東京湾のテンタチ人気が止まらない。
テンヤのタチウオ釣りをやってみたいという釣り人が急増するに伴いタチウオ乗合を出すほとんどの船宿で便乗OKとなったほか、専門船も続々登場するなど船宿側の受け入れ態勢は整いつつある。
しかし使用テンヤの号数やエサの用意など各船宿の対応は様ざま。
そこで今回の第2特集では、現時点で判明しているテンタチ可能な船宿と、意外と見落としがちなイワシエサにスポットを当ててみた。
東京湾にもテンヤタチウオができる船宿はたくさんある
東京湾でもテンヤOKの船が急速に増えている
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東京湾でテンヤのタチウオ釣りをやってみたいと思ったとき、どこへ行けばできるのか?
答えはほぼ、どこでもできる。
本誌船宿データベース加入の船宿でタチウオ乗合の看板を掲げるのは内房富津から三浦半島鴨居大室まで現在34軒。
そのうちテンヤのタチウオOKとしているのは32軒。
8~9月にかけて急激に増えてきたテンヤタチウオ専門乗合は19軒ある。
釣り人のニーズに素早く対応する宿が多いのはさすが東京湾といったところだ。
このうち専門船の出船状況は、常時テンヤ専門船を受け付ける船宿と、配船の都合などにより曜日や潮回り限定で専門船を出すいわゆるスポット出船、お客さんの希望があったときだけ出船するリクエスト出船などがあるほか、専門船が出ない日でもタチウオ乗合は出ておりそちらに便乗OKとする宿も多いので問い合わせてほしい。
一方、専門船以外に便乗する場合でもテンビン仕掛けのエサ釣りだけでも一日船、半日船、ショート船、アジなどとのリレー船と多彩にあり、これにルアー船を加えれば東京湾でテンヤのタチウオ釣りを楽しめる船宿はたくさんあることが分かる。
しかし、いつでもどこでもどの船宿でもテンヤウエルカムなのかといえばそうではない。
専門船以外は、基本的にテンビン仕掛けやルアーメインの船に便乗させてもらう形となる。
だから、四隅限定だったり人数を区切ったりと条件が付く。
また、混雑具合や潮の流れによってはテンヤを遠慮してもらうケースもあることから、テンビン仕掛けやルアータックルの準備もしておく必要がある。
それらを理解した上で予約時に必ずテンヤで釣りたい旨を伝えよう。
(左)数は釣れなくてもこのサイズがそろうのがテンヤの魅力(右)海面下にユラッと大タチが見えても慌てず抜き上げよう
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イワシエサについては専門船ではほぼ船宿に常備されつつあり、便乗船でもエサを用意しているケースが増えてきている。
エサは出船前に宿で購入するケースがほとんどで、船上での追加販売がある船とない船がある。
船上で追加購入できない場合は、事前に多めに用意しておかないとエサ切れとなってしまうので注意したい。
また、販売ありとしている宿でも数に限りがあるためできれば持参してほしいというケースもある。
なお、船宿が推奨する使用テンヤの号数も40号中心だったり50~60号中心だったり、状況で40~60号まで幅広く使い分けたりと変わってくるし、使用する道糸の号数もPE1.5号もしくは2号に統一、あるいはPE2号以下と変わってくる。
このあたりはテンビン仕掛けの釣りと一緒なので、事前に船宿に確認して準備しておきたい。
テンヤタチウオを楽しむ上での3つの注意点
東京湾でテンタチ人気が急速に広まったことは歓迎したいが、いくつか問題点も出てきている。
その一つが取り込み。
竿で抜き上げようとしたときにテンヤが外れて怪我をしたという事故も実際起こっている。
必ず竿を船ベリに置き、リーダーをつかんで抜き上げるようにしたい。
(左)テンヤ置き用のトレーも今後どんどん普及していくはず(右)取り込みで怪我をしないよう十分注意したい
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もう一つがエサの扱い。
イワシエサはカットしたときに血や内臓が出て汚れやすい。
切れ端が船内に散乱すると滑りやすく危険だし、イワシを巻いたテンヤを船ベリに置きっ放しにすると汚れが乾燥して落ちにくくなったりもする。
カットしたイワシが船内に飛び散らないよう配慮するとともに、テンヤを船ベリへ置くときはトレーなどを使うようにしたい。
実際、テンヤ置き用のトレーを用意している船宿も出てきている。
最後は竿。
テンヤ用の貸し道具をそろえている船宿はまだ少なく、あっても数が少ない。
基本的に道具は持参になり、先調子で硬めの竿ということでカワハギ竿を使う人もけっこういるようだが、折れる事例が頻発している。
専用竿以外を使うのであれば深場のタチウオ竿、イカ竿や餌木タコ竿など、強度面で不安のない竿を使いたい。
テンヤもやっぱりエサが重要、山中陽介のテンタチエサ学
山中 陽介(やまなかようすけ)釣具メーカー・ヤマリアマーケティング部勤務。テンヤのタチウオのほかアカムツ、イカメタルなどにも造詣が深い。当日の模様はつり情報チャンネル(tjweb1091) でも公開しているのでぜひご覧ください!
