、東京豊洲市場の業者から生きたサイマキ(小型の若いクルマエビ)をマゴチ用のエサとして仕入れているのである。
仕掛けは三日月オモリや鋳込みテンビンを介した、東京湾と同様のスタイル。
ただし横流しなので潮の抵抗を受けやすく、15~30号のオモリを使い分けて糸を立てていく。
そんなわけで当然、エサ釣りのマゴチファンも多いのだが、仲乗りの平塚さんや常連の山崎さんはテンヤマゴチも大好き。
大川船長も、「うちはね、オマツリしないようにやってくれれば、エサでもルアーでも好きにやってもらってます。自由に遊んでください」というスタンスだ。
7人が竿を出した当日は4名がエサ釣り、左舷ミヨシの山崎さんがテンヤマゴチとの二刀流、平塚さんと私がテンヤマゴチ専門という布陣。
釣果にどれだけ差が出るのか興味深いスタートとなり、水深7~10mの浅場を鹿島港周辺の北から南へ向かって転々と攻めていく。
潮の動きが悪くアタリは遠いものの、エサ釣りのほうはサイマキが潰されて戻ってくるシーンが何度かあり、ついに右舷トモの高田さんが60cmの大マゴチをキャッチ。
テンヤマゴチのほうは途中までほとんど反応なし。
しかし鹿島港の南沖に浮かんで、曇り空の隙間から太陽が顔を出した時間帯に状況は変わる。
仕掛けはタイテンヤ10号にザリガニ型のワーム。
オレンジでアタリがないので茶色に変更し、孫バリにはピンクのタコベイトをチョン掛けした。
左舷トモからシロギス用のスピニングタックルでフルキャスト、ズル引きしながら小さく3回シャクリを入れた直後にまずは45cm級がガツン。
これは仕掛けが切れ込む側の流しだったが、舷を入れ替えての続く流しもズル引き中にガガッ。
1本目とは丸っきり違う強烈なトルクは60cmジャストのマゴチだった。
「マゴチは日が射して海底が明るくなったほうが口を使うんだよねぇ」と船長が言うとおり、ここから1時間ほどアタリが多発。
エサ釣りの高田さんが50cm級を2本、山崎さんが40cm級を1本追加し、ほかの方は残念ながらスッポ抜けに泣いたものの相当数のマゴチが海底にいることは確認できた。
そのまま11時30分の沖揚がり時刻を迎え、釣れたマゴチは船中6本。
鹿島沖にしては寂しいが、うち2本が60cmの大型というのが救いだろう。
また、時合が訪れればエサもルアーも同レベルで釣れるわけだが、「よく動くエサにアタックしてくるときもあって、そんなときはルアーのほうが数がのびるんですよ」と平塚さん。
6月以降トップ10本に達している鹿島沖で一度は試してみてほしい。
鹿島沖は60cm級のマゴチも普通に顔を出す。6月以降、数も上昇中だ。
出典:
(左)大久丸はサイマキを用意してくれるので、エサ釣り派にも大人気。(右)テンヤマゴチとエサ釣りが両方楽しめる大久丸。貴重な船宿だ。
出典:
バラシの鬼門、取り込みのコツ
テンヤやジグヘッドは、構造的にオモリ(ヘッド)が下がるとハリがスッポ抜けやすい。
中でもバラしやすいのが、海面下まで浮かせてきてからタモ入れまでの間だ。
マゴチの頭を海面上に出すと頭を振って大暴れし、テンヤが上下に振れ動いてバラシを招く。
それを防ぐには、海面下スレスレにマゴチを泳がせたまま構えたタモへスーッと誘導すること。
これだけでマゴチはおとなしくタモに入るケースが多く、キャッチ率もアップする。
タモ取り直前でバラシが多発。
出典:
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