「残されちゃったねぇ!」
ジグをシャクっていると、広布号の操舵室から顔を出した野島幸一船長がにこやかにそう言った。
なんのことだか、筆者(ライター・タカハシゴー)はとっさに分からなかった。
「残された・・・? 何に残されたんだ・・・?」
0.2秒ほどして分かった。
船中、筆者以外の全員が、ワカシ、イナダ、サンパク(イナダとワラサの中間サイズ。外房ではサンパクと呼ばれる)と、大きさは違えど青物を手中に収めていたのである。
まだ魚を釣っていないのは筆者だけ。
マズい。
マズすぎる──。
7月下旬、外房大原沖は活性の高い青物の群れが回っていた。
スーパーライトジギング、SLJに積極的に取り組んでいる外房大原港・広布号は、5時半過ぎに出船。
20分ほどで水深20m前後のポイントに到着すると、鳥がパラパラと空を舞っており、釣れそうな雰囲気がムンムンしている。
そして、レッドブルを飲んでパワーをつけたジャッカル・プロスタッフのヨッシーこと吉岡進さんは、1投目でいきなりイナダをヒットさせたのだ。
「バンブルズジグTG SLJの60gで、カラーはイワシ/レンズホロ。底を2回ほどネチネチと誘って根魚を狙ってから、宙層では青物狙いで速巻きをしてたんだ。そしたらイナダがガツン!(笑)底ネチネチからの宙層速巻き、というSLJの教科書のような誘いが、1投目から〝正解〟だったねえ~」
ヨッシー、満面の笑みである。
「1投目からこれって、もしや本日大原沖青物大爆釣セール開催か!?」という期待は的中した。
海がさらにざわつく。鳥が集結したうえに魚の跳ねも見える。
その勢いのまま、広布号のそこかしこで竿が大きく曲がり、中小クラスの青物が続々と取り込まれていく。
もちろんヨッシーもガンガン魚を掛けている。ジャッカルのSLJ専用ロッド、バンブルズエクストロSLJが気持ちよく曲がる。
十分なバットパワーが確保されているとはいえ、そこは細身のSLJロッド。
たまにサンパククラスが掛かると、ヤリトリが本当に楽しそうだ。
ヨッシーも「うひょ~!」と声を上げる。
船のあちこちでドッタンバッタンと暴れる魚がフロアをたたく音が聞こえる。
賑やかだ。
タックルがライトなんだからルアー選びもお手軽にしたかったんだ
出典:
釣り人の笑い声と釣られた青物がドタバタ暴れる音で賑やかな船上
出典:
ホントに起きたマンガみたいな出来事
その横で筆者はしんみりとジグをシャクっていた。
ヨッシーが使っているバンブルズジグTG SLJ(以下バンブルズジグSLJ)は、筆者ももちろん持っているし、間違いなく釣れるジグだということも経験上知っている。
だが、バンブルズジグSLJがガチで釣れるジグだということを証明するためには、逆説的に、「それ以外のジグでは釣れない」ということを確認しなくてはならない。
だから心を鬼にして、あえてバンブルズジグSLJを避けていたのだ。
そして筆者は見事に大原沖青物大爆釣セールに取り残されていた。「SLJは今回が初めてなんです~」という初々しいアングラーもイナダを手にニッコリとしている。
釣っている人みんながバンブルズジグSLJを使っているわけじゃない。
でも、少なくとも筆者が今シャクっているジグは今回はハズレだったようだ・・・。
そして、釣り開始から2時間ほどたった8時前。
5流し目が始まるにあたり、筆者はついにジグを交換した。
選んだのはもちろん、バンブルズジグSLJである。
「残されちゃったねぇ」と野島船長に声をかけられたのは、着底からシャクリ始めたときだった。
その瞬間、ズドン、というアタリが訪れた。竿がひん曲がる。
魚が走る。
た、楽しい・・・。
上がってきたのはイナダだった。
楽しいけど、なんか悔しい。
バンブルズジグSLJに替えた途端にイナダが食ってくるなんて、そんなマンガみたいな話、ある?