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テンヤのタチウオ釣りを経験した人から誘い方や合わせのタイミングが分からないということをよく聞く。
釣果を上げるには確かにそれも大事だが、最も重要な部分は「エサ」である。
テンヤは釣り方こそルアー釣りに近いが、実際にはエサを食わせて掛ける「エサ釣り」だということを忘れてはならない。
つまり、エサがしっかりしていないと釣れるタチウオも釣れない。
これはテンビン仕掛けの切り身エサと同じだ。
エサを締めることで巻きやすくなる
(左)入手できるイワシのサイズも様ざま。上4匹くらいが使いやすい(右)鮮度の悪いイワシを巻くとズレやすい。 こうなるとアタリも出にくい
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今回はエサ=イワシに限定して話を進めるが、重要なのはイワシの質と付け方の2点。
まず重要なのがイワシの質。
一番よいのは朝獲れで鮮度のよい20cm弱のマイワシだが、そんなイワシを釣行当日や前日に手に入れるのは至難の業。
ほとんどの場合、冷凍や獲れてから数日たったイワシを使用することになるが、鮮度の落ちたイワシをテンヤに巻くと、イワシを固定するためのステン線が身を裂くように食い込んできれいに巻けなくなる。
イワシがきれいに巻けないと、投入や回収時のテンヤの上げ下げや誘いを加えているうちにズレやすくなる。
テンヤからイワシがズレるとほとんどアタリが出なくなってしまうし、仮にアタったとしてもハリ掛かりすることはまずない。
アタリを出してタチウオをハリ掛かりさせるには、イワシをきれいにしっかり巻くことが大切で、そのためにはイワシをある程度の硬さに締めることが重要となる。
(左)左上が加工して販売されているギュッとイワシ、左下が加工されていない冷凍イワシ、右上が船宿で購入できる冷凍の大羽イワシ、右下が山中さんが仕込んで持ってきたイワシ(中)朝、船宿で購入したエサが凍っていたらすぐに解凍しよう(右)ある程度溶けたらアミノリキッドなどで締める
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また、最近は船宿でもエサのマイワシを購入できるが、冷凍されているものが多く、解凍したまま締めずに使うと身と皮が軟らかすぎてステン線が非常に巻きづらい。
これを防ぐためにイワシを締めるのだが、おすすめはマルキユーのアミノリキッド。
粗塩などを使用して締める方法もあるが、粗塩だけだと締まり過ぎて硬くなったり、青光りして食いが悪くなるケースもある。
とくに東京湾のようなスレているタチウオはエサに対してはかなり気を遣わないと釣果アップは望めない。
エサを船宿で購入した場合、冷凍であればすぐに解凍する。
できれば出船前、遅くともポイントに到着するまでには完全に解凍しておきたい。
海水にそのまま浸けてもいいが、凍ったままのイワシを直接アミノリキッドに浸すと、イワシを解凍しつつ締められるので時間短縮につながる。
イワシが凍りすぎて塊になっている場合は少し海水に浸してバラけるくらいまで解凍してからアミノリキッドに浸す。
イワシのサイズにもよるが、テンヤに最適な18~22cm程度のイワシの場合は最低でも1時間ほど、できれば3~4時間は浸しておきたいので、釣りをしている間も浸しておき、必要な分だけ小出しにして使うようにする。
ある程度解凍できたら、外に出しっ放しにはせず、クーラーボックスに入れて鮮度劣化を防いでおく。
締める手間を省くなら・・・
(左)ギュッとイワシは冷凍されていても身が軟らかい(右)加工されてないイワシエサは冷凍するとカチカチ
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もしイワシを締める手間を省きたいのであれば、マルキユーから発売されている「ギュッとイワシ」を使用するのも方法。
テンヤに適したサイズのイワシがしっかりと加工されていて、不凍のためすぐに使用できる。
締めている時間がない場合や手間を考えればこういった加工エサを買うのもいい。
テンヤには非常に使いやすい具合に締められているし、締め具合の参考にもなるので一度試していただきたい。
エサの巻き方3大ポイント
(左)冷凍したままのイワシを巻くと溶けたときにステン船が緩んでしまう(中)テンヤには大まかにハリ軸の上にイワシを乗せるタイプと、イワシに平行に刺すタイプがある(右)すぐに使わないエサはクーラーにしまって鮮度を保持
