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アカムツ~珠玉の大型を海底谷に追う~

隔週刊つり情報編集部

アカムツは周年釣れる魚だが、一般的に最盛期は乗っ込みで浅場に群れが集まる夏~秋とされている。

しかし近年は釣り場の開拓が進むとともに、冬場でもアカムツを狙う乗合船が増えており、12月上旬現在、本誌船宿データベースを元にした、リクエストによるスポット出船を含めたアカムツ乗合の出船船宿は、西から遠州灘福田港の福徳丸、駿河湾田子の浦の鶴丸、東伊豆宇佐美港の直正丸、二階屋丸。

千葉方面では南房江見太夫崎の渡辺丸、片貝港の正一丸、茨城県では波崎港のひろの丸、鹿島港の長岡丸、平潟港の第15隆栄丸など。

年明けに解禁を迎える犬吠埼沖のアカムツがスタートすれば、さらに出船軒数が増えるはずだ。

今回スポットを当てる九十九里片貝沖は、冬に深場でほぼ確実に釣果が望めるアカムツ釣り場。

片貝港の正一丸では11月下旬に2ケタ釣りもあり、その後も安定した釣果が続いている。

加えて当地の特長は30~40cm級がレギュラーサイズ、50cm級の大型も釣れる、型にこだわるファンにはたまらないエリアだ。

取材で釣行した正一丸が主に狙う釣り場は、通称「ミゾ」と呼ばれるポイントで、正式名は片貝海底谷。

文字どおり、深く急峻な溝が片貝沖の南東方向へ約100kmに渡って走り、アカムツのほかキンメダイ、アコウ、ヤリイカなど様ざまな魚種がこの周辺で狙える好漁場だ。

ここからは、正一丸の海老原三利船長のアドバイスをふまえて、片貝海底谷のアカムツ釣りを紹介していこう。

釣行の写真

置き竿で待つときも常に底を意識し道糸を出し入れする。

海底谷の急斜面と速潮に対応する仕掛けとタックル

釣り場は水深180~340mほどの斜面一帯で、ミゾの中には根が荒い場所もあるが、アカムツのポイントの底質は泥地でほとんど根掛かりしないとのこと。

当地のアカムツの標準仕掛けは左ページ図のような胴つき3本バリで、使用オモリは250号。

ハリは、アカムツの歯によるハリス切れを防ぐため、ハリを飲まれても喉奥に刺さらず口周りに掛かる確率が高いネムリ系が定番。

サイズは16~18号のムツ、16~17号のホタバリ、アカムツ専用バリなどだ。

ハリのチモトや軸に付けるアクセサリー類は、浮力と潮受けにより海中でエサがフワリと漂うフカセ効果がある「マシュマロボール」や「激臭匂い玉」、ケイムラのフロートパイプなどが人気のアイテム。

ちなみに正一丸の船宿仕掛けはマシュマロボール&ケイムラフロートパイプ付きと、フラッシャー付きの2種類ある。

道糸はPE4~5号、リールは糸巻き量が大切。

当地のポイントは常時水深が200~300mあり、潮が速い場合は水深プラス100mほど道糸が出て着底することもある。

加えて高切れなどのトラブルも想定すると、リールは最低でもPE4号が500m巻けるラインキャパが必要。

ダイワで500番、シマノで4000番が該当する。

当日の船上はこのクラスの電動リールを使っている人が大半だったが、ラインキャパPE4号400mのシマノ3000番を使用して予備リールを持参している人や、糸巻き量に余裕があるダイワ750番、シマノ6000番で置き竿メインで釣る人もいた。

竿は全長2m前後でオモリ250号対応のアカムツ専用竿や中深場竿など。

手持ちで釣るなら7:3調子、置き竿の場合は手持ち用よりもいくぶん長めで、仕掛けが安定する柔軟なグラス製のやや胴に入る6:4調子のタイプが最適だ。

釣り具の写真

(左)数種のアピールアイテムを組み合わせるのも有効。(右)TOHO「ムラムラパイプ・超ケイムラ」。右上がニッコー化成「激臭匂い玉」、チモトに付けるときは10mm、軸に刺すときは7mmが使いやすい。ヤマシタ「マシュマロボール」、サバやサメを寄せない無発光タイプがおすすめ。

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釣り具と餌の写真

(左)ハリはネムリ系のホタバリやムツを愛用する人が多い。(右)エサはホタルイカやサバの切り身。ホタルイカは口からハリ先を入れて両目の間に刺し抜き、胴を取り去りキモ付きゲソにする。サバは切り身の端にチョン掛け、写真のようにホタルイカのキモ付きゲソとサバを抱き合わせてもいい。

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2ノット超えの速潮に苦戦するも大型の赤いルビーが登場!

