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鈴木孝の安心カワハギ塾

隔週刊つり情報編集部

カワハギの食事が少し増えてきた。

まだ完全に好調とは言えないけれど、早く釣って食べたい初心者~中級者も多いでしょう。

そのようなあなたに、達人・鈴木孝さんが「平均釣果を得るための基本ルール」を教えます。

これで心配が軽減し、釣り場に行こう!

9月半ばの秋分の日。

いつものカワハギなら、そのころから浅い根周りでバリバリ食いだす。

しかし今年はさっぱり釣れず、エキスパートも5~8枚がやっとの状況が10月まで続いた。

スソはもちろんゼロ。

これではシーズン中に数回楽しむ程度の初~中級者は足が遠のいてしまう。

ところが11月に入るとどこからともなくカワハギが現れ始め、1週間に1~2回のサイクルでトップ20~30枚に到達する日が出てきた。

ただしまだまだ谷間もあって、鈴木孝さんと内房那古船形港のくろしお丸に乗船した11月15日は0~7枚。

数日前は30枚近く釣れていたものだから鈴木さんを含む相当なカワハギマニアが集合したものの、一人平均3枚前後に泣く一日だった。

それでも、「高い水温、台風、豪雨、濁り潮。この秋はカワハギも大変だったんでしょう。でもね、どこに避難していたのか知らないけども、小型のカワハギが顔を見せ始めたのはいい兆し」と鈴木さんは先行きを楽観視する。

ここでは1カ月半遅れのシーズン・インと想定し、ベーシックな「タテの釣り」の基礎&ツボを鈴木さんに学んでみた。

おさらいのつもりで一読していただければ、久しぶりのカワハギ釣行も不安なく楽しめると思う。

釣行の写真

ロケ地の館山湾。11月中旬からトップ20枚前後の釣果も耳にするようになった

ハリとハリス長は2種をミックス

「竿は肝心だからね、初心者でも店頭価格が2万円くらいの専用竿を使ったほうがいい。アタリが分かる、そして掛かりやすい。それが楽しくカワハギ釣りを楽しむ第一条件だよ」

これは鈴木さんではなく、くろしお丸・花輪船長のコメント。

実際カワハギ釣りは竿を替えただけでハリ掛かりがアップすることがあり、その性能はおおむね価格に比例する。

番手は通常、中硬調(シマノならMH)で十分。

鈴木さんのようにトップを目指して突き抜ける名手は、例えば硬調&手感度重視のステファーノ攻1177SP、あるいはまったく逆の軟調&目感度優先の同S180などを使い分けて1枚でも多くのカワハギを拾っていくが、このあたりのマニアな解説は同氏連載スナイパーズ・メソッドを熟読していただきたい。

カワハギ仕掛けはおなじみの胴つき3本バリ。

今の時代、多くの人が市販品(枝間「ノーマル」の製品)を使用し、別売りのハリス付き替えバリを活用しているだろう。
 
鈴木さんも「それで十分」と言うけれど、あえて参考図には、すべての枝間を10㎝とした鈴木流の仕掛けを記した。

狭いレンジに3つのエサを均等に置いてカワハギを集めるのが、主な目的だ。

さらにもう一つ、付けエサの位置を上げたいときはオモリと仕掛けの間に20~40㎝のアシスト(フロロカーボン4号程度)を追加する。

このシステムは、

・ベラやトラギスなど底生のエサ取りの猛攻を避ける。

・魚礁、岩礁、藻場などでハリが取られるのを防ぎ、それら障害物のやや上を遊泳するカワハギを狙える。

・宙に浮くカワハギのタナに付けエサを持っていける・・・などの特徴を持つ。

付けエサの位置を上へ移動させても、常にオモリで底を確認しながら釣っていける安心感は大きなメリットだ。

アシストは釣り最中の対応策になるけれど、その前に、久びさのカワハギ釣りで悩むのはハリの選択だろう。

大きく分けるとフトコロの開いたハゲバリ系と、丸セイゴを進化させた吸わせ系(速掛け、スピードなど呼称は色いろ)がある。

「釣り人により好みが分かれるところですが、スッと口内に入って掛かりやすい吸わせ系をよく使います。サイズは7~7.5号が万能。ただし、スタート当初は様子見を兼ねてハゲバリ4.5~5号を中央に1本交ぜ、ハリ掛かりの優劣をチェック。ハゲバリ有利と判断したら、こちらを増やします」