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エサ付けも重要な要素の一つで、付け方次第で釣果も大きく変わる。
大切なのは①完全に解凍したイワシを使うこと②真っすぐになるようにテンヤに装着すること③テンヤとイワシを一体化させること。
軟らかいイワシは巻きにくいと先ほど言ったが、表面がカチカチに凍ったままのイワシもよくない。
確かに硬いので巻きやすく一見きれいにできるのだが、いざテンヤを投入して海中でイワシが解凍されると身が緩くなり、ステン線が浮き上がってイワシが外れたり、ズレたりしやすくなる。
次にテンヤに装着したエサが曲がっていると、タチウオから見た場合(下から)歪んで自然界にはないような形状となるため警戒心を与えやすい。
また、テンヤ自体は基本的に潮の流れに向かってヘッドが向くようになっているが、エサが曲がっているとその部分が潮を受けてテンヤが海中で回りやすくなる。
とくにステイさせているときや微速巻きをしているときにテンヤが回転するとタチウオへの「食わせの間」を奪うことになりアタリが出にくい。
真っすぐにエサを装着するには、テンヤをケンに刺して仮固定したら真っすぐになっているかテンヤの上部から見て確認。
イワシの巻き方例(平行刺しのテンヤの場合)
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そしてイワシが曲がらないように指を添えながらステン線を巻いていく。
指を添えないと巻く方向にイワシが傾き、おのずとイワシが曲がっていくので注意したい。
巻いているうちに曲がってきたら、その都度修正しながらていねいに巻いていく。
とくにテンヤのハリ軸に乗せるタイプは曲がりやすいので注意。
初めて使うのであれば「猛追太刀魚テンヤ」のような平行刺しタイプもおすすめ。
これだとエサが曲がりにくいため手早く巻くことが可能だ。
テンヤとイワシのサイズをそろえることも大切。
大きなイワシのほうが目立っていいだろうと大羽のイワシをそのまま装着すると、バランスが崩れてテンヤが不自然に傾きアタリが減ってしまう。
(左)1匹巻く場合もイワシの頭をヘッドに添わせるのがコツ(右上)テンヤのヘッドとイワシの身が一体化するサイズに調整する(右下)ヘッドから身がはみ出していると潮の抵抗を受けやすい
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一部船宿やスーパーなどで購入できる大羽イワシはテンヤに対して大きすぎる場合があるので、適正なサイズにトリミング(カット)したほうがいい。
理想としてはハリの後端から2~3cmほど尻尾が出る程度で、長い場合は頭をカットして調整する。
また、とくに注意すべき点はヘッドよりもイワシをはみ出させないこと。
エサを仮固定した際に、テンヤを正面から見てイワシが大きくはみ出ていると、その部分に潮流を受け、エサが後方にズレやすくなるだけでなく、潮を受けてオマツリの原因にもなる。
大きなイワシは腹側をトリミングしてヘッド内に収めるようにしていく。
イワシの頭を付けたまま巻く場合でも、ヘッドの後端(ほぼ斜めになっている)にイワシの頭を添わせるように巻く。
隙間が空いているとその部分に水流が入り、誘っている最中や回収中にエサが反り返ったりズレたりする。
(左上)大きすぎるイワシは頭と腹をカットする(左下)ハリ先から尾が3cm出るくらいが理想(右)ハリを隠すようにテンヤにセット
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突如、東京湾に訪れたテンタチブーム。
東京湾では新しい釣りでどうしても道具や釣り方にフォーカスされがちだが、「エサ」の重要性を今一度見直して釣果アップにつなげていただきたい。
しっかり固定するなら銅線もおすすめ
こだわるなら銅線で。100円ショップなどで購入できる
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イワシを巻くときほとんどの人はテンヤに付属しているステン線を使うと思うが、ステン線よりも復元力の少ない銅線で巻くのもあり。
同じ線径であればステン線よりも明らかに軟らかく、身の軟かいイワシでも固定しやすい。
ただしステン線よりも切れやすいので、予備は多めに必要だ。
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隔週刊つり情報(2020年10月15日号)※無断複製・転載禁止