内房、三浦半島、そして相模湾。秋~冬の沖釣りを彩るアマダイ釣りが本番を迎えた。
サイズは大小ばらつきがあるものの、各地ともトップ5尾前後をキープして魚影は良好だ。
関東のアマダイ資源はここ10年くらい安定し、シンプルなテンビン仕掛けで手軽に楽しめることもあって老若男女に大人気。
メッカともいえる相模湾は、ほぼすべての港からアマダイ乗合が出船している。
基本どおりに釣っても十分楽しめるアマダイだが、 引き出しが多いほどキャッチ率は上がる。
出典:
アマダイ釣りの基本をチェック
釣行時の注意点はオモリの号数と道糸の太さの確認。
オモリは船宿によって40~80号まで幅があり、例えばライトタックルをうたうアマダイ乗合では「オモリ50号、道糸はPE2号以下」という風に指定されることも多い。
竿は使用オモリに適合したゲームロッドやアマダイ専用ロッドを用意。
好みもあるが7:3~8:2の先調子のほうがエサ取りのアタリをキャッチしやすく、底ダチを取り直すときの操作性もいい。
釣り場の水深は60~100mあるから、リールは小型電動を推奨。
ただしライトアマダイ船では、パワーハンドル付きの中・小型両軸リールで楽しむ人もいる。
一方、仕掛けと釣り方の基礎は、オモリが何号であってもほぼ共通だ。
仕掛けはハリス3号程度の2本バリ、全長は2m。
ハリはオキアミエサの脱落やズレを少しでも防ぐために3~4号のケン付きチヌや、飲まれても外しやすい軸の長い丸カイズ14号前後が好まれている。
(上)庄治郎丸のライトアマダイ乗合はオモリ60号、PE3号以下。船宿仕掛けは全長2m(下)オキアミエサが頼りの釣り。クーラーから小出しにして、常に状態のいいエサを付けよう
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釣り方もごくシンプルで、
①オモリ着底後、3~4回トントンと海底を小づいて余分な糸フケを巻き取る(小づきは誘いにもなる)。
②ハリス全長の半分くらい、オモリを底から上げる(全長2mの仕掛けなら1m)。
③およそ10秒待ってアタリがなければ1mくらいゆっくり誘い上げ、元の位置まで竿先をジワジワと下げて付けエサを落とし込む。
地形の起伏もけっこうあるので定期的に底ダチをチェックしながら、この3つの手順を繰り返せばOKだ。
海底にエサを置く!? 這わせ釣法の極意
基本を押さえたところで今回の本題に入ろう。
どちらかと言えばアマダイ釣りに慣れた人向きのディープな話だから、初心者の方は前記の仕掛けと釣り方をマスターしてからご一読を。
そのほうが混乱しないと思う。
アマダイファンの心をくすぐるユニークな持論を語ってくれたのは、今回取材した平塚港・庄治郎丸の世古勇次郎船長。
ユウちゃんと呼ばれて親しまれてきた同宿の若手船長だが、いつの間にやら40代、船長歴も20年以上を数える。
秋~冬のアマダイ乗合も長年担当し、自身でも色んな仕掛けや釣り方を試してきたようだ。
そんなユウちゃんが現時点でコレでいいんじゃないか?と感じて実践しているのが、2つのエサバリを海底に這わせる釣り方。
「よく、エサが底スレスレに浮くくらいがアマダイ釣りのベストなタナ取り・・・なんていうけど、テンビンの先に漂うエサの位置って正確には分からないし、微調整も難しい。それなら、はなっから付けエサを底に転がしちゃえばいいと思っているんですよ。実際、それで十分釣れます」
あくまでも持論だからお客さんに強制することはないし、ダントツでよく釣れるというわけでもない。
ただタナ取りで悩むことがなく、安定した釣果が望めるようだ。
ユウちゃんが自作しているアマダイ仕掛けの全長は2.3m。
モトス5号、ハリス4号で大型アマダイの引きに耐える仕様になっているものの、全体の構成としては全長2mのスタンダードな仕掛けのモトスを30cm長くとったものである。
適度に潮が流れていると仮定して具体的な釣り方を追っていくと、
①オモリを底から1m切る。上図のように2本のハリが海底に這うイメージになり、船の流れに合わせてズルズルと移動していく。
②しばらくアタリを待った後、1mくらいゆっくり聞き上げて、再び元の位置までジワジワ下げる。
③誘いをもう1回繰り返したら、底ダチを確認してタナを取り直す。
釣り方自体は前述した基本釣法と大差はなく、ちょっと長めの仕掛けを使うことで意図的に付けエサを底に転がせるわけだ。
アマダイは泥底に掘った穴を基点に、出たり入ったりしながらエサを捕食する。
エビ・カニ類のほか、泥の中を漁ってイソメ類も食べるようだから、付けエサを底ベッタリに寝かせたとしても、すぐに見つけて食べてしまうに違いない。
そんな習性を持つアマダイの摂餌層は海底から1mの間であり、さらにヒット率が高まるのは底から50cmの間だろう。
ユウちゃんの「這わせ釣法」はそのスイートスポットに2本のハリが入り続ける状態になるから、アマダイのキャッチ率が高まるのかもしれない。
「エサを海底にキープし続けるために、かなりこまめにタナを取り直します。
誘いを2回入れたら底ダチを取り直すのが基本ですけど、急斜面や起伏が激しい場所では1回誘う度に底ダチを取ってますよ」
頻繁にクラッチをオン&オフするので「われながら忙しない」と言うけれど、スイートスポットを維持し続ける大切な操作だ。