さらにもう一つ、鈴木さんが重要視するのがハリスの長さ。

カワハギの活性、潮の速さ、使っている竿、釣り手の癖・・・などの諸条件がミックスされ、短いハリスと長いハリスでハリ掛かり率に優劣が生じるからだ。

「おすすめは、最初に平均的な6㎝とちょっと長めの10㎝を織り交ぜてどちらによく掛かるかを確認する方法。そしてヒット率のよいほうに長さを統一していきます」

図は上から6→6→10㎝(短、短、長)の例を記したが10→6→10㎝(長、短、長)というパターンでもいいそうだ。

食い渋ったとき、アタリはあっても掛かりにくいときは総じて長めのハリスが有効とされるが、決して絶対ではない。

竿の特性や釣り手の癖で結果が違ってくることも多いからだ。

これは前述したハリの種類にも同じことがいえ、ハリスもハリもまずは比較して「自分にとってのベスト」を見つけることが大切になる。

鈴木 孝氏のおすすめカワハギ仕掛け一例

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道具の写真

(上)ギア比が高く回転性能にすぐれた小型両軸リール。スムースなヤリトリ、素早い手返しにつながる(左下)今年は奇妙な速潮に見舞われる日が多いので、オモリは潮の抵抗をかわす形状がおすすめ(右下)鈴木さんが愛用する枝間10㎝の幹糸も、ステファーノ・シリーズから発売中

針の写真

(左)吸わせバリ系=速掛け系、飲ませ系とも呼ばれ、鈴木さんは主にこちらを使用。軽く、形状もスマートなので吸い込んで捕食するカワハギの口内にスッと入る。オートマチックにハリ掛かりしやすい傾向もあるので、向こう合わせになりがちなビギナーも安心して使用できる(右)ハゲバリ系=フトコロが開き、ハリ先が口に当たりやすい形状。 吸い込みが悪く、エサばかりかじられる低活性時に、口元にカチッと掛かってくれることがある

長めの枝スのほうが比較的よく釣れると判断したら、すべて10㎝に

サイズダウンよりハリ先を重視!

アタリがあってもハリ掛かりしない。

そんなときはハリのサイズを小さくしたくなる。

しかし「吸わせ系なら7号まで、ハゲバリ系なら4.5号までで粘ることをすすめます」と鈴木さん。

ハリを小さくすればエサ付けに手間がかかり、ベラなどの外道にも飲まれやすくなるなど、初級者にとっては手返しを低下させるデメリットのほうが多い。

「サイズよりも、鋭いハリ先をキープすること。セオリー中のセオリーですが、カワハギを釣るならそれが鉄則です」。

そう断言する鈴木さんは、とにかくまめに枝バリを交換していた。

ありがたいことに、近年は数十本入りの「枝バリセット」が当たり前のように市販されている。

カワハギの硬い口はもちろん、根に擦れたり、外道に突つかれるとハリ先にはすぐに甘くなってしまう。

自分の爪にハリ先をあてて少しでも刺さりが悪くなったなら、面倒がらずにすぐ交換。

それだけでバラシやスッポ抜けが軽減し、結果に現れるはずだ。

釣り人の写真

老眼と苦闘しつつも、こまめなハリ交換を忘れない鈴木さん

魚の写真

1枚釣ったらハリ交換、が理想。替えバリ1パックを使い切るつもりで挑むべし!

小さく揺すって誘い下げアタリをキャッチ

アサリのむき身エサは、ていねいに丸めてコンパクトに付ける。

ハリ先を水菅から刺し、ベロに縫い刺しにしてワタで止めるという基本手順は鈴木さんも同様だ。

ただし、自分の仕掛けにカワハギを寄せるひと手間として「真ん中のハリだけ、ワタがたっぷり付いた大きめのアサリを付ける」こともあるとか。

粒が小さなアサリがそろっているときは2個付けにするのもいいだろう。

大きなエサはハリ掛かりを度外視した見せエサ。

まずは自分の仕掛けにおびき寄せて、上下のハリに食い付いてきた瞬間に勝負するわけだ。

ロングキャストしてのヨコの釣りも大好きな鈴木さんだが、万人が気楽にカワハギ釣りに興じられるのは「やっぱり船下狙い、いわゆるタテの釣りが基本」と言う。

手順はシンプルな誘い下げがベースで、竿を立てた位置からユラユラと仕掛けを揺さぶっては止め、を繰り返しながら底まで落としていく。

釣り人によっては激しいタタキを入れながら誘い下げるが、鈴木さんはごく柔らかに「仕掛けをフワフワ揺さぶる程度」という表現がふさわしい。

揺さぶる幅もごくわずかでハリスの長さ分、6~10㎝といったところだろう。

鈴木さんの姿を見ていると、揺さぶりの間に手や竿先に伝わるカワハギのわずかなアタリをキャッチしようとする集中力に圧倒される。

激しいタタキでは見逃してしまうアタリをとらえるために、小さく柔らかな揺さぶりに徹しているのだ。

カワハギ釣りの基本(タテの釣り)