だって、バンブルズジグSLJは、ヨッシーがプロデュースしたんだぜ・・・。
「食ったね」とヨッシーが笑っている。
会心の笑みだ。
「食った」
「ジグ替えてたよね。何に替えたの?」
「・・・」
「釣ったジグは何?」
「バ、バンブルズジグSLJ」
「それって、だれがプロデュースしたジグだっけ?」
「ヨ、ヨッシー・・・」
なんだろうこの負け気分は。
だが、2時間にわたって別のジグで奮闘しても(アタリはあったが)魚は釣れず、バンブルズジグSLJに替えた1投目でズドン、は、事実なのだ。
「そうか、おれプロデュースのバンブルズジグSLJに替えたとたんに、イナダを釣っちゃったか。はーっはっはっは」
胸を反らせて高笑いするヨッシーを止める手立てはない。
「このジグの開発には時間をかけたからね。自信作なんだよ」とヨッシー。
「今まで色んなジグを使ってきた経験で分かったのは、細いジグほど食わせる力が高い、ということなんだ。活性が低くても食ってくるんだよ。ただ、細いぶんだけ波動が弱く、魚を呼ぶアピール力が弱いんだよね。逆に、幅広いジグはアピール力が強い反面、とくに活性が低いときほど食わせる力が弱いように感じる。だからこそ色んなタイプのジグが販売されてるんだけど、食わせ力とアピール力の両方を備えたジグがあれば、1本で済むでしょ?そんな風に考えて作ったのが、バンブルズジグSLJなんだ」
青物狙いにはイワシやシルバー系のカラーが効果的
出典:
ヨッシーがプロデュースしたSLJ専用ジグでアシストフックが標準装備。イワシや甲殻類などを捕食している魚はもちろん、シラスを偏食している魚もよく釣れる。サイズは30、40、60、80g
出典:
色いろそろえるのは面倒だから作った「コレ1本でイケるジグ」
ヨッシーは釣りのプロだ。
だから、「自分がこう釣りたい」という思いだけで製品を作ったりはしない。
多くのユーザーにとってメリットのあるジグを作ろうとした。
「SLJは、今までの本格的なジギングと違って、タックルはライトで『そのとき、その場所で釣れる魚が全部ターゲット』というお気軽な釣りである。・・・なんだけど、ジグはどうしても状況やターゲットに合わせて種類が増えてしまう。根魚ならコレ、青物ならコレ、シブいときはコッチ、活性が高ければコレ、といった具合にね。でもさ、せっかくタックルがライトになったのに、ジグが増えてタックルボックスが重くなったら本末転倒でしょう?だからジグ選びもお気軽にしたかった。『コレ1本で幅広い状況に対応できて、様ざまな魚種が釣れる』っていうジグをガチで目指したんだ」
約2年もの歳月をかけ、日本各地で実釣テストを繰り返しながら、バンブルズジグSLJは完成した。
スッキリとシンプルな細身のシルエットながら、よく見ると左右非対称だ。
上から見て右側はほぼフラットながら、左側には膨らみが与えられている。
しかも各部のエッジは非常にシャープと、複雑な形状だ。
素材は比重が高いタングステンで、同じ重さなら鉛製よりもコンパクトに作れる。
フォールスピードが早いというメリットもあるのだとか。
「タングステンの強みで、細身で小さいんだ。だから食わせ力が強く、ただ巻き&フォールの簡単な誘いでもOKだ。SLJは初めてというビギナーの方でもよく釣れるよ。食わせ力が強いということは基本的に波動は弱め。でも、バンブルズジグSLJはレスポンスのいい形状になってるから、テクニックがある人の細かいロッドアクションにもしっかり追随する。だから、誘い方次第で波動を起こしてアピールすることもできるんだ。本当にコレ1本で幅広く対応できる、最高の仕上がりになったよ!」
簡単に言ってしまえば、だれが、いつ、どこで、何を狙ってもよく釣れる。
今回の筆者が図らずも証明してしまったように、ほかのジグでは釣れなかったのにバンブルズジグSLJに替えた途端にヒット、ということも決して珍しくない。
もちろん、ほかにも釣れるジグはたくさんある。
野島船長自らが開発した広布号のオリジナルジグも、よく釣れるジグとして高い人気を誇っている。
実際、広布号ジグで2.2kgのヒラメを釣ったお客さんもいた。
各地で評判の「隠れた名ジグ」もあることだろう。
でも、ヨッシーを持ち上げるのは本当に悔しいのだが、バンブルズジグSLJが手堅く釣果を望める1本であることは間違いない。
タックルボックスに忍ばせておいても絶対に損はない「鉄板の1本」なのだ。
タングステン製だけど・・・。
バンブルズジグTG SLJに交換した1投目にイナダを釣り上げたタカハシゴー
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バンブルズジグTG SLJで釣り上げたスマ
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ヒットしたスマがギュイーンと勢いよく疾走する
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持ち帰らないときはフックを外して素早くリリース
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オリジナルの広布号ジグで2.2kgのヒラメをキャッチ
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何かが釣れるから楽しい!何が釣れても面白い!!