這わせ釣法のデメリットとしては外道のヒット率も増えることだろう。
しかし「アタリがないよりはまし。小魚が掛かったら、どんどん仕掛けを入れ直していけばいいんですよ」と、ユウちゃんはまったく気にしない。
(上)タナ取りの基本は、オモリを底から1m上げた位置(下)ハリはケン付きチヌ(オキアミチヌとも言う)の4号。一番の目的はエサの脱落防止。
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頻繁に底ダチを取って、的確にタナをキープ。付けエサが底から離れないように心がける。
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底潮が速いときの対策あれこれ
底ベタを狙っているつもりなのにすべてのアタリが遠のく、ちょっと厄介な状況もある。
底潮がかなり速く、ハリスが吹き上がってしまうときだ。
底ダチを取ろうとしてもオモリの立ちが悪く、すぐに浮き上がってしまうような状況ならば、底潮が速いと判断していい。
その場合はアマダイの摂餌層に近づけるために、タナを下げる。
ユウちゃんは、「まずはタナを底上50cmとして、様子見。それでもアタリがなければ親子サルカンを大きく(=重く)して、強制的に仕掛けを沈める」という。
仕掛けを沈めるための手軽なウエイトといえばガン玉が頭に浮かぶが、
「単なる好みですけど、ガン玉をハリスに打つとフカセ効果が失われる気がするんですよ。
だから親子サルカンのサイズを大きくして対処してるんです。
最大でサイズ1号を使うこともありますね」
1号の親子サルカンといえばキンメ仕掛けなどに用いられるかなり大きなサイズ。
そこそこ重量もあるので、相当な速潮に見舞われても、しっかり底まで沈むだろう。
底潮が速いときは、アマダイも巣穴に戻って待機している可能性があり、穴から頭だけを出してエサが流れてくるのを待っているかもしれない。
そんな時間帯でも釣り上げるためには、アマダイの鼻先にエサを送り届けることが先決。
ユウちゃん流にサルカンのサイズを替えるもよし、ガン玉で沈めるもよしだろう。
かなり底潮が速いときはサイズ1号の大きな親子サルカンを使って、仕掛けを海底に沈める。
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メリットが多いアタリ即合わせ!
ここ数年、現場で出会ったアマダイファンによく聞くことがある。
アタリがきたら即合わせするか?あるいはアマダイの引きに任せて向こう合わせでOKか?という問いだ。
試しにユウちゃんにも質問してみたところ、間髪入れずに「即合わせでしょ!」と返ってきてうれしくなった。
実は私も同意見なのである。
向こう合わせでもアマダイは釣れるけれどもハリを飲んで上がってくることが多く、ハリ外しに手間取るし、ハリスも傷みやすくなる。
また、アマダイは淡水のコイのようにエサを吸い込んで捕食するが、逆にいえば異物を吐き出すのもうまい。
プルッと小さなアタリがきたものの、その後は音沙汰なしというケースは「たぶんエサ取り」と片付けられてしまうことが多いけれども、そのうちのいくつかはアマダイがエサを吐き出してしまったのかもしれない。
小魚だろうがアマダイだろうが、微かなアタリが竿先に伝わったらエサを口にしているはず。
ここで瞬時に合わせれば、アタリの数に比例してハリ掛かりする確率もアップしていく。
「即合わせが決まると、アマダイも外道も口元にガッチリ掛かっていることが多い。
気持ちがいいし、明らかに手返しも早まるよね」とユウちゃんは語り、アタリを感じたら空振り覚悟でガンガン合わせていくそうだ。
即合わせを心がけると相乗効果でメリットも生まれる。
常に竿を手にしてアタリに集中するようになり、小魚がエサをかじった様子も機敏にキャッチ。
エサがなければアマダイは釣れないから、すかさず巻き上げて積極的に仕掛けを入れ直すようになる。
そうなれば自然に他の人より投入回数が増えて、アマダイとの遭遇率もアップしていくわけだ。
バッチリ即合わせを決めるには竿の選択も重要になり、「8:2くらいの先調子で、穂持が硬めのほうが掛けやすいね」とユウちゃんは言う。
アマダイ専用ロッドは先調子と表示してあっても穂持が軟らかめに設計してあるものが多いため、ゲームロッドの中から8:2の先調子を選んだほうがいいだろう。
余談ながらユウちゃんに、「ハリスの全長を2.3mにしているのは、ひょっとして大型のアマダイが食いやすい寸法なの?」と聞いてみたところ、
「まったく関係なし。長年現場を見てきたけど、ハリスの長短で釣れるアマダイのサイズが違うってことはないです。デカアマダイが釣れるかどうかは、やっぱり運かな」と、きっぱり否定。
夢の50cmオーバーと出遭うためには、結局のところ足しげく通うしかなさそうだ。
ユウちゃんこと世古勇次郎船長のアマダイ這わせ釣法(勝手に命名)は、外道も交えて魚をバンバン掛けていく一風変わったスタイル。
万人向けとは言えないけれど、困ったときに試してみたくなるし、アマダイのタナを考察するヒントにもなるだろう。
アマダイであれ外道であれ、小さなアタリを感じたら即合わせ。口元にハリ掛かりする回数が確実に増える。
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