活性に合わせて誘いスピードを変える

誘い下げの途中でアタリがきた後の食わせ方は、2パターンある。

A=アタリがきたらその位置で静止。

エサを吸い込む間を取って、ハリスの長さ分(10㎝程度)わずかに聞き上げる。

ココッと引き込んだら、すかさず竿を立てつつリールを巻く。

掛かりにくいときは、逆にわずかに送り込むとエサを吸い込むこともある。

B=右のパターンでハリ掛かりしないときは再び揺さぶりながら誘い下げていく。

こうして残ったエサをカワハギに追わせて、Aと同様の操作を繰り返しながらハリ掛かりに持ち込む。

誘い下げでアタリが出ないときはカワハギは底から離れないと判断して、底での上下、タルマセなど、底中心の誘いの間を増やす。

「私が心がけているのはエサが残って戻るときでも手を止めず、とにかく誘い続けること。ただし一本調子ではなく、活性に応じて誘いのスピードや食わせの間に緩急を付けています」

鈴木さんが言う活性と誘いスピードの関係性は、

・活性が高い=速く誘う

エサをガツガツと食ってあっという間に丸裸にされやすいので、揺さぶりのテンポを早め、誘い下げ、止めの間もスピードアップ。

こうしてカワハギを刺激し、エサをどんどん追わせて丸飲みするようにうながす。

・活性が低い=ゆっくり誘う

エサをカワハギの鼻先にぶら下げるイメージで、スローテンポの誘いに徹する。

ジワジワと誘い下げて、止めの間も長めに。

ゆっくりと、しつこく誘いを繰り返すことでやる気のないカワハギの摂餌欲を高める。

極端に活性が低いときは遊泳層も底近くなので、底から数十㎝の間をネチネチと誘い続けていこう。

下にそのイメージ図を表してみたが、至極当たり前のようでありながら実践していないことが多い。

とくに数枚釣った後はついつい同じ誘いスピードに執着しがちで、終わってみればおいてけぼり・・・なんてこともあるから注意しよう。

いずれにせよ、なんとかハリに掛けようとするこの攻防がカワハギ釣りの難しく最も楽しいところ。

前段で触れたようによく掛かるハリの種類やハリス長なども見極めながら、偶然ではない必然のカワハギ釣りを目指す。

そうすれば、平均釣果くらいはコンスタントに得られるようになるはずだ。

活性の高さに合わせた誘いのスピード

誘いのイメージ

釣行の写真

竿先を10㎝幅でフワフワと上下させて底まで落とし込んでいき、途中でアタリが出たらストップ。10㎝ほど聞き上げて掛けにいく

釣行の写真

アタリなく着底したら、底で上下に誘って反応を見る

困ったときのアドバイス

最後に、隣で釣れているのに自分に釣れないときはどうするか?を鈴木さんに聞いてみると、

「自分も集中して釣っているのになぜかヒット率が悪い。まぁよくあることです。ただ、トータルバランスで手が合っている人には何をやってもかなわないというのが正直なところ・・・。なので即効性が望めるのは、隣人がカワハギを掛けてヤリトリし、再投入するまでの間に勝負をかけることです」

修羅場をくぐり抜けてきたトーナメンターならではのこの小技、窮地に追い込まれたとき試してみたい。

また、現時点のカワハギ釣り場で留意すべきアドバイスを鈴木さんにうかがった。

「今のところ、豪雨の雨水や黒潮大蛇行で沖から差し込む暖水の影響か、速潮や二枚潮が頻繁に起きてます。湾口付近の釣り場は2ノット近い速潮に見舞われることもあるので、釣り方に工夫が必要ですね」

ハイテクニックになるけれど、ちょうど今号のスナイパーズメソッドに速潮対策が解説してあるのでぜひご一読いただきたい。

一つ補足すれば、「潮がカッ飛んでいるとき、カワハギは潮流に対抗して全速力で泳いでいます。こんなとき速い誘いはタブー。懸命に泳いで近づいたエサを、カワハギからどんどん遠ざけてしまうことになります。速潮下では、よりゆっくりと誘ってカワハギをしっかりと寄せる。そしてアタリがきたらそのままジッと待ってカワハギにエサを吸わせる。ちょっと特殊なパターンですけど、そのほうが確実にヒット率はアップすると思います」

経験に裏打ちされた鈴木さんのカワハギ理論を一つずつチェックしていくと、生態、釣り場、状況に応じた対策など実にディープ。

それはまた、折を見て紹介していこう。

この原稿を書いている11月下旬、館山湾、相模湾の鎌倉~茅ケ崎沖、三浦半島の鴨居沖や長井沖でトップ20~30枚に達する日が増加してきた。

急激な冷え込みで、越冬に備えるカワハギたちが慌ててエサを食べ始めたのかもしれない。

「釣況のアップダウンも収まってきたので、12~1月をピークに2月ごろまで安定して釣れる。そんな気がしますよ」とは鈴木さんの予想。

カワハギ狙いに二の足を踏んでいた沖釣りファンも、いよいよ出撃のときだ。

竿の写真

できれば軟らめのカワハギ竿も持参。やたらとバラシが続くとき、竿を替えたとたん掛かることもある

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隔週刊つり情報(2019年12月15日号)※無断複製・転載禁止

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