この日、大原沖の魚たちは非常に活性が高く、広布号は大いに盛り上がった。
とくに歓声が高かったのは、複数のお客さんが良型のマダイを釣ったときだ。
タイラバ、そしてまさにバンブルズジグSLJに食ってきたマダイは、3kg級だった。
イワシを追う青物たちの下に、こんなビッグサプライズが隠れていたのだった。
船長の息子さんで、夏休みは毎日のように広布号に乗っている「ベテラン小学6年生」の大威翔くんも、ナイスサイズのマダイを釣った。
しかもバンブルズジグSLJで。
「お父さんのジグじゃなくていいの~?」と常連さんのツッコミが入るが、広布号オリジナルジグでも高実績を上げている大威翔くん、それぐらいではまったく動じないのだった。
ヨッシーは、釣る、釣る、釣りまくる!
釣ったイナダは数知れず、小ぶりとはいえマダイを掛け、着底と同時にカサゴを掛け、これぞSLJといった感じでバラエティ豊かに様ざまな魚を釣っている。
ジャーッとドラグ音が鳴り響いた。
ブリ系とはまた違う、強くて鋭い引きだ。
「なんだなんだ?」
楽しげなヨッシー。
バンブルズエクストロSLJを根元から曲げながら上がってきたのは、珍客・スマだった。
「これはうれしいね!」とヨッシーも声を上げる。
これまた船内が盛り上がる。
広布号は野島船長のもと、お客さんみんなが仲よしで気持ちいいのだ。
結局、11時の沖揚がりまでに、ブリ(ワカシ、イナダ、サンパク、ワラサ)、マダイ、ヒラメ、カンパチ(ショゴ)、マハタ、カサゴ、そしてスマと多彩な魚たちが顔を出してくれた。
「ホント、面白い釣りなんですよ」と野島船長。
「タックルがライトだから何が釣れても引きが楽しめるし、季節によって釣れる魚もどんどん変わる。挑戦してくれるお客さんも増えて、SLJも定着したかな!」とヨッシー。
小学6年生の大威翔くんが並み居る常連さんたちに混じってガンガン釣果を出しているあたりが、気軽にだれでも楽しめるSLJの真髄と言えるだろう。
実は今回使用したロッド、バンブルズエクストロSLJもヨッシーがプロデュースしたもので、ユニークかつSLJの最強ウエポンとなっている。
だが、このロッドについても書き始めると瞬く間にページが埋まってしまう。
またどこかでSLJの取材を行う際に、ヨッシーのこだわりポイントを惜しみなく披露したい。
なお、スマはヨッシーからプレゼントされ、野島家の食卓を飾った。
うまい魚が釣れるのも、SLJのだいご味なのだ。
当日のルアー船で見付けた大原沖のSLJで○○しがちなシーン
イナダ~サンパクサイズが中心で数が釣れた
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大威翔くんもマダイをキャッチ
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隔週刊つり情報(2021年9月1日号)※無断複製・転載禁止