正一丸に釣行した11月29日は満船の乗船者12名で4時半に出船。

約1時間半の航程でポイントに到着し、「潮が速いので1流し1投でやります。水深180m、カケ下がりです」とのアナウンスの後、投入の合図。

船長によれば、数日前に好調に釣れた水深200~230m付近の斜面を狙っていると言う。

しかしこの日の早朝は2ノットを超える速潮。

ポイントの手前で投入すると仕掛けが流されてアカムツの着き場を通り越してしまうため、少し離れた水深180m付近で投入し、流し込んで本命ポイントに仕掛けが入るように狙っていくとのこと。

右ミヨシで置き竿で釣る同行の根岸発行人に様子を聞くと、道糸が250mほど出て着底したと言う。

その後はまめに底ダチを取り直し、リールの水深カウンターが300mを超えた所で小さなアタリ。

投入は一斉に行うが、巻き上げは各自の判断に委ねられる。

魚影が濃い当地では追い食いを狙う人も多いのだが、まずは1尾と巻き上げ開始。

途中で何度か竿をたたいて抵抗し、深紅に輝く35cm級のアカムツが上がる。

2流し目は着底前に竿が激しくたたかれサバにつかまる人が続出したが、無事に着底した数人に明確なアタリが出て、30cm前後のクロムツ(ムツ)がバタバタと取り込まれる。

船長によれば、クロムツはアカムツよりやや浅い場所に生息しているとのことで、その後の流しでも本命ポイントから少し離れた180m付近に着底した直後にクロムツが食ってくることが多かった。

3流し目からは本命のアカムツも順調にアタリを送ってくる。

サイズは交じりながら35~40cm級の良型が占める割合が大きく、よく太ったコンディションのいい個体が目立つ。

その後は水深300m付近からのカケ上がりと、早朝に狙った180mからのカケ下がりを状況で攻め分け、アカムツのダブルも見られた。

釣果は45cmを頭にトップ4尾、大半が2~3尾。

本命オデコが数名出たもののクロムツが多数交じりお土産になった。

釣行の写真

当地では置き竿スタイルが主流とはいえ、アタリがあればしっかり合わせたほうがいいし、状況次第では誘いも有効だ。

釣行の写真

(左)ハリ穴が広がった状態でも、ラインのテンションを緩めずに巻けば上がってくる。(右)巻き上げはやはり手持ちのほうがバラシは軽減できる。

こまめな底ダチの取り直しエサを踊らせる誘いが不可欠

海底谷を中心とした急激な斜面を攻める片貝沖のアカムツの釣り方は図のとおり。

片貝沖のアカムツ釣り方イメージ~徐々に深くなるポイントの一例~

カケ上がりの釣り方イメージ

アカムツに誘いが有効なのはもちろんだが、オモリ250号となると常に竿を手に持つのは体力的にもきつい。

当日の船上では、最初は積極果敢に手持ちで誘っていた人も、アタリが遠くなるとほとんどが置き竿となっていた。

しかし当日のように潮の速いときなどは驚くほど水深が変化する。

したがって、たとえ置き竿でもこまめな底ダチの取り直しが不可欠。

徐々に深くなるポイントでは、30~60秒くらいに一度のペースで底取りを行う。

仕掛けが再着底するとき、エサがフワリと踊り、これが一番の誘いになる。

一方、カケ上がりのポイントでは、着底後、一度に5mくらい巻いて下バリから徐々に底へ近づけていく釣り方や、オモリが底に着くたびに1m巻き上げ、底をトレースするように探る方法も有効だ。

また、広大な海底谷には底が平たんな場所もあり、緩やかな斜面で潮が流れないときは水深変化が小さくなる。

その場合は竿一杯に上下させる積極的な誘いも有効。

手持ちがきつかったら、リールの操作で行ってもいい。

アタリはコツンと明確に出ることもあれば、モターッと竿先が重くなるだけの場合もあるのだが、いずれにせよ何かしらの変化を感じたらしっかり合わせる。

アカムツは口が弱く巻き上げ中のバラシがつきものだが、しっかり合わせて上アゴにハリ掛かりすればバラシを減らすことができる。

巻き上げ速度は30段階のリールであれば速度15前後で慎重に。

口吻の薄い膜に掛かるとハリ穴が徐々に広がり、ラインが緩むと外れやすい。

できるだけ手持ちで巻き上げ、ウネリなどで船が持ち上がったとき滑る程度にあらかじめドラグを調節し、テンションを保って海面まで引き上げよう。

釣行の写真

当日の竿頭は右ミヨシの長沼孝史さん。エサはホタルイカのキモ付きゲソとサバの切り身の抱き合わせ。

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【隔週刊つり情報(2021年1月1日号)※無断複製・転載禁止